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婚姻費用とは?別居中の生活費を分担する仕組み
夫婦が別居を始めると、まず現実的な不安としてのしかかってくるのが「これから生活費はどうなるのだろう」という問題ではないでしょうか。専業主婦やパート勤務で収入が少ない場合はもちろん、収入があっても住居費や子どもの教育費が二重にかかれば、家計は一気に苦しくなります。
こうしたときに大きな支えになるのが、婚姻費用です。婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送るうえで必要となる費用全般を指し、衣食住の費用、子どもの養育費や教育費、医療費などが含まれます。法律上、夫婦にはお互いの生活を自分と同じ水準で支え合う義務(生活保持義務)があり、これは別居していても、離婚が成立するまでは消えません。
つまり、別居中であっても、収入の多い配偶者は収入の少ない配偶者に対して生活費を分担する義務を負い続けます。収入が少ない側は、相手に対して「婚姻費用を分担してほしい」と請求できるのです。別居しているからといって、相手が一方的に生活費の支払いを止めてよいわけではありません。
この「生活保持義務」は、親が未成熟の子を養う義務と同じ強さを持つとされています。自分の生活に余裕がある範囲で助ければよい、という程度のものではなく、自分と同じ水準の暮らしを配偶者にも保障しなければならない、という重い義務です。たとえば、別居後に相手が自分だけ余裕のある生活を続け、配偶者と子どもが家賃も払えないほど困窮しているとすれば、それは法律の予定する夫婦のあり方とはかけ離れた状態だといえます。婚姻費用の分担は、こうしたアンバランスを正すための制度でもあるのです。
婚姻費用に含まれるもの
婚姻費用には、夫婦と未成熟の子どもが通常の社会生活を送るために必要な費用が幅広く含まれます。具体的には、次のようなものが対象です。
- 衣食住の費用:食費、衣類、家賃や住宅ローンに相当する住居費、水道光熱費など、日常生活の基礎となる費用です。
- 子どもの養育費・教育費:子どもの食費や衣類のほか、学校の授業料、給食費、習い事や塾の費用などが含まれます。
- 医療費:通院や入院にかかる費用、持病の治療費なども対象になります。
- その他:通信費や交通費など、生活に通常必要と認められる費用です。
一方で、夫婦の一方が個人的な趣味や娯楽に使う費用、ぜいたく品の購入費などは、原則として婚姻費用には含まれません。あくまで「通常の社会生活を維持するために必要な費用」が基準になると考えておきましょう。
イメージしやすいように、別居中の生活費を思い浮かべてみてください。家賃、食費、水道光熱費、子どもの保育料や学費、通院があればその医療費。これらは、夫婦が同居していれば当然に家計から支出されていたはずのものです。別居によってその家計が二つに分かれても、相手の生活を支える義務がなくなるわけではありません。婚姻費用は、こうした日々の暮らしを成り立たせるためのお金だと考えると、その意味がつかみやすいでしょう。
養育費との違い
婚姻費用と混同されやすいのが養育費です。どちらも生活費を分担するお金ですが、対象とする期間と範囲が異なります。
養育費は、離婚が成立した後に、子どもを監護していない側の親が子どもの養育のために支払うお金です。これに対して婚姻費用は、まだ離婚が成立していない別居中に支払われるもので、子どもの分だけでなく、配偶者自身の生活費まで含む点が大きな違いです。
そのため、一般的には婚姻費用のほうが養育費よりも金額が高くなる傾向があります。配偶者の生活費が上乗せされるからです。別居から離婚までの間は婚姻費用を、離婚後は養育費を請求していく、という流れをイメージしておくとわかりやすいでしょう。具体的に考えてみましょう。妻が子どもを連れて家を出て別居を始めたとします。離婚が成立するまでの間、妻は夫に対して、妻自身と子どもの生活費をあわせた婚姻費用を請求できます。そして離婚が成立すると、妻自身の生活費部分は請求できなくなり、子どものための養育費だけを請求していくことになります。同じ別居でも、離婚の前か後かで、もらえるお金の中身と金額が変わるわけです。離婚後の養育費の取り決めや、支払われないときの対処については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
婚姻費用はいつからいつまで請求できる?
婚姻費用で多くの方がつまずくのが、「いつの分から請求できるのか」という時期の問題です。ここを誤解していると、本来もらえたはずのお金を取りこぼしてしまうことがあります。
始まりは「請求した時」から
婚姻費用は、原則として「請求したとき」から発生すると考えられています。実務では、相手に対して婚姻費用を請求する意思を明確に示した月、あるいは家庭裁判所に調停を申し立てた月を始期とする扱いが一般的です。
ここで注意したいのは、別居を開始した時点までさかのぼって請求するのは難しいという点です。たとえば、別居してから半年間まったく請求せずに過ごし、その後で「半年分まとめて支払ってほしい」と求めても、過去にさかのぼった分は認められないことが多いのです。
これは、婚姻費用が「早い者勝ち」の性質を持つお金だからだと考えてください。別居を決めたら、生活費の不安があるなら、できるだけ早く相手に請求の意思を伝えることが何よりも大切です。口頭で伝えるだけでは「言った・言わない」の争いになりやすいため、内容証明郵便など形に残る方法で請求しておくと安心です。
終わりは「離婚成立」または「同居再開」まで
婚姻費用を請求できる終わりの時点は、原則として離婚が成立した日、または夫婦が同居を再開した日までです。
離婚が成立すると、夫婦としての生活保持義務はなくなり、その後は子どもについての養育費の問題に切り替わります。また、別居していた夫婦が関係を修復してふたたび同居を始めれば、別居を前提とした婚姻費用の分担は終了します。
裏を返せば、離婚協議や離婚調停が長引いている間は、その期間中ずっと婚姻費用を受け取り続けられるということです。離婚を急ぐべきか、それとも条件をじっくり交渉すべきか迷っている方は、この点も判断材料の一つになります。収入の少ない側からすれば、離婚が成立するまでは婚姻費用を受け取れるため、生活基盤が整わないうちに急いで離婚することが、必ずしも得策とは限りません。逆に、収入の多い側からすれば、別居が長引くほど婚姻費用の支払いが続くことになります。立場によって、別居期間の長さが持つ意味はまったく違ってくるのです。自分にとってどう動くのが有利かは、お金の流れ全体を見ながら冷静に判断する必要があります。
婚姻費用の相場と計算方法
次に気になるのは、「実際にいくらもらえるのか」という金額の問題でしょう。婚姻費用の金額は、最終的には夫婦の話し合いで自由に決めることができますが、話し合いがまとまらない場合や調停・審判になった場合には、裁判所が用いる基準が目安になります。
婚姻費用算定表の見方
家庭裁判所では、婚姻費用や養育費の金額を算定する際に「算定表」と呼ばれる表を使います。これは、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)それぞれの年収、そして子どもの人数と年齢の組み合わせから、標準的な金額の目安を導き出すものです。
算定表は、子どもがいない夫婦の場合、子どもが1人の場合、2人の場合といったように、家族構成ごとに分かれています。さらに、子どもの年齢が0歳から14歳までか、15歳以上かによっても表が分かれています。15歳以上のほうが教育費がかさむため、金額の目安も高めに設定されています。
実際に使うときは、まず自分たちの家族構成に合った表を選び、義務者の年収を縦軸、権利者の年収を横軸で確認します。両者が交わるマス目に書かれた金額帯が、婚姻費用のおおよその目安になります。年収は、会社員であれば源泉徴収票の「支払金額」、自営業であれば確定申告書の数字をもとに確認します。
たとえば、夫が会社員で年収600万円、妻が無収入で、0歳から14歳までの子どもが1人いるケースを考えてみましょう。この場合、算定表上の婚姻費用の目安は、おおむね月10万円から12万円程度の範囲になることが多いといえます。子どもが2人になれば必要な生活費が増えるため、目安も上がります。逆に、妻にもパート収入があれば、その分だけ夫が分担すべき金額は下がります。あくまで一例ですが、こうした形で家族構成と年収から目安を読み取っていきます。なお、算定表は社会情勢の変化に応じて見直されることがあるため、請求の際には最新の算定表で確認することが大切です。
金額を左右する要素
婚姻費用の金額は、次のような要素によって大きく変わります。
| 要素 | 金額への影響 |
|---|---|
| 義務者(支払う側)の年収 | 年収が高いほど、分担すべき金額も大きくなる |
| 権利者(受け取る側)の年収 | 受け取る側の収入が少ないほど、もらえる金額は大きくなる |
| 子どもの人数 | 子どもが多いほど、必要な生活費が増えるため金額も上がる |
| 子どもの年齢 | 15歳以上の子どもがいると、教育費を考慮して金額が高めになる |
たとえば、夫の年収が高く妻が無収入で、15歳以上の子どもを2人抱えているといったケースでは、婚姻費用の金額もそれなりに大きくなります。逆に、双方の年収に大きな差がなければ、分担額は小さくなることもあります。
算定表から増減されるケース
算定表はあくまで標準的な目安であり、すべての事情を反映できるわけではありません。個別の事情によっては、算定表の金額から増額・減額される場合があります。
たとえば、子どもが私立学校に通っていて学費が高額な場合、持病や障害があって特別な医療費がかかる場合などは、算定表の金額に上乗せが認められることがあります。一方で、住宅ローンを義務者が支払い続けていて、権利者がその家に住んでいるような場合には、住居費の二重負担を調整するために金額が減額されることもあります。
このほかにも、夫婦の一方が相手名義の住宅に住み続けているケースや、別居後に相手が子どもの保険料や習い事の費用を直接負担しているケースなど、現実にはさまざまな事情が絡みます。こうした事情は、金額を増減させる方向にも、調整を要する方向にも働きます。
このように、婚姻費用は機械的に算定表だけで決まるわけではありません。自分のケースで上乗せや調整を主張できる事情がないか、一度整理しておくとよいでしょう。主張できる事情があるのにそれを伝えないままでいると、本来受け取れたはずの金額より低く決まってしまうこともあります。
婚姻費用を請求する手順
婚姻費用を実際に受け取るまでには、いくつかの段階があります。いきなり裁判所に持ち込むのではなく、まずは当事者間の話し合いから始めるのが基本的な流れです。
ステップ1:まず相手に請求する
最初のステップは、相手に対して婚姻費用を支払ってほしいと伝えることです。前述のとおり、婚姻費用は請求したときから発生するのが原則ですから、別居を始めたら、まずはできるだけ早く請求の意思を示すことが重要です。
このとき、口頭やメールだけで済ませるのではなく、内容証明郵便を使って請求しておくと、いつ請求したかを客観的に証明できます。「請求した時期」は婚姻費用の始期を左右する重要なポイントですから、形に残る方法を選んでおきましょう。別居そのものをどう進めるか、別居前にどんな準備をしておくべきかについては、次の記事も参考になります。
ステップ2:婚姻費用分担請求調停
当事者同士の話し合いで金額がまとまらない場合や、そもそも相手が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。
調停では、調停委員が間に入り、双方の収入や生活状況を聞き取りながら、適正な婚姻費用の金額について話し合いを進めてくれます。当事者が直接顔を合わせて言い争う必要はなく、別々に話を聞いてもらえるため、感情的な対立が激しいケースでも冷静に手続きを進めやすいというメリットがあります。
婚姻費用分担請求調停は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立てにかかる費用は収入印紙代と郵便切手代で、数千円程度とそれほど高額ではありません。
調停は、1か月に1回程度のペースで期日が開かれ、何回かの話し合いを経て結論に向かうのが一般的です。婚姻費用は生活に直結するお金であり、結論を急ぐ必要が高いため、調停の中で早めに暫定的な取り決めがなされることもあります。調停を申し立てる際には、申立書のほか、双方の収入を示す資料(源泉徴収票や給与明細、確定申告書など)が必要になります。これらの資料がそろっているほど、調停での話し合いはスムーズに進みます。調停の具体的な流れや費用については、離婚調停に関するこちらの記事もあわせてご確認ください。
ステップ3:調停が不成立なら審判へ
調停を重ねても合意に至らない場合、手続きは自動的に「審判」へと移行します。審判では、裁判官が双方の主張や提出された資料を踏まえ、婚姻費用の金額を決定します。
審判で決まった内容には法的な拘束力があり、相手がこれに従わない場合には、後述する強制執行の手続きをとることも可能になります。多くのケースでは算定表を基礎に金額が判断されますが、個別の事情をきちんと主張・立証できれば、増額や調整が認められることもあります。だからこそ、審判の段階では主張を裏付ける資料をしっかりそろえておくことが大切です。
審判で決まった婚姻費用は、相手が同居を再開するか離婚が成立するまで、毎月支払われるべきものとなります。もし相手が支払いを怠れば、その審判書を債務名義として、後述する強制執行に進むことができます。話し合いから調停、審判へと段階は進みますが、いずれの段階でも、収入資料をきちんと整え、自分の生活実態を具体的に説明できるよう準備しておくことが、納得のいく結果につながります。
相手が婚姻費用を払わないときの対処法
取り決めをしたのに相手が婚姻費用を支払ってくれない、というのは残念ながら珍しくないトラブルです。「決めたのだから自動的に振り込まれるはず」と油断していると、いつの間にか滞納が積み重なってしまうこともあります。こうした場合に使える対処法を、段階を追って見ていきましょう。
履行勧告・履行命令
調停や審判で婚姻費用が決まったにもかかわらず支払いが滞っている場合、まず利用できるのが家庭裁判所による「履行勧告」です。これは、裁判所が相手に対して「取り決めどおり支払うように」と促してくれる制度で、申立てに費用はかかりません。
履行勧告に強制力はありませんが、裁判所から連絡が来ること自体が一定のプレッシャーになり、これをきっかけに支払いが再開されるケースもあります。それでも支払われない場合には、より強い「履行命令」を申し立てることも可能です。
強制執行(給与の差押え)
履行勧告でも支払われない場合の切り札となるのが、強制執行です。強制執行では、相手の給与や預貯金を差し押さえ、そこから直接婚姻費用を回収します。
婚姻費用や養育費のように、生活を支えるために継続的に支払われるべきお金については、給与の差押えに関して特別な扱いが認められています。通常の借金の差押えよりも差し押さえられる範囲が広く、また、一度手続きをすれば将来分についてもまとめて差し押さえられる場合があるなど、回収しやすい仕組みになっています。
強制執行の対象としてもっとも一般的なのは、相手の給与です。勤務先に対して差押えの手続きをとると、相手の給与から婚姻費用にあたる金額が天引きされ、直接受け取れるようになります。給与のほか、預貯金口座や、場合によっては不動産なども差押えの対象になります。
ただし、強制執行を行うには、原則として調停調書や審判書、公正証書といった「債務名義」と呼ばれる公的な書類が必要です。口頭の約束や、当事者だけで作った簡単なメモでは、すぐに差押えに進むことはできません。だからこそ、婚姻費用の取り決めは口約束で済ませず、調停調書や、強制執行を認める文言を入れた公正証書など、後で執行できる形にしておくことが重要なのです。せっかく金額を決めても、執行できる形になっていなければ、いざ滞納されたときに動きが遅れてしまいます。
2026年4月の法改正で回収しやすくなった
婚姻費用や養育費の回収については、2026年4月1日に施行された改正民法によって、大きく状況が変わりました。
改正により、子どもの監護に要する費用(養育費や、婚姻費用に含まれる子どもの生活費にあたる部分)について「先取特権」という優先的な権利が認められました。これにより、公正証書などの債務名義がなくても、夫婦の間で作成した合意書(私文書)に基づいて、直接差押えの申立てができるようになりました。先取特権で回収できるのは子ども1人あたり月額8万円を上限とする部分で、これを超える額については従来どおり債務名義が必要です。
あわせて、相手の勤務先や預貯金口座といった財産に関する情報を、裁判所を通じて取得しやすくする制度も整備されました。「相手の勤め先がわからず差押えを諦めていた」という方にとっても、回収に向けた選択肢が広がっています。婚姻費用の不払いに悩んでいるなら、こうした新しい制度を活用できないか検討してみる価値があります。
婚姻費用をめぐるよくある疑問
最後に、婚姻費用について多く寄せられる疑問を、Q&A形式で整理しておきます。自分の状況に近いものがないか、確認してみてください。
専業主婦でも婚姻費用は請求できる?
請求できます。むしろ、専業主婦のように自身の収入がない、または少ない場合こそ、婚姻費用が生活の支えとして重要になります。収入が少ない側ほど、算定表上もらえる金額は大きくなる傾向があります。
「働いていないから請求できないのでは」と遠慮してしまう方もいますが、生活保持義務は収入の有無にかかわらず夫婦が負うものです。家事や育児を担ってきたこと自体が家庭への大きな貢献であり、収入がないことは婚姻費用を請求できない理由にはなりません。別居中の生活に不安があるなら、ためらわずに請求を検討しましょう。離婚後のお金や生活の準備も含めて、早めに見通しを立てておくことが安心につながります。
自分から別居した場合でも請求できる?
原則として請求できます。どちらから別居を切り出したかにかかわらず、収入の少ない側は相手に婚姻費用を請求できるのが基本です。
ただし、不貞行為など、別居の原因をつくった責任が自分の側に明確にある場合(有責配偶者にあたる場合)には、自分自身の生活費部分について婚姻費用が大幅に制限されたり、認められなかったりすることがあります。もっとも、その場合でも子どもの養育に必要な費用部分まで否定されるわけではありません。子どものための分は確保されるのが一般的です。
別居前にさかのぼって請求できる?
難しいのが実情です。前述のとおり、婚姻費用は「請求したとき」から発生するのが原則であり、別居開始時点までさかのぼって過去分を請求することは、基本的に認められにくいと考えてください。
だからこそ、別居を始めたら速やかに請求の意思を示すことが何よりも大切です。「離婚の話し合いが落ち着いてから」「相手の様子を見てから」と先延ばしにしているうちに、本来もらえたはずの生活費を取りこぼしてしまうことになりかねません。
婚姻費用の金額に納得できないときは?
当事者間の話し合いで決めた金額であっても、その後に収入が大きく変わるなど事情が変化した場合には、増額や減額を求めて改めて調停を申し立てることができます。たとえば、義務者が転職して収入が大きく減った、子どもが進学して教育費が増えた、といった場合です。
金額が適正かどうか自分では判断しにくいときは、まず算定表で目安を確認したうえで、自分のケースに上乗せや調整を主張できる事情がないか整理してみましょう。離婚に伴うお金の問題は、婚姻費用だけでなく財産分与とも関わってきます。離婚時にどのように財産を分けるかについては、こちらの記事も参考になります。
婚姻費用で損をしないために弁護士に相談を
婚姻費用は、別居中の生活を支える大切なお金です。しかし、「いつから請求できるのか」「いくらが適正なのか」「相手が払わないときどうするか」といった判断には、法律や実務の知識が欠かせません。知らなかったために請求が遅れ、もらえるはずのお金を取りこぼしてしまうのは、とてももったいないことです。
弁護士に相談すれば、算定表をもとにした適正な金額の見通しを立ててもらえるだけでなく、内容証明による請求や調停の申立て、相手が支払わない場合の強制執行まで、状況に応じた対応を一貫して任せることができます。相手と直接やり取りせずに済むため、精神的な負担を大きく減らせるのも大きなメリットです。
特に、相手が話し合いに応じない場合や、収入の資料を開示してくれない場合、すでに滞納が積み重なっている場合などは、早い段階で専門家に相談することで結果が大きく変わることがあります。婚姻費用は、いったん低い金額で取り決めてしまうと、後から大きく引き上げるのは簡単ではありません。最初の取り決めが、その後の別居生活の安定を左右するといっても言い過ぎではないのです。どの弁護士に相談すればよいか迷う方は、弁護士選びのポイントをまとめた記事も参考にしてください。
ボーナスや各種手当は婚姻費用に反映される?
反映されます。婚姻費用は年収を基礎に算定されますが、ここでいう年収には、毎月の給与だけでなく、賞与(ボーナス)も含まれます。源泉徴収票の「支払金額」には賞与も合算されているため、これをもとに計算すれば自然と反映される仕組みです。
また、住宅手当や扶養手当など、給与に上乗せして支給される各種手当も、原則として年収に含めて考えます。相手が「ボーナスは別だ」と主張してきても、それは正しくありません。相手の収入の全体像を正確につかむことが、適正な金額を受け取るための第一歩になります。
支払う側の扶養家族が増えた場合はどうなる?
婚姻費用を支払う側が、別居後に別の家族を扶養するようになった場合などは、分担すべき金額に影響することがあります。たとえば、支払う側に新たに扶養が必要な事情が生じれば、その分だけ婚姻費用の額が見直される余地が出てきます。
ただし、いったん取り決めた金額は、当事者が合意するか、改めて調停・審判で見直されない限り、自動的には変わりません。事情が変わったから今月から勝手に減らす、ということは認められません。減額を求めるなら、正式な手続きを通じて主張する必要があります。
婚姻費用に税金や贈与税はかかる?
婚姻費用として受け取ったお金に、贈与税や所得税が課されることは、原則としてありません。婚姻費用は、夫婦の扶養義務にもとづいて支払われる生活費であり、財産を無償で贈与するものとは性質が異なるからです。常識的な範囲の生活費であれば、税金を心配する必要は基本的にないと考えてよいでしょう。
ただし、生活費の名目であっても、明らかに通常必要な範囲を超える高額なお金をまとめて受け取り、それを預金や投資に回しているといった特殊なケースでは、税務上の取り扱いが問題になることもあります。気になる場合は、念のため専門家に確認しておくと安心です。
相手が自営業で収入をはっきり示さない場合は?
相手が自営業者で、収入をごまかしているのではないかと感じるケースは少なくありません。この場合、確定申告書や課税証明書などの資料をもとに収入を把握していくことになりますが、相手が資料の開示に応じないこともあります。
調停や審判の手続きの中では、裁判所を通じて収入に関する資料の提出を促してもらえる場合があります。また、2026年4月の法改正によって、相手の財産に関する情報を取得しやすくする制度も整えられました。相手の収入が不透明で困っているなら、こうした手続きを活用することを検討しましょう。一人で抱え込むより、専門家の力を借りたほうが、相手の本当の収入に近づける可能性が高まります。
婚姻費用はどのように支払われる?
婚姻費用は、毎月決まった日に、受け取る側が指定した銀行口座へ振り込む方法で支払われるのが一般的です。生活費という性質上、まとめて一括で渡すのではなく、毎月継続して支払う形がとられます。
取り決めをするときは、金額だけでなく、毎月何日までに支払うか、どの口座に振り込むかといった支払い方法まで具体的に決めておくことが大切です。支払期日があいまいだと、遅れがちになったり、後から「振り込んだ・振り込んでいない」の争いになったりしがちです。調停調書や公正証書には、こうした支払い条件まできちんと記載しておきましょう。記録に残る形で支払いを受けておけば、万が一滞納が起きたときにも、滞納額を明確に示すことができます。
まとめ
婚姻費用は、別居していても、離婚が成立するまでの間、収入の少ない配偶者が相手に請求できる生活費です。衣食住の費用や子どもの養育費・教育費などが含まれ、金額は裁判所の算定表をもとに、双方の年収や子どもの人数・年齢で決まります。
最も大切なのは、婚姻費用が「請求したとき」から発生し、過去にさかのぼれないのが原則だという点です。別居を決めたら、生活費の不安があるなら、できるだけ早く内容証明などで請求の意思を示しましょう。話し合いがまとまらなければ婚姻費用分担請求調停、それでもまとまらなければ審判へと進みます。
相手が支払わないときは、履行勧告や強制執行で回収を図ることができ、2026年4月の法改正によって子どもの監護費用には先取特権が認められるなど、回収手段も広がっています。一人で抱え込まず、早めに弁護士に相談することが、損をしないための一番の近道です。
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慰謝料の相場目安
100万円 〜 300万円
判例の中央値:200万円
※ 過去の裁判例に基づく相場の目安です。実際の慰謝料額は個別事情により大きく変動します。性格の不一致のみでは慰謝料請求が認められない場合が多い点にご注意ください。