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財産分与を損せず受け取る|離婚時の対象・割合・手続

この記事で分かること

  • 財産分与は名義・収入を問わず夫婦両方が持つ民法上の権利
  • 婚姻中に築いた財産の分与割合は原則2分の1で、専業主婦(主夫)も同じ
  • 請求権には離婚後2年の時効があり、別居前の証拠収集と弁護士への早期相談が損をしないカギ

婚姻中に取得した財産は、夫名義又は妻名義でも夫婦が協力して築き上げた共有財産です。この共有財産は相手に対して離婚時に分配を請求できることが民法で定められています。財産分与は収入がなくても認められている権利なので、堂々と請求するようにしましょう。

離婚を決意したとき、頭の中にぐるぐると浮かぶのが「お金のこと」ではないでしょうか。特に、長年一緒に積み上げてきた財産をどう分けるかは、離婚後の生活に直結する問題です。「名義が夫になっているから私には関係ない」「専業主婦だから請求できないかも」と思い込んでいる方が少なくありませんが、それは大きな誤解です。

財産分与は、民法が夫婦双方に保障した権利です。正しく知っていれば、あなたが受け取れるはずの財産を取りこぼすことなく離婚に臨めます。この記事では、財産分与の基礎から対象・割合・手続・弁護士への相談タイミングまで、実務的な視点を交えながら丁寧に解説します。

財産分与とは何か?離婚時に必ず知っておきたい基礎知識

財産分与の定義と法律上の根拠(民法768条)

財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます。根拠となるのは民法768条で、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定められています。さらに民法771条によって、裁判離婚の場合にもこの規定が準用されます。

つまり、協議離婚でも調停離婚でも裁判離婚でも、財産分与の請求権は変わらず存在する。それが大前提です。

婚姻中に築いた財産はすべて夫婦のもの

名義は関係ない──夫名義の口座でも共有財産

「夫名義の預金だから私には関係ない」──よく聞く話ですが、法律上はまったく違います。婚姻生活中に夫婦が協力して形成した財産は、名義が夫であれ妻であれ、夫婦の共有財産とみなされます。夫が外で稼いできた給与も、妻が家事や育児を担ったからこそ成り立っているという考え方が、この制度の根底にあります。

たとえば、婚姻後に夫名義で購入したマンション、夫名義の証券口座にある株式、夫名義の生命保険の解約返戻金——これらはすべて財産分与の対象になりえます。「名義が違うから」と最初からあきらめないでください。

専業主婦(主夫)でも財産分与を請求できる理由

収入がないから財産分与をもらえない、と思っている方も多い。でも、それも誤りです。専業主婦(主夫)が家事・育児を担うことで、働く側の配偶者は仕事に集中できる。その結果として財産が蓄積されている。家事労働も財産形成への立派な貢献です。

実際、現在の実務では専業主婦でも財産分与割合は2分の1が認められるのが一般的です。収入のなさは財産分与の権利に影響しません。堂々と請求しましょう。

財産分与の4つの種類

財産分与は一種類ではありません。夫婦の状況や離婚の経緯によって、以下の4種類があります。

種類 内容 認められる主なケース
清算的財産分与 婚姻中に共同形成した財産を分配する すべての離婚に共通(離婚原因の有無は問わない)
扶養的財産分与 離婚後の生活維持が困難な側を一時的に支援する 専業主婦・病気・就職困難な場合
慰謝料的財産分与 慰謝料を財産分与に含める形で請求する 不貞・DV・モラハラなど有責配偶者がいる場合
過去の婚姻費用の清算 別居中に支払われなかった生活費を清算する 別居期間中に生活費未払いがあった場合

清算的財産分与

財産分与の中心はこれです。婚姻中に夫婦が共同で形成した財産を、名義を問わず共有財産として清算します。重要なのは、離婚の原因を作った側からも請求できるという点。つまり「自分が浮気をして離婚になったから財産分与をもらえない」ということはありません。ただし慰謝料は別の話です。

扶養的財産分与

離婚後、一方が生活に困窮するおそれがある場合に認められる財産分与です。期間は一時的なもの——安定した収入を得るまでの数カ月から数年程度が想定されます。「一生面倒を見てもらえる」わけではありませんが、再出発のための生活保障として機能します。

慰謝料的財産分与

不貞行為やDV、モラルハラスメントなど、相手方に離婚の有責事由がある場合、慰謝料を財産分与の中に含めて請求する方法です。金銭面の問題をまとめて解決できるメリットがあります。ただし、提示額が精神的苦痛を慰謝するには不十分と判断される場合は、別途慰謝料を請求することも可能です。

過去の婚姻費用の清算

別居中に相手が生活費を払ってくれなかった——そういう期間がある場合、その未払い分を財産分与の形で清算できることがあります。ただし、共働きで双方に十分な収入があった場合などは認められにくくなります。

ワンポイントアドバイス
財産分与の「種類」を知っておくと交渉の幅が広がります。慰謝料を別で請求するか、財産分与に含めるかは戦略次第。金額の大きさや立証の難易度によって使い分けるのが実務的なアプローチです。弁護士に相談すれば、あなたの状況に最適な組み合わせを一緒に考えてもらえます。

財産分与の対象となる財産・ならない財産

財産分与を請求しようとしたとき、必ず問題になるのが「何が対象で、何が対象外か」という線引きです。ここを正確に把握していないと、本来もらえるはずの財産を見落としたり、逆に相手から不当な主張をされても気づかなかったりします。

共有財産として分与対象になるもの一覧

婚姻中に夫婦が協力して築いた財産はすべて対象になりえます。代表的なものを整理しましょう。

預貯金・保険・有価証券

  • 預貯金:婚姻後に入金された分(名義は問わない)
  • 貯蓄型生命保険:解約返戻金が財産分与の対象となる
  • 個人年金保険:解約返戻金ベースで評価されることが多い
  • 株式・投資信託・債券:婚姻後に取得したもの
  • 退職金:すでに受け取っている場合はもちろん、将来受け取る予定のものも一定割合で対象になる

不動産(マンション・戸建て)

婚姻後に購入した自宅不動産は、ローンが残っていても財産分与の対象です。評価額から残ローンを差し引いた「純資産部分」が分与の対象となります。売却して現金化する方法と、どちらか一方が住み続けて相手に代償金を払う方法があります。

注意が必要なのは、オーバーローン(ローン残高が売却価格を上回る)の場合です。この場合は財産としてプラスにならないため、財産分与の対象から外れることもあります。

車・家具・家電・ゴルフ会員権など

婚姻後に夫婦のために購入した動産類もすべて対象です。ゴルフ会員権は高額になることもあるため、忘れずに把握しておきましょう。家具や家電は金額が小さいことも多いですが、まとめると意外な金額になることもあります。

特有財産として対象外になるもの

婚姻前の貯金・相続財産・贈与財産

以下のものは夫婦が共同で形成したわけではないため、特有財産として財産分与の対象外になります。

  • 婚姻前から持っていた貯金・不動産・株式
  • 婚姻後であっても、親から相続した財産
  • 婚姻後に第三者から贈与された財産

たとえば、妻が婚姻前に貯めていた200万円の定期預金は、婚姻後も妻の特有財産です。夫はそれを財産分与として請求できません。

特有財産でも分与対象になる例外ケース

ただし、注意が必要なケースがあります。特有財産であっても、その財産の維持・管理に他方配偶者が貢献していたと認められる場合は、財産分与の対象に含まれることがあります。

典型的なのは、婚姻前から夫が所有していた不動産を、妻が管理・修繕に関わりながら婚姻後も維持してきたケースです。この場合、妻の貢献部分が財産分与として評価されうる、というわけです。

マイナスの財産(借金・ローン)はどう扱う?

夫婦の共同生活のための借金は共有債務

財産分与はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(負債)も対象になります。夫婦の共同生活のために生じた借金は共有債務として考慮されます。

  • 家族が住む住宅のローン
  • 家族が使用する車のローン
  • 子どもの学費ローン
  • 日常的な生活費の補填のための借入

これらは共有債務とみなされ、財産分与の計算に反映されます。

ギャンブルや個人的な借金は対象外

一方、夫婦の共同生活とは無関係な借金は共有債務にはなりません。たとえば、夫が隠れてギャンブルで作った借金を妻が負担する義務はありません。ただし、相手方がその借金の存在を知っており、生活費に充てていたような場合は共有債務と認められるケースもあるため、個別の状況によって判断が変わります。

ワンポイントアドバイス
「特有財産」か「共有財産」かの判断は、実務上よく争いになります。婚姻前の預金と婚姻後の給与が同じ口座に混在していた場合、どこまでが特有財産かの立証が難しくなります。通帳の記録や口座開設日などの証拠を早めに確保しておくことが、後々の交渉を有利に進めるカギになります。

財産分与の割合はどう決まるか

対象となる財産が明らかになったとして、次に問題になるのが「どの割合で分けるか」です。感情的な話し合いでは「私の方が貢献した」「いや私の方だ」と水掛け論になりがちですが、法律上の考え方は比較的シンプルです。

原則は2分の1──なぜ平等なのか

財産分与の割合は、原則として2分の1ずつが現在の実務の主流です。かつては専業主婦の寄与度は3〜4割程度と低く評価されていた時代もありましたが、家事労働・育児の価値が正当に評価されるようになり、今では収入の差や就業状況にかかわらず、2分の1が基本とされています。

これは国際的にも広く認められている考え方です。夫婦は役割分担こそ異なっていても、家庭という共同体を支えるうえでの寄与は等しいという発想ですね。

割合が修正されるケースとは

一方の特別な能力・努力で形成した財産

たとえば、プロスポーツ選手や医師など、特別な才能・資格・努力によって通常の家庭では考えられないほどの財産を形成した場合、2分の1の原則が修正されることがあります。この場合、特別な貢献をした側の取り分が多くなる方向で調整されます。

ただし、こうした修正が認められるハードルは高く、「医師だから」というだけでは足りません。財産形成への本人の特別な貢献が明確に示される必要があります。

別居期間中に形成した財産の扱い

財産分与の対象となる財産は、別居時点までに形成されたものを基準とするのが一般的です。別居後に一方が独立して稼いだ財産は、もはや夫婦の共同形成ではないため、原則として対象外となります。

財産分与の基準時点はいつか──別居時と離婚時の違い

財産評価の基準時点については、実務上「別居時」と「離婚時(または審判時)」の2つの考え方があります。

基準時点 評価されるもの 主な適用場面
別居時 別居した時点での財産の価値・種類 協議・調停での一般的な基準
離婚時・審判時 離婚成立または審判確定時点の価値 不動産など価格変動があるものの評価

どちらを基準にするかによって、受け取れる金額が変わることもあります。特に不動産価格が変動している場合は要注意です。

ワンポイントアドバイス
「割合は2分の1だから単純に半分」と思っていると落とし穴があります。相手が財産の一部を隠している、別居後に財産を処分している、価値の評価が争いになっているなど、実際の財産分与協議はさまざまな問題が絡みます。「2分の1でいい」と安易に合意する前に、一度弁護士に全体像を確認してもらうことをおすすめします。

財産分与の手続と進め方

財産分与をどのように進めるかは、夫婦の関係性や財産の複雑さによって大きく変わります。基本的な流れを押さえておきましょう。

まず夫婦間の協議から始める

財産分与は、まず夫婦間の話し合い(協議)で解決を目指します。合意できれば手続きが最もシンプルで、時間もコストもかかりません。ただし、当事者だけで話し合うと、財産の見落としや相手に有利な条件を押し付けられるリスクがあります。

複数の財産が絡む場合や、相手が強引な態度に出てきた場合は、早めに弁護士に入ってもらう方が安全です。

合意内容は必ず公正証書にする

協議で合意に至ったら、その内容を公正証書に残してください。口頭の約束や普通の書面では、後で相手が「そんな約束はしていない」と言い出したとき、強制執行ができません。公正証書にしておけば、相手が支払いを怠った場合に直ちに強制執行の手続きが取れます。この一手間が、後の安心につながります。

話し合いがまとまらなければ調停・審判へ

財産分与請求調停の申立方法

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。

  • 離婚前の場合:夫婦関係調整調停の中で財産分与を話し合う
  • 離婚後の場合:財産分与請求調停を別途申し立てる

調停は裁判のように白黒つけるものではなく、調停委員が間に入って話し合いを助ける手続きです。プレッシャーを感じにくい反面、合意がなければ成立しません。

調停不成立後の審判手続

調停が不成立に終わった場合は、自動的に審判手続に移行します。審判では裁判官が財産分与の内容を決定します。当事者の合意は不要で、裁判官が妥当と判断した金額・割合が命じられます。不服があれば即時抗告(高等裁判所への申立)も可能です。

離婚訴訟に附帯して財産分与を請求する場合

離婚そのものが訴訟になっている場合は、その訴訟に附帯して財産分与の申立をすることもできます。

証拠収集のタイミングが勝負

訴訟で財産分与を請求するには、共有財産の存在を証拠で示す必要があります。別居後は相手の財産情報を入手しにくくなります。別居前に以下の書類を確保しておくことが極めて重要です。

  • 預金通帳(過去数年分のコピー)
  • 生命保険証書・解約返戻金の見積もり
  • 不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)
  • 証券口座の残高証明・取引履歴
  • 給与明細・源泉徴収票
  • 退職金規程や見込み計算書

「いざ離婚」となってから集めようとしても、相手が隠したり処分したりしてしまうことがあります。動ける段階で動いておくことが、後悔しない離婚につながります。

ワンポイントアドバイス
調停や審判で大事なのは「財産があること」を証明できる書類の存在です。「夫が大きな財産を持っているはずなのに証拠がない」という状況になると、主張しても認めてもらいにくくなります。まだ同居中なら、通帳のコピーなどをこっそり取っておくことも一つの手段です。ただし、不法な方法(相手のパソコンに無断でアクセスするなど)は後で問題になることがありますので、弁護士に相談しながら進めてください。

財産分与で損しないための実践的ポイント

法律の話だけでなく、実際の場面で役立つポイントをまとめます。「知らなかった」では取り返しのつかないことがあるので、しっかり確認しておいてください。

請求権の時効は離婚後2年──期限を絶対に逃すな

財産分与の請求権には時効があります。離婚後2年以内に請求しなければ、権利が消滅します。「離婚後、落ち着いてから考えよう」と先送りにしているうちに2年が過ぎてしまった、というケースは実際にあります。

離婚時に財産分与を決めなかった場合でも、離婚後2年以内であれば請求できます。ただし、時間が経てば経つほど相手が財産を処分したり、証拠が散逸したりするリスクが高まります。離婚と同時に、または離婚前に財産分与を決めておくのが理想です。

別居前に集めておくべき証拠・書類リスト

先ほども触れましたが、証拠収集のタイミングは早いほど有利です。改めて確認しましょう。

財産の種類 取得すべき書類・資料
預貯金 通帳コピー(入出金明細含む)・残高証明書
不動産 全部事項証明書(登記簿謄本)・固定資産税納税通知書
生命保険 保険証書・解約返戻金額の記載書面
有価証券 証券口座の残高報告書・取引履歴
退職金 就業規則・退職金規程・見込み額計算書
車検証(登録名義の確認)
借金・ローン ローン残高証明書・消費者金融の明細

相手が財産を隠しているときの対処法

離婚の話し合いが始まると、相手が財産を隠すケースが少なからずあります。たとえば、密かに別口座に預金を移したり、財産を第三者名義にしたり、収入を少なく見せたりといった行動です。こうした場合、以下の手段が有効です。

財産開示手続・弁護士照会の活用

  • 財産開示手続:裁判所が相手に対して財産を開示させる制度。強制執行の前提として使えるほか、離婚調停・審判でも活用できます。令和2年の民事執行法改正により、開示を拒否した場合の罰則が強化されました。
  • 第三者からの情報取得手続:金融機関に対して預貯金情報の照会を裁判所が命じる制度(令和2年改正で新設)。
  • 弁護士照会(23条照会):弁護士が関係機関に対して情報開示を求める制度。弁護士に依頼することで使える手段です。

「相手が財産を隠している気がする」という直感は、意外と当たっていることが多いものです。自力での調査には限界があるため、弁護士に早めに相談してください。

財産分与と税金──贈与税・譲渡所得税の注意点

財産分与は原則として贈与税の対象外です。ただし、分与された財産の額が婚姻中の財産形成への貢献度に比べて不当に多い場合や、離婚が贈与税逃れを目的とすると判断された場合は課税される可能性があります。

また、不動産を財産分与する場合、渡す側に譲渡所得税がかかることがあります。取得価格より評価額が上がっている不動産を財産分与するケースで注意が必要です。財産分与の合意前に、税理士や弁護士に確認しておきましょう。

ワンポイントアドバイス
「財産分与2年の時効」は知らない方が本当に多い。離婚してほっと一息ついたころに思い出しても、もう遅い——そういうケースを何件も見てきました。離婚の話が出たら、財産分与を後回しにしないことが鉄則です。離婚届を出す前に、きちんと合意書または公正証書を作成しておくことを強くお勧めします。

財産分与は弁護士に相談すべき理由

「話し合いで解決できるかもしれない」「弁護士費用がもったいない」そう思う方もいるでしょう。でも、財産分与の問題はシンプルに見えて、実は落とし穴だらけです。

弁護士なしで交渉するリスク

当事者同士の話し合いには、いくつかの深刻なリスクがあります。

  1. 財産の見落とし:相手の財産を網羅的に把握できず、本来もらえる財産を見逃す
  2. 不当な合意:相手のペースに乗せられて、不利な割合で合意してしまう
  3. 証拠不十分:必要な書類を揃えられず、主張を裏付けできない
  4. 時効の失念:離婚後の2年間を意識せずに過ごし、請求権を失う
  5. 公正証書の未作成:合意したのに相手が支払わず、強制執行もできない状態になる

どれか一つでも当てはまると、受け取れるはずだった財産が手元に来ないという事態になります。

弁護士に依頼するとどう変わるか

弁護士が介入することで状況は大きく変わります。

  • 相手の財産を網羅的に把握し、見落としを防ぐ
  • 適切な割合・金額を算定し、交渉を有利に進める
  • 相手が財産を隠しているときの調査・証拠収集をサポートする
  • 合意書・公正証書の作成を適切に進める
  • 調停・審判・訴訟に発展した場合も対応できる

特に、財産の種類が多い・相手が非協力的・婚姻期間が長い・不動産や退職金が絡む、といったケースは弁護士なしで進めるのは非常にリスクが高いと言えます。

相談のタイミングは早ければ早いほどいい

「まだ離婚するかどうかも決まっていない」という段階でも相談は可能です。むしろ早い段階で一度相談しておくことで、証拠収集の方針が立てられる、自分が受け取れる財産の目安がわかる、感情的な交渉を避けられる、といったメリットがあります。

初回相談が無料の事務所も多くあります。「相談したら依頼しなければならない」ということはありませんから、まず話を聞いてもらうだけでも、大きな安心につながります。

財産分与は、あなたが婚姻期間中に積み上げてきたものを正当に受け取るための権利です。遠慮することは何もありません。正しく請求し、新しい生活へのスタートラインを、しっかりと整えてください。

ワンポイントアドバイス
財産分与の問題は「弁護士費用がかかるから自分でやろう」と思って失敗するケースが後を絶ちません。弁護士に依頼することで得られる財産が、費用を大幅に上回ることはよくあること。「費用対効果」という観点で考えると、弁護士への相談はむしろコストパフォーマンスの高い選択です。まずは無料相談を活用してみてください。

財産分与に関するよくある疑問Q&A

財産分与について相談を受ける中で、「これが分からない」という声が特に多い質問をまとめました。ご自身の状況と照らし合わせながら確認してみてください。

Q1. 離婚原因が私にある場合でも財産分与をもらえますか?

はい、もらえます。財産分与(清算的財産分与)は、離婚原因が誰にあるかとは無関係です。自分が浮気をして離婚になったとしても、婚姻中に共同で形成した財産を分与してもらう権利は失われません。

ただし、慰謝料は別の話です。有責配偶者(離婚原因を作った側)は慰謝料の支払い義務を負うことがあり、財産分与でプラスをもらいながら慰謝料でマイナスが生じる、というバランスになることもあります。総合的に計算することが重要です。

Q2. 婚姻期間が短くても財産分与はできますか?

できます。ただし、婚姻期間が短い場合は婚姻中に形成した財産そのものが少ないため、財産分与の対象となる金額も少なくなるのが現実です。婚姻前から持っていた財産は特有財産として対象外ですから、結婚してから数カ月で離婚するケースでは、財産分与の実益が薄いこともあります。

それでも、婚姻期間中の預貯金の増加分や、共同で購入したものがあれば対象になりえます。「期間が短いから無理だ」と決めつけず、一度整理してみることをおすすめします。

Q3. 相手が財産分与に応じない場合どうすればいいですか?

相手が話し合いに応じない・財産分与を拒否するというケースは残念ながら珍しくありません。この場合、家庭裁判所への調停申立が次のステップです。調停でも合意できなければ審判、さらに離婚訴訟に附帯する形で裁判所に判断を求めることができます。

相手が応じないからといって、あきらめる必要はまったくありません。法的手続きを使えば、相手の意思に関わらず財産分与を実現できます。

Q4. 退職金はまだもらっていないのに財産分与の対象になりますか?

将来受け取る予定の退職金も、財産分与の対象になります。ただし、まだ受け取っていないため、いくつかの考え方があります。

  • すでに退職金を受け取っている場合:婚姻期間中に相当する部分を共有財産として扱う
  • 近い将来に退職金を受け取れる見込みがある場合:婚姻期間に対応する部分を計算して財産分与の対象とする
  • 退職まで長期間ある場合:将来の不確実性から、対象外または一定割引きで評価されることがある

退職金は金額が大きいため、財産分与全体に与える影響も大きくなります。計算方法については弁護士と相談しながら進めることをおすすめします。

Q5. 財産分与と養育費・慰謝料の違いは何ですか?

混同されやすいですが、それぞれ別の制度です。

種類 内容 根拠 請求できる期限
財産分与 婚姻中に形成した共有財産の清算 民法768条 離婚後2年以内
慰謝料 精神的苦痛に対する損害賠償 民法709条・710条 離婚後3年以内(不法行為から3年)
養育費 子どもの養育のための費用分担 民法766条 子どもが成人するまで(合意次第)

財産分与は「清算」、慰謝料は「損害賠償」、養育費は「子どものための費用」と、それぞれ目的が異なります。離婚の際はこれら全部を総合的に検討し、もれなく取り決めておくことが大切です。

Q6. 財産分与の調停はどこに申し立てますか?

財産分与請求調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。もし相手方の住所地が遠方であっても、当事者間の合意があれば別の家庭裁判所に申し立てることもできます。

申立書のほか、夫婦の戸籍謄本・財産に関する資料などが必要になります。書類の準備については、家庭裁判所の窓口で確認するか、弁護士に相談しながら進めましょう。

財産分与に関する実例でイメージをつかもう

抽象的な説明だけでは「自分の場合はどうなるのか」がイメージしにくいもの。具体的な事例で考えてみましょう。

事例①:専業主婦が離婚するケース

Aさん(38歳)は、夫と12年間婚姻生活を送り、専業主婦として家事・育児を担ってきました。夫は年収800万円のサラリーマンで、夫名義の口座に2,000万円の預金があり、婚姻後に購入した評価額3,000万円・残ローン1,500万円のマンションを所有しています。

この場合の財産分与の計算イメージ:

財産の種類 評価額 備考
預貯金(夫名義) 2,000万円 婚姻後に積み立てたもの
マンション(純資産) 1,500万円 評価額3,000万円-残ローン1,500万円
合計共有財産 3,500万円
Aさんの取り分(1/2) 1,750万円 専業主婦でも2分の1

収入がゼロだからといって、Aさんがもらえる財産は少なくなりません。12年間の家事・育児の貢献が評価されます。

事例②:共働き夫婦が離婚するケース

Bさん夫婦は共働きで、それぞれ年収500万円程度。婚姻後に株式投資で夫が1,000万円の利益を得ており、「自分が稼いだ」と主張して財産分与に応じようとしません。

共働きであっても、婚姻中に取得した株式の利益は原則として共有財産です。夫が「俺が稼いだ」と言っても、妻が家事・生活を支えることで夫が投資に時間・資金を使えた、という評価になります。夫婦の合計財産から借金を差し引いた純資産を2分の1ずつ分けるのが原則です。

事例③:婚姻前の財産と婚姻後の財産が混在するケース

Cさんは婚姻前から500万円の預金を持っており、婚姻後もその口座に給与を振り込み続けてきました。現在の残高は900万円。この場合、婚姻前の500万円は特有財産として対象外、残りの400万円が共有財産として分与対象になる、という整理が一般的です。

ただし、同じ口座に特有財産と共有財産が混在している場合(「混合」といいます)、立証が難しくなることがあります。「どこまでが婚姻前の財産か」を証明できる記録を残しておくことが大切です。

ワンポイントアドバイス
財産分与の金額は、夫婦ごとに財産の種類・婚姻期間・就業状況などによって大きく異なります。「平均いくらもらえるか」という話よりも、あなたの夫婦の財産を正確に洗い出し、適切に評価することの方がはるかに重要です。まずは財産のリストアップから始めてみましょう。弁護士への相談はその後でも十分間に合います。
離婚・養育費・男女問題の悩みは弁護士に相談を
  • 離婚する夫(妻)・不倫相手に慰謝料を請求したい
  • 子どもの親権・財産分与で揉めている
  • 離婚後の子どもの養育費をきちんと払わせたい
  • 離婚したいけど離婚後の生活が心配
離婚問題を弁護士に相談する