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親権争いで母親が有利な理由|監護実績と父親の対策

親権争いで母親が有利な理由|監護実績と父親の対策

この記事で分かること

  • 母親が親権で有利とされる本当の理由
  • 裁判所が親権者を判断する具体的な基準
  • 父親が親権を得られるケースと母親が不利になる事情
  • 親権を守るために避けるべき行動と必要な準備
  • 養育費と面会交流の取り決めで気をつけること

親権争いで母親が有利とされるのは、性別ではなく、これまで子どもの世話を担ってきた監護実績や生活の継続性が評価されるためです。裁判所は一貫して子どもの福祉を基準に判断するので、父親でも実績を示せば親権を得られますし、母親でも監護を怠れば不利になります。連れ去りやSNSでの発信など不利になる行動を避け、育児の記録や離婚後の生活設計、支援してくれる親族の態勢を整えて備えることが、親権を守るいちばんの近道になります。

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親権争いで母親が有利とされるのは本当なのか

「離婚することになったけれど、子どもの親権だけは絶対に譲りたくない」。そう考えて情報を集め始めたとき、多くの方が目にするのが「親権争いは母親が有利」という言葉です。ところが、この言葉だけが独り歩きすると、母親は安心しきってしまい、父親は最初からあきらめてしまいます。どちらも危うい受け止め方だと、弁護士の立場からはお伝えしておきたいところです。

まず数字の話から始めましょう。司法統計を見ると、離婚調停や審判で親権者と定められるのは、圧倒的に母親の方が多いのが実情です。年によって多少の増減はあるものの、母親が親権者となる割合はおおむね全体の九割前後で推移しており、この傾向は長く変わっていません。統計上の数値は、確かに母親の優位を示しているように見えます。

ただ、ここで立ち止まって考えてほしいのです。この数字は「母親だから勝った」ことを意味しているのでしょうか。それとも「母親が勝ちやすい事情を備えていることが多かった」結果にすぎないのでしょうか。結論から言えば、裁判所は性別そのものを理由に親権者を決めているわけではありません。数字の裏側にある本当の理由をつかむことが、親権を守るための第一歩になります。

実際の調停の現場でも、母親側の代理人が「母親なのだから当然こちらが親権者だ」という主張だけを繰り返すと、調停委員の心証はむしろ悪くなります。逆に、父親側であっても、これまで子どもの生活をどれだけ支えてきたかを具体的に示せた場合には、親権者として認められる例は決して珍しくありません。有利・不利は、性別で固定されているのではなく、示せる事実の質と量で動いていくものだと理解してください。

もう少し数字を掘り下げてみましょう。母親が親権者となる割合が高いこと自体は事実ですが、その中には、そもそも父親が親権を争わずに母親へ委ねた合意のケースが数多く含まれています。つまり、真正面から親権を奪い合った末に母親が勝った事案ばかりではないのです。父親が本気で監護実績を主張し、環境を整えて臨んだ争いに限って見れば、母親の優位はしばしば言われるほど盤石ではありません。統計の平均値だけを見て一喜一憂しないことが大切です。

また、社会の変化とともに、育児に主体的に関わる父親が確実に増えています。共働きが当たり前になり、父親が送り迎えや寝かしつけ、行事の参加を担う家庭も珍しくなくなりました。裁判所の判断も、こうした実態の変化を無視するものではありません。今後、監護の分担がより対等な家庭が増えれば、性別による傾向はさらに薄れていくと考えられます。「母親だから」「父親だから」という前提そのものが、少しずつ通用しなくなりつつあるのです。

この記事を読んでいるあなたが母親であれば、「有利」という言葉に安心しきらず、実績を裏づける準備を始めてください。もしあなたが父親であれば、「不利」という言葉に気持ちをくじかれず、自分にできる関わりを一つずつ積み重ねてください。どちらの立場であっても、勝負を分けるのは肩書きではなく、子どものために何をしてきたか、これから何ができるかという中身です。次の章から、その中身をどう組み立てていくかを、順を追って具体的に見ていきましょう。

なぜ母親が有利になりやすいのか、その本当の理由

母親が有利になりやすい最大の理由は、日本の多くの家庭で、乳幼児期から子どもの世話を日常的に担ってきたのが母親であるケースが多い、という現実にあります。裁判所が重視するのは、性別ではなくこれまで誰が実際に子どもの面倒を見てきたかという監護の実績です。授乳や食事、着替え、通院、寝かしつけ、園や学校とのやりとりといった日々の営みを、継続して担ってきた側が有利になるのは自然なことなのです。

この考え方の背景には、いくつかの重要な原則があります。中でも中心にあるのが「継続性の原則」です。子どもがこれまで安定して過ごしてきた生活環境や監護の状態を、離婚を機に大きく変えないほうが、子どもの心身にとって望ましいという考え方です。今まで主に母親と過ごしてきた子どもを、離婚を理由に急に父親のもとへ移すことは、子どもに負担を強いる可能性が高いと判断されやすくなります。

もう一つ、乳幼児については母親による養育が望ましいとする考え方が、実務上なお一定の影響を持っていることも事実です。ただし、これは母親という性別を絶対視するものではなく、乳幼児期の細やかな世話を現に担ってきた側を尊重する、という趣旨で理解するのが正確です。父親がその役割を主に担ってきた家庭であれば、当然その事情が評価されます。

ここで、多くの方が抱く素朴な疑問に答えておきましょう。「母親が有利なら、父親はどう頑張っても無駄なのか」。答えははっきり「いいえ」です。有利さの正体が監護実績である以上、それは父親にも開かれた土俵です。過去にどれだけ関わってきたか、そして今後どれだけ関わる態勢を整えられるか。この二つを具体的な事実で示せる父親は、決して不利な戦いを強いられているわけではありません。逆に、実績の伴わない母親が、立場に甘えて準備を怠れば、その優位はあっけなく崩れます。

裁判所が親権判断で重視する主な観点
観点 見られている中身
監護の実績 これまで誰が日常的に子どもの世話をしてきたか
継続性 今の生活環境や監護状態を維持できるか
監護の環境 住まい・収入・親族の支援など生活の受け皿
心身の状態 子どもと向き合える健康と精神的な安定
子どもの意思 年齢に応じて尊重される子ども自身の気持ち

こうして並べてみると、これらの観点の多くに、日々子どもと接してきた側が自然とかないやすいことがわかります。母親が有利とされてきたのは、性別の問題ではなく、この監護実績という土台を築いてきた母親が多かったから、という説明が最も実態に近いのです。

継続性の原則について、もう少し具体的にイメージしてみましょう。たとえば、これまで母親と暮らしてきた小学生の子どもがいるとします。この子にとっては、通い慣れた学校、いつもの友だち、慣れ親しんだ生活のリズムが、心の安定を支える大切な土台です。離婚を理由にこれらを一度に失わせることは、子どもに大きな負担をかけます。裁判所が現状の維持を重んじるのは、大人の都合よりも子どもの安定を優先しているからにほかなりません。

ここで注意したいのは、継続性が重視されるからといって、今子どもと一緒にいる側が無条件に有利になるわけではない、という点です。別居の際に子どもを連れ出した経緯が不自然であったり、その連れ出し自体に問題があったりすれば、その事情はむしろ不利に評価されます。裁判所は「今どちらといるか」という表面だけでなく、「どのような経緯でその状態になったか」まで踏み込んで見ています。目先の既成事実づくりが、思わぬしっぺ返しになることもあるのです。

読者の中には、単身赴任などで一時的に子どもと離れて暮らしている方もいるかもしれません。そうした事情がある場合、「離れていた期間があるから不利になるのでは」と不安になるのは当然です。しかし、離れていた理由が家族のための正当なものであり、その間も連絡や交流を絶やさず、関係を保ってきたのであれば、過度に心配する必要はありません。事情を丁寧に説明できるよう整理しておくことが、ここでも鍵になります。

ワンポイントアドバイス
「自分は母親だから大丈夫」と考えるのは危険です。裁判所が見ているのは肩書きではなく実績です。日々の世話をどれだけ担ってきたかを、後から振り返って説明できるよう、記録として残しておく意識を持ちましょう。

裁判所が親権者を判断する具体的な基準

では、裁判所は実際にどのような事情を材料にして親権者を決めているのでしょうか。判断は一つの要素だけで機械的に下されるのではなく、複数の事情を総合的に見て、最終的に「子どもの福祉にとってどちらが望ましいか」という一点に集約されていきます。ここを外すと、いくら熱心に主張しても的外れになってしまいます。

裁判所が特に重視する事情を整理すると、次のように挙げられます。それぞれが独立しているのではなく、互いに関連し合いながら評価される点に注意してください。

  • これまでの監護状況(主たる監護者は誰だったか)
  • 離婚後に予定している監護環境(住居・生活リズム・支援者の有無)
  • 親の心身の健康状態と、子どもと向き合える時間的な余裕
  • 子どもへの愛情と、養育にかける意欲の具体性
  • 兄弟姉妹を分離させないという配慮(きょうだい不分離)
  • 子ども自身の年齢と、その気持ち

特に子どもの意思については、年齢が上がるほど重みを増していきます。おおむね十歳前後を境に子どもの気持ちが考慮され始め、十五歳以上になると、家庭裁判所は親権者を定めるにあたって子どもの陳述を聴かなければならないとされています。思春期の子どもが自分の意思をはっきり示せば、その気持ちは尊重されるのです。

ここで一つ、読者の方が誤解しがちな点に触れておきます。「収入が高いほうが有利」というのは、必ずしも正しくありません。経済力は監護環境を支える一要素ではありますが、収入が低い側が親権者になった場合には、もう一方が養育費を負担する仕組みがあります。裁判所は「お金を持っている親」ではなく「子どもを育てるのにふさわしい親」を選ぶのだ、という視点を忘れないでください。

もう一つ、実務で重視されるのが監護を助けてくれる人の存在です。ひとり親として働きながら子育てをするのは、決して簡単ではありません。だからこそ、祖父母など身近な親族がどれだけ支えてくれるか、保育や学童などの受け皿をどう確保するかが、監護環境の評価を左右します。自分ひとりで抱え込む前提ではなく、周囲の支援も含めて子どもを安定して育てられる態勢を描けるかどうかが問われるのです。

親権が激しく争われる事案では、家庭裁判所調査官による調査が行われることがあります。調査官は、子どもや父母と面接したり、家庭訪問をして生活の様子を確認したりして、専門的な視点から報告書を作成します。この報告書は裁判所の判断に強い影響を与えます。調査官の前でだけ良い親を演じても、日常が伴っていなければ見抜かれます。逆に、日々の関わりが自然ににじみ出ていれば、それが何よりの説得力になります。

子どもの意思の扱いについても、少し補っておきましょう。子どもが幼いうちは、その言葉をそのまま鵜呑みにはできません。同居している親に気を遣い、本心とは違うことを言う場合があるからです。調査官はそうした背景まで踏まえ、子どもの表情や生活の様子から本当の気持ちをくみ取ろうとします。だからこそ、子どもを味方に引き込もうとする働きかけは、かえって不自然さとして表面化しやすいのです。

父親が親権を得るケース・母親が不利になるケース

「母親が有利」という原則があるとしても、それはあくまで傾向にすぎません。実際には、父親が親権者と認められる例も存在しますし、母親であっても親権を得られないことは十分にありえます。ここを直視できるかどうかで、その後の準備の本気度が変わってきます。

父親が親権を得やすくなるのは、たとえば次のような場合です。もともと父親が主たる監護者として子育ての中心を担ってきた家庭、母親が家を出ていき父親のもとで子どもが安定して暮らしている家庭、あるいは母親の側に子どもの世話を十分にできない事情がある家庭などが、これにあたります。父親であっても、監護実績と継続性という土俵で勝てる材料をそろえられれば、道は開けるのです。

母親でも親権が認められにくくなる事情
子どもへの虐待やネグレクトが疑われる、精神的な不調で世話が難しい、子どもを置いて長期間家を空けていた、生活が不安定で監護の受け皿を示せない――こうした事情があると、母親であっても親権者としての適格性を厳しく見られます。

誤解のないように付け加えると、これらは「そうした事情があれば必ず負ける」という意味ではありません。過去に一時的な不調があったとしても、今は回復して安定した監護ができているのであれば、その現状はきちんと評価されます。大切なのは、不利にはたらきそうな事情を隠すことではなく、それにどう向き合い、今どのような態勢を整えているかを、正直に、かつ具体的に説明できるようにしておくことです。弱点を認めたうえで対策を示せる人のほうが、裁判所には誠実な監護者として映るものです。

逆に言えば、母親が不利になる典型は、子どもの安全や安定した監護が疑われる場面です。裁判所の最終的な物差しは一貫して「子どもの福祉」にありますから、母親という立場そのものが盾になってくれるわけではありません。自分の側に不利にはたらきそうな事情がある場合こそ、早い段階で専門家に相談し、対策を立てておくべきです。

なお、離婚後に子どもと離れて暮らすことになった親にも、子どもと会う権利、すなわち面会交流が認められます。親権を得られなかったとしても、それで子どもとの関係が断たれるわけではありません。この点は、争いに臨む双方にとって、少し肩の力を抜ける事実かもしれません。

具体的な場面を思い浮かべてみましょう。ある家庭では、母親が体調を崩して長く実家に戻り、その間、父親が仕事を調整しながら子どもの送り迎えや食事、通院をひとりで担ってきました。子どもも父親との生活に慣れ、学校生活も安定しています。このようなケースでは、父親が主たる監護者としての実績を積み重ねているため、父親が親権者と認められる可能性は十分にあります。性別ではなく、現に誰が子どもを支えてきたかが決め手になるのです。

反対に、母親が親権者として認められにくくなる場面も、決してまれではありません。たとえば、子どもの世話をほとんどせずに家を空けがちだった、あるいは新しいパートナーとの生活を優先して子どもを後回しにしていた、といった事情があると、監護者としての適格性を疑われます。母親という立場は、こうした事情を帳消しにしてはくれません。裁判所の目線は、あくまで子どもの側に立っているからです。

親権を守りたい母親が絶対に避けるべき行動

ここまで読んで、「では有利な立場を確実にするために何をすべきか」よりも先に、実は「何をしてはいけないか」を知ることのほうが重要です。よかれと思ってとった行動が、かえって自分の立場を崩してしまう例が後を絶たないからです。弁護士として、依頼者にまず伝えるのはこの点です。

最も避けたいのが、感情に任せた子どもの連れ去りです。相手に無断で子どもを連れて家を出ることは、状況によっては違法な連れ去りと評価され、かえって監護者としての適格性を疑われる原因になります。子どもの安全のために避難が必要な場面と、単に相手を出し抜くための連れ去りとは、まったく別物として扱われます。判断に迷うときは、行動する前に相談してください。

注意
子どもを一方的に連れ去る、相手と子どもの面会を正当な理由なく妨げる、子どもの前で相手の悪口を吹き込む――これらはいずれも「子どもの利益より自分の感情を優先している」と受け取られ、親権判断でマイナスにはたらくおそれがあります。

次に避けたいのが、相手と子どもを会わせまいとする過剰な妨害です。別居中であっても、子どもがもう一方の親と会う機会を正当な理由なく奪い続けると、「子どもの利益を考えられない親」という印象を与えかねません。子どもにとって両方の親とのつながりが大切だと理解している姿勢は、むしろあなたの評価を高めます。

そして、子どもを味方につけようとして相手の悪口を聞かせることも逆効果です。子どもは板挟みになって傷つきますし、そうした様子は面接調査などを通じて調査官に伝わります。冷静さを保ち、子どもの前では相手を過度に否定しないこと。これが遠回りに見えて、実は最も確かな守りになります。

意外な落とし穴として、SNSへの書き込みにも触れておきます。離婚のいざこざの最中は、つらい気持ちを吐き出したくなるものです。しかし、相手への恨みつらみや、子どもの生活の詳細を安易に投稿すると、それが相手の目に留まり、あなたの人となりを不利に印象づける材料にされることがあります。感情的な発信は控え、伝えたいことは代理人を通じて冷静に行うのが賢明です。

また、別居後の生活があまりに不安定に見えると、それも監護環境への不安として受け取られます。夜遅くまで子どもを預けっぱなしにする、住まいが定まらず転居を繰り返すといった状況は、たとえやむを得ない事情があっても、子どもの安定を欠くと見られがちです。完璧である必要はありませんが、子どもが落ち着いて暮らせる土台を保つ努力は、目に見える形で示しておきたいところです。

親権争いを有利に進めるための準備と証拠

やってはいけないことを押さえたら、次は積極的に備えるべきことです。親権争いは「愛情の深さ」を競うものではなく、監護の実績と今後の環境を、いかに具体的に示せるかの勝負です。ここでは、実際に準備しておきたいことを手順に沿って見ていきましょう。

  1. これまでの育児の担い方を書き出す。通院の付き添い、行事への参加、日々の世話の分担などを、できるだけ具体的に整理します。
  2. 記録を集める。母子手帳、通院の記録、連絡帳、写真、園や学校とのやりとりなど、監護の実績を裏づける資料をそろえます。
  3. 離婚後の生活設計を固める。住まい、収入の見通し、勤務時間、子どもを支えてくれる親族の存在などを、現実的な形で描きます。
  4. 子どもの生活の安定を保つ。転校や生活リズムの急変を避け、今の環境を維持できることを示せるようにします。
  5. 早めに弁護士へ相談する。争いが本格化する前に見通しを立て、証拠の集め方や主張の組み立てについて助言を受けます。

読者の中には、「共働きで自分も忙しく、育児を完璧に担ってきたとは言えない」と不安に思う方もいるでしょう。しかし裁判所が見るのは完璧さではなく、相対的にどちらがより多く監護を担い、今後も安定して担えるかです。胸を張れる部分を丁寧に拾い上げ、足りない部分は支援体制で補う。その組み立てこそが、実務で効いてきます。

準備として確認しておきたいもの
母子手帳や通院記録、園や学校の連絡帳、育児の様子がわかる写真、離婚後の住まいと収入の見通し、支援してくれる親族の有無。これらは監護の実績と今後の環境を裏づける材料になります。手元にあるものから早めにそろえておきましょう。

証拠というと身構えてしまうかもしれませんが、特別なものは必要ありません。日々の暮らしの積み重ねを示す資料が、そのまま最も強い証拠になります。今日からできることは、育児の記録を意識して残しておくこと。この地道な作業が、いざというときに大きな差を生みます。

主張を裁判所に伝える手段として、陳述書を用意することもあります。これは、これまでの子育ての経緯や、離婚後にどのように子どもを育てていくつもりかを、自分の言葉で書き記した書面です。感情をぶつけるのではなく、事実を時系列で淡々と積み上げていくことが、かえって強い説得力を生みます。何をどの順番で書けば効果的かは、経験のある弁護士の助言を受けながら組み立てるとよいでしょう。

知っておくと役立つ知識として、親権は「財産管理などを担う権限」と「実際に子どもと暮らして世話をする監護権」に分けて考えることができ、事案によっては両者を父母で分担する取り決めがなされることもあります。もっとも、権限を分けると子どもをめぐる判断のたびに調整が必要になり、かえって対立の火種になりやすい面もあります。分けるべきかどうかは、子どもの利益を第一に、慎重に見極める必要があります。

親権が決まった後に関わるお金と面会のこと

親権争いに気持ちが集中していると見落としがちですが、親権者が決まった後にも、子どものために取り決めておくべき大切なことがあります。それが養育費と面会交流です。この二つをあいまいなまま放置すると、後々のトラブルの火種になりかねません。

養育費は、子どもと離れて暮らす親が、子どもの生活のために支払うお金です。金額は、双方の収入や子どもの人数・年齢などをもとに、家庭裁判所が用いる算定表を参考にして決めるのが一般的です。いつまで支払うか、どのように受け渡すかも含めて、あいまいにせず書面に残しておくことが、後の安心につながります。

一方の面会交流は、離れて暮らす親が子どもと定期的に会う取り決めです。頻度や方法、受け渡しの場所などを事前に決めておくと、その都度もめずに済みます。子どもにとって、両方の親と関わり続けられることは健やかな成長の支えになります。親権者となった側も、相手と子どもの面会に理解を示すことで、結果的に子ども自身を守ることになるのだと考えてみてください。

これらの取り決めは、口約束のままにせず、離婚協議書や公正証書といった書面の形にしておくのが安全です。特に養育費のように長期にわたる支払いは、書面がなければ後から履行を求めるのが難しくなります。目先の争いだけでなく、その先の子どもとの暮らしまで見据えて準備を進めましょう。

養育費については、途中で支払いが滞ってしまう例が少なくないのが現実です。だからこそ、取り決めの段階で公正証書にしておくことが有効です。強制執行を受け入れる旨の文言を入れておけば、万一支払いが止まったときに、あらためて裁判をしなくても給与などの差押えに進める道が開けます。子どものための大切なお金を確実に受け取るために、書面の形式にはこだわる価値があります。

面会交流についても、決めておわりではなく、実際に無理なく続けられる内容にしておくことが肝心です。子どもの成長とともに、部活動や受験などで生活は変化していきます。当初の取り決めが実情に合わなくなったときには、双方が歩み寄って柔軟に見直していく姿勢が求められます。大切なのは形式を守り抜くことではなく、子どもが両方の親との関係を保ちながら健やかに育っていくこと。その原点を、親権者となった後も忘れないでいてほしいと思います。

親権争いで母親が有利かどうかに関するよくある質問

専業主婦で収入がなくても親権は取れますか

収入がないこと自体が、ただちに親権者として不適格という評価にはつながりません。裁判所が重んじるのは、これまで誰が子どもの世話を担ってきたかという監護の実績です。専業で家庭を支え、子どもの世話の中心を担ってきたのであれば、それは大きな強みになります。生活費については、もう一方が負担する養育費でまかなう仕組みがあるため、収入の多寡だけで結論が決まるわけではないのです。

母親に不倫があった場合でも親権は認められますか

配偶者に対する不貞は、離婚の原因や慰謝料の問題としては重く扱われますが、親権者としての適格性とは切り分けて考えられます。夫婦としての落ち度と、子どもをきちんと育てられるかどうかは、別の物差しだからです。したがって、母親に不貞があったという一事だけで親権を失うとは限りません。ただし、その事情が子どもの監護をおろそかにしていたことを示す場合には、評価に影響することがあります。たとえば、交際相手のもとへ通うために子どもを長時間ひとりにしていた、といった事実があれば、それは不貞そのものではなく監護の怠りとして問題視されます。夫婦間の落ち度と、親としての務めの問題を切り分けて見る、というのはそういう意味です。

一度決まった親権者を後から変更することはできますか

可能ですが、簡単ではありません。親権者の変更には家庭裁判所の手続が必要で、子どもの福祉の観点から変更が必要だと認められる事情がなければ通りません。生活環境が大きく変わり、今のままでは子どもの利益が損なわれる、といった具体的な理由が求められます。感情的な行き違いだけを理由に変更が認められることは、まずないと考えておいてください。

子どもが複数いる場合、親権を分けることはできますか

制度上は、子どもごとに別々の親を親権者と定めることも不可能ではありません。ただ、実務では、きょうだいはできるだけ一緒に育てるのが望ましいとする考え方が根強くあります。一緒に育ってきた子ども同士を引き離すことは、きょうだいの結びつきという、もう一つの大切な関係を断つことになりかねないからです。それぞれの子どもの年齢や意思、これまでの生活状況によっては分けて定めることもありますが、原則としては同じ親のもとでまとめて監護する方向で検討されると考えておくとよいでしょう。

親権争いになったら必ず弁護士に依頼すべきですか

当事者だけで冷静に話し合えるのであれば、必ず依頼しなければならないわけではありません。ただ、親権争いは感情が激しくぶつかりやすく、法的な見通しを持たないまま進めると、不利な材料を自ら作ってしまうことがあります。連れ去りの是非や証拠の集め方など、判断に迷う場面は少なくありません。見通しを立て、やってはいけないことを避けるためにも、早い段階で一度専門家の助言を受けておく価値は十分にあります。

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