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離婚した!養育費の支払い義務とは? 〜金額や支払い期間を解説〜

この記事で分かること

  • 養育費は家庭裁判所では親の生活水準で決まる
  • 養育費の支払いを滞らせないように、離婚協議書を公正証書にする
  • 交渉を依頼するときは離婚に強い弁護士に相談するのがポイント

子どもがいるのに離婚することになったら、養育費について話し合う必要があります。す。養育費を支払ってもらえている人は、離婚した人全体の2割と言われており、口約束で済まさず、公正証書として債務名義を残しておくことが大切です。

離婚後の養育費の金額や支払い期間の考え方

離婚後も、親は子どもを養育するために必要な費用を負担する義務があります。養育費の内容は離婚と同時に定めるのが一般的ですが、離婚後に支払いを求めることも可能です。まずは金額や期間の決め方を見ていきましょう。

養育費の金額

養育費の金額は法律で規定されていませんので、夫婦の話し合いで決める場合は自由です。夫婦の話し合いが決裂し家庭裁判所が定める場合は、原則として「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表」に基づいて判断されています。

養育費の金額は親の生活レベルが基準

子どもは父母のどちらか生活レベルの高い親と同程度の暮らしを求める権利があり、親は子どもを同程度の生活レベルで扶養する義務があります。算定表ではこの考え方に基づき、父母の収入や子の年齢、数に応じて養育費を算出することができます。算定表は東京家庭裁判所のホームページなどで確認しましょう。

個々の事情で金額は変わる

算定表は簡単に養育費の目安を算出できるものですが、絶対ではありません。例えば教育費は公立学校を基準にしているため、子どもが私立学校進学や留学を希望した場合は増額を要求できます。逆に支払い義務者が病気で失業した場合などは、減額されることもあります。このように個々の家庭の事情に応じて増減の可能性がありますが、いずれも「子の利益」が最優先に考慮されます。

養育費の支払い期間

養育費の支払い期間も、金額と同様に法律での規定はありません。夫婦の協議で決めるのが望ましいとされていますが、話し合いで決まらなければ次のような基準で家庭裁判所が定めます。

養育費はいつまでもらえる?

家庭裁判所では、養育費の支払い期間は子どもが成人するまでを原則としています。ただし、成人した子どもが学業に専念するために経済的援助が必要な場合や、病気や障害など自立が困難な場合には養育費を請求できす。逆に、未成年であっても自立できる収入を得ている子どもに養育費を支払う義務はありません。

養育費の一括払いは可能か?

途中で不払いになる不安から、一括払いにしてほしいと考える人もいるでしょう。しかし、養育費は子の養育過程で定期的に支給されるのが原則です。例外として、支払い義務者が承諾した場合や、外国籍であるなど将来にわたって支払い続けることが難しい場合は、一括払いが認められます。ただし、通常は定期払いよりも総額が少なくなることを承知しておきましょう。

ワンポイントアドバイス
養育費額は夫婦の話し合いでは自由ですが、家庭裁判所では親の生活基準によって決まり、支払い期間は子どもが成人するまでが原則です。一括払いにしてほしいと考える人もいますが、定期的に支給されるのが一般的です。

離婚養育費の不払いを防ぐ方法

子どもが自立するまで継続して養育費を受け取ることは、現実には簡単ではありません。ここでは、養育費をもらい損ねないための対策を説明します。

協議離婚の落とし穴

当人同士の話し合いだけで離婚できる協議離婚は、離婚の9割を占めるといわれています。しかし手軽な反面、後々になって養育費など金銭トラブルが発生しやすいことを知っておきましょう。

口約束は約束していないのと同じ

「夫は子どもには愛情を持っている」「高額収入だ」「本人が払うと言っている」などの理由があっても、絶対に養育費の内容を口約束で決めてはいけません。養育費の支払い期間は非常に長いため、途中で支払い義務者がリストラされる、再婚するなど状況が変わる可能性があるためです。協議離婚後も確実に養育費を受け取るためには、合意内容を文書に残し、法的な強制力を持たせておくことが不可欠です。

債務名義があれば不払いを防げる

養育費の支払いが滞っても、債務名義があれば相手の給与を差し押さえるなど強制執行に出ることができます。裁判所の助けを借りる離婚では、養育費についても離婚と同時に決定するのが一般的なので、「調停調書」「審判所」「判決書」などが債務名義になります。協議離婚ではそれらに当たるものがないため、自ら債務名義を作成しておく必要があります。

離婚協議書を公正証書にする

協議離婚では離婚協議書を、支払いが滞った場合強制執行されても意義がないこと(強制執行受諾文言)を入れた公正証書にしておくことで債務名義になります。念書や合意書では、口約束よりはましですが強制執行はできません。子どもの将来のためにも、養育費の合意内容は債務名義となる公正証書として残しておきましょう。

離婚協議書の見本

離婚協議書とは次のような文書のことです。2通作成して双方が1通ずつ保管しておきます。

公正証書を作成する

公正証書は、管轄の公証役場へ夫婦で訪れ、公証人に作成してもらいます。予約をしたら、当日は実印、印鑑登録証明書、身分証明書、手数料、離婚協議書など公正証書にする文書を持参します。公正証書の費用は養育費の金額によって変わりますが、どこの公証役場でも同じです。

ワンポイントアドバイス
養育費を支払うと、念書や合意書をもらっても強制執行はできません。子どもの将来のためにも、養育費についての合意内容は債務名義となる公正証書として残すことが大切です。管轄の公証役場へ夫婦で訪れ公証人に作成してもらいましょう。

養育費が支払われないときの対処法

相手の都合で養育費の支払いが滞っても、泣き寝入りしてはいけません。養育費は子どもの権利でもあるので、毅然とした態度で支払いを要求しましょう。具体的には、債務名義があるかどうかで対処法は変わってきます。

債務名義がない場合

口約束だけして協議離婚をしたり、離婚協議書を作成したものの公正証書にしていないなど債務名義がない場合は、相手が催促に応じなければ調停を申し立てます。

手順1:内容証明郵便で催促をする

まずは内容証明郵便を相手に送り、期日までに振込がない場合は然るべき手段に出ることを明記しておきます。法的な強制力はないものの、相手に精神的なプレッシャーを与える効果があるため、この時点で解決するケースもあります。

手順2:養育費請求の調停を申し立てる

相手が催促に応じない場合は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てます。調停で解決されなければ審判、裁判へと進みます。その結果、調停調書や審判書、判決書のいずれかが作成され、それらが債務名義になります。

債務名義がある場合

裁判所の助けを借りる離婚で養育費について取り決めがあれば、家庭裁判所の「履行勧告」「履行命令」制度を利用できます。債務名義があるので、最後の手段として強制執行を申し立てることもできます。

手順1:内容証明郵便で催促をする

まずは内容証明郵便を送って、相手の出方をうかがいましょう。

手順2:裁判所による「履行勧告」

相手が催促に応じなければ、「履行勧告」を裁判所に申し立てます。裁判所は支払い状況を調査し、相手に支払うよう勧告してくれます。法的な強制力はありませんが、相手にプレッシャーをかける効果があり、申し出は無料でできます。

手順3:裁判所による「履行命令」

勧告を受けても支払わない相手には、「履行命令」を裁判所に申し立てます。裁判所が期限を決めて相手に支払いを命じ、それでも支払わない場合は10万円以下の過料が課せられます。

手順4:「強制執行」の手続きをとる

強制執行受諾文言付きの公正証書や、調停調書など裁判所が作成した債務名義があるなら、
不払いを決め込む相手には強制執行制度を利用しましょう。強制執行は、裁判所が相手方の財産(おもに給与)を差し押さえ、そこから支払いを受けられる制度です。養育費の場合、給与の2分の1までを差し押さえることができます。

養育費の不払いは子どもの貧困にも繋がる深刻な問題です。離婚後に子どもを引き取る親は、法の力を利用してできる限りの対策をしておきましょう。また、養育費が支払われなくなった、はじめからもらっていない場合は速やかに離婚問題に詳しい弁護士への相談をおすすめします。費用が心配な場合は、無料相談ができる「法テラス」や自治体の窓口を利用する方法もあります。

ワンポイントアドバイス
夫婦の論争の精神的な負担を避けるために、養育費についての取り決めが曖昧になったり、相手の都合で養育費の支払いが滞ることは少なくありません。しかし、大切な子どものためにも、しっかりと支払いを要求するべきです。詳しいことは離婚に強い弁護士に相談しましょう。
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