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労働審判の流れ~不当解雇などのトラブルを解決するための手続き

この記事で分かること

  • 労働審判を申し立てるためには証拠を収集して申立書を裁判所へ提出する
  • 労働審判の期日は3回までのため審理は迅速に進む
  • 労働審判に異議申し立てがされた場合は訴訟に移行する

不当解雇や給料の未払いなどのトラブルを解決するために行われる労働審判は、3回の期日で結審し、迅速に結果が出ることが特徴です。この記事では、労働審判申し立てまでの流れ、労働審判が開始してからの流れ、および労働審判が終了してからの流れを解説します。

労働審判申し立てまでの流れ

最初に、労働審判を申し立てるまでの流れを見ていきましょう。労働審判に申し立てを行う際には、労働トラブルの解決方法として労働審判が適切なのかを十分検討するとともに、事件の証拠を収集することが重要です。

直面した労働トラブルの解決方法を検討する

労働審判に申し立てができるのは、「労働者個人の会社に対する権利・利益に関わる争い」です。したがって、さまざまな労働トラブルのうちでも労働審判の申し立て対象となるものと、申し立て対象にならないものとがあります。

労働審判の申し立て対象となるトラブル

労働審判の申し立て対象となるのは、まず「賃金」に関するトラブルです。

  • 給料未払い
  • 残業代未払い
  • 退職金や賞与の未払い
  • 労働条件の不利益変更

などは、労働審判で争うことができます。

また、「雇用」に関するトラブルも、労働審判の申し立て対象です。したがって、

  • 不当解雇
  • 雇い止め
  • 退職強要・退職勧奨

などについては、労働審判で争うことができます。

労働審判の申し立て対象とならないトラブル

労働審判で取扱うことができるのは、「個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」であると労働審判法第1条に定められています。したがって、「個々の労働者」ではなく団体である労働組合は、労働審判に申し立てをすることができません。

また、労働審判を申し立てる相手方は「事業主」すなわち会社でなくてはなりませんので、たとえばセクハラやパワハラがあった場合に、上司などの加害者個人と労働審判で争うことはできません。ただし、「セクハラやパワハラがあることを知りながら会社が野放しにしていた」などの形で会社の責任を問うことは、労働審判でも可能です。

事件の証拠を収集する

労働トラブルの解決を労働審判への申し立てによって行うことを決めた場合は、次に事件の証拠を収集します。賃金に関するトラブルの場合なら、

  • 雇用契約書・就業規則など …会社における給与の決定方法についての証拠
  • タイムカード・勤怠表など …実際に自分が働いた時間についての証拠
  • 給与明細など …実際に自分に支払われた給与についての証拠

を集める必要があるでしょう。また、雇用に関するトラブルなら、

  • 雇用契約書・就業規則など …会社における雇用の決まりについての証拠
  • 人事評価表など …勤務態度の評価などについての証拠
  • 解雇通知書・解雇理由証明書など …解雇の事実と理由についての証拠

などが集められれば十分だと言えるでしょう。

裁判所へ証拠を提出するにあたっては、裁判所が指定する書式に従って作成した「証拠証明書」を証拠に添付することが大切です。証拠証明書の書式は裁判所のホームページでダウンロードすることができます。

申立書を作成して提出する

事件の証拠を収集したら、労働審判手続きの申立書を作成します。申立書の見本についても、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

申し立てを行う際には、証拠および証拠証明書は裁判所用と相手方用の2通、申立書は、裁判所用、相手方用各1通、労働審判員用2通の計4通を用意します。また、請求の金額に応じた収入印紙も必要です。

準備した証拠と申立書は原則として、申し立てをする相手方の会社の本店所在地を管轄する地方裁判所へ提出します。ただし、申立人の勤務地が本店と異なる場合には、勤務地を管轄する裁判所で審判を受けることもできます。

ワンポイントアドバイス
労働審判に申し立てを行う際には、直面しているトラブルが労働審判で争う対象となるかを十分検討したうえで、事件の証拠を収集し、裁判所の書式に従って申立書を作成しなくてはなりません。一般の人にとってこれらはハードルが高い場合もあるでしょう。法律の専門家である弁護士に手続きを任せれば、より短期間で確実に申し立てを行うことができます。

労働審判が開始してからの流れ

労働審判の申し立てを行うと、裁判所は申し立てが適法であるかを判断したうえで、労働審判を開始します。労働審判が開始してからの流れを見ていきましょう。

第1回期日の指定・呼出し

労働審判の申し立てが行われると、裁判所は申し立てが適法であるかを判断します。適法でないと判斷された場合には申し立てが却下されることもあります。申し立てが認められると、労働審判官1名と労働審判員2名が裁判所によって指定され、労働審判委員会が組織されます。

そのうえで、裁判所は第1回期日の指定を行い、会社側にも裁判所から呼出し通知が送られます。第1回期日は、申立日から40日以内の日に指定されます。

第1回期日の呼出しを受けた会社側は、答弁書と証拠書類を作成し、第1回期日の1週間程度前の指定された期日までに提出します。

第1回審判期日

第1回の労働審判期日では、提出された申立書と答弁書および証拠書類を元にして、争点と証拠の整理がまず行われます。当事者や関係者がその際に質問を受けることもあります。

また、労働審判委員会によって調停による解決が試みられることもあります。調停案が提示され、労働者側と会社側の双方が調停案を受け入れることになれば調停は成立し、労働審判はそれをもって終了します。労働審判の約3割は、第1回期日で調停が成立し終了しています。

第2回審判期日

第1回期日で調停が成立しない場合は、通常1ヵ月程度の後に第2回期日が行われ、検討すべき課題について話し合いが行われます。労働審判の約4割は、第2回期日で調停が成立し審判が終了していますので、第1回または第2回の期日までに終了する割合は労働審判全体の約7割に達します。

第2回期日で調停が成立しなかった場合には、第3回期日が約1ヵ月程度の後にふたたび行われることとなります。

第3回審判期日

労働審判の期日は「3回以内」と定められていますので、第3回期日をもって審判は終了します。労働者側と会社側の話し合いがまとまれば、調停の成立をもって審判は終了します。話し合いがまとまらない場合には、裁判所による「審判」が下されます。

労働者側と会社側の双方とも裁判所による審判に異議がなければ、審判は確定し、問題は解決したことになります。

ワンポイントアドバイス
労働審判における裁判所の審判には、強制力がありません。したがって労働審判では、いかに話し合いをまとめて調停を成立させるかが1つのポイントとなります。話し合いをまとめるためには法廷戦術も必要となるでしょう。話し合いは、法廷交渉のプロである弁護士と相談しながら慎重に進めましょう。

労働審判が終了してからの流れ

労働審判の終わり方には、

  • 調停が成立する
  • 裁判所の審判が確定する
  • 審判に異議申し立てが行われ訴訟に移行する

の3つがあります。それぞれの流れについて見ていきましょう。

調停成立の場合

労働審判での話し合いがつき調停が成立すると、調停調書として合意内容がまとめられます。調停調書の内容には強制力がありますので、調停調書に記載された金銭のやり取りがその通り行われなかった場合には、強制執行の手続きによって取立てを行うこともできます。

審判が確定した場合

裁判所によって下された審判は、審判が下された日から2週間以内に異議の申し立てがなければ確定します。確定した審判は裁判所の判決とおなじ効力を持ちますので、審判の内容通りに金銭のやり取りが行われなかった場合には、やはり強制執行の手続きを取ることができます。

異議申し立てがされた場合

裁判所が下した審判の内容に対し労働者側または会社側に不満がある場合には、2週間以内に異議の申し立てを行います。異議の申し立てがあると裁判所の審判は効力を失い、訴訟へ移行します。労働審判の申立書は「訴状」とみなされ、裁判が開始されます。

ワンポイントアドバイス
裁判所が下した審判に対し会社側が異議申し立てをした場合、全面的に戦う意志を会社側が示したものと受け取ることができるでしょう。訴訟となれば、弁護士の力なしには勝つことは困難です。訴訟手続きは、弁護士の判断を仰ぎながら着実に進めましょう。

労働審判の手続きの流れは弁護士に相談しよう

労働審判は、不当解雇や賃金不払いなどのトラブルを迅速に解決するための手続きです。ただし、時間のかかる訴訟へ移行せず、調停の成立や審判の受け入れで労働審判を終了させるためには、法廷戦術が要求されることにもなってきます。こういった場合は、労働問題に強い弁護士に依頼した方がよいでしょう。企業でのトラブルの解決をした経験が豊富な弁護士に、まずは相談から始めてみるとよいでしょう。

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