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不当解雇の慰謝料は請求できる?認められる場面と相場

不当解雇の慰謝料は請求できる?認められる場面と相場

この記事で分かること

  • 不当解雇で実務の中心になるのは働けなかった期間の賃金の請求である
  • 解雇が無効でもそれだけでは慰謝料まで認められにくい
  • 通常の解雇に伴う苦痛を超える特別な事情があれば認められる
  • 解雇の伝え方や退職強要の過程が悪質なら別途の賠償が問題になる
  • 慰謝料の額は一律の相場として示せるものではない
  • 話し合いでは内訳を分けず解決金としてまとめて折り合うことが多い
  • 合意書に一切の請求をしない旨がないか署名前に確かめたい

不当解雇の事案では、慰謝料が認められる場面は思っているほど広くありません。解雇が無効であれば働けなかった期間の賃金を請求できるため、そこで損害の多くが埋め合わされると考えられるからです。ただし、これは請求できるお金が少ないという意味ではありません。むしろ賃金の請求こそが実務の中心になります。慰謝料という言葉に引きずられて本筋を見失わないよう、まずは全体の構図をつかんでください。

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不当解雇でお金を取り戻したいと考えている方へ

理不尽な理由で辞めさせられた。生活は苦しくなり、次の仕事もすぐには決まらない。会社に何かしらの償いを求めたい。そう考えるのは当然のことです。

お金で気持ちが晴れるわけではない。それでも、何もないまま終わらせるのは納得できない。相談の場でも、そうした言葉をよく聞きます。

その気持ちは、法律上の請求としても形にできる場合があります。まずは何を求められるのかを知ることから始めましょう。

そのとき、多くの方が最初に思い浮かべるのが慰謝料という言葉でしょう。ひどい仕打ちを受けたのだから、その精神的な苦痛に対して支払わせたい。

眠れない夜を過ごし、家族にどう説明するかに頭を悩ませ、次の面接では退職の理由を問われる。その重さに見合うものを求めたいと考えるのは、自然な感情です。

そして、その感情は決して不当なものではありません。問題は、それをどういう形の請求に落とし込むかです。

形が決まれば、根拠も揃えやすくなります。感情のままに訴えるより、はるかに通りやすくなります。この記事は、その形を選ぶための地図として読んでください。

ここで、少し立ち止まってお伝えしておきたいことがあります。不当解雇の事案で、慰謝料が認められる場面は思っているほど広くありません。

意外に感じるかもしれません。しかし、これは請求できるお金が少ないという意味ではありません。むしろ逆です。むしろ、慰謝料だけに目を向けていると、本来受け取れるはずのものを取りこぼしてしまいます。実際、慰謝料は難しいと言われて全体を諦めてしまった、という方に何度も出会ってきました。

その方たちの多くは、賃金の請求という道があることを知らないままでした。もったいない話です。

解雇が無効であれば、あなたはまだその会社の従業員だということになります。従業員である以上、働けなかった期間の賃金を請求できる立場になります。

つまり、辞めさせられていた期間についても、本来もらえるはずだった給与が発生していたという整理になります。

この請求は、慰謝料と違って計算で示せます。見通しが立てやすいという点で、実務では扱いやすい部分でもあります。

相手にとっても、争えば争うほど積み上がっていく性質のものです。交渉のうえでも効いてきます。

この賃金の請求こそが、実務では中心になります。慰謝料は、それに上乗せされる例外的なものと考えたほうが実態に近いのです。

ここを取り違えると、主張の組み立てが最初からずれてしまいます。まずは全体の構図をつかんでおきましょう。慰謝料という言葉に引きずられて、本筋を見失わないことが大切です。

とはいえ、慰謝料が認められる場面がないわけではありません。解雇の進め方があまりに悪質であれば、別途の賠償が命じられることもあります。

ですから、諦める必要はありません。ご自身の事案がどちらに当たるのかを、この記事で確かめてみてください。

当たらないとしても、賃金の請求という道は残っています。どちらにせよ、動く価値はあるということです。

この記事では、慰謝料とそれ以外に請求できるお金、慰謝料が認められにくい理由、それでも認められる場面、金額がどう決まるか、解決金という着地、そして請求の進め方をお話しします。

用語はなるべくかみ砕いて書きました。条文の番号を覚える必要はありません。どのお金をどういう理屈で求めるのか、その筋道がつかめれば足ります。

金額の見通しを持てると、争うかどうかの判断もしやすくなります。まずは全体像をつかんでください。

数字の見当がつかないまま動き出すと、途中で迷いが生じます。逆に、おおよその規模が見えていれば、腰を据えて進められます。費用をかけて争う価値があるのかどうかも、そこから判断できます。

慰謝料と、それ以外に請求できるお金

まず、不当解雇で請求しうるお金を整理しておきます。いくつかの種類があります。ひとつずつ見ていくと、思っていたより幅があることに気づくはずです。五つに整理してお話しします。どれも重ねて請求できるものです。ひとつを選ばなければならない、という性質のものではありません。

ひとつめが、解雇されてから解決までの期間に対応する賃金です。実務ではこれが最も大きな部分を占めます。

額の見当をつけるのも簡単です。それまで受け取っていた月々の賃金に、解決までの月数を掛ければよいからです。解決までに半年かかるのか、一年かかるのか。それによって額は大きく変わります。

ただし、その間に別の勤務先から収入を得ていた場合には、一定の範囲で差し引かれることがあります。

解雇が無効であれば、労働契約はそのまま続いていたことになります。働けなかったのは会社が就労を拒んだからですから、その期間の賃金を請求できるという理屈です。

この請求には、就労を望んでいたという事実の裏づけが要ります。無言のまま日が流れると、本気で争っていないと受け取られかねません。

通知を受け取ったら、その効力を認めないという意思を文書で示しておいてください。それだけでも立場は変わります。

争いが長引けば、その分だけ積み上がっていきます。長引くほど会社の負担が重くなるという構図になっています。

二つめが、解雇予告に関する手当です。予告も手当もないまま即日で辞めさせられたのであれば、この部分を請求できます。これは解雇の効力を争わない場合でも請求できます。当面の生活の足しになる部分でもあります。

会社が予告を省けるのは、行政官庁の認定を受けた場合に限られます。この手続きを経ている会社は多くありません。

三つめが、未払いになっている賃金です。残業代が支払われていなかった、最後の月の給与が支払われていない。こうした部分は、解雇の当否とは別に請求できます。

解雇の話に気を取られて、この部分を見落とす方が少なくありません。過去の給与明細と勤務の記録を並べてみてください。

残業代の未払いがあれば、数年分がまとまった額になることもあります。解雇の争いとは別に、確かめる価値があります。四つめが、退職金です。規程で定められているのであれば、支給されるべきものです。

会社の都合による退職の場合に上乗せが定められている職場もありますので、規程を読み返しておいてください。

自己都合として処理されると、この上乗せが受けられません。離職の理由が金額に響く場面のひとつです。そして五つめが、慰謝料です。精神的な苦痛に対する賠償という位置づけになります。順番として最後に挙げたのには理由があります。実務での比重が、そのとおりだからです。

もっとも、事案によっては慰謝料が主戦場になることもあります。次の章で線引きを見ていきます。

補足
これらは重ねて請求できるものです。慰謝料が認められない事案であっても、賃金の請求はできます。慰謝料が難しいと聞いて全体を諦めてしまう方がいますが、それは大きな誤解です。

どこを主張の柱にするかは、事案によって変わります。解雇の進め方に問題があるのか、それとも理由そのものに無理があるのか。ここを見極めることが大切です。両方に問題がある事案も珍しくありません。その場合は、まとめて主張していくことになります。

どこから手をつけるか迷ったら、まず金額として大きい部分から見当をつけてください。多くの事案では、それが働けなかった期間の賃金にあたります。慰謝料はそのうえに乗せるもの、という位置づけで考えてみてください。

不当解雇で請求できる主なお金を、表で整理しておきます。

お金 中身
解雇期間中の賃金(バックペイ) 解雇が無効なら、解雇の日から働けなかった期間の賃金
慰謝料 解雇のやり方がひどく、精神的な苦痛が大きい場合に認められる
解決金 話し合いで退職を前提に決める金銭。賃金や慰謝料の性格をあわせ持つ
解雇予告手当 予告なしに解雇され、30日分の支払いもなかった場合
未払いの残業代 在職中の分があれば、あわせて請求できる

慰謝料が認められにくいのはなぜか

次に、なぜ慰謝料が認められにくいのかをお話しします。理屈が分かると、主張の組み立て方も見えてきます。納得しにくい話かもしれませんが、押さえておくと交渉の場面で役に立ちます。

相手の言い分の意味が分かるようになるからです。会社の側から慰謝料は認められないはずだと言われたときにも、慌てずに済みます。

理由は単純です。解雇が無効とされ、その期間の賃金が支払われるのであれば、そこで損害の多くは埋め合わされたと考えられるからです。

失われたものを金銭で埋め合わせる、というのが賠償の基本的な考え方です。すでに埋め合わされているのなら、重ねて支払わせる理由が乏しくなります。

この考え方自体は、他の分野の賠償でも共通しています。特別に厳しく扱われているわけではありません。

職を失って収入が途絶えた。その苦しみの中心にあるのは、経済的な打撃でしょう。それが賃金の支払いによって回復されるのであれば、別に慰謝料を認める必要は乏しい、という発想です。

もちろん、実際に失われたものは収入だけではありません。職場での立場も、これまで積み上げてきた信頼も失われます。それでも、法律上の整理としてはこうなっています。

ですから、慰謝料が認められにくいという結論は、あなたの受けた痛みが軽いという意味ではありません。制度の建て付けの問題です。

そのため、解雇が無効になったという事実だけを理由に慰謝料まで求めるのは、実務では通りにくくなります。

ここで大切になるのが、解雇そのものとは別に、精神的な苦痛を生じさせる事情があったかという視点です。言い換えれば、通常の解雇に伴う苦痛の範囲を超えるだけの、特別な事情が必要になります。

解雇されればつらいのは誰でも同じです。だからこそ、その範囲を超えるものが求められるということです。次の章で、その特別な事情にあたる場面を具体的に見ていきます。

この点を理解しないまま慰謝料だけを求めると、主張が空回りしてしまいます。まずは賃金の請求を軸に据え、そのうえで悪質な事情があれば慰謝料を上乗せする。この順序が自然です。

順序を守れば、主張全体に無理がなくなります。逆に、慰謝料だけを前面に出すと、肝心の賃金の請求まで軽く扱われかねません。相手にとっても、筋の通った主張のほうが応じやすいものです。

もっとも、交渉の場面では話が変わります。金額の内訳を細かく分けずに、まとめて解決金として折り合うことが多いからです。この点については、後の章であらためてお話しします。

それでも慰謝料が認められる場面

では、どういう場合に認められるのでしょうか。争われてきた場面を整理します。五つの型に分けてお話しします。心当たりがないか、確かめながら読んでみてください。

いくつも重なっているのなら、束ねて主張していくことになります。ひとつめが、解雇の進め方が著しく不当だった場合です。

解雇そのものの当否とは別に、伝え方や扱い方が問われる場面です。解雇が有効だったとしても、進め方が違法であれば賠償の対象になり得ます。

大勢の前で辱めるような形で告げられた、身に覚えのない不正を働いたと社内に広められた、私物を一方的に処分された。こうした事情があれば、解雇とは別の加害行為として評価される余地があります。

解雇を伝えること自体は避けられません。しかし、伝え方には選択肢があります。あえて人目のある場を選んだのであれば、そこに意図を読み取ることができます。

同僚が見ていたのであれば、その人の記憶も裏づけになります。連絡が取れるなら、事情を聞かせてもらえないか相談してみてください。二つめが、退職を強要する過程に問題があった場合です。

解雇に至る前の段階で、すでに違法な行為が行われていたという構図です。面談の記録が残っていれば、この主張はぐっと通りやすくなります。

何度も長時間にわたって面談を繰り返された、辞めるまで帰さないという態度を取られた、仕事を取り上げて孤立させられた。こうした働きかけは、それ自体が違法と評価されることがあります。

面談の回数と時間、誰が同席していたか。これらを記録に残しておくことが、後の主張を支えます。

すでに終わってしまったことでも、覚えている範囲で書き出しておいてください。日付が曖昧でも、おおよその時期が分かれば意味があります。手帳や予定表と照らし合わせると、記憶が戻ってくることもあります。

三つめが、嫌がらせの延長として解雇が行われた場合です。長く続いてきた行為の終着点として解雇があった、という見方をします。

体調を崩して休みがちになり、それを理由に解雇された。そうした流れであれば、原因のほうに目を向ける必要があります。

日常的に暴言を受けていた、仕事上必要のない叱責が続いていた。その果てに解雇されたのであれば、一連の行為として賠償が問題になります。

この場合、解雇の場面だけを切り取るのではなく、それまでの経過を含めて主張していくことになります。日々の出来事を書き留めたメモが残っていれば、それが大きな力になります。

四つめが、権利を行使したことへの報復として行われた場合です。正当な権利を使ったことで不利益を受けたのであれば、それ自体が問題になります。権利を使えば不利益を受けるというのでは、制度そのものが意味を失ってしまうからです。

未払いの賃金を求めた、労働組合に加入した、行政の窓口に相談した。こうした行動の直後に解雇されたのであれば、報復であることを疑う余地があります。

会社が報復だと認めることはまずありません。ですから、時期の重なりを積み上げて示していくことになります。カレンダーに沿って出来事を並べてみてください。自分では偶然だと思っていた並びが、書き出してみると不自然に見えることがあります。

五つめが、法律が明確に禁じている理由による場合です。妊娠や出産、育児休業の取得、あるいは性別を理由とする解雇がこれにあたります。

国籍や信条を理由とする場合、労働組合に加入したことを理由とする場合も同じです。これらは、そもそも許されない理由として法律に書かれています。

こうした場合には、解雇そのものが無効であるだけでなく、別途の賠償が認められやすくなります。法律が明確に禁じている以上、それを破ったこと自体の重さが問われるからです。

会社が表向きに掲げる名目がどうであれ、判断されるのは中身のほうです。いつ何が起きたのかを並べて、隠れた動機を浮かび上がらせていきます。

金額はどう決まるのか

次に、金額の考え方についてお話しします。ここが、多くの方がいちばん知りたい部分でしょう。期待に沿えないところもありますが、正直にお伝えします。

まずお伝えしておきたいのは、一律の相場という形で示せるものではないということです。事案の中身によって、幅が大きく開くからです。

同じ不当解雇でも、進め方が悪質だった事案と、単に理由が足りなかった事案とでは、まったく別の話になります。ですから、他の人の事例をそのまま自分に当てはめても、参考になりません。

数字をひとつ挙げてしまうと、それが目安として一人歩きしてしまいます。実際の交渉では、かえって足かせになることもあります。

会社の側から、こういう場合はこのくらいだと聞いていますと言われて、低い金額で納得してしまう。そうした場面を防ぐためにも、数字を鵜呑みにしないでください。

提示された金額が妥当かどうかは、自分の事案の中身と照らし合わせて判断すべきものです。他人の事例がそのまま当てはまるとは限りません。

判断に迷ったら、提示を受けた段階で一度相談してみてください。応じるかどうかを決めるのは、その後で構いません。では、何によって決まるのでしょうか。判断の材料になる要素を挙げておきます。自分の事案に当てはまるものがいくつあるかを数えてみてください。

数が多いほど、主張は組み立てやすくなります。

  • 解雇の進め方がどれだけ悪質だったか。
  • その行為がどれくらいの期間、どれくらいの頻度で続いたか。
  • 周囲にどこまで知られる形で行われたか。
  • 体調を崩すなど、健康面への影響が生じたか。
  • 会社の側が事後にどう対応したか。謝罪や撤回があったか。
  • 勤続の年数や、それまでの評価。

とりわけ重く見られるのが、健康面への影響です。医療機関にかかっているのであれば、その記録は有力な材料になります。

眠れなくなった、食欲が落ちた、外に出られなくなった。こうした変化があるのであれば、受診をためらわないでください。

争いのために受診するのではなく、まずご自身の回復のためです。記録が残るのは、その結果にすぎません。無理をして体を壊してしまえば、次の仕事を探すことすら難しくなります。

診断を受けているのであれば、診断書を取得しておいてください。いつから、どういう症状で受診したのか。時期と内容が分かる形で残しておくことが肝心です。解雇の時期と、受診を始めた時期が近いほど、因果関係を示しやすくなります。初診のときに、何がきっかけだったかを医師に伝えておくと、記録として残ります。

一方で、賃金の請求のほうは計算で示せます。解雇されるまでの賃金の額と、解決までの期間が分かれば、おおよその見当がつきます。ですから、争うかどうかを判断するときは、まずこちらの額を出してみることをおすすめします。

こちらは見通しが立てやすいぶん、判断の軸に据えやすい部分でもあります。交渉に臨む前に、この額だけでも計算しておくことをおすすめします。

解決金という着地

実務の話をしておきます。ここは知っておく価値のある部分です。制度の説明だけでは見えてこない部分だからです。実際にどう決着しているのかを知っておくと、判断の助けになります。

不当解雇の争いは、判決まで進んで白黒がつくことばかりではありません。むしろ、話し合いで折り合って終わる事案が多くを占めます。

判決まで進めば結論は出ますが、そこに至るまでには相当の時間がかかります。その間の負担も小さくありません。早く区切りをつけて次に進むことの価値は、決して低くありません。

その際に用いられるのが、解決金という形です。会社が一定の金額を支払い、働く側は合意によって退職する。そういう決着です。職場に戻ることを望まない方にとっては、現実的な着地でもあります。

争いを続けながら次の職を探すのは、精神的にも負担が大きいものです。区切りをつけられることには、金額以外の価値もあります。

この金額には、賃金に相当する部分も、慰謝料に相当する部分も、まとめて含まれます。内訳を細かく分けないことがほとんどです。

会社としても、慰謝料という名目での支払いを避けたい事情があります。非を認めた形になることを嫌うからです。名目にこだわらず、手元に入る総額で判断するほうが実利にかないます。

ですから、慰謝料が認められにくいという話も、交渉の場面ではあまり意識されません。全体としていくらで折り合えるか、という議論になるからです。

とはいえ、こちらの側が根拠を持って金額を組み立てているかどうかは、交渉の結果に響きます。準備は無駄になりません。

会社の側にも、争いを長引かせたくない事情があります。時間も費用もかかりますし、他の従業員への影響もあるからです。

同じような立場の人が社内にいれば、なおさらです。ひとりに応じれば波及すると考えて、逆に強く争ってくる会社もありますが、どちらに転ぶかは相手の姿勢を見ながら判断していくことになります。

この形で決着する場合、離職の理由をどう記載するかも交渉の対象になります。金額だけでなく、その点も忘れずに詰めてください。

会社の都合による離職として扱われるかどうかで、失業給付を受け取れる時期が変わってきます。生活に直結する部分です。合意書に、離職票へどう記載するかまで書き込んでおくと安心です。

合意書を交わす際には、記載の内容をよく確かめてください。ほかに請求できるものが残っていないか、あるとすればそれも含めた合意になっていないか。

未払いの残業代が別にあるのに、それも含めて一切の請求をしないという文言に署名してしまう。そうした失敗は実際に起きています。署名の前に、必ず内容を確かめてください。

分からない部分があれば、持ち帰って確かめたいと伝えて構いません。その場で署名を迫られる筋合いはありません。

請求するための準備と進め方

ここからは実際の手順です。順を追ってお話しします。

最初にすべきは、解雇の理由を書面で示すよう求めることです。会社に対して、解雇の理由を記載した証明書の交付を求めることができます。

法律が働く側に与えている請求ですから、気兼ねは無用です。伝える手段は口頭ではなく、文書か電子メールにしてください。争ううえで大きな意味を持ちますので、必ず求めてください。

次に、賃金の額が分かる資料をそろえます。給与明細を数か月分並べれば、請求の基礎になる額が出せます。できれば一年分あると理想です。手当の構成が途中で変わっている場合にも気づけます。

三つめに、経緯を時系列で書き出します。いつ、誰から、どういう場面で何を言われたのか。同席していた人がいれば、その名前も。

この作業は、記憶が新しいうちに済ませてください。数か月経つと、細部が驚くほど曖昧になります。

慰謝料を求めるのであれば、この記録が要になります。悪質さは、具体的な場面の積み重ねからしか示せないからです。

つらかった、という言葉だけでは伝わりません。いつ、どこで、誰が、何をしたのか。事実の形にすることが欠かせません。

四つめに、体調への影響があるなら医療機関にかかってください。記録が残ることに意味があります。受診をためらう方が多いのですが、回復のためにも早いほうがよいわけです。

五つめに、まだ働くつもりがあることを会社へ示します。効力を問い直すつもりなら、ここを飛ばすわけにはいきません。就労を求める意思を書面で伝えておけば、後の請求の裏づけになります。

注意
退職届への署名を促されても、その場では引き受けないでください。みずから去ったという形が残れば、解雇を問い直す入り口が閉じてしまいます。もう書いてしまったという方も、強く迫られた事情があるなら覆せる見込みは残っています。早めに事情を聞かせてください。

そのうえで、書面での請求から始めます。まずはここから動いてみてください。

応じてもらえなければ、裁判所の手続きを検討することになります。時間が経つほど受け入れたと見られやすくなりますので、早めに動いてください。

働く人と会社の争いについては、短い回数のやり取りで決着を目指す仕組みも設けられています。何年もかかると決まっているわけではありません。

慰謝料を求めるなら、次の順で材料をそろえてください。

  1. 解雇を告げられた場面の日時、場所、言われた言葉を書き出す。
  2. 人前での叱責や嫌がらせなど、解雇に至るまでの出来事を記録する。
  3. 心身の不調があれば、通院の記録や診断書を残す。
  4. 賃金と慰謝料をあわせて、どこまで求めるかを弁護士と組み立てる。

不当解雇の慰謝料に関するよくある質問

慰謝料の相場はいくらくらいですか

一律の相場という形でお示しできるものではありません。事案の中身によって幅が大きく開くからです。判断の材料になるのは、解雇の進め方がどれだけ悪質だったか、その行為がどれくらい続いたか、周囲にどこまで知られる形で行われたか、体調を崩すなど健康面への影響が生じたか、会社が事後にどう対応したかといった点です。そもそも、不当解雇の事案では慰謝料が認められる場面自体が限られており、実務の中心になるのは働けなかった期間の賃金の請求です。まずはそちらから見通しを立てることをおすすめします。

解雇が無効なら、慰謝料も当然にもらえますか

そうとは限りません。解雇が無効とされ、その期間の賃金が支払われるのであれば、損害の多くはそこで埋め合わされたと考えられるからです。ですから、単に解雇が無効だったというだけでは、慰謝料までは認められにくいのが実際のところです。認められるのは、通常の解雇に伴う苦痛の範囲を超える特別な事情があった場合です。大勢の前で辱めるような形で告げられた、身に覚えのない不正を社内に広められた、退職を強要する過程が悪質だった。こうした事情があれば、別途の賠償が問題になります。

賃金はいつからいつまで請求できますか

解雇された日から、解決に至るまでの期間が基本になります。解雇が無効であれば労働契約は続いていたことになり、働けなかったのは会社が就労を拒んだからだ、という理屈です。ですから、争いが長引けばその分だけ積み上がっていきます。会社が早期の解決を望む理由は、ここにもあります。もっとも、その間に別の勤務先から収入を得ていた場合には、一定の範囲で差し引かれることがあります。次の仕事に就くこと自体をためらう必要はありませんが、収入があった場合はその記録も残しておいてください。

会社が話し合いに応じません。どうすればよいですか

裁判所の手続きを検討する段階です。この分野には期日を絞って結論を目指す手続きもありますから、何年も身構える必要はありません。手続きに乗せた段階で、会社が話し合いに応じてくる展開も珍しくありません。進めるにあたっては、解雇の理由が書かれた書面、給与明細、経緯をまとめた記録が要になります。費用の心配で足が止まる方もいるでしょうが、収入によっては費用の立替えを受けられる公的な仕組みもあります。まずは見通しを聞くところから始めてください。

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