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マンションのトラブルは、なぜこじれやすいのか
上の階から毎晩響く足音で眠れない。天井から水が漏れてきたが、上の階の住人は自分のせいではないと言う。ベランダでの喫煙の煙が部屋に入ってくる。管理組合の理事会が一部の住人の意見だけで物事を決めている。マンションでは、一つの建物に多くの人が暮らしているだけに、こうしたトラブルが起きやすくなります。
マンションのトラブルがこじれやすいのは、相手がすぐ近くに住み続ける隣人であること、そして建物の一部が全員の共有になっていることが関係しています。自分の部屋の中の問題なのか、共用部分の問題なのかによって、誰が責任を負い、誰が解決に動くべきかが変わります。
マンションの権利関係やルールは、区分所有法と、それぞれのマンションの管理規約で定められています。トラブルの解決の第一歩は、問題が専有部分と共用部分のどちらで起きているかを見きわめ、管理規約で何が決められているかを確かめることです。
この記事では、マンションのトラブルの相談を受ける弁護士の立場から、マンションの権利関係の基本、よくあるトラブルとその対処法、規約に違反する住人への対応、管理組合の運営をめぐるトラブル、相談先までを説明していきます。
マンションのトラブルは、解決までに時間がかかり、その間も相手と同じ建物で暮らし続けなければならないことが、精神的な負担を大きくします。だからこそ、感情に任せずに、ルールに沿って一つずつ解決していくことが大切です。
マンションの権利関係の基本
マンションのトラブルを考えるうえで欠かせないのが、権利関係の基本です。マンションの建物と敷地は、区分所有法によって、次のように分けられています。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 専有部分 | 区分所有者が単独で所有する部分 | 各住戸の室内(壁の内側、床、天井の内装など) |
| 共用部分 | 区分所有者全員で共有する部分 | 廊下、階段、エレベーター、外壁、屋上、構造の躯体、共用の配管 |
| 専用使用部分 | 共用部分のうち、特定の区分所有者が使える部分 | ベランダ、専用庭、駐車場の区画 |
| 敷地 | マンションが建っている土地。区分所有者の共有が一般的 | 建物の敷地、駐車場、植栽 |
専有部分と共用部分の境目
専有部分と共用部分の境目は、管理規約で定められています。多くのマンションでは、壁や床、天井の構造の部分(躯体)は共用部分、その内側の仕上げの部分は専有部分とされています。配管は、各住戸だけが使う枝管は専有部分、複数の住戸が使う本管(縦管)は共用部分とされるのが一般的です。水漏れなどのトラブルで責任を判断する際に、この区分が重要になります。
ベランダは共用部分
意外に知られていないのが、ベランダやバルコニーは、多くのマンションで共用部分とされていることです。各住戸の区分所有者は、専用使用権に基づいて使うことができますが、自分の部屋と同じように自由に使えるわけではありません。ベランダに物置を置いたり、囲いを作ったりすることは、管理規約で禁止されていることが多く、避難の際の通路としての役割もあるため、注意が必要です。
共用部分の使い方
廊下やエレベーター、エントランスなどの共用部分は、区分所有者全員のものです。廊下に私物を置く、自転車を共用部分にとめる、エントランスで長時間話し込むといった使い方は、ほかの住人の迷惑になり、規約で禁止されていることも多くあります。共用部分の使い方をめぐるトラブルは、使用細則を整備し、住人全体に周知することで防ぎやすくなります。
専用使用部分の使い方
専用庭や駐車場の区画などの専用使用部分は、特定の区分所有者が使えますが、あくまで共用部分なので、管理規約や使用細則のルールに従って使う必要があります。専用庭に建物を建てる、駐車場の区画を他人に貸すといった使い方は、規約で制限されていることが多く、使用料の支払いが定められていることもあります。
管理組合と管理規約
マンションの区分所有者は、全員で管理組合を構成し、協力して建物や敷地の管理を行います。管理のルールは、管理規約と使用細則で定められ、区分所有者だけでなく、部屋を借りて住んでいる人にも適用されます。重要なことは、総会で区分所有者が話し合って決めます。
よくあるトラブルと対処法
マンションでよく起きるトラブルと、その対処の方向は次のとおりです。多くのトラブルは、管理組合や管理会社を通じた対応から始めます。
| トラブル | 主な対処 |
|---|---|
| 上下階や隣戸の騒音 | 管理組合や管理会社を通じた注意、当事者の話し合い、調停 |
| 上の階からの水漏れ | 原因の調査、原因の場所に応じた責任の追及、保険の利用 |
| ベランダでの喫煙 | 管理規約や使用細則の確認、理事会への相談 |
| ペットの飼育 | 管理規約での可否の確認、飼育のルールの徹底 |
| 駐車場や駐輪場の使い方 | 使用細則の確認、理事会による注意 |
| 民泊や事務所としての利用 | 管理規約での用途の制限の確認、理事会による差止め |
| 管理費の滞納 | 管理組合による督促、法的な手続き |
騒音のトラブル
騒音のトラブルは、マンションで最も多いトラブルの一つです。上下階だけでなく、隣の住戸の話し声やテレビの音が問題になることもあります。生活音はある程度避けられないため、どの程度の音なら我慢すべきかが問題になります。裁判では、音の大きさ、時間帯、継続の期間、建物の構造などを考えて、社会生活を送るうえで我慢すべき限度(受忍限度)を超えているかどうかで判断されます。
- 騒音の日時、時間帯、音の種類を記録し、可能であれば音の大きさを測定する。
- 管理会社や理事会に相談し、掲示や文書で住人全体に注意を促してもらう。
- 改善しなければ、管理組合を通じて、特定の住人に注意してもらう。
- それでも改善しなければ、当事者どうしの話し合いや、民事調停を検討する。
- 受忍限度を超える騒音であれば、差止めや損害賠償を求める訴訟を検討する。
ベランダでの喫煙
ベランダでの喫煙の煙や臭いが、ほかの住戸に流れ込むトラブルも増えています。ベランダは専用使用権のある共用部分なので、管理規約や使用細則で、ベランダでの喫煙を禁止したり、制限したりすることができます。規約に定めがない場合でも、ほかの住人の生活に著しい迷惑をかける喫煙について、損害の賠償が認められた裁判例もあります。まずは理事会に相談し、使用細則の整備を求めてみましょう。
駐車場や駐輪場のトラブル
駐車場の区画の割り当てや、来客の車の無断駐車、駐輪場にとめられたままの放置自転車なども、マンションでよくあるトラブルです。使用細則で、区画の割り当ての方法や、放置自転車の処分の手続きを定めておくと、対応しやすくなります。
ペットや民泊をめぐるトラブル
ペットの飼育は、管理規約で認められているかどうかがまず問題になります。飼育が認められていても、鳴き声や臭い、共用部分での扱いなどをめぐってトラブルになることがあります。民泊については、住宅宿泊事業法に基づく届出の際に、管理規約で民泊が禁止されていないことの確認が求められます。管理規約で民泊を禁止しておけば、無断の民泊を差し止めやすくなります。
子どもの足音
騒音の苦情で特に多いのが、子どもの足音です。子どもが走り回る音は、ある程度は避けられない生活音ですが、時間帯や頻度によっては、下の階の住人にとって大きな負担になります。防音のマットを敷く、夜は走らないように言い聞かせる、下の階の住人に一言あいさつしておくなど、日ごろの配慮で、トラブルを防げることも多いものです。
騒音の加害者と言われたら
反対に、自分が騒音の加害者だと苦情を受けることもあります。自分では普通に生活しているつもりでも、床の構造によって、足音や物を落とす音が下の階に響くことがあります。苦情を受けたら、まずは相手の話を聞き、防音のマットを敷く、夜間の生活音に気をつけるなど、できる対策をとりましょう。誠実に対応することで、関係の悪化を防げます。
騒音の測定
騒音の被害を相手や管理組合に訴えるには、客観的な記録があると説得力が増します。騒音計を使って音の大きさを測定する、スマートフォンのアプリで記録する、日時と音の種類を日誌に書き留めるといった方法があります。専門の業者に測定を依頼することもできます。訴訟では、測定の方法や条件も問われるので、継続的に記録しておくことが大切です。
水漏れのトラブル
上の階から水が漏れてきた場合は、慌てずに、まず原因を調べることが大切です。原因がどこにあるかによって、責任を負う人が変わります。
| 原因の場所 | 責任を負う人 |
|---|---|
| 上の階の専有部分(洗濯機のホースの外れ、専有部分の配管など) | 上の階の区分所有者(または居住者) |
| 共用部分(共用の配管、外壁、屋上の防水など) | 管理組合 |
| 原因がはっきりしない建物の設置や保存の不備 | 区分所有法では、共用部分にあるものと推定される |
水漏れの被害は、火災保険や、個人賠償責任保険、管理組合が加入している保険で補償されることがあります。被害を受けたら、写真を撮り、管理会社に連絡して、原因の調査を依頼しましょう。
規約に違反する住人への対応
ルールを守らない住人への対応は、管理組合にとって悩ましい問題です。管理規約や使用細則に違反する住人がいる場合、管理組合は、段階を踏んで対応します。
規約に違反する住人への対応は、感情的な対立を避けるためにも、理事会の決定に基づいて、管理組合の名前で行うのが原則です。個々の住人が単独で対応すると、トラブルが個人どうしの争いになり、かえって解決が難しくなります。
違反への対応の記録
規約違反への対応では、いつ、誰に、どんな注意や勧告をしたかを記録に残しておくことが大切です。最終的に法的な措置をとる場合、管理組合が段階を踏んで改善を求めてきたことを示す必要があるからです。理事会の議事録に対応の経緯を記録し、勧告の文書の控えを保管しておきましょう。
注意や勧告
まずは、理事会や管理会社から、違反している住人に注意します。いきなり法的な措置をとることはありません。口頭の注意で改善しなければ、文書で勧告し、違反をやめるよう求めます。多くのトラブルは、この段階で解決します。
管理会社の役割
管理会社は、あくまで管理組合から委託を受けて、建物の清掃や設備の点検、管理費の徴収、住人からの問い合わせへの対応などを行います。住人どうしのトラブルの窓口になることもありますが、管理会社には、住人に強制的に何かをさせる権限はありません。規約違反への法的な措置は、管理組合が主体となって行うものです。
規約違反をしているのが、部屋を借りている人である場合は、部屋を貸している区分所有者にも連絡し、借主に規約を守らせるよう求めます。区分所有者には、借主に規約を守らせる義務があるからです。
弁明の機会と証拠
管理組合が法的な措置をとる場合、違反の事実を示す証拠が必要になります。違反の内容、発生した日時、ほかの住人への影響、管理組合がとってきた対応の経緯を、書面や写真で整理しておきましょう。違反している住人の言い分を聞くことも、公平な手続きのために欠かせません。
区分所有法による措置
建物の保存に有害な行為や、共同生活の利益に反する行為をする区分所有者や占有者に対しては、区分所有法に基づいて、次のような措置をとることができます。
| 措置 | 内容 | 必要な決議 |
|---|---|---|
| 行為の差止めの請求 | 違反行為をやめるよう求める。訴訟を起こすこともできる | 訴訟を起こすには集会の決議(普通決議) |
| 専有部分の使用の禁止の請求 | 一定の期間、専有部分の使用を禁止するよう裁判所に求める | 集会の特別決議(区分所有者と議決権の各4分の3以上) |
| 区分所有権の競売の請求 | 違反者の区分所有権を競売にかけ、マンションから排除する | 集会の特別決議(区分所有者と議決権の各4分の3以上) |
| 占有者に対する引渡しの請求 | 違反をしている賃借人などとの契約を解除し、部屋の引渡しを求める | 集会の特別決議(区分所有者と議決権の各4分の3以上) |
使用の禁止や競売の請求は、違反の程度が著しく、ほかの方法では共同生活の障害を除くことが難しい場合に限って認められる、最後の手段です。決議の前には、違反している人に弁明の機会を与えなければなりません。
管理組合の運営をめぐるトラブル
マンションのトラブルは、住人どうしの問題だけではありません。むしろ、長い目で見て重要なのは、管理組合の運営の問題です。管理組合の運営そのものをめぐって争いになることもあります。
| トラブル | 内容 |
|---|---|
| 理事のなり手不足 | 高齢化や、賃貸に出している区分所有者の増加で、理事を引き受ける人がいない |
| 理事会の運営 | 一部の理事が独断で物事を決める、会計が不透明 |
| 大規模修繕 | 修繕の内容や業者の選定、修繕積立金の値上げをめぐって意見が対立する |
| 管理会社との関係 | 管理会社の対応が悪い、管理委託費が高い |
| 建て替えや改修 | 老朽化したマンションの建て替えや大規模な改修をめぐって合意ができない |
役員のなり手不足への対応
理事のなり手不足に悩むマンションでは、役員の任期や人数を見直す、輪番制を導入する、マンション管理士などの外部の専門家を役員や管理者に選ぶといった工夫がされています。外部の専門家に管理を任せる場合は、専門家の権限の範囲や、区分所有者によるチェックの仕組みを、管理規約で定めておくことが大切です。
高経年マンションの課題
築年数の古いマンションが増える中で、建物の老朽化と、住人の高齢化という二つの課題が重なっています。修繕の費用が足りない、建て替えの合意ができない、相続で所有者が分からなくなった住戸が増えるといった問題です。こうした課題に早めに向き合うため、長期修繕計画の見直しや、住人どうしの話し合いの場を定期的に設けることが大切です。
総会の決議のルール
管理組合の重要な事項は、区分所有者が集まる総会の決議で決めます。一般的な事項は、区分所有者と議決権の各過半数の普通決議で決め、管理規約の変更や、共用部分の重大な変更などは、区分所有者と議決権の各4分の3以上の特別決議が必要です。建て替えには、原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上の賛成が必要です。
2026年4月からは、改正された区分所有法が施行され、集会に出席した区分所有者の多数決で決議できる場面が広がったほか、所在の分からない区分所有者を決議の母数から除く裁判所の手続きが設けられるなど、決議を進めやすくするための見直しが行われています。管理規約の内容も、改正に合わせて見直す必要が出てくることがあります。
大規模修繕をめぐる対立
大規模修繕では、工事の内容、業者の選び方、費用の負担をめぐって、区分所有者の意見が分かれがちです。修繕積立金が足りず、一時金の徴収や積立金の値上げが必要になると、反対の声も上がります。修繕の必要性を示す劣化の調査の結果や、複数の業者の見積もりを示し、説明会を開いて丁寧に合意を形成することが大切です。
管理会社の変更
管理会社の対応に不満がある場合は、管理委託契約の内容を確かめ、改善を求めます。それでも改善しなければ、総会の決議を経て、管理会社を変更することもできます。管理会社を変える際には、複数の会社から提案を受け、業務の内容と委託費を比べて選びましょう。引き継ぎの期間中の管理が滞らないよう、契約の解約の時期にも注意が必要です。
管理規約の変更は、特別決議で決めるものですが、変更によって一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす場合は、その区分所有者の承諾も必要です。たとえば、ペットの飼育を新たに禁止する場合に、すでに飼っている住人の扱いをどうするかは、慎重に検討する必要があります。
総会に出席する意味
総会は、区分所有者がマンションの運営に意見を言える大切な場です。規約の変更や、修繕の計画、管理費の値上げなど、自分の負担や生活に関わることが決められます。
理事会の運営への疑問
理事会の運営や会計の処理に疑問がある場合は、総会の議事録や、会計の帳簿の閲覧を求めることができます。管理組合の帳簿や議事録は、区分所有者であれば閲覧を請求できるのが一般的です。疑問が解消されなければ、総会で説明を求めたり、一定の数の区分所有者の同意を得て、臨時の総会の開催を求めたりすることができます。
リフォームや専有部分の工事をめぐるトラブル
意外に見落とされがちなのが、リフォームの問題です。自分の部屋のリフォームも、マンションではトラブルの原因になることがあります。
| トラブル | 注意したい点 |
|---|---|
| 工事の騒音や振動 | 工事の日程と時間帯を事前に周辺の住人に知らせる |
| 床材の変更による騒音 | 管理規約で、床材の遮音の性能の基準が定められていることがある |
| 共用部分への影響 | 窓サッシや玄関ドア、配管の本管などは共用部分で、勝手に交換できない |
| 届出の漏れ | 多くのマンションで、リフォームの前に管理組合への届出や承認が必要 |
床材の変更と騒音
カーペットや畳からフローリングに変えると、下の階に足音が響きやすくなります。管理規約で、フローリングにする場合の遮音の性能の基準を定めているマンションも多く、基準を満たさない工事をすると、規約違反として元に戻すよう求められることがあります。フローリングへの変更をめぐって、下の階の住人から損害の賠償を求められた裁判例もあります。
共用部分の工事
窓サッシや玄関ドア、ベランダの手すりなどは、多くのマンションで共用部分とされ、区分所有者が勝手に交換することはできません。断熱の性能を高めるために窓を交換したい場合などは、管理組合に相談し、承認を得る必要があります。管理組合によっては、一定の基準を満たす窓の交換を、区分所有者の負担で認める仕組みを設けていることもあります。
工事の前にすること
リフォームをする前には、管理規約と使用細則を確かめ、管理組合に工事の届出をして承認を得ます。工事を請け負う業者にも、マンションのルールを伝え、工事の時間帯や、共用部分の養生、資材の搬入の方法を守ってもらいましょう。上下左右の住人には、工事の日程を事前に伝えておくと、トラブルを防げます。
マンションのトラブルの相談先
マンションのトラブルは、内容に応じて、次のような相談先を利用します。一人で抱え込まず、適切な相談先を選びましょう。
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 管理会社・理事会 | 住人どうしのトラブル、規約の違反、共用部分の不具合 |
| マンション管理士 | 管理組合の運営、規約の見直し、管理会社との関係 |
| 自治体のマンションの相談窓口 | 管理組合の運営や、管理の適正化についての相談 |
| 公益財団法人マンション管理センター | 管理組合の運営や、管理の実務についての相談 |
| 弁護士 | 損害賠償の請求、規約違反者への法的な措置、管理費の滞納の回収 |
マンション管理士の役割
マンション管理士は、管理組合の運営や、管理規約の見直し、大規模修繕の計画などについて、専門的な助言を行う国家資格です。管理組合と管理会社の間に立って、中立の立場で助言を受けられるのが利点です。法的な紛争の解決は弁護士の役割ですが、日常の運営の相談は、マンション管理士に頼むと心強いでしょう。
弁護士に相談する場面
住人どうしのトラブルが話し合いで解決しない場合や、管理組合が規約違反者に法的な措置をとる場合、管理費の滞納を回収する場合は、弁護士に相談しましょう。管理組合として顧問弁護士を持っておくと、トラブルが起きたときに素早く対応でき、規約の見直しの際にも助言を受けられます。
マンションを買う前・住み始める前に確かめたいこと
マンションのトラブルの中には、買う前や住み始める前に確かめておけば、避けられるものも少なくありません。
- 管理規約と使用細則(ペット、楽器、リフォーム、民泊、事務所としての使用の制限)
- 管理費と修繕積立金の額、滞納の状況、修繕積立金の積立額
- 長期修繕計画と、過去の大規模修繕の実施の記録
- 総会や理事会の議事録(どんなトラブルが議論されているか)
- 管理会社の名前と、管理の状況(共用部分の清掃、掲示板の様子)
住み始めてからは、管理組合の総会に出席し、議事に関心を持つことが大切です。総会に出席しないと、自分の知らないところで規約や修繕の計画が決まってしまうこともあります。出席できない場合は、委任状や議決権行使書を出して、意思を示しておきましょう。
議事録から分かること
総会や理事会の議事録には、そのマンションでどんな問題が起きているかが記録されています。騒音やペットの苦情、管理費の滞納、大規模修繕をめぐる対立などが議論されていれば、住み始めてから同じ問題に直面する可能性があります。購入を検討しているマンションの議事録は、不動産会社を通じて見せてもらえることが多いので、確かめておきましょう。
具体例で考える|上の階からの水漏れをめぐるケース
水漏れのトラブルの例を見てみましょう。あるマンションの5階に住む方の部屋で、ある朝、天井から水が漏れ、壁のクロスと床、家具の一部が水浸しになりました。管理会社に連絡し、上の6階の住人に確認してもらったところ、6階の住人は、水を使っていなかったと言い、責任を認めませんでした。
管理会社が業者に調査を依頼したところ、原因は、6階の浴室の床下を通る排水管の継ぎ目の劣化でした。この排水管は、6階の住戸の専有部分の中にあり、6階の住人の部屋だけが使うものでした。管理規約では、専有部分に属する配管とされていました。
5階の住人から相談を受けた弁護士は、調査の報告書をもとに、6階の区分所有者に、クロスと床の張り替えの費用、家具の損害、修理の間のホテルの宿泊費の賠償を求めました。6階の区分所有者は、自分が加入していた火災保険の個人賠償責任の特約で対応できることが分かり、保険会社を通じて損害が支払われました。
原因がはっきりしないまま当事者どうしで言い争いを続けていれば、解決はさらに遅れていたでしょう。管理会社を通じて原因を調べ、報告書をもとに責任を整理したことが、早い解決につながった例です。
水漏れの被害に備えて、自分の部屋の火災保険に、個人賠償責任の特約がついているかを確かめておきましょう。自分が加害者になった場合にも、被害者になった場合にも、保険が大きな助けになります。
水漏れの被害を受けたときの流れ
- 被害の状況を写真や動画で記録する。
- 管理会社に連絡し、上の階の住人への確認と原因の調査を依頼する。
- 自分の火災保険の保険会社にも連絡する。
- 原因が分かったら、責任を負う人と、損害の補償について話し合う。
- 話し合いがまとまらなければ、弁護士に相談する。
また、この例のように、原因の場所が専有部分か共用部分かで、責任を負う人が変わります。原因の調査は、管理会社を通じて、中立の業者に依頼するのが望ましいでしょう。
マンションのトラブルに関するよくある質問
騒音の苦情を、直接相手に言ってもよいですか
直接伝えることは法律で禁じられていませんが、感情的な言い争いになりやすく、関係が悪化するおそれがあります。まずは管理会社や理事会に相談し、住人全体への注意の呼びかけなどから始めるのが無難です。相手が誰か分からない場合も、管理会社を通じて対応してもらいましょう。
部屋を借りて住んでいる人にも、管理規約は適用されますか
もちろん適用されます。区分所有者から部屋を借りている人も、建物や敷地の使い方について、区分所有者と同じ義務を負います。賃借人が規約に違反した場合は、管理組合は、賃借人と、部屋を貸している区分所有者の両方に対応を求めることができます。
管理規約でペットが禁止されているのに飼っている住人がいます
まずは管理組合として、飼育をやめるよう注意し、改善しなければ勧告します。それでも飼育を続ける場合は、総会の決議を経て、飼育の差止めを求める訴訟を起こすこともできます。規約を変更してペットの飼育を認める場合は、特別決議が必要です。
理事の役員を引き受けたくありません
管理規約で、区分所有者が輪番で役員を務めると定めているマンションは少なくなく、正当な理由なく拒むことは難しい場合があります。高齢や病気などの事情がある場合は、理事会に相談し、免除や交代を検討してもらいましょう。役員の負担を軽くするため、外部の専門家を役員に選ぶ方式を取り入れるマンションも増えています。
