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不動産の相続は、元気なうちの準備で大きく変わる
自宅のほかに、アパートや貸地、田舎の土地を持っている。子どもは3人いるが、不動産をどう分けるかはまだ何も決めていない。自分が亡くなった後、子どもたちがもめないか心配だ。相続税がどれくらいかかるのかも分からない。不動産を持つ方の多くが、こうした不安を抱えています。
不動産は、預金のように金額で簡単に分けることができません。そのため、相続人の間で分け方をめぐって争いになりやすく、話し合いがまとまらないまま共有にしてしまうと、次の世代にまで問題が持ち越されます。また、不動産は評価額が大きく、相続税の負担が重くなることもあります。
こうした問題の多くは、不動産を持つ本人が元気なうちに準備をしておくことで、防いだり、軽くしたりすることができます。遺言を書く、生前に贈与する、税金の特例を使えるようにしておく、不動産を整理しておく。相続対策は、亡くなった後ではなく、生きている間にしかできないことです。
この記事では、不動産の相続の相談を受ける弁護士の立場から、不動産の相続で起きやすい問題、遺言による対策、生前贈与、相続税の特例、認知症への備え、不動産の整理までを、具体例を交えて説明していきます。相続した後の売却の手続きについては、別の記事で解説しています。
相続対策というと、相続税を少なくすることを思い浮かべる方が多いかもしれません。けれども、本当に大切なのは、家族が争わずに財産を受け継げるようにすることです。税金の対策は、そのうえで考えるべきものです。
不動産の相続で起きやすい問題
不動産の相続では、次のような問題が起きやすくなります。いずれも、生前の準備で防げる可能性があるものです。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 分け方をめぐる争い | 不動産は分けにくく、誰が取得するか、どう評価するかで意見が分かれる |
| 共有による問題 | とりあえず共有にすると、売るにも貸すにも全員の同意が必要になり、世代が進むと権利者が増える |
| 相続税の負担 | 不動産の評価額が大きく、相続税を払う現金が足りない |
| 名義や境界の不備 | 先代の名義のまま、境界が不明など、不動産の状態が整っていない |
| 使い道のない不動産 | 遠方の土地や空き家など、相続人が誰も引き継ぎたがらない |
| 認知症による手続きの停止 | 所有者が認知症になると、売却や建て替えなどの判断ができなくなる |
「うちは財産が少ないから大丈夫」は危ない
相続の争いは、決して財産の多い家庭だけに起きるものではありません。家庭裁判所の遺産分割の事件の多くは、遺産の額がそれほど大きくない家庭のものです。自宅の不動産しか財産がない場合、分けることが難しいため、かえって争いになりやすいこともあります。財産の多い少ないにかかわらず、準備をしておく意味があります。
相続人の関係が複雑な場合
前の結婚で生まれた子がいる、子がいない夫婦で兄弟姉妹が相続人になる、といった場合は、相続人どうしの関係が薄く、話し合いがまとまりにくい傾向があります。子がいない夫婦の場合、配偶者と、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になり、配偶者が住んでいる自宅を兄弟姉妹と分けることになりかねません。こうした場合こそ、遺言による準備が欠かせません。
家族の話し合いの大切さ
相続の争いの多くは、親の意思が分からないことや、兄弟の間の不公平感から生まれます。親が元気なうちに、不動産をどうしたいのか、誰に何を託したいのかを家族に伝えておくだけでも、相続の後の争いを大きく減らせます。家族が集まる機会に、少しずつ話題にしていくのもよい方法です。
相続税がかかるかどうか
相続税は、遺産の総額が基礎控除の額を超える場合にかかります。基礎控除の額は、3,000万円に、600万円に法定相続人の数を掛けた額を加えた額です。たとえば、法定相続人が3人であれば、基礎控除は4,800万円になります。都市部に自宅を持っている場合は、土地の評価額が高く、基礎控除を超えることも少なくありません。
遺言による対策
不動産の相続対策の基本は、何といっても遺言です。遺言があれば、誰がどの不動産を取得するかを、亡くなった人の意思で決めておくことができます。
| 遺言の種類 | 作り方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 本人が全文、日付、氏名を自分で書き、押印する(財産の目録はパソコンで作成してもよい) | 費用がかからず手軽だが、形式の不備で無効になるおそれがある |
| 自筆証書遺言(法務局での保管) | 自筆証書遺言を法務局に預ける | 紛失や改ざんを防げ、家庭裁判所の検認が不要になる |
| 公正証書遺言 | 公証人に作成してもらう | 形式の不備の心配がなく、原本が公証役場に保管される。費用がかかる |
公正証書遺言の作り方
公正証書遺言を作るには、公証役場に連絡し、遺言の内容を公証人と打ち合わせます。財産の資料として、登記事項証明書や固定資産評価証明書、預金の残高の資料などを用意します。作成の日には、証人2人の立ち会いのもとで、公証人が遺言の内容を読み上げ、本人と証人が署名します。体の具合が悪い場合は、公証人に自宅や病院に来てもらうこともできます。
遺言に書いておきたいこと
- 誰にどの不動産を相続させるか(登記簿の記載どおりに特定する)
- 不動産を取得しない相続人に、ほかの財産をどう分けるか
- 遺言の内容を実現する遺言執行者
- なぜそのように分けるのかという、家族への思い(付言事項)
不動産を特定して書く
遺言で不動産を相続させる場合は、登記簿の記載どおりに、土地であれば所在と地番、建物であれば所在と家屋番号を書いて特定します。「自宅を長男に」といったあいまいな書き方では、どの不動産を指すのか争いになったり、相続登記の手続きに使えなかったりすることがあります。遺言を書く前に、登記事項証明書を取り寄せておきましょう。
付言事項の効果
付言事項には、法律上の効力はありませんが、家族にとっては、亡くなった人の気持ちを知る大切な手がかりになります。なぜその相続人に不動産を多く残したのか、ほかの相続人にどう感謝しているのかを書いておくと、遺言の内容に不満を持つ相続人の気持ちが和らぎ、争いを防ぐ効果が期待できます。
遺言を書くときの注意
遺言は、書いた時点の財産や家族の状況をもとに作るものです。その後に不動産を売ったり、新しく買ったり、相続人が亡くなったりすると、遺言の内容が実情と合わなくなることがあります。財産や家族の状況が変わったら、遺言を見直して書き直すことも大切です。新しい遺言を書けば、前の遺言のうち内容が矛盾する部分は撤回したものとみなされます。
遺言執行者を決めておく
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、相続登記や預金の払い戻しなどの手続きを行う人です。遺言で指定しておけば、相続人全員の協力がなくても、遺言執行者が手続きを進められます。相続人の一人を指定することもできますが、相続人の間で争いが予想される場合は、弁護士などの第三者を指定しておくと、手続きが円滑に進みます。
遺留分に注意する
遺言で、特定の相続人にすべての不動産を相続させると、ほかの相続人の遺留分を侵害することがあります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律で保障された最低限の取り分です。遺留分を侵害された相続人は、不動産を取得した相続人に、侵害された額に相当する金銭の支払いを求めることができます。遺言を書くときは、遺留分に配慮し、不動産を取得する相続人が支払えるだけの現金を残しておくなどの工夫が大切です。
生前贈与による対策
遺言と並んでよく使われるのが、生前贈与です。生前に不動産を贈与することで、相続の時の分け方の問題を減らしたり、相続税の負担を軽くしたりすることができます。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 暦年課税 | 1年間に受けた贈与の合計から、基礎控除110万円を差し引いた残りに贈与税がかかる |
| 相続時精算課税 | 60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与について、累計2,500万円までの特別控除がある。2024年からは、これとは別に年110万円の基礎控除もある。相続の時に、贈与した財産を相続財産に加えて相続税を計算する |
| 配偶者への居住用不動産の贈与の特例 | 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、自宅やその購入資金を贈与する場合、2,000万円まで控除できる |
生前に売って現金にしておく選択
分けにくい不動産は、生前に売って現金にしておくのも一つの方法です。現金であれば、相続人の間で分けやすく、相続税の納税の資金にもなります。ただし、現金は不動産より相続税の評価額が高くなるため、相続税の負担は増えることがあります。争いを防ぐことと、税金を抑えることのどちらを優先するかを考えて判断しましょう。
暦年課税と相続時精算課税の選び方
暦年課税は、毎年110万円までの贈与であれば贈与税がかからず、長い期間をかけて少しずつ財産を移すのに向いています。相続時精算課税は、一度に大きな財産を贈与するのに向いていますが、贈与した財産は相続の時に相続財産に加えられるので、相続税の対策の効果は限られます。値上がりが見込まれる不動産や、家賃の収入を生むアパートを早めに移したい場合に使われることがあります。一度相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻れない点にも注意が必要です。
孫への贈与
孫への贈与は、孫が相続人でない場合、生前贈与の加算の対象にならないのが原則です。そのため、子への贈与より相続税の対策の効果が大きくなることがあります。教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の制度もありましたが、期限や要件が変わっているので、利用を考える場合は最新の制度を税理士に確かめてください。
生前贈与の加算
暦年課税で贈与した財産でも、亡くなる前の一定期間に贈与したものは、相続財産に加えて相続税を計算します。この期間は、2024年1月1日以降の贈与から、段階的に3年から7年に延長されています。亡くなる直前の贈与は、相続税の対策としての効果が小さくなるので、早めに計画を立てることが大切です。
贈与の記録を残す
生前贈与をした場合は、贈与の契約書を作り、贈与した日と財産を記録しておきましょう。とくに現金の贈与では、子の名義の口座に振り込んだだけで、実際には親が通帳や印鑑を管理していると、贈与ではなく親の財産(名義預金)とみなされ、相続税の対象になることがあります。贈与を受けた人が自分で財産を管理していることが大切です。
不動産の贈与の注意点
不動産を贈与すると、贈与税のほかに、登録免許税と不動産取得税がかかります。相続で取得する場合と比べて、これらの税率は高くなります。また、贈与を受けた人が不動産を売る場合、贈与した人の取得費を引き継ぐので、譲渡所得税の負担も考える必要があります。不動産そのものを贈与するのが有利か、現金を贈与するのが有利かは、税理士に試算してもらいましょう。
相続税の特例を活用する
不動産の相続税の負担を軽くするうえで、最も効果の大きいのが、小規模宅地等の特例です。条件を満たせば、土地の評価額を大きく下げることができます。
| 土地の種類 | 限度の面積 | 減額の割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(自宅の敷地) | 330平方メートル | 80% |
| 特定事業用宅地等(事業に使っていた土地) | 400平方メートル | 80% |
| 貸付事業用宅地等(アパートや駐車場など) | 200平方メートル | 50% |
自宅の敷地の特例を使える人
自宅の敷地の特例は、誰が相続するかによって使えるかどうかが変わります。配偶者が相続する場合は、条件なしに使えます。同居していた子が相続する場合は、申告の期限まで住み続け、所有し続けることが必要です。同居していない子が相続する場合は、持ち家のない子に限られるなど、厳しい条件があります。特例を使えるよう、誰に自宅を相続させるかを考えておくことが、大きな節税につながります。
貸している土地やアパートの特例
アパートの敷地や、貸駐車場などの土地は、貸付事業用宅地等として、200平方メートルまで評価額を50%減らせます。ただし、相続の開始前3年以内に新たに貸付けを始めた土地は、原則として対象外です。亡くなる直前にアパートを建てても、この特例は使えないことがあるので注意が必要です。
アパートの建築による対策の注意点
更地にアパートを建てると、土地の評価額が下がり、相続税が軽くなることがあります。ただし、空室が増えれば家賃の収入が減り、借入れの返済に困ることもあります。相続税の対策だけを目的にアパートを建てると、かえって相続人の負担を増やすことにもなりかねません。事業としての採算を十分に検討してから判断しましょう。
土地の評価の仕方
相続税の土地の評価は、市街地では路線価をもとに行い、路線価のない地域では固定資産税の評価額に一定の倍率を掛けて行います。土地の形がいびつ、道路に接する幅が狭いといった事情があれば、評価額を下げる補正を受けられます。貸している土地や、アパートの敷地は、借地権や借家権の分だけ評価額が下がります。
相続税の申告が必要かを確かめる
財産の総額が基礎控除の額を下回りそうでも、小規模宅地等の特例を使うことで相続税がかからなくなる場合は、特例を使うために相続税の申告が必要です。申告をしなければ特例は使えず、相続税がかかってしまいます。財産の評価の見込みを、生前に税理士に確かめておくと安心です。
納税の資金を用意する
相続税は、原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、現金で一括して納めなければなりません。財産の大部分が不動産の場合、納税の資金が足りず、不動産を急いで売らなければならないこともあります。生命保険を活用する(法定相続人1人あたり500万円までの死亡保険金は非課税)、売却しやすい不動産を準備しておくなど、納税の資金の手当ても考えておきましょう。
配偶者の住まいを守る対策
夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が自宅に住み続けられるようにすることも、不動産の相続対策の大切な目的です。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 配偶者居住権 | 亡くなった人の自宅に住んでいた配偶者が、自宅の所有権を取得しなくても、無償で住み続けられる権利。遺言や遺産分割で定める |
| 配偶者短期居住権 | 遺産分割が終わるまでなど、一定の期間、無償で自宅に住み続けられる権利。当然に認められる |
| 持ち戻しの免除の推定 | 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で自宅を贈与・遺贈した場合、原則として遺産分割の計算に含めない |
配偶者の住まいを守る対策は、子のいない夫婦や、再婚して前の結婚の子がいる場合に、とくに大切になります。こうした場合は、遺言で配偶者居住権を定めておくか、自宅を配偶者に相続させる内容の遺言を作っておくことを強くおすすめします。
配偶者居住権の使い方
配偶者居住権は、2020年4月から始まった制度です。自宅の権利を、住み続ける権利(配偶者居住権)と、所有権に分けて相続することで、配偶者は住まいを確保しながら、預金などのほかの財産も多く取得できるようになります。たとえば、自宅の所有権は子が取得し、配偶者は配偶者居住権を取得する、という分け方です。配偶者居住権は登記をしておく必要があります。
配偶者居住権の注意点
配偶者居住権は、配偶者が亡くなれば消え、ほかの人に売ったり譲ったりすることはできません。配偶者が将来、施設に入るために自宅を売りたくなった場合でも、配偶者居住権を売ることはできず、所有者との話し合いが必要になります。将来の生活の変化も見据えて、制度を使うかどうかを判断しましょう。
自宅の生前贈与と持ち戻しの免除
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、自宅を生前に贈与した場合、原則として、その自宅を遺産分割の計算に含めないことになっています。これにより、配偶者は自宅を確保したうえで、残りの遺産についても法定相続分に応じた取り分を得られます。贈与税の配偶者控除と組み合わせることで、税金の負担も抑えられます。
認知症への備え
高齢化が進む中で、見落とせないのが認知症への備えです。不動産の所有者が認知症になると、判断の能力が十分でないため、不動産を売ったり、建て替えたり、賃貸の契約を結んだりすることができなくなります。相続対策の贈与や遺言も、判断の能力がなければできません。
| 方法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 成年後見 | 認知症になった後に、家庭裁判所が後見人を選ぶ | 本人の財産を守ることが目的で、相続対策のための売却や贈与は原則としてできない |
| 任意後見 | 元気なうちに、将来の後見人を自分で選んで契約しておく | 後見が始まると、家庭裁判所が選んだ監督人がつく |
| 家族信託 | 元気なうちに、不動産の管理や処分を家族に託す契約を結ぶ | 託された家族が、契約の範囲で売却や建て替えを判断できる |
成年後見の限界
認知症になった後に成年後見人が選ばれても、成年後見人は本人の財産を守る立場なので、相続税の対策のための贈与や、収益を目的とした建て替えなどは、原則として認められません。自宅を売る場合も、家庭裁判所の許可が必要です。成年後見は、相続対策の手段としては使いにくい制度だと考えておきましょう。
家族信託の契約を結ぶ際には、信託する不動産の範囲、受託者ができること、所有者が亡くなった後の不動産の行き先などを、細かく定めておきます。信託した不動産は、受託者の名義に登記しますが、税金の上では、引き続き所有者の財産として扱われます。家族信託の設計は専門的なので、経験のある弁護士や司法書士に相談しましょう。
家族信託と遺言の関係
家族信託で不動産の行き先を定めた場合、その不動産については、遺言より信託の契約の定めが優先されます。遺言と家族信託を併用する場合は、内容が矛盾しないよう、両方を一緒に設計することが大切です。
任意後見の活用
任意後見は、元気なうちに、将来判断の能力が衰えたときに備えて、後見人になってもらう人と、任せる内容を決めておく契約です。公正証書で契約を結び、実際に判断の能力が衰えたときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選んで後見が始まります。自分で後見人を選べる点が、成年後見との大きな違いです。
家族信託の活用
家族信託は、不動産の所有者(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に不動産を託し、管理や処分を任せる仕組みです。所有者が認知症になっても、受託者が契約で定めた範囲で、不動産を売ったり、アパートを建て替えたりすることができます。信託の契約の中で、所有者が亡くなった後に誰が不動産を受け継ぐかを定めておくこともでき、遺言に代わる役割も果たします。
不動産を整理しておく
相続人の負担を減らすには、生前に不動産の状態を整えておくことも大切です。地味な作業ですが、効果は大きいものです。
- 持っている不動産をすべて洗い出し、一覧にする(名寄帳や固定資産税の通知書で確かめる)。
- 登記簿を取り寄せ、名義が自分になっているか、先代の名義のままのものがないかを確かめる。
- 隣地との境界を確かめ、はっきりしない土地は測量して境界を確定しておく。
- 使う予定のない土地や空き家は、生前に売ることも検討する。
- 共有になっている不動産は、共有を解消できないか検討する。
- 不動産の権利証や売買契約書など、大切な書類をまとめて保管し、家族に保管場所を伝えておく。
共有を解消しておく
兄弟との共有になっている不動産を持っている場合は、自分の代のうちに共有を解消しておくと、次の世代の負担を大きく減らせます。共有者の持分を買い取る、自分の持分を共有者に売る、土地を分けてそれぞれの単独の所有にする、といった方法があります。共有者どうしの話し合いがまとまらなければ、裁判所に共有物の分割を求めることもできます。
不動産の一覧を作る際には、それぞれの不動産について、評価額の目安、借入れの有無、貸している相手、今後どうしたいかも書き添えておくと、相続対策の計画を立てやすくなります。
先代の名義の不動産
祖父母の名義のまま相続登記がされていない不動産がある場合は、自分が元気なうちに相続登記を済ませておきましょう。時間がたつほど相続人が増え、手続きが難しくなります。2024年4月からは相続登記が義務になっていて、過去の相続も対象です。
エンディングノートの活用
遺言ほどの法的な効力はありませんが、エンディングノートに、持っている不動産の一覧、権利証の保管場所、賃貸の契約の状況、管理を任せている会社の連絡先などを書いておくと、相続人が財産を把握しやすくなります。不動産を貸している場合は、借主の一覧や家賃の入金の口座も書いておくと、相続の後の管理の引き継ぎがスムーズです。
使い道のない土地
遠方の山林や原野など、相続人が誰も引き継ぎたがらない土地は、生前に売るか、隣地の所有者に譲ることを検討します。相続の後であれば、一定の要件を満たせば、相続土地国庫帰属制度を使って国に引き取ってもらう方法もあります。
具体例で考える|アパートを持つ父の相続対策
実際の相談をもとにした例を見てみます。ある70代の男性は、自宅と、2棟のアパート、そして地方の山林を持っていました。妻と、3人の子がいます。長男は同居していて、長女と次男は別の地域に家を持っていました。男性は、自分が亡くなった後に子どもたちがもめないか、相続税がどれくらいかかるかを心配し、弁護士と税理士に相談しました。
税理士が財産を評価したところ、相続税がかかる見込みでした。弁護士と税理士は、自宅を同居している長男に相続させれば、小規模宅地等の特例で自宅の敷地の評価を大きく下げられることを説明しました。2棟のアパートは、長女と次男に1棟ずつ相続させることにしました。
男性は、公正証書遺言を作り、この分け方と、遺言執行者として長男を指定することを書きました。付言事項には、なぜこのように分けたのか、子どもたちへの思いを書き添えました。あわせて、アパートの管理を長男に任せる家族信託の契約を結び、自分が認知症になってもアパートの経営を続けられるようにしました。使い道のない山林は、生前に隣の土地の所有者に売りました。
男性が亡くなった後、遺言に従って相続の手続きが進み、子どもたちの間で争いは起きませんでした。相続税も、特例を使って負担を抑えることができました。元気なうちに家族と話し合い、専門家と一緒に準備を進めたことが、円満な相続につながった例です。
この例のように、不動産の相続対策は、遺言、特例、家族信託、不動産の整理を組み合わせて行うことで、大きな効果を発揮します。弁護士と税理士が連携し、法律と税金の両面から計画を立てることが、円満な相続への近道です。
専門家に相談するタイミング
不動産の相続対策は、法律、税金、登記、不動産の評価など、多くの分野にまたがります。遺言や家族信託の内容は弁護士、相続税の試算は税理士、登記は司法書士、境界の確定は土地家屋調査士と、それぞれの専門家の力を借りることになります。まずは弁護士か税理士に相談し、全体の計画を立てるところから始めるとよいでしょう。
不動産の相続対策に関するよくある質問
相続対策は、何歳から始めればよいですか
決まった年齢はありませんが、判断の能力が十分なうちに始めることが大切です。生前贈与の加算の期間が延びたことを考えると、贈与を使った対策は、早く始めるほど効果が大きくなります。60代から70代のうちに、財産の把握と家族との話し合いを始めることをおすすめします。
遺言は自分で書いてもよいですか
自分で書くこともできますが、形式の不備で無効になったり、内容があいまいで争いの原因になったりすることもあります。不動産を含む財産がある場合は、公正証書遺言にするか、自筆で書いた遺言を法務局で保管してもらうのが安心です。内容については、弁護士に相談してから決めるとよいでしょう。
子どもたちに、相続対策のことを話したほうがよいですか
できれば話しておくことをおすすめします。遺言の内容をすべて伝える必要はありませんが、不動産をどうしたいか、誰に何を任せたいかを伝えておくと、相続の後の混乱や誤解を防げます。家族信託を使う場合は、受託者になる家族の協力が欠かせないので、話し合いが前提になります。
相続税の対策のために、借入れをして不動産を買うのは有効ですか
不動産は、現金より相続税の評価額が低くなることが多いため、相続税の対策として不動産を買う方法があります。ただし、評価額を極端に下げることだけを目的とした不動産の購入は、税務署から評価を否認されることもあります。不動産の価格の下落や、家賃の収入の減少のリスクもあるので、慎重に検討してください。
