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不動産のトラブル、誰に相談すればよいか
買ったばかりの家に欠陥が見つかった。借主が家賃を払わない。隣の土地との境界でもめている。建物の建て替えのために借主に出てもらいたい。不動産をめぐるトラブルは、金額が大きく、生活や事業の基盤に直結するだけに、深刻になりがちです。
ところが、いざトラブルに直面すると、誰に相談すればよいのか迷う方が少なくありません。インターネットで調べても、情報が多すぎて、かえって分からなくなることもあるでしょう。不動産会社に聞けばよいのか、司法書士なのか、弁護士なのか。役所の窓口で相談できることはあるのか。相談先を誤ると、時間をかけても解決に近づかないこともあります。
不動産のトラブルに関わる専門家は多く、それぞれ扱える範囲が法律で決まっています。資格ごとに、できることとできないことがはっきり分かれています。そのうち、相手との交渉から訴訟まで、トラブルの解決を一貫して任せられるのは弁護士です。一方で、弁護士に依頼するには費用がかかり、トラブルの内容によっては、ほかの専門家や公的な窓口のほうが向いていることもあります。
この記事では、不動産の相談を受けている弁護士の立場から、不動産トラブルの種類ごとの相談先、弁護士に依頼するメリットと費用、依頼から解決までの流れ、不動産に強い弁護士の選び方までを説明していきます。
不動産は、一度の取引の金額が大きく、契約の内容も複雑です。そのうえ、住まいや事業の拠点として毎日使うものなので、トラブルが起きると生活そのものが揺らぎます。だからこそ、問題が小さいうちに、正しい相談先にたどり着くことが大切です。
不動産トラブルにはどんなものがあるか
不動産をめぐるトラブルは、立場や場面によってさまざまです。自分のトラブルがどれにあたるかを知ることが、相談先を選ぶ手がかりになります。主なものを整理しておきます。
| 場面 | 主なトラブル |
|---|---|
| 売買 | 購入した建物の欠陥、説明されなかった事故や周辺環境、契約の解除と手付金、仲介手数料 |
| 賃貸(貸主の立場) | 家賃の滞納、借主の立ち退き、建て替えのための明け渡し、家賃の値上げ、無断の転貸 |
| 賃貸(借主の立場) | 敷金の返還、原状回復の費用、修繕をしてもらえない、突然の退去の要求 |
| 土地 | 隣地との境界、越境した枝や建物、土壌汚染、地盤沈下 |
| 建築 | 工事の欠陥、工事代金、近隣とのもめごと(日照、騒音) |
| マンション | 管理費の滞納、騒音や漏水、管理組合の運営 |
| 相続・共有 | 相続した不動産の分け方、共有者の間の意見の対立 |
| 投資 | 投資用マンションの勧誘、家賃保証の打ち切り |
どのトラブルも、契約書の内容、法律の定め、過去の裁判例をもとに、解決の方向が決まります。早い段階で、自分の立場がどう評価されるかを知ることが、解決への第一歩です。
売主・買主の立場で多い相談
売買では、買主の立場からの相談が多いのは、購入後に見つかった雨漏りやシロアリの被害、説明されなかった事故や近隣の問題などです。売主の立場からは、買主から欠陥を理由に代金の減額や解除を求められた、手付金の返還をめぐってもめている、といった相談がよくあります。どちらの立場でも、契約書と重要事項説明書に何が書かれていたかが、判断の出発点になります。
相続や共有の不動産
相続で兄弟が一つの不動産を共有することになり、売るか住み続けるかで意見が分かれる、といったトラブルもよくあります。共有者の一人が反対すると、不動産全体を売ることはできません。話し合いで解決できなければ、裁判所に共有物の分割を求めることになります。相続した不動産の扱いは、遺産分割の段階で決めておくのが理想です。
相談先ごとにできることの違い
不動産のトラブルに関わる主な相談先と、それぞれができることを整理します。専門家ごとに得意な分野が違うので、トラブルの中身に合わせて選びます。
| 相談先 | できること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 法律相談、相手との交渉、調停や訴訟の代理、契約書の作成と確認。金額の制限なし | 相手と争いになっている、交渉がこじれている、訴訟まで見込まれる |
| 司法書士 | 登記の手続き。認定司法書士は140万円以下の事件で交渉と簡易裁判所の代理 | 名義の変更、相続の登記、少額の敷金返還など |
| 土地家屋調査士 | 土地の測量、境界の確認、表示の登記 | 境界をはっきりさせたい |
| 不動産鑑定士 | 不動産の価格の評価 | 家賃の増減、立退料、遺産分割での評価 |
| 宅地建物取引士・不動産会社 | 売買や賃貸の仲介、物件の説明 | 取引の進め方の相談(紛争の代理はできない) |
| 税理士 | 税金の相談と申告 | 売却や相続にかかる税金 |
ここで知っておきたいのが、他人の依頼を受けて、報酬を得て紛争の交渉や代理をすることは、原則として弁護士にしか認められていません。不動産会社や管理会社が、借主との立ち退きの交渉を代わりに行うことは、法律に触れるおそれがあります。相手と争いがある場合は、弁護士に相談するのが基本です。
専門家を組み合わせる
不動産のトラブルでは、一人の専門家だけで解決できないことも多くあります。境界の争いであれば、土地家屋調査士が測量し、弁護士がその結果をもとに交渉や訴訟を進めます。欠陥住宅であれば、建築士が欠陥を調べ、弁護士が損害賠償を請求します。立退料の争いでは、不動産鑑定士が借家権の価格を評価します。弁護士に相談すれば、必要な専門家を紹介してもらえることも多いので、どの専門家に頼めばよいか分からない場合も、まず弁護士に相談してみてください。
不動産会社の担当者に頼めないこと
取引を仲介した不動産会社の担当者は、取引の経緯をよく知っているので、トラブルが起きたときに頼りたくなるものです。けれども、仲介した不動産会社は、売主と買主、貸主と借主の間に立つ立場で、どちらか一方の代理人として相手と争うことはできません。また、不動産会社自身の説明に問題があった場合は、不動産会社が相手方になることもあります。担当者の話を参考にしつつ、争いについては弁護士に判断を求めてください。
公的な相談窓口
費用をかけずに相談したい場合は、公的な窓口を利用する方法もあります。
- 都道府県の宅地建物取引業の担当課:不動産会社との取引のトラブル
- 消費生活センター:投資用マンションの勧誘など、事業者とのトラブル
- 法テラス:収入が一定以下の方の無料の法律相談
- 弁護士会の法律相談センター:不動産の法律相談
- 住宅紛争審査会:住宅の性能評価や保険のついた住宅の紛争の処理
こうした公的な窓口では、一般的な助言や、相手への指導を受けられることがありますが、相手との交渉や訴訟を代わりに行ってくれるわけではありません。具体的な解決まで進めるには、弁護士への依頼が必要になることが多いでしょう。
住宅紛争審査会の利用
建設住宅性能評価書が交付された住宅や、住宅瑕疵担保責任保険がついた新築住宅などについては、弁護士会に置かれた住宅紛争審査会で、あっせん、調停、仲裁の手続きを利用できます。申請の手数料は1万円で、弁護士と建築士が間に入って紛争の解決を目指します。訴訟より費用が少なく、専門的な判断も受けられるので、対象になる住宅であれば検討する価値があります。
司法書士と弁護士の使い分け
名義の変更や相続の登記のように、手続きだけで済むものは司法書士に依頼するのが一般的です。一方、登記の前提となる権利そのものに争いがある場合、たとえば相続人の間で誰が不動産を取得するかでもめている場合や、売買の有効性が争われている場合は、弁護士に相談する必要があります。争いがあるかどうかが、使い分けの目安です。
弁護士に依頼するメリット
不動産のトラブルを弁護士に依頼するメリットは、次のような点にあります。一言でいえば、解決までの道筋を最も確かに描けることです。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 見通しが分かる | 契約書や裁判例をもとに、勝てる見込みや解決の相場が分かる |
| 交渉を任せられる | 相手と直接やり取りする負担がなくなる |
| 手続きを一貫して進められる | 交渉、調停、訴訟、強制執行まで、依頼先を変えずに進められる |
| 証拠をそろえられる | 何を証拠として残すべきかを助言し、必要な資料を集められる |
| ほかの専門家と連携できる | 土地家屋調査士、不動産鑑定士、建築士、税理士と連携して進められる |
感情的な対立を和らげる
隣人との境界の争いや、長年の借主との立ち退きの問題では、当事者どうしの感情的な対立が、解決を難しくしていることがよくあります。弁護士が間に入ることで、感情を交えずに、法律と事実に基づいた話し合いができるようになります。相手も、弁護士の説明であれば冷静に受け止めやすく、こじれていた話が前に進むきっかけになります。
早い段階の相談が結果を左右する
不動産のトラブルは、初動の対応がその後の結果を大きく左右します。最初の一手を誤ると、取り返しがつかないこともあります。欠陥住宅であれば、欠陥に気づいてからの通知の期限があり、放置すると請求できなくなることがあります。家賃の滞納であれば、対応が遅れるほど滞納額が膨らみます。立ち退きの交渉では、最初の提示の仕方で、相手の態度が大きく変わります。
反対に、トラブルが大きくなる前に相談すれば、訴訟に至らずに解決できる可能性が高まり、費用も少なく済みます。「まだ弁護士に相談するほどではない」と思う段階こそ、相談の好機です。
相手が不動産会社や大きな会社の場合
相手が不動産会社や建設会社、管理会社などの事業者である場合、相手は不動産の取引に慣れていて、社内に法務の担当者や顧問弁護士がいることも少なくありません。個人が一人で交渉すると、専門用語や業界の慣行を持ち出されて、不利な条件を受け入れてしまうこともあります。相手が事業者であれば、なおさら早めに弁護士に相談しておくと安心です。
取引の前の契約書の確認
トラブルが起きてからではなく、取引の前に弁護士に契約書を見てもらうことも、とても有効です。不動産の売買契約書や賃貸借契約書は、ひな形のまま使われることが多いのですが、個別の取引に合わない条項や、一方に不利な条項が含まれていることもあります。取引の規模が大きい場合や、特殊な条件がある場合は、契約の前に確認を受けておくと、後のトラブルを防げます。
証拠を残すことの大切さ
不動産のトラブルでは、時間がたつと証拠が失われやすいという特徴があります。雨漏りの跡は修理すれば消え、境界の目印は工事で動かされ、騒音は記録しなければ残りません。トラブルに気づいたら、写真や動画を日付とともに記録し、相手とのやり取りは書面やメールで残しておきましょう。弁護士に相談する前に証拠を消してしまうと、後で主張を裏付けられなくなることがあります。
弁護士費用の仕組み
不動産のトラブルを弁護士に依頼する場合の費用は、主に次の項目で構成されます。金額は事務所ごとに決められているので、依頼の前に見積もりを確かめてください。
| 費用 | 内容 | 支払う時期 |
|---|---|---|
| 相談料 | 法律相談の費用。初回を無料とする事務所もある | 相談のとき |
| 着手金 | 依頼するときに支払う費用。結果にかかわらず返ってこない | 依頼のとき |
| 報酬金 | 解決できたときに、得られた利益に応じて支払う費用 | 解決のとき |
| 実費 | 裁判所の手数料、郵便切手、登記簿の取得費、鑑定の費用など | その都度 |
| 日当 | 遠方の現地調査や裁判所への出張の費用 | その都度 |
| 顧問料 | 継続的に相談できる顧問契約の月額の費用 | 毎月 |
相談料は、30分や1時間ごとに決められていることが多く、初回だけ無料とする事務所も増えています。相談の時間を有効に使うため、資料をそろえ、聞きたいことを事前にまとめておきましょう。
経済的利益の考え方
着手金や報酬金は、事件の経済的利益、つまり依頼者が得られる、あるいは失わずに済む金額をもとに計算されることが多くあります。不動産の明け渡しの事件では、建物の価額をもとにしたり、立退料の事件では、受け取る立退料の額をもとにしたりします。計算の方法は事務所によって異なるので、何を基準に計算するのかを確かめておくことが大切です。
相手に弁護士費用を請求できるか
弁護士費用は、原則として依頼した人が負担し、相手に請求することはできません。ただし、欠陥住宅や不法行為による損害賠償を請求する訴訟では、弁護士費用の一部が、損害の一部として認められることがあります。契約書に、紛争の解決にかかった弁護士費用を相手の負担とする条項があれば、その条項に基づいて請求できることもあります。
費用を抑えるための工夫
- 初回の無料相談を利用して、見通しと費用を確かめる
- 契約書の確認だけ、内容証明郵便の作成だけ、といった部分的な依頼にする
- 不動産を複数持つオーナーは、顧問契約で相談の費用を抑える
- 収入が一定以下なら、法テラスの立替え制度を利用する
費用倒れにならないための考え方
不動産の事件は金額が大きいことが多いものの、敷金の返還や少額の修繕費の請求のように、弁護士費用のほうが大きくなりかねない事件もあります。依頼の前に、得られる見込みの額と、費用の総額を比べてください。費用倒れになりそうな場合は、弁護士に書面の作成や助言だけを頼み、交渉や少額訴訟は自分で進めるといった方法もあります。
交渉、調停、訴訟の選び方
弁護士に依頼した後の進め方は、相手の姿勢によって変わります。相手が話し合いに応じるなら交渉、話し合いの余地はあるが当事者だけでは進まないなら調停、相手が争う姿勢を崩さないなら訴訟、というのが一般的な選び方です。隣人や長年の借主など、関係を続ける相手であれば、訴訟より調停や交渉で解決するほうが、後のわだかまりが残りにくくなります。
費用の見積もりを受けたら、どこまでの手続きが含まれているのかを確かめてください。交渉だけなのか、調停や訴訟まで含むのか、訴訟になったら追加の着手金がかかるのか。後から「思っていたより費用がかかった」とならないよう、委任契約書の内容をよく読んでから依頼しましょう。
依頼から解決までの流れ
不動産のトラブルを弁護士に依頼した場合の、一般的な流れは次のとおりです。事件の内容によって、途中の段階が変わることもあります。
- 法律相談で、トラブルの経緯を伝え、契約書や写真などの資料を見せる。
- 弁護士が、解決の見通しと方針、費用を示す。
- 委任契約を結び、着手金を支払う。
- 弁護士が、相手に内容証明郵便を送るなどして、交渉を始める。
- 必要に応じて、土地家屋調査士や建築士などの専門家に調査を依頼する。
- 交渉がまとまれば、合意書を作る。まとまらなければ、調停や訴訟に進む。
- 判決や和解に基づいて、明け渡しや金銭の支払いを実現する。
交渉の段階で弁護士がすること
弁護士は、まず相手に対して、代理人になったことと、依頼者の主張を書面で伝えます。そのうえで、相手の言い分を聞き、互いの主張の違いを整理しながら、解決の条件を探ります。相手が話し合いに応じれば、合意の内容を書面にまとめ、必要なら公正証書や即決和解の手続きで、約束が守られなかったときに強制執行できる形にしておきます。
解決までの期間
交渉で解決する場合は、数週間から数か月で終わることもあります。訴訟になると、半年から1年以上かかることが多く、欠陥住宅や境界のように、専門家の調査や鑑定が必要な事件では、さらに長くなることがあります。依頼の段階で、どのくらいの期間を見込んでおくべきかを弁護士に確かめておきましょう。
依頼した後に依頼者がすること
弁護士に依頼した後も、依頼者にしかできないことがあります。相手から直接連絡があったら、自分で返事をせず、弁護士に伝えてください。現地の状況に変化があれば、写真を撮って知らせてください。弁護士から資料や事情の説明を求められたら、できるだけ早く応じることが、解決を早めることにつながります。
相談の前にそろえたい資料
- 売買契約書、賃貸借契約書、重要事項説明書
- 登記事項証明書、公図、測量図
- 建物の図面、写真、修繕の見積書
- 相手とのやり取り(手紙、メール、メッセージ)
- 家賃の入金の記録、請求書
相談のときに伝えたいこと
相談の時間を有効に使うため、トラブルの経緯を時系列でまとめたメモを用意しておきましょう。いつ、誰と、どんな契約をしたのか、いつ、どんな問題が起きたのか、相手とどんなやり取りをしたのか、そして最終的にどうしたいのか。とくに、どうしたいのか、たとえば「お金を返してほしい」「住み続けたい」「早く出て行ってほしい」といった希望をはっきりさせておくと、弁護士も方針を立てやすくなります。
不動産に強い弁護士の選び方
弁護士であれば誰でも不動産の事件を扱えます。とはいえ、不動産のトラブルには、借地借家法、建築の知識、登記の仕組みなど、専門的な知識が求められます。次の点を確かめると、自分の事件に合った弁護士を選びやすくなります。
| 確かめる点 | 見るべきところ |
|---|---|
| 不動産事件の経験 | 売買、賃貸、建築、境界など、自分の事件と同じ分野を扱った経験があるか |
| 専門家との連携 | 土地家屋調査士、建築士、不動産鑑定士と連携して進められるか |
| 見通しの説明 | 有利な点だけでなく、不利な点や解決の相場も率直に説明してくれるか |
| 費用の分かりやすさ | 着手金、報酬金、実費の見積もりを書面で示してくれるか |
| 立場の理解 | 貸主側、借主側など、自分の立場の事件を多く扱っているか |
初回の相談では、弁護士の説明が分かりやすいか、こちらの話を最後まで聞いてくれるかも見ておきましょう。不動産の事件は長くかかることも多く、弁護士とは何度もやり取りを重ねることになります。相性や信頼感も、選ぶうえで大切な要素です。
貸主の立場と借主の立場
賃貸のトラブルでは、貸主の立場と借主の立場で、弁護士に求めることが変わります。貸主であれば、家賃の回収、明け渡し、管理の体制づくりに強い弁護士、借主であれば、敷金の返還や不当な退去の要求から生活を守ることに強い弁護士が向いています。不動産を多く持つオーナーであれば、日ごろから相談できる顧問弁護士を持っておくと、トラブルの芽を早めに摘むことができます。
弁護士の探し方としては、知人の紹介のほか、弁護士会の相談センター、法律事務所のウェブサイト、弁護士を紹介するポータルサイトなどがあります。複数の事務所で相談し、説明の分かりやすさや費用を比べてから依頼先を決めるのも、よい方法です。
不動産オーナーや事業者が弁護士を顧問にするメリット
ここからは、オーナーや事業者の方に向けたお話です。複数の物件を持つオーナーや、不動産を扱う事業者にとっては、トラブルが起きるたびに弁護士を探すより、日ごろから相談できる顧問弁護士を持っておくほうが、結果として費用も手間も少なく済むことがあります。
| 場面 | 顧問弁護士がいる場合 |
|---|---|
| 賃貸借契約書の作成 | 物件や入居者に合わせた契約書を用意し、トラブルになりやすい条項を整えられる |
| 家賃の滞納 | 滞納が始まった段階で相談でき、督促から明け渡しまで途切れなく対応できる |
| 入居者どうしのもめごと | 騒音や迷惑行為への対応を、早い段階で相談できる |
| 建て替えや売却 | 立ち退きの交渉の進め方や、売買契約の条件を事前に検討できる |
| 管理会社とのトラブル | 管理委託契約の内容や、管理会社の対応の是非を判断できる |
賃貸借契約書で確かめておきたいこと
- 家賃の支払期日と、滞納したときの遅延損害金
- 契約を解除できる場合(滞納の月数、禁止事項の違反)
- 連帯保証人の極度額(2020年4月以降の個人保証では必須)
- 原状回復の範囲と、敷金の返還の時期
- 更新の条件と更新料、定期借家かどうか
- ペット、楽器、転貸、用途の変更などの禁止事項
契約書の不備は、トラブルが起きてからでは直せません。顧問弁護士に契約書のひな形を見直してもらうだけでも、将来のトラブルを大きく減らせます。
マンションの管理組合の場合
分譲マンションの管理組合も、管理費の滞納、規約違反の住民への対応、大規模修繕の業者との契約など、法律の判断が必要な場面を多く抱えています。管理組合として顧問弁護士を持っておくと、理事会の判断に法的な裏付けを得られ、住民への説明もしやすくなります。
管理会社との役割分担
物件の管理を管理会社に任せている場合でも、借主との争いの交渉や法的な手続きは、弁護士の役割です。管理会社には、家賃の管理や日常の対応を任せ、滞納や明け渡し、損害賠償などの争いになったら弁護士に引き継ぐ、という役割分担を決めておくと、対応が遅れずに済みます。
顧問料は、相談の頻度や業務の範囲によって事務所ごとに決められています。物件の数が少ない個人のオーナーであれば、顧問契約を結ばず、必要なときに相談する形でも十分な場合があります。自分の物件の数や、トラブルの頻度に合わせて判断してください。
具体例で考える|弁護士に相談して解決したケース
実際によくある相談をもとに、流れを見てみます。ある個人のオーナーは、築40年の木造アパートを持っていました。老朽化が進み、建て替えを考えていましたが、6世帯の借主のうち2世帯が退去に応じてくれませんでした。管理会社に交渉を任せていましたが、話は進まず、借主の一人は「弁護士に相談する」と言い出していました。
オーナーから相談を受けた弁護士は、まず、管理会社が立ち退きの交渉を代わりに行うことには法律上の問題があることを説明し、交渉を引き継ぎました。建物の老朽化の程度を建築士に調べてもらい、耐震性に問題があることを示す報告書を用意しました。そのうえで、借主それぞれの事情を丁寧に聞き、転居先の紹介や、引越しの費用を含めた立退料を提示しました。
1世帯は、近くの物件への転居と立退料で合意しました。もう1世帯は高齢の夫婦で、同じ地域から離れたくないという希望があったため、オーナーが持つ別のアパートへの転居を提案し、家賃を一定期間据え置くことで合意しました。交渉を始めてから半年ほどで、すべての借主が退去し、建て替えの工事に着手できました。
訴訟に進んでいれば、判決までに1年以上かかり、立退料の額も裁判所の判断に委ねることになっていたかもしれません。早い段階で弁護士が交渉を引き継ぎ、借主の事情に合わせた条件を示したことが、円満な解決につながった例です。
不動産のトラブルは、当事者の感情がからみやすく、長引くほど解決が難しくなります。一人で抱え込まず、早めに専門家の意見を聞くことが、結果として時間と費用を最も節約する方法です。
この例では、管理会社が交渉を続けていたことで、借主の不信感が強まっていました。立ち退きの交渉は、借主の生活に関わる重い話です。法律の専門家が、根拠を示しながら誠実に話し合うことで、借主も納得しやすくなります。
不動産トラブルの弁護士相談に関するよくある質問
不動産会社に相談するのと、弁護士に相談するのとでは何が違いますか
不動産会社は、売買や賃貸の仲介の専門家で、物件や取引の進め方についての知識があります。一方、相手との争いを代わりに交渉したり、訴訟を代理したりすることはできません。相手と争いがある場合や、法律上の判断が必要な場合は、弁護士に相談してください。
少額のトラブルでも弁護士に相談できますか
相談はできます。ただし、敷金の返還のように金額が小さい場合は、弁護士費用とのつり合いを考える必要があります。少額訴訟を自分で起こす、認定司法書士に依頼する、といった方法も含めて、相談の段階で費用の見通しを聞いてみてください。
相手にすでに弁護士がついています。自分も依頼すべきですか
相手に弁護士がついている場合は、こちらも弁護士に依頼することをおすすめします。相手の弁護士は、法律の知識と交渉の経験を持っています。自分だけで対応すると、不利な条件で合意してしまうおそれがあります。
弁護士に相談したことは、相手に知られますか
相談しただけで、相手に知られることはありません。弁護士には守秘義務があります。相手に知られるのは、弁護士が代理人として相手に連絡をとった時点です。
不動産会社の説明に問題があった場合、不動産会社にも責任を問えますか
仲介した不動産会社が、重要事項の説明を怠ったり、誤った説明をしたりした場合は、宅地建物取引業法上の義務に違反したとして、損害賠償を求められることがあります。都道府県の宅地建物取引業の担当課に相談すれば、不動産会社への指導を求めることもできます。
弁護士への相談は、オンラインでもできますか
できます。多くの法律事務所が、電話やウェブ会議での相談に応じています。ただし、不動産の事件では、図面や写真、契約書を見ながら話すことが大切なので、資料は事前に送っておくとよいでしょう。
