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不動産差し押さえの流れ~効力や費用、正しい法的手順は?
この記事で分かること
- 不動産差し押さえの効力は、不動産の処分を禁止できることが最大のポイント
- 不動産を強制執行で差し押さえるためには、まず債務名義の取得が必要
- 債務名義が取得できたら、競売を申し立てて不動産を売却する
不動産の差し押さえは、債務不履行のトラブルを解決するのに、最も強力な方法の一つです。ただし、債務者がどのくらい協力的かにより、選ぶ方法が変わってきますので、手続きは慎重に進めましょう。この記事では、不動産差し押さえの効果と費用、不動産差し押さえの流れについて解説します。
不動産差し押さえの効力と費用は?
実際に、不動産差し押さえの手続きをしようとする場合、差し押さえの効力とそれにかかる費用が気になるところでしょう。そこで、最初に、不動産差し押さえの効力と費用について見ていきましょう。
不動産差し押さえの効力について
不動産差し押さえの効力、およびその効力がいつ発生するかは、次の通りです。
(差し押さえの効力1)不動産の処分禁止
差し押さえをすると、債務者は不動産を売却したり、抵当権を設定したりなどの処分をすることができなくなります。
もし、債務者が勝手に不動産を処分したとしても、差し押さえがされていれば、この効力は変わりません。債務者は、Aさんに不動産を売却したとします。その後、同じ不動産をBさんが、差し押さえにともなう競売により、買い受けたとします。その場合には、土地の所有権はAさんではなく、Bさんに認められることになるからです。
差し押さえによる不動産の処分禁止は、強制執行による債権の回収を、確実に行うためになくてはならない効力です。
(差し押さえの効力2)時効の中断
差し押さえのもう1つの効力は、時効が中断することです。
一般に債権には時効があります。差し押さえを行えば、その時効は中断しますので、時効による債権の消滅を防ぐために、催告などの別の手段を講じる必要はなくなります。
差し押さえの効力はいつ発生する?
差し押さえの効力は、
- 競売の開始決定通知が債務者のもとへ届いた時
- 差し押さえの登記がされた時
の、いずれか早い方で発生します。したがって、差し押さえの効力を少しでも早く発生させるため、差し押さえの登記はできる限り早くすることがおすすめです。
不動産差し押さえの費用は?
不動産を差し押さえするに当たって必要となる費用は、次のものです。
- 収入印紙代 4,000円
- 予納金 50万円~100万円
- 登録免許税 請求債権額の4/100
(不動産差し押さえの流れ1)債権名義を取得する
不動産を強制執行によって差し押さえる場合には、債務名義を取得することが必要です。この債務名義の意味と取得方法、および債務名義にともなって必要となる場合がある執行文と仮差し押さえについて見ていきます。
不動産を強制執行で差し押さえるには債務名義が必要
不動産の差し押さえには、
- 強制執行
- 抵当権の行使
の2つがあります。
抵当権の行使とは、すでに抵当権が設定されている不動産を、債務不履行によって差し押さえることです。この場合には、債務名義を取得せずに、差し押さえを申し立てることができます。
それに対して強制執行は、抵当権が設定されていない不動産を、裁判所で手続きをすることで、強制的に差し押さえすることです。強制執行を申し立てるためには、債権者であることを公的に証明するものである「債務名義」が必要です。
債務名義の取得方法
債務名義を取得するには、以下の方法があります。
執行調書の作成
執行調書とは、債権者と債務者が取り交わす公正調書です。一定額の金銭を債務者がたしかに支払うことを公的に証明するために作成されます。もし支払いを怠った場合には、債務者は強制執行に同意する旨のことが明記されます。
執行調書は、一般的にはトラブルが起こる前に作成されます。トラブルが起こったあとでも、債務者が債権回収に協力的なら、執行調書を作成できる場合もあります。執行調書は、他の方法と比較して速やかに債務名義を取得することができるのがメリットです。
民事訴訟の提起
一般に、トラブルが起こったあとで、債務者が執行調書の作成に協力することは稀だと言えます。その場合には、民事訴訟を提起するのが、トラブルを解決するための最も強力な方法です。
判決が確定すれば、その確定判決が債務名義になります。また、和解が成立した場合にも、和解調書はやはり債務名義となります。
60万円以下の金銭を争う場合は、少額訴訟を提起することもできます。少額訴訟は1期日で判決が得られるため、債務名義を迅速に得られることがメリットです。しかし、債務者が通常の裁判を望む場合は、少額訴訟での手続きはできません。
民事調停を申し立てる
民事調停は、裁判官と、弁護士などの専門家から選ばれる調停委員が仲介し、当事者が話し合いをすることです。当事者だけで話し合っても解決しない場合でも、裁判官や調停委員が仲介をすることで、論点が整理され、話し合いがまとまることがあります。
調停が成立した場合には、調停の結果をまとめた調停調書が、債務名義となります。ただし、調停には当事者の双方が出席しなくてはなりませんし、また話し合いの結論について強制力はありません。
支払督促を申し立てる
支払督促は、裁判所に証拠となる書類を提出することにより、裁判を開かずに、書類審査のみで、裁判所が債務者に対して支払いを督促することです。督促に対して債務者が2週間以内に異議申し立てをしない場合は、支払いは確定し、支払督促が債務名義となります。ただし、債務者が異議申し立てをした場合には、通常の訴訟に移行します。
執行文の取得も必要
強制執行によって不動産を差し押さえするためには、債務名義に加え、執行文も必要です。執行文は、その債務名義でたしかに強制執行を行って問題がないことを証明します。債務名義が執行調書の場合は公証人、その他は裁判所に申し立てをすることで、執行文が発行されます。
訴訟を行う場合は仮差し押さえを申し立てよう
訴訟を行う際には、仮差し押さえを申し立てることが必要になる場合もあります。仮差し押さえは、その名の通り、差し押さえへ移行する前に、差し押さえる財産をおさえる効果があります。
仮差し押さえのメリット
訴訟を行う場合には、判決が確定するまで時間がかかるのが普通です。その場合、債務者によって、判決が確定するまでのあいだに、差し押さえしようとしている不動産を処分してしまうことも考えられます。仮差し押さえをすることで、判決が確定するまで、不動産の処分を禁じることができます。
仮差し押さえの申し立て方法
仮差し押さえの命令を得るためには、裁判所に申し立てます。裁判所は、たしかに仮差し押さえの必要があると認めた場合に、仮差し押さえ命令を発行します。
(不動産差し押さえの流れ2)不動産強制競売を申し立てる
債務名義が取得できたら、不動産強制競売を申し立てます。では、どのように競売が行われるのか、その流れを見ていきましょう。
競売の申し立て
競売は、差し押さえする不動産を管轄する地方裁判所に申し立てます。申し立てに当たっては、
- 申立書
- 債務名義
- 不動産登記簿謄本
- 公課証明書
- 登記事項証明書(法人)または住民票(個人)
- 請求権目録
- 住宅地図、建物図面
などの書類が必要です。
競売の開始決定と入札
裁判所は、申立書類を確認し、問題がないと判断すれば、競売の開始を決定します。裁判所による調査のあとに入札が開始され、売却基準価格の8割以上で、最も高値をつけた買受希望者に落札されます。
不動産の売却
買受希望者が代金を支払うと、所有権の移転登記が行われ、売却は完了します。
配当
売却代金の中から、債権者に配当が行われます。不動産に抵当権が付いている場合には、抵当権者に優先的に配当されます。もし、抵当権の金額が売却代金を上回っている場合には、一般の債権者には配当がありません。不動産を差し押さえるに当たっては、抵当権の状況を詳しく確認しておくことが重要です。
不動産の差し押さえは弁護士に相談しよう!
債権を回収するには、不動産の差し押さえが本当に最善の方法なのか、慎重な検討が必要です。また、不動産を差し押さえるにも、債務名義をどのように取得するのか、選択肢は複数あります。そのような難しい選択を迫られる時、法律の専門的な知識を持ち、物心両面からサポートしてくれる弁護士のような存在は、大変心強いものとなるでしょう。
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