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管理費の滞納は、マンション全体の問題
理事会の会計報告を見たら、ある住戸の管理費と修繕積立金が、もう1年以上払われていないことが分かった。督促の文書を送っても返事がない。このまま放っておいてよいのか、どうやって回収すればよいのか。マンションの管理組合の役員になった方から、こうした相談を受けることがよくあります。
管理費や修繕積立金は、マンションの廊下やエレベーターなど共用部分の清掃や設備の点検、将来の大規模修繕に充てられる、マンションの維持に欠かせないお金です。一部の住戸が滞納すると、その分をほかの住人が負担することになったり、必要な修繕ができなくなったりして、マンション全体の資産価値にも影響します。
管理費の滞納は、放置するほど額が膨らみ、回収が難しくなります。区分所有法は、管理組合が滞納された管理費を回収しやすいよう、特別な権利を認めています。滞納に早く気づき、段階を踏んで確実に対応することが、回収の鍵です。
この記事では、マンションの管理組合の相談を受ける弁護士の立場から、管理費の滞納が起きたときの対応の流れ、法的な手続き、滞納者が住戸を売った場合の扱い、時効の注意点、滞納を防ぐための仕組みづくりまでを説明していきます。滞納してしまった区分所有者の方に向けた内容もあわせて紹介します。
管理費の回収は、管理組合の役員にとって負担の大きい仕事です。けれども、滞納を放置することは、きちんと払っているほかの区分所有者に対して不公平であり、マンション全体の将来にも関わります。役員の方が一人で抱え込まず、管理会社や専門家の力を借りながら、ルールに沿って対応することが大切です。
管理費と修繕積立金の性質
まず、管理費と修繕積立金がどのようなお金なのかを確かめておきましょう。マンションの区分所有者は、管理規約に基づいて、毎月、管理費と修繕積立金を管理組合に支払います。
| 項目 | 使い道 |
|---|---|
| 管理費 | 共用部分の清掃、エレベーターなどの設備の点検、共用部分の電気代、管理会社への委託費、日常の小規模な修繕など |
| 修繕積立金 | 外壁の塗装、屋上の防水、給排水管の交換など、計画的な大規模修繕のための積立て |
管理費の滞納が増えている背景
マンションの築年数がたつにつれて、区分所有者の高齢化や、相続で住戸を引き継いだ人が住まずに放置するケースが増え、管理費の滞納が問題になりやすくなっています。年金の収入だけでは管理費や修繕積立金の値上げに対応できない区分所有者もいます。滞納の問題は、マンションの高齢化とも深く関わっています。
支払いの義務は住んでいなくても変わらない
管理費や修繕積立金は、区分所有者であることに基づいて支払う義務があるもので、実際に住んでいるかどうか、共用部分を使っているかどうかにかかわりません。部屋を空き家にしている場合や、賃貸に出している場合でも、区分所有者が支払う義務を負います。「エレベーターを使わない」「管理会社の対応に不満がある」といった理由で、支払いを拒むことはできません。
管理費と修繕積立金の区分
管理費と修繕積立金は、使い道が違うため、会計を分けて管理するのが原則です。修繕積立金を日常の管理の費用に流用すると、将来の大規模修繕の資金が足りなくなります。滞納された分を回収したときも、どの費目に充てるのかを明確にして、会計に反映させることが大切です。
滞納がマンションに与える影響
- 日常の管理の費用が足りなくなり、清掃や点検の水準が下がる
- 修繕積立金が不足し、大規模修繕の時期が遅れる、一時金の徴収が必要になる
- ほかの住人の不公平感が高まり、支払いの意識が下がる
- マンションの資産価値が下がり、売却の価格にも影響する
管理費の額の決め方
管理費や修繕積立金の額は、管理規約や総会の決議で決められ、各住戸の専有部分の床面積の割合に応じて負担するのが一般的です。額の見直しは総会で決めるので、値上げに反対だった区分所有者も、決議された額を支払う義務を負います。
滞納が起きたときの対応の流れ
管理費の滞納が起きたら、次のような段階を踏んで対応します。いきなり法的な手続きに進むのではなく、話し合いの機会を持つことが大切です。
- 支払いの期日の後、入金を確かめ、滞納を把握する。
- 管理会社から、電話や文書で支払いを求める。
- 滞納が続けば、理事会の名前で督促状を送る。
- 滞納者と面談し、滞納の理由と支払いの計画を聞き取る。
- 支払いの計画がまとまれば、分割での支払いの合意書を作る。
- 支払われなければ、内容証明郵便で最終の督促をする。
- それでも支払われなければ、支払督促や訴訟などの法的な手続きをとる。
早めの対応が大切な理由
滞納が数か月分のうちであれば、滞納者も支払える額にとどまっていることが多く、話し合いで解決しやすい段階です。滞納が1年、2年と続くと、滞納額が膨らみ、一度に払うことが難しくなります。滞納者が生活に困っている場合は、ほかの借金も抱えていることが多く、回収はさらに難しくなります。滞納に気づいたら、すぐに対応を始めることが大切です。
督促状の書き方
督促状には、滞納している期間と額、支払いの期限、支払いの方法、期限までに支払われない場合は法的な手続きをとる予定であることを書きます。感情的な表現は避け、事実と金額を正確に伝えることが大切です。最終の督促は、送った日と内容を証明できるよう、内容証明郵便で送りましょう。
滞納者の事情を知る
滞納の理由は、単なる払い忘れから、失業や病気、住宅ローンの返済の困難、相続の手続きの遅れまで、さまざまです。住戸を賃貸に出している区分所有者が、家賃の滞納を受けて管理費を払えなくなっていることもあります。理由によって、とるべき対応が変わるので、まずは事情を確かめることが大切です。
面談での配慮
滞納者と面談する際は、管理組合の役員が一人で対応するのではなく、複数の役員や管理会社の担当者が同席するのが望ましいでしょう。話し合いの内容は、日時とともに記録に残します。滞納者を責め立てるのではなく、事情を聞き、支払いの見通しを一緒に考える姿勢で臨むと、話し合いが進みやすくなります。
区分所有者が行方不明の場合
滞納している区分所有者の行方が分からない場合でも、住民票や戸籍の附票をたどって、住所を調べることができます。それでも見つからない場合は、公示送達という方法で訴訟を起こし、判決を得たうえで、住戸を差し押さえて競売にかけることになります。行方不明の区分所有者の住戸は、管理が行き届かず、建物全体に影響することもあるので、早めの対応が必要です。
管理会社との役割分担
多くのマンションでは、管理会社が管理委託契約に基づいて、滞納者への初期の督促を行っています。ただし、管理会社が行う督促には限りがあり、法的な手続きは管理組合が主体となって行います。管理委託契約で、管理会社がどこまで督促をするのかを確かめ、管理会社から滞納の状況を定期的に報告してもらいましょう。
滞納者との話し合いの進め方
法的な手続きに進む前に、滞納者と話し合って解決できれば、時間も費用もかかりません。
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 滞納の理由 | 一時的な事情か、継続的に払えない状態かで対応が変わる |
| 収入の見通し | 分割で払える額を見きわめる |
| 住宅ローンの状況 | ローンも滞納していれば、住戸が競売になる可能性がある |
| 住戸の今後 | 住み続けるのか、売る予定があるのか |
分割の額の決め方
分割の額は、毎月の管理費と修繕積立金に、滞納分の一部を上乗せする形で決めるのが一般的です。滞納者の収入に照らして無理な額を約束させても、すぐに支払いが止まってしまいます。確実に払える額で合意し、滞納の解消までの期間を明確にしておきましょう。
合意の後の管理
分割での支払いに合意した後も、毎月の入金をきちんと確かめましょう。一度でも支払いが遅れたら、すぐに連絡して理由を確かめることが大切です。約束が守られないまま時間がたつと、再び滞納額が膨らんでしまいます。
公正証書や即決和解の活用
分割での支払いの合意を、公正証書にしたり、簡易裁判所の即決和解の手続きを使ったりしておくと、支払いが止まったときに、訴訟を起こさずに強制執行ができます。滞納額が大きい場合や、過去にも約束が守られなかった場合は、こうした方法も検討しましょう。
法的な手続きで回収する
督促しても支払われない場合は、裁判所の手続きを使って回収します。管理組合には、ほかの債権者にはない特別な権利も認められています。
| 手続き | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 支払督促 | 簡易裁判所の書記官が、書類の審査だけで支払いを命じる | 滞納者が滞納の事実を争っていない |
| 少額訴訟 | 60万円以下の請求を、原則1回の期日で審理する | 滞納額が少なく、証拠がそろっている |
| 通常の訴訟 | 裁判所で審理し、判決で支払いを命じてもらう | 滞納額が大きい、滞納者が争っている |
| 先取特権に基づく競売 | 区分所有法の先取特権に基づいて、滞納者の住戸を競売にかける | 判決を得なくても、住戸から回収したい |
| 区分所有法59条の競売 | 共同生活の障害が著しい場合に、集会の決議を経て、住戸の競売を請求する | ほかの方法では回収できない悪質な長期の滞納 |
支払督促と訴訟の選び方
滞納者が滞納の事実を争っていない場合は、書類の審査だけで済む支払督促が手軽です。ただし、滞納者が異議を出すと通常の訴訟に移るので、争われそうな場合は、はじめから訴訟を起こすほうが早いこともあります。滞納額が60万円以下で証拠がそろっている場合は、少額訴訟も選択肢になります。
支払督促の流れ
支払督促は、滞納者の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に申し立てます。書記官が支払督促を出し、滞納者が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、仮執行宣言を申し立てることができます。仮執行宣言がつけば、強制執行ができるようになります。手数料は訴訟の半額で、裁判所に出向く必要もありません。
弁護士に依頼するメリット
管理費の回収を弁護士に依頼すると、督促の段階から、弁護士の名前で書面を送ることができます。弁護士からの書面を受け取ると、それまで督促を無視していた滞納者が、支払いに応じることも少なくありません。法的な手続きに進む場合も、時効の管理や、差し押さえる財産の調査を含めて任せることができます。
法的な手続きをとるための決議
管理組合が訴訟などの法的な手続きをとるには、管理規約の定めに従って、理事会の決議や総会の決議が必要です。多くの管理規約では、管理費の滞納については、理事会の決議で、理事長が管理組合を代表して訴訟などの手続きをとることができると定めています。規約の定めを確かめたうえで、必要な決議を経てから手続きを始めましょう。
59条の競売の請求
区分所有法59条に基づく競売の請求は、滞納者の住戸を競売にかけて、マンションから排除する強い手段です。滞納が長期に及び、ほかの方法では回収の見込みがなく、共同生活の維持が難しいほどの状態であることが必要とされます。集会の特別決議を経たうえで訴訟を起こすことになるため、弁護士と相談して、要件を満たすかを慎重に見きわめましょう。この競売では、滞納者が住戸を失うことになり、新しい所有者から滞納分を回収できる点に意味があります。
訴訟の相手
訴訟の相手は、滞納している区分所有者です。区分所有者が亡くなっている場合は、その相続人が相手になります。住戸を共有している場合は、共有者それぞれが管理費の支払いの義務を負うので、共有者全員を相手にすることもあります。相手を誤ると、判決を得ても回収できないことがあるので、登記簿や戸籍で確かめておきましょう。
判決の後の強制執行
判決や支払督促で支払いが正式に命じられても滞納者が支払わない場合は、強制執行で回収します。滞納者の給料や預金を差し押さえる方法のほか、住戸そのものを差し押さえて競売にかける方法があります。住戸に住宅ローンの抵当権がついている場合は、競売の代金が先に金融機関に配当され、管理組合に回ってこないこともあるので、どの財産を差し押さえるかを慎重に検討します。
滞納者の財産の調べ方
強制執行をするには、差し押さえる財産を管理組合の側で特定する必要があります。住戸そのもののほか、勤務先が分かれば給料、取引のある金融機関が分かれば預金を差し押さえられます。財産が分からない場合は、裁判所の財産開示手続や、第三者からの情報取得手続を使って、財産を調べることができます。
訴訟を起こす前の準備
- 管理規約と、管理費の額を決めた総会の議事録
- 滞納の期間と額を示す一覧(月ごとの請求額と入金の記録)
- 督促状や内容証明郵便の控え
- 訴訟を起こすことを決めた理事会や総会の議事録
- 滞納者の住所や連絡先、住戸の登記事項証明書
弁護士費用や遅延損害金
管理規約で、滞納者に対して、遅延損害金や、督促や訴訟にかかった弁護士費用を請求できると定めていることがあります。国土交通省のマンション標準管理規約にも、こうした定めが置かれています。規約に定めがあれば、滞納している管理費とあわせて、これらの費用の支払いを求めることができます。
滞納者が住戸を売った場合と時効
新しい所有者にも請求できる
区分所有法では、滞納された管理費や修繕積立金は、滞納者から住戸を買った人や、競売で取得した人などの新しい区分所有者に対しても請求できるとされています。そのため、滞納者が住戸を売っても、管理組合は、新しい所有者に滞納分の支払いを求めることができます。新しい所有者は、支払った分を、前の所有者に請求することになります。
競売で取得した人も同じ
滞納者の住戸が、住宅ローンの滞納によって競売にかけられた場合、競売で住戸を取得した人も、滞納された管理費を支払う義務を負います。管理組合は、競売の手続きが始まったことを知ったら、滞納の額を把握し、新しい所有者が決まった後に請求できるよう準備しておきましょう。競売の物件の資料にも、滞納の額が記載されることがあります。
売買の際の精算
滞納者が住戸を売る場合、売却の代金から滞納分を精算してもらうのが最も確実な回収の方法です。管理組合は、不動産会社から滞納の額を問い合わせられたら、正確な額を回答し、決済の時に精算してもらうよう求めましょう。精算されないまま売買が済んだ場合でも、新しい所有者に請求できます。
先取特権
さらに、管理組合は、滞納された管理費について、滞納者の区分所有権や、建物に備えつけた動産に対して、先取特権という特別な担保の権利を持っています。この権利に基づいて、判決がなくても、住戸の競売を申し立てることができます。ただし、先取特権は、登記された抵当権より後の順位になるため、住宅ローンが残っている住戸では、実際に回収できる額が限られることがあります。
重要事項説明での扱い
中古マンションの売買では、重要事項説明で、売主の住戸に管理費の滞納があるかどうかと、その額が説明されます。買主は、滞納分を引き継ぐことになるため、売主に決済の時に精算してもらうのが一般的です。管理組合は、不動産会社から滞納の有無を問い合わせられた場合は、正確に回答することが大切です。
住戸を賃貸に出している場合
住戸を賃貸に出している区分所有者が滞納している場合、住んでいる借主に管理費を請求することはできません。管理費の支払いの義務を負うのは、区分所有者だからです。ただし、区分所有者と連絡がとれない場合は、借主を通じて区分所有者の連絡先を確かめられることもあります。
相続が絡む滞納
区分所有者が亡くなり、相続人が住戸を引き継がないまま放置していると、滞納が長期化しがちです。相続人が遠方に住んでいて、住戸の存在や管理費の支払いの義務を知らないこともあります。区分所有者が亡くなったことが分かったら、早めに相続人を調べ、管理費の支払いについて連絡をとりましょう。
時効に注意
管理組合が見落としやすいのが時効です。管理費や修繕積立金の請求の権利は、支払いの期日から5年で時効にかかります。滞納が長く続いている場合、古い分から順に時効が進んでいきます。督促状を送るだけでは、時効は止まりません。時効の完成が近づいている場合は、支払督促や訴訟を起こすか、滞納者に滞納額を認める書面に署名してもらうなどして、時効の進行を止める必要があります。
滞納を防ぐための仕組みづくり
ここからは、予防の話です。管理費の滞納は、起きてから対応するより、起きないようにする仕組みを整えておくことが大切です。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 口座振替 | 管理費と修繕積立金を、区分所有者の口座から自動で引き落とす |
| 滞納の早期の把握 | 管理会社から毎月、滞納の状況を報告してもらう |
| 対応の手順の明文化 | 滞納が何か月になったら、どの対応をとるかを細則などで決めておく |
| 管理規約の整備 | 遅延損害金、弁護士費用の請求、理事長による訴訟の提起などを規約に定める |
| 区分所有者の情報の把握 | 住戸を賃貸に出している区分所有者の連絡先を把握しておく |
修繕積立金の値上げと滞納
修繕積立金の値上げを決めた後に、滞納が増えることがあります。値上げの必要性を十分に説明しないまま決議すると、反対していた区分所有者の不満が、滞納という形で表れることもあります。長期修繕計画に基づいて必要性を丁寧に説明し、段階的に値上げするなど、区分所有者の理解を得る工夫が大切です。
滞納者を出さないための情報提供
管理費の使い道や、修繕積立金の積立ての状況を、区分所有者に分かりやすく知らせることも、滞納の防止につながります。自分が払っているお金が、マンションの維持にどう役立っているのかが分かれば、支払いの意識も高まります。総会の資料や、定期的な広報で、会計の状況を丁寧に伝えましょう。
対応の手順を決めておく
滞納への対応が役員の判断に委ねられていると、役員が近所づきあいを気にして督促をためらい、対応が遅れがちです。滞納の月数に応じて、督促状の送付、面談、内容証明郵便、法的な手続きと、とるべき対応をあらかじめ細則で決めておけば、役員が替わっても、一貫した対応ができます。
管理会社の報告の受け方
管理会社からは、毎月の会計の報告の中で、滞納の住戸と滞納額、督促の状況を報告してもらいましょう。滞納が一定の期間を超えた住戸について、理事会で対応を検討する仕組みを作っておくと、滞納の長期化を防げます。
管理規約の見直し
古い管理規約では、遅延損害金や弁護士費用の請求、理事長による訴訟の提起についての定めがないこともあります。国土交通省のマンション標準管理規約を参考に、滞納への対応に必要な定めを整えておくと、いざというときに素早く対応できます。規約の変更には、総会の特別決議が必要です。
所有者の連絡先を把握する
住戸を賃貸に出している区分所有者や、遠方に住んでいる区分所有者とは、連絡がとりにくいことがあります。区分所有者が亡くなって相続人が分からなくなっている住戸では、滞納が長期化しがちです。区分所有者の名簿を定期的に更新し、連絡先を把握しておくことが、滞納への素早い対応につながります。
管理費を払えなくなった区分所有者の方へ
ここまで、主に管理組合の立場から説明してきましたが、収入の減少などで、管理費を払えなくなってしまった区分所有者の方もいるでしょう。
管理費の滞納は、放置すると住戸を失うことにもつながりかねません。管理組合は、判決を得て住戸を差し押さえたり、悪質な場合は競売を請求したりすることができるからです。
放置せずに管理組合に相談する
管理費を払えなくなったら、督促を無視せず、早めに管理会社や理事会に事情を伝えましょう。事情を説明すれば、分割での支払いに応じてもらえることもあります。督促を無視し続けると、訴訟を起こされ、遅延損害金や弁護士費用まで請求されて、負担がさらに大きくなります。
管理組合との話し合いで伝えたいこと
管理組合に相談するときは、滞納してしまった理由、今の収入の状況、毎月いくらなら払えるか、滞納分をいつまでに解消できそうかを具体的に伝えましょう。誠実に事情を説明し、現実的な支払いの計画を示せば、管理組合も分割での支払いを検討しやすくなります。
住戸の売却や債務整理も検討する
住宅ローンの返済も苦しい場合は、住戸を売って、ローンと滞納した管理費を精算することも考えます。売却しても住宅ローンが残る場合は、任意売却という方法もあります。借金全体の返済が難しい場合は、弁護士に相談して、債務整理を検討しましょう。ただし、滞納した管理費は、住戸を売っても新しい所有者に引き継がれるため、売却の代金から精算するのが一般的です。
具体例で考える|長期の滞納を回収したケース
長期の滞納を回収した例を見てみましょう。あるマンションの管理組合では、一つの住戸の管理費と修繕積立金が3年近く滞納され、滞納額は100万円を超えていました。区分所有者は住戸を賃貸に出していて、管理会社の督促にも応じていませんでした。
困った理事会から相談を受けた弁護士は、まず管理規約を確かめました。規約には、理事会の決議で理事長が訴訟を起こせること、遅延損害金と弁護士費用を滞納者に請求できることが定められていました。滞納の一部は、時効の完成が近づいていたため、すぐに理事会の決議を経て、滞納額と遅延損害金、弁護士費用の支払いを求める訴訟を起こしました。
区分所有者は訴訟に一度も出席せず、管理組合の請求を認める判決が出ました。弁護士は、区分所有者が受け取っている家賃に注目し、借主から区分所有者に支払われる家賃の債権を差し押さえました。これにより、毎月の家賃から、滞納分を少しずつ回収できるようになりました。差押えを受けた区分所有者は、弁護士に連絡してきて、残りの滞納分を一括で支払うことで合意しました。
滞納が長引いていても、判決を得て財産を差し押さえることで回収できることを示す例です。時効の完成の前に訴訟を起こしたことも、回収できる額を守るうえで大切でした。
賃貸に出されている住戸の滞納では、区分所有者が受け取る家賃の債権を差し押さえる方法が有効なことがあります。区分所有者の預金や給料の情報が分からなくても、家賃の差押えで継続的に回収できるからです。
滞納への対応は、手間と費用がかかりますが、放置すれば損失はさらに大きくなります。規約を整え、早めに動くことが、結局はマンション全体の負担を小さくすることにつながります。
また、滞納者から弁護士に連絡があった段階で、残りの滞納分を一括で支払う合意ができたのは、差押えによって支払わざるを得ない状況になったからです。法的な手続きは、それ自体が話し合いを動かすきっかけにもなります。
管理費の滞納に関するよくある質問
滞納者の住戸の水道や電気を止めることはできますか
管理費をどれだけ滞納していても、それを理由に、管理組合が水道や電気の供給を止めることは、原則として許されません。生活に欠かせないライフラインを止める行為は、違法とされるおそれがあります。滞納の回収は、法的な手続きによって行いましょう。
中古マンションを買ったら、前の所有者の滞納分を請求されました
区分所有法の定めにより、新しい所有者も、前の所有者が滞納した管理費を支払う義務を負います。支払った分は、前の所有者に請求できます。購入の前に、重要事項説明書で滞納の有無と額を確かめ、決済の時に売主に精算してもらうよう、売買契約書で定めておくことが大切です。
滞納者が亡くなってしまいました
滞納者が亡くなった場合でも、滞納した管理費の支払いの義務は相続人に引き継がれます。相続人を戸籍で調べ、相続人に請求します。相続人全員が相続放棄をした場合は、相続財産の清算人の選任を家庭裁判所に申し立てるなどの手続きが必要になります。
管理組合の役員として、督促するのが気まずいです
同じマンションに住む住人に督促するのは、誰にとっても気が重いものです。督促は、管理会社や弁護士に任せ、役員は管理組合として必要な決議を行う役割に徹するのも一つの方法です。滞納への対応の手順を細則で決めておけば、役員個人の判断ではなく、ルールに沿った対応だと説明できます。
