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試用期間だから自由に切れると言われていませんか
入社してまだ数か月。ある日呼ばれて、うちには合わないようだから今月で終わりにしたい、と告げられた。試用期間中だから問題ないと言われ、それ以上は何も説明されない。
何が足りなかったのかも分からない。改める機会すら与えられていない。それなのに、結論だけが先に決まっている。そんな状況に置かれている方もいるでしょう。
理由を尋ねても、総合的に判断した結果だとしか返ってこない。それでは納得のしようがありません。
納得できないまま受け入れるしかないのだろうか。そう考えて調べ始めた方に向けて、この記事を書いています。調べ始めたということ自体が、すでに一歩前に出ているということです。
前の職場を辞めて移ってきたのに、いきなり振り出しに戻される。住まいを移した方、家族に説明して転職を決めた方であれば、なおさら途方に暮れるでしょう。
周囲にどう伝えればよいのかも分からない。短期間で辞めたという事実が、次の就職活動で重荷になるのではないか。そんな不安も重なります。だからこそ、言われるままに受け入れる前に、まず確かめてください。確かめる作業のほとんどは、手元の書類を読むところから始まります。
ここではっきりお伝えします。試用期間中であっても、会社が自由に辞めさせられるわけではありません。
試用期間という言葉には、お試しの期間という響きがあります。そのせいか、会社の側も働く側も、この期間なら簡単に終わらせられると思い込んでいることがよくあります。
とくに、人事の専門部署を持たない会社では、この誤解が根強く残っています。悪意というより、単純に理解が足りていないだけということも少なくありません。
ですから、根拠を示して伝えるだけで態度が変わることもあります。争う前にできることがあるということです。
しかし、法律上の位置づけは違います。試用期間中であっても、すでに労働契約は成立しています。
ですから、その契約を会社が一方的に終わらせるのであれば、それは解雇にほかなりません。解雇である以上、それなりの理由と手続きが求められます。
この一点を知っているだけで、会社との話し方が変わります。試用期間中だから、という説明をそのまま受け入れる必要はありません。
会社の側も、指摘されて初めて気づくことがあります。まずは根拠を確かめるところから始めましょう。
もっとも、通常の解雇に比べれば、認められる幅がやや広いことも事実です。ここを正確に押さえておく必要があります。
広いといっても、無制限という意味ではありません。どこまでが認められ、どこからが認められないのか。その線引きを知ることが、この記事の目的です。線引きが分かれば、自分の事案がどちら側にあるのかも見えてきます。
この記事では、試用期間とはどういう期間なのか、本採用の拒否がどう扱われるのか、認められやすい理由とそうでない理由、会社に求められる指導、期間の延長や途中での打ち切り、そして納得できないときの動き方をお話しします。
言葉はできるだけ平易にしました。法律を勉強する必要はありません。どこに線が引かれているのかを知っていただければ、それで足ります。まずは、自分の雇用契約書を手元に置いてから読み進めてみてください。
試用期間がいつまでと書かれているか。本採用の基準について何か記載があるか。読み返すだけで見えてくることがあります。
入社のときに渡された書類の束は、たいてい封を切ったまましまい込まれています。取り出してみてください。
試用期間とはどういう期間か
まず、位置づけを確かめておきましょう。言葉の印象と、法律上の扱いには大きな隔たりがあります。
その隔たりこそが、多くの誤解を生んでいます。会社の担当者も、同じ誤解を抱えていることが少なくありません。
試用期間は、採用した人が本当にその仕事に適しているかを、会社が実際の勤務を通じて見極めるために設けられる期間です。
書類や面接だけでは分からないことがある。だから実際に働いてもらって判断したい。会社の側にそうした必要があること自体は、理解できる話です。問題は、その必要をどこまで振りかざせるのかという点にあります。会社の必要と、働く人の生活。この二つをどう釣り合わせるかが問われています。
大切なのは、この期間中もすでに労働契約が成立しているという点です。まだ採用が決まっていない、という状態ではありません。
ここを取り違えたまま話を進めると、そもそも争えないと思い込んでしまいます。まず押さえておいてください。この誤解のせいで、何ひとつ動かないまま幕を引いてしまう方が大半です。争えると知っていれば、少なくとも選ぶことはできます。
法律上は、会社の側に解約する権利が留保された労働契約だと整理されています。難しく聞こえますが、要は、通常より広い範囲で契約を終わらせられる余地が残されている、という意味です。余地が残されているだけであって、自由に使えるわけではありません。ここが肝心なところです。会社が使えるのは、実際に働いてみて初めて分かった事情に限られる、と考えてください。
ですから、賃金も支払われますし、労働時間や休日についての決まりもそのまま適用されます。有給休暇の付与についても、この期間は通算されます。
試用期間中は残業代を出さない、有給は与えないといった扱いは認められません。もし言われているのであれば、それ自体が問題です。
賃金についても、試用期間中は低く設定されている職場があります。契約で定められているのであれば直ちに違法とは言えませんが、地域の最低の水準を下回ることはできません。
社会保険についても、条件を満たすのであれば加入することになります。試用期間だからという理由で外すことはできません。加入していないのであれば、その点自体が確かめるべき事柄になります。
入社してから一定の期間が過ぎているのに手続きがされていないのなら、行政の窓口に相談できる事柄です。
そして、解雇の予告に関する定めも及びます。働き始めて十四日を超えて引き続き雇われているのであれば、原則として三十日前の予告か、それに代わる手当が必要になります。試用期間中は予告が要らないと説明する会社がありますが、それは正確ではありません。
まったく予告がなかったのであれば、三十日分すべてが対象になります。予告が一部あったのなら、足りない日数分が対象です。
試用期間の長さは、就業規則や雇用契約書で定められます。数か月とする職場が多いでしょう。
期間がいつまでなのかを把握していない方が意外に少なくありません。まずはご自身の期間を確かめてください。期間の終わりが近づいているのであれば、そこから逆算して動く必要があります。
あまりに長い期間を設定することは、働く側を不安定な立場に置き続けることになりますので、認められないと考えられています。一年を超えるような設定であれば、その長さ自体を争う余地が出てきます。職務の内容に照らして、そこまでの期間が必要なのかという視点で判断されます。
本採用の拒否も解雇である
次に、期間が満了する際の話です。相談として持ち込まれる場面のなかで、もっとも多いのがこの形です。
そして、争えると知らずに諦めてしまう方がもっとも多い場面でもあります。試用期間が終わるときに、本採用しないと告げられる。これを本採用拒否と呼びます。
言葉の響きからすると、まだ採用していなかったものを採用しないだけ、と受け取れます。しかし、そうではありません。
会社の説明でも、採用を見送ることにしました、という言い方をされることがあります。柔らかい表現ですが、中身は解雇です。
すでに労働契約は成立していますから、これを会社の側から終わらせることは解雇にあたります。ここが出発点です。会社が本採用拒否という言葉を使ったからといって、扱いが変わるわけではありません。名称ではなく、実際に何が起きているかで判断されます。
ですから、客観的に合理的な理由があり、社会通念に照らして相当と認められることが必要になります。
そして、その理由が存在したことを示す役目を負うのは会社です。あなたのほうが向いていることを証明する、という順序ではありません。
ただし、通常の解雇と比べれば、認められる幅はやや広くなります。試用期間は見極めのために設けられたものだからです。
見極めるための期間だと定めておきながら、その結果をまったく反映できないのでは、期間を設ける意味がなくなってしまうからです。
とはいえ、広く認められるのはあくまで理由の範囲であって、手続きが免除されるわけではありません。予告についても、理由を書面で示すことについても、通常と変わりません。
具体的には、採用の時点では知ることができなかった事情が明らかになり、その事情に照らして引き続き雇うことが適当でないと判断される場合に、認められると考えられています。
ですから、会社に説明を求めるときは、それが採用の段階では分からなかったことなのかを尋ねてみてください。この一点で議論の筋が変わります。面接で確かめられたはずのことを持ち出しているのであれば、そう指摘して構いません。
逆に言えば、採用のときにすでに分かっていたことを後から持ち出すのであれば、それは理由になりません。
面接で伝えていたことを、後から問題視される。そうした場面が実際にあります。応募のときの書類ややり取りが残っていれば、確かめておいてください。履歴書の写しや、応募時のメールが残っていないかを探してみてください。
経歴も、資格の有無も、採用の段階で確かめられたはずのことです。それを見落としていた会社の側の落ち度を、働く人に負わせることはできません。
もっとも、こちらから虚偽の申告をしていた場合は別です。ここは正直に整理しておいてください。
ただし、些細な記載の誤りまでが理由になるわけではありません。業務に関わる重要な事項についての虚偽かどうかが問われます。
期間の途中で打ち切る場合は、さらに厳しく見られます。見極めの期間として定めた以上、その期間を待たずに結論を出すには相応の事情が要るからです。この点は、後の章であらためて詳しくお話しします。
認められやすい理由と、認められにくい理由
では、どういう理由なら認められるのでしょうか。整理しておきます。認められやすい型と、認められにくい型に分けて見ていきます。自分の事案がどちらに近いかを考えながら読んでみてください。
認められやすいのは、次のような場面です。
- 正当な理由なく欠勤や遅刻を繰り返し、注意しても改まらない。
- 経歴や資格について、採用時に虚偽の申告があった。
- 職場の規律に反する行為があり、指導しても続いている。
- 業務に必要な適性が明らかに欠けており、配置を変えても改善が見込めない。
共通しているのは、実際の勤務を通じて初めて明らかになった事情であること、そして会社が働きかけたにもかかわらず改まらなかったことです。
この二つがそろっていなければ、認められにくくなります。片方だけでは足りない、と考えてください。会社の説明を聞くときも、この二つの視点で確かめてみてください。
それは働いてみて初めて分かったことなのか。そして、直す機会は与えられたのか。この二つです。反対に、認められにくいのは次のような場面です。相談で持ち込まれるのは、圧倒的にこちらの型です。六つに分けて見ていきます。
ひとつめが、能力が期待に届かないというだけの場合です。入って数か月の人に、経験者と同じ働きを求めることはできません。
期待していたほどではなかった、という感覚だけで契約を終わらせられるのであれば、試用期間はただの使い捨ての仕組みになってしまいます。会社が求めていた水準がどこにあったのかも、そもそも示されていないことがほとんどです。
二つめが、指導や注意をしていない場合です。何が問題なのかを伝えられていないのに、改善しなかったことを責めるのは筋が通りません。
本人に伝えないまま社内で評価だけを下げていた、という事案もあります。それでは改めようがありません。評価の結果を本人に伝える仕組みがあったかどうかも、確かめてみる価値があります。
三つめが、抽象的な理由しか示されない場合です。社風に合わない、協調性がないといった説明は、それだけでは根拠になりません。
具体的にどの場面のどの行動を指しているのか。そこまで示せなければ、検証しようがないからです。説明を求めても具体化できないのであれば、そこが弱点になります。
四つめが、採用時に分かっていたはずの事情を理由とする場合です。先ほどお話ししたとおりです。採用のときに提出した書類の写しが手元にあれば、確かめておいてください。提出したものを控えていない方も多いのですが、記憶をたどるだけでも整理になります。
五つめが、本人の落ち度でない事情による場合です。会社の業績が悪化した、部署がなくなった。これは会社の側の事情ですから、別の枠組みで判断されます。
この場合、人員削減としての厳しい条件で判断されることになります。試用期間中だからという理由で緩められるわけではありません。
人員を減らす必要があったか、解雇を避ける努力を尽くしたか、対象者を選ぶ基準が公平だったか、説明を尽くしたか。この四つが問われます。
六つめが、法律が禁じている理由による場合です。妊娠、育児休業の取得、労働組合への加入、権利の行使への報復。いずれも許されません。
会社が別の理由を表向きに掲げていても、実質を見て判断されます。時期や経緯から本当の理由を示していくことになります。
本採用拒否が認められやすい理由と、認められにくい理由を比べてみます。
| 認められやすい理由 | 認められにくい理由 |
|---|---|
| 採用時に申告した経歴や資格に重大な偽りがあった | 仕事の覚えが少し遅い |
| 無断欠勤が続き、注意しても改まらない | 指導を受けないまま「能力不足」とされた |
| 業務に必要な能力が大きく欠け、指導を重ねても改善しない | 上司と性格が合わない |
| 健康上の理由で業務を続けられない状態 | 会社の業績が少し悪くなった |
なお、試用期間中でも、雇われてから14日を超えていれば、解雇するには30日前の予告か解雇予告手当の支払いが必要です(労働基準法21条)。「試用期間だから手当は出ない」と言われても、入社から14日を過ぎていれば、その説明は誤りです。
会社に求められる指導と改善の機会
実務でとりわけ重視されるのが、この点です。争いの結論を分ける、いちばん大きな要素だと言ってもよいでしょう。そして、多くの会社がここでつまずいています。ですから、確かめる価値があります。
会社は、見極めるために試用期間を設けています。しかし、見極めるだけでよいわけではありません。放っておいて結果を眺めるだけなら、それは見極めではなく単なる選別です。採用した以上、育てる責任も会社が負っているという考え方が根底にあります。
働く人が力を発揮できるよう、必要な教育や指導を行うことも会社の役割です。何も教えずに、できないから終わりというのでは、見極めたことになりません。
とくに未経験で採用したのであれば、教える責任はより重くなります。経験者として採用した場合とは、求められる水準が違います。採用の際にどう説明されたか、求人にどう書かれていたか。ここも確かめておいてください。ですから、争いになったときには、会社がどういう指導をしたのかが問われます。
そして、それを示す責任は会社の側にあります。あなたが自分の努力を証明しなければならない、という構図ではありません。とはいえ、こちらに材料があれば主張はより通りやすくなります。
いつ、誰が、どういう内容の指導をしたのか。それを記録に残しているのか。改善のための猶予を与えたのか。これらを示せないのであれば、会社の判断には根拠が乏しいと評価されやすくなります。
指導の記録を残している会社は、実際にはそう多くありません。ここが争いの糸口になることがよくあります。会社が後から記録を作ることもありますが、日付や内容の不自然さから見抜けることがあります。
ご自身の側でも、振り返ってみてください。何が問題だと言われたことがあったでしょうか。改善するよう求められたことは。
面談の場で何を言われたか、日報や連絡へどんな返答があったか。思い出せる範囲で書き出しておいてください。カレンダーや当時の予定を眺めていると、忘れていた場面がよみがえることがあります。
一度も言われた覚えがないのであれば、それは大切な事実です。書き留めておいてください。同期で入った人がいるなら、その人がどういう指導を受けていたかも参考になります。自分だけが指導を受けていなかったのであれば、公平さの面でも問題があります。
逆に、注意を受けていたのであれば、それに対して自分がどう対応したかも整理しておきます。改善しようと努めた事実があれば、それも意味を持ちます。
指摘を受けて質問した、やり方を変えた、確認を増やした。そうした行動があったのなら、それを示せる記録を探してみてください。
また、そもそも配属された業務が、採用時に説明されていたものと違っていた。そうした場合には、適性を欠くという評価自体が的外れということになります。
求人の内容や、面接での説明と照らし合わせてみてください。話が違うのであれば、それは会社の側の問題です。募集の内容は画面ごと控えておきましょう。あとで消されてしまうことがあります。
試用期間の延長や、途中での打ち切り
次に、期間そのものをめぐる問題を見ておきましょう。相談としてよく持ち込まれる二つの場面を取り上げます。延長と、途中での打ち切りです。
まず、期間の延長です。もう少し様子を見たいので、試用期間を延ばしたいと言われることがあります。唐突に告げられて、断ってよいのかどうか分からず戸惑う方が多い場面です。
延長するには、就業規則などに根拠が必要だと考えられています。何も定めがないのに一方的に延ばすことはできません。
まずは規程を開いて、延長についての記載があるかを確かめてください。書かれていなければ、その時点で根拠を欠いています。あわせて、延長できる期間の上限が定められているかも見ておきましょう。
また、根拠があるとしても、延ばすだけの合理的な事情が求められます。不安定な立場に置かれる期間が長くなるからです。何度も繰り返し延長されるような運用は、それ自体が問題になり得ます。いつまで見極めるつもりなのか、という話になるからです。
もっとも、延長には別の側面もあります。本採用を拒否する代わりに、もう少し機会を与えるという意味を持つ場合があるからです。
ですから、延長を提案されたときに、それを拒むことが常に得策とは限りません。状況を見て判断してください。
判断するために、何が改善されれば本採用に至るのかを書面で示すよう求めてください。示せないのであれば、延長の目的そのものが疑わしくなります。
示してもらえたなら、それは目標がはっきりしたということでもあります。前向きに受け取れる場面もあります。次に、期間の途中での打ち切りです。こちらは、期間の満了時よりも厳しく判断されます。
見極めの期間として定めておきながら、その期間を全うさせないのですから、相応の事情が必要になります。会社自身が定めた期間を、自分の都合で短くすることになるからです。
入社して間もない時期に、ほとんど指導もないまま打ち切られたのであれば、争える可能性は高いと言えます。
とくに、入って数週間という段階での打ち切りは、見極めるだけの材料が会社の側にもないはずです。何をもって適性がないと判断したのか。尋ねてみる価値があります。
もうひとつ、契約に期間の定めがある形で採用された場合です。試用期間という名目でも、実質的に期間を定めた契約になっていることがあります。
この場合、期間が満了したときの扱いも変わってきます。雇止めとして判断される枠組みに移るからです。
この場合、期間の途中で終わらせるにはさらに重い理由が求められます。契約書の記載を確かめてみてください。
期間を記す欄に、始まりと終わりの日付が入っているでしょうか。何も書かれていないなら、期間の定めがない契約として扱われる余地があります。
納得できないときの動き方
ここからは実際の手順です。順を追ってお話しします。
心の整理がつかない段階でも、資料の確保だけは先に進めてください。日が経つほど手が届かなくなります。
最初にしたいのは、判断の理由を文書にしてもらうことです。その内容を記した証明書は、働く側から発行を請求できることになっています。
試用の期間中でも請求できますし、会社は断れません。文書が残れば、あとから別の説明に切り替えることが難しくなります。
求めるときは口頭ではなく、書面やメールで行ってください。求めた事実そのものが記録になります。
次に、雇用契約書と就業規則を確かめます。試用期間がいつまでと定められているか、本採用の基準が書かれているか。
三つめに、経緯を時系列で書き出します。いつ配属され、どういう指導を受け、いつ何を告げられたのか。覚えているうちに手をつけてください。時間が空くほど、細かな部分がぼやけていきます。
四つめに、指導の記録が残っていないかを探します。メールでの指示、面談の際のメモ、評価に関する書面。これらは会社の判断を検証する材料になります。
会社の設備のなかにしかないものは、退職すれば手が届かなくなります。まだ在職しているのであれば、今のうちに写しを取っておいてください。
五つめに、働く意思があることを会社に伝えます。効力を争うのであれば、この点は欠かせません。
準備する順に整理しておきます。
- 解雇の理由を記載した証明書。会社に交付を求めてください。
- 雇用契約書と労働条件通知書。試用期間の定めを確かめます。
- 就業規則。本採用の基準や延長についての記載を見ます。
- 指導や評価に関する記録。メールや面談のメモも含みます。
- 給与明細。請求の基礎になる額が分かります。
- 経緯をまとめたメモ。配属から告知までを時系列で。
すべてがそろわなくても構いません。あるものを持って相談してください。
そのうえで、文書による申し入れから始めます。取り合ってもらえないなら、裁判所を使う段階に移ることになります。
この分野には、限られた期日のなかで結論を目指す手続きも用意されています。身構えるほどの長丁場になるとは限りません。あわせて、次の生活の見通しも立ててください。争うことと、次を探すことは両立します。
新しい勤め先が決まっても、それまでの主張が消えてなくなるわけではありません。仕事探しは安心して進めてください。
離職の理由がどう記載されるかも確かめておいてください。会社の都合による離職か、自分の都合による離職かで、失業給付を受け取れる時期が変わります。
離職票を受け取ったら、その場で署名する前に記載を読んでください。おかしいと感じたら、違うと申し出て構いません。
本採用を拒否されたら、次の順で動いてください。
- 本採用を拒否する理由を書面で出すよう、会社に求める。
- 試用期間中に受けた指導の内容と、自分の改善の取り組みを書き出す。
- 雇用契約書や就業規則で、試用期間の長さと本採用の条件を確かめる。
- 拒否に納得できないことを会社に伝え、弁護士に今後の進め方を相談する。
試用期間中の解雇に関するよくある質問
試用期間中なら、会社は自由に辞めさせられるのですか
そうではありません。試用期間中であっても、すでに労働契約は成立しています。ですから、会社が一方的に終わらせるのであれば、それは解雇にあたり、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。ただし、試用期間は適性を見極めるために設けられたものですから、通常の解雇と比べれば認められる幅はやや広くなります。具体的には、採用の時点では知ることができなかった事情が明らかになり、その事情に照らして引き続き雇うことが適当でないと判断される場合です。自由に切れる期間ではない、と理解しておいてください。
能力不足と言われました。争う余地はありますか
十分にあります。入って数か月の人に、経験を積んだ人と同じ働きを期待することはできないからです。争いの場で会社に問われるのは、力を伸ばすための教育や助言をきちんと行ったかという点になります。担当者は誰で、どんな場面で、どう伝えたのか。直す時間をどれだけ与えたのか。ここを裏づける資料を出せなければ、会社の評価そのものが説得力を失います。ご自身については、注意された記憶があるかどうかを思い返してみてください。心当たりがまったくないなら、その点こそ強い材料になります。
即日で辞めるよう言われ、何も支払われていません
確かめる価値があります。予告に関する決まりは、試用の期間中でも外れないからです。入社から二週間を超えて働き続けているなら、猶予を置いた通知か、その代わりのお金が要ります。まずは入った日と、辞めるよう言われた日を数えてみてください。二週間を超えていれば、この部分の支払いを求められる見込みがあります。解雇そのものの当否を争わない場合でも請求できますから、当面をしのぐ支えにもなるでしょう。あわせて、理由を記した書面の交付も忘れずに求めてください。
試用期間を延長したいと言われました。断るべきでしょうか
一概には言えません。期間を延ばすには規程に根拠が要りますし、延ばすに足る事情も必要とされています。定めがないのに一方的に決められるものではありませんので、まずは規程を開いてください。ただし、この提案には救いの面もあります。打ち切る代わりに、やり直す時間を差し出しているという読み方もできるからです。ですから、断ることが常に有利とは限りません。なぜ延ばすのか、何がどうなれば本採用に至るのか。この二点を書面にしてもらったうえで決めることをおすすめします。
