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離職票の一行で、その後の生活が変わる
会社を辞めることになり、しばらくして離職票が届く。書類の束のなかから取り出して、なんとなく目を通す。そして、そのまま窓口へ持っていく。
辞めた直後は、気持ちの整理もつかないものです。書類を丁寧に読み込む余裕などない、というのが正直なところでしょう。次の仕事を探しながら、役所の手続きにも追われる。そんな時期に届く一通です。それでも、この一通だけは立ち止まって読む価値があります。
多くの方が、この流れで手続きを進めています。ところが、その紙には生活を左右する一行が書かれています。専門的な用語が並ぶ書式ですから、隅々まで読む気になれないのも無理はありません。
ですが、見るべき箇所はひとつだけです。それさえ分かっていれば、目を通すのに一分もかかりません。離職の理由が記された欄。そこだけを確かめてください。そこに何が書かれているかで、この先の数か月が変わります。
辞めた理由が、会社の側にあるのか、自分の側にあるのか。この区分によって、失業に関する給付を受け取れる時期も、受け取れる期間の長さも変わってきます。同じ日に辞めた二人でも、この一行が違えば、手元に入る額はまったく別のものになります。
働いてきた年数も、賃金の額も同じであってもです。違うのは、紙に書かれた理由だけということになります。
差は、決して小さくありません。数か月分の生活費に相当する開きが生じることもあります。そして、この記載は会社が書きます。あなたの認識と食い違っていることも珍しくありません。
書いた側と、書かれた側。同じ出来事を見ていても、まとめ方は変わってくるものです。まして、会社には自己都合と書きたい事情があります。その事情については、後の章で詳しくお話しします。
とくに、退職を勧められて応じた方、労働条件に耐えかねて辞めた方は要注意です。書類の上では自己都合として処理されていることがあります。
自分から辞めると言ったのだから仕方ない、と受け止めている方が多いのですが、そこに落とし穴があります。
辞めると言わざるを得ない状況を作ったのは誰か。そこまで遡って見る仕組みになっているからです。
ここで諦める必要はありません。会社が書いた内容がそのまま確定するわけではないからです。異議を述べる仕組みも、後から見直しを求める道も用意されています。制度は、そうした食い違いが起きることを見越して作られています。
だからこそ、本人が意見を書き込む欄まで用意されています。使われることを想定して設けられている欄です。
この記事では、二つの区分がどう分かれるのか、会社都合にあたる場面、実際に何が変わるのか、会社が自己都合にしたがる理由、そして記載を変更するための手順をお話しします。
むずかしい言葉は避けて書きました。制度の名称を覚える必要はありません。どこを見て、何を言えばよいのかが分かれば足ります。読み終えるころには、離職票のどこを開けばよいかが分かるはずです。
まだ届いていない方は、届いたときのために覚えておいてください。すでに提出してしまった方も、まだ間に合う場合があります。まずは仕組みを知ってください。
知ってさえいれば、取り戻せる場面は数多くあります。知らずに受け入れてしまった方との差は、そこから生まれます。能力の差でも、運の差でもありません。単に、知っていたかどうかの差です。そして、知ることは今からでもできます。
二つの区分は何をもって分かれるのか
まず、考え方の骨格を押さえておきましょう。ここが分かると、自分がどの区分に当たるのかも見えてきます。
制度の名前を覚える必要はありません。考え方だけつかんでください。大きく三つに分かれる、と押さえておけば十分です。
制度の上では、離職した方をいくつかの区分に分けて扱います。日常では会社都合と自己都合という言い方が使われますが、実際にはもう少し細かく整理されています。二つに割り切れない中間の立場が、きちんと用意されているということです。
ここを知らないと、自分は該当しないと早合点してしまいます。実際、その早合点で権利を手放している方が数多くいます。
大きくは、倒産や解雇によって突然職を失った方、労働条件に問題があってやむを得ず辞めた方、そして自分の判断で辞めた方に分かれます。
このうち、真ん中の区分があることを知らない方がとても少なくありません。自分から辞めたのだから自己都合しかない、と思い込んでしまいます。実際には、この区分に該当する方が数多くいます。
相談を受けていても、掘り下げてみると該当したという例は珍しくありません。ご本人は、自分から辞めたとしか思っていませんでした。経緯を丁寧にたどると、まったく違う姿が見えてきます。
前の二つは、次の仕事を探す準備をする余裕がなかった立場です。ですから、より手厚く支えるべきだと考えられています。
明日から来なくてよいと言われた方と、半年かけて転職先を決めた方を同じに扱うのは、たしかに公平ではありません。制度は、その不公平を埋めるために区分を設けています。準備できた人と、できなかった人。その差に応じた支え方をする、という考え方です。
これに対して、自分の判断で辞めた方は、辞める時期を自分で選べたことになります。備えができたはずだ、という前提が置かれるわけです。次の勤め先を決めてから辞めた方であれば、この前提は納得のいくものでしょう。
問題は、そうではない辞め方をした方が同じ扱いを受けてしまうことです。選ぶ余地がなかった方まで、選べたことにされてしまいます。そこを正すための仕組みだと理解してください。
ここで大切なのは、判断の基準が実態にあるという点です。退職届を出したかどうか、という形式だけで決まるものではありません。紙に何と書いてあるかではなく、なぜそう書くことになったのかを見る、という考え方です。
この視点があれば、諦めずに済む場面が増えます。書類の上の言葉に、判断を委ねなくてよいわけです。実際に何があったかを語れるのは、あなただけです。
自分から退職届を書いていても、そうせざるを得ない事情が会社の側にあったのであれば、会社都合に準じて扱われる余地があります。ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
形式ではなく実態で決まる。この一点を覚えて帰ってください。次の章で、実態として何が該当するのかを具体的に見ていきます。心当たりを探しながら読んでみてください。
会社都合にあたる主な場面
次に、具体的にどういう場合が該当するのかを見ていきます。自分に当てはまるものがないか、確かめながら読んでみてください。ひとつでも該当すれば、申し出る価値があります。十の場面に分けて挙げていきます。いずれも、実際の相談で見かける類型です。複数に当てはまることもあります。
まず、会社が倒産した場合です。事業を続けられなくなった、あるいは大幅な人員削減が行われた。こうした場面が典型になります。会社が事実上活動を止めてしまった、というような場合も含まれます。
裁判所の手続きが取られていなくても、実態を見て判断されます。事業所が閉まっている、代表者と連絡が取れない。そうした状況も含まれます。
次に、解雇された場合です。整理解雇も、能力を理由とする解雇も、突然職を失うという点では同じです。解雇の効力そのものを争うかどうかとは別に、区分の話として整理されます。
争いながら給付を受ける道も用意されていますので、両立できます。解雇を争うか、給付を受けるかの二択ではありません。両方を進めることができます。
三つめが、退職を勧められて応じた場合です。ここを見落とす方が非常に多いのですが、勧奨に応じた退職は会社の働きかけがあってこその離職です。面談を重ねられた末に応じたのであれば、自分の意思だけで決めたとは言えないでしょう。
会社から辞めてほしいと持ちかけられた事実が、出発点にあるからです。その事実さえ示せれば、区分は動きます。面談があったこと自体を、記録に残しておいてください。
四つめが、契約の更新を打ち切られた場合です。更新されると期待できる状況にあったのに更新されなかったのであれば、こちらに含まれます。何度も更新されてきた方であれば、この主張は通りやすくなります。
更新の回数と、通算して働いてきた期間を整理しておいてください。契約書が更新のたびに交わされていたかどうかも、確かめる価値があります。
五つめが、賃金が支払われなかった場合です。全額が支払われない状態が続いた、あるいは大幅に引き下げられた。こうした事情も理由になります。給与明細と口座の入金記録を並べれば、はっきりと示せる部分です。
数字で語れるぶん、争いになりにくい類型でもあります。一部だけが支払われていた場合も、その差を示せば足ります。賃金を大幅に引き下げられた場合も同じです。
六つめが、極端な長時間労働が続いていた場合です。健康を損なうほどの働き方を強いられていたのであれば、辞めざるを得なかったと評価されます。出退勤の記録が残っているのであれば、必ず持参してください。後からまとめて書いたものより、その日ごとの記載のほうが重く見られます。
七つめが、嫌がらせを受けていた場合です。上司からの言動に耐えかねて辞めたのであれば、自分の判断で辞めたとは言えません。周囲から孤立させられた、仕事を取り上げられた。こうした扱いも含まれます。
言葉によるものだけが嫌がらせではないということです。体調を崩して受診しているのであれば、その記録も添えてください。
職場に相談していたのであれば、そのやり取りも残しておきましょう。相談したのに何もされなかった、という事実も意味を持ちます。
八つめが、採用時の条件と実際が大きく違っていた場合です。聞いていた仕事と違う、賃金が話と違う。こうした食い違いも理由になります。求人の内容や、採用時に渡された書面が残っていれば、比べることができます。
入社してすぐに辞めることになった方は、この類型を確かめてみてください。短期間で辞めたことを引け目に感じる必要はありません。約束と違ったのは、会社の側だからです。
九つめが、通勤が困難になった場合です。事業所の移転や配置転換によって、通えなくなったという場面です。片道の所要時間が大幅に延びた、といった事情が該当します。
家族の事情で転居できない、という背景があれば、あわせて伝えてください。子どもの学校や、家族の介護といった事情も考慮されます。
十番目が、家族の介護や病気など、やむを得ない事情で辞めた場合です。これも、備えができたとは言いにくい立場として扱われます。
この区分は、自分から辞めていても認められる代表的な例です。事情があるなら、必ず伝えてください。介護の状況を示す書面や、医師の診断書が裏づけになります。取得に時間がかかるものもありますので、早めに動いてください。
心当たりがあれば、自分から申し出てください。黙っていれば、会社の記載どおりに処理されてしまいます。窓口の側から、実は該当しませんかと尋ねてくれるとは限りません。
提出された書類のとおりに進むのが原則だからです。こちらから声を上げてはじめて、確かめてもらえます。遠慮する場面ではありません。
会社都合と自己都合で何が変わるか
では、実際にどれだけの差が出るのでしょうか。整理しておきます。五つの面で違いが生じます。どれも、知らなければ気づかないまま過ぎてしまう部分です。順に見ていきます。最後の二つは、とくに知られていない部分です。
手続きを取らなければ受けられない仕組みですから、なおさら確かめてください。
- 受け取り始めるまでの時期。自己都合の場合には、待つ期間が加わります。
- 受け取れる期間の長さ。会社都合のほうが長く設定されています。
- 必要な加入期間の条件。会社都合のほうが短くて済みます。
- 退職金の算定。規程で差を設けている職場があります。
- 国民健康保険の保険料。軽減の対象になる場合があります。
とりわけ影響が大きいのが、最初の二つです。どちらも、当面の暮らしに直接響いてくる部分だからです。
合わせれば、数か月分の生活費に相当する開きになります。家賃や住宅の返済がある方であれば、その重みは切実でしょう。数か月をどう乗り切るかという、生活そのものの問題です。ここを軽く見ないでください。
収入が途絶えている時期に待たされるのは、想像以上にこたえます。貯えを取り崩しながら過ごす期間が延びれば、条件の悪い職に飛びついてしまうことにもなりかねません。焦って決めた転職は、また短期間で辞めることにつながりがちです。
結果として、同じ苦しみを繰り返すことになります。それを避けるための猶予だと考えてください。
受け取れる期間の長さも同じです。次の仕事が決まるまでの猶予が変わるのですから、就職活動の質そのものに影響します。じっくり選べるかどうかは、その後の職業人生を左右します。目先の数か月の話にとどまらないということです。ですから、区分を正すことに意味があります。
四つめの退職金については、規程を確かめてください。会社の都合による退職の場合に上乗せが定められている職場もあります。
逆に、自己都合の場合に減額すると定めている職場もあります。どちらにせよ、規程を読まなければ分かりません。退職金規程は、就業規則とは別に置かれていることが多いので、あわせて求めてください。手元にないのであれば、会社に写しを求めて構いません。
五つめは意外と知られていない点です。会社の都合で離職した方については、国民健康保険の保険料が軽減される仕組みが設けられています。無収入の時期に保険料の負担が重くのしかかるのを避けるための配慮です。
前年の収入をもとに計算されるため、辞めた直後ほど負担が重くなるからです。収入がないのに前年並みの保険料を求められる、という事態を避けるための仕組みです。
この手続きは、住んでいる市区町村の窓口で行います。離職票を持参して申し出てください。こちらから申し出なければ適用されませんので、忘れずに手続きしてください。
二つの区分で変わる主な点を比べてみます。
| 比べる点 | 自己都合 | 会社都合(特定受給資格者) |
|---|---|---|
| 給付制限 | 原則1か月(2025年4月以降の離職) | なし |
| もらえる日数 | 90日〜150日 | 年齢と加入期間に応じて90日〜330日 |
| 加入期間の条件 | 2年間に12か月以上 | 1年間に6か月以上でもよい |
| 国民健康保険料 | 通常どおり | 前年の給与所得を100分の30として計算し、保険料が軽くなる |
たとえば、45歳で加入期間が20年ある人の場合、自己都合なら150日分ですが、会社都合なら330日分を受け取れます。同じ辞め方でも、離職票の区分一つで受け取れる額が倍以上違うこともあります。退職勧奨に応じて辞めた、給料の未払いが続いて辞めた、といった事情があれば、会社都合にあたる可能性を必ず確かめてください。
会社が自己都合にしたがる理由
なぜ会社は、自己都合として処理したがるのでしょうか。理由を知っておくと、対応もしやすくなります。意地悪をしているわけではなく、会社の側にも計算があります。その計算を知っておけば、押し返す言葉も見つかります。三つに整理してお話しします。
ひとつめが、助成金への影響です。会社の都合による離職者を出すと、一部の助成金を受けられなくなる場合があります。
雇用を維持することを条件とする助成金では、この点が重く効いてきます。会社にとっては実損につながる話です。ですから、担当者が個人的に意地悪をしているわけではないことも少なくありません。
二つめが、対外的な評価です。会社の都合による離職が多いことは、求人の場面でも印象に響きます。採用に苦労している会社ほど、この点を気にする傾向があります。求職者から敬遠されることを恐れています。とはいえ、実態を偽ることの言い訳にはなりません。
三つめが、争いを避けたいという思惑です。会社都合と記載すれば、解雇や退職勧奨があったことを認めた形になります。実務ではこの理由がもっとも大きいと感じます。
書面に残る記載は、後の手続きで繰り返し引用されるからです。そこから、退職そのものの効力を争われることを警戒しているわけです。
書面に残る一行が、後の争いで意味を持つことを知っています。会社の側にも、それだけの警戒があるということです。
そのため、円満に辞めたことにしましょう、という言い方で自己都合を勧めてくることがあります。あなたのためを思って、という前置きが添えられることもあるでしょう。
円満という言葉は耳あたりがよいものです。しかし、その円満さの代償を負うのはあなたのほうです。会社にとっては何も失わず、こちらだけが失う。それを円満と呼ぶのは無理があります。
言葉の柔らかさに流されないでください。会社の事情に配慮して、数か月分の生活費を手放す理由はどこにもありません。
ましてや、辞めることになった経緯を作ったのは会社の側です。その責任まで引き受ける必要はありません。
もっとも、交渉の材料にはなり得ます。退職の条件を詰める場面で、会社都合として記載することを条件のひとつに加えるという進め方です。
金銭だけを求めるより、通りやすい場合もあります。会社にとっては、どちらも同じ痛みではないからです。助成金への影響がない会社であれば、意外とすんなり応じることもあります。
記載を変更するための手順
ここからは実際の進め方です。段階を追ってお話しします。難しい手続きではありません。知っているかどうかだけの問題です。三つの段階に分けてお話しします。受け取ったとき、提出するとき、提出した後。この三つです。
まず、離職票を受け取った段階で記載を確かめてください。会社が記入した理由の欄と、それに対する本人の記入欄が設けられています。
会社の記載に同意するかどうかを問う欄もあります。ここに丸を付ける前に、必ず内容を読んでください。同意すると答えてしまえば、後から覆すのが難しくなります。
会社の記載に納得できないのであれば、本人の欄に異なる旨を記入し、署名してください。会社の記載に同意する必要はありません。この欄は、まさにそのために設けられているものです。使わなければもったいないことです。会社と対立するための欄ではなく、双方の認識を並べるための欄だと考えてください。
その場で判断がつかなければ、持ち帰って考えたいと伝えて構いません。急かされる筋合いはありません。
会社から送られてくる書式に、あらかじめ署名欄が用意されていることもあります。中身を確かめずに書かないでください。郵送で届いた書類に押印して送り返すだけ、という形になっている場合ほど注意が要ります。
次に、窓口へ提出する際に、口頭でも事情を説明してください。書面だけでは伝わりにくい経緯もあります。面談を何度も受けた、体調を崩していた。そうした背景は、話してはじめて伝わります。書式の欄は狭いものですから、書ききれないことも多いはずです。
ここで判断するのは、会社ではなく行政の側です。双方の言い分を確かめたうえで区分が決まります。ですから、会社にそう書かれてしまったから終わり、ということにはなりません。むしろ、こちらの言い分を伝えることが前提になっている仕組みです。
すでに提出してしまった後でも、諦める必要はありません。実情を示す資料があれば、見直しを求める道が残っています。給付を受け始めた後であっても、区分が変われば取り扱いが調整されます。ただし、時間が経つほど資料は集めにくくなります。気づいた時点で動いてください。
会社に問い合わせが行くのではないか、と気にする方もいます。ですが、そこで口をつぐんでしまえば、削られるのはあなたの暮らしのほうです。
そもそも、離職票を交付しない会社もあります。次の職場が決まっているなら要らないだろう、と言われる場面です。争いを避けたいがために、あえて出さないという対応も見られます。
その場合でも、窓口に相談すれば手立てがあります。会社の対応によってあなたが不利益を受けるのは筋が通らないからです。交付を求めた事実が分かるものがあれば、話は早く進みます。
口頭で頼んだだけでは、頼んだこと自体を否定されかねません。文書か電子メールで求めてください。
変更を求めるときにそろえる材料
最後に、何を示せばよいのかをお伝えします。事情によって、揃えるべきものは変わります。
自分がどの類型に当たるのかを踏まえて、必要なものを選んでください。求められるのは、辞めざるを得ない事情が会社の側にあったことを示す材料です。
感想ではなく、事実を示せるものが求められます。つらかったという言葉だけでは、区分は動きません。
退職を勧められたのであれば、面談の日時と担当者、言われた言葉を書き出してください。やり取りが残るメールがあれば、それが強い裏づけになります。何度呼ばれ、どれだけの時間を費やしたか。回数と長さが分かるだけでも、状況は伝わります。手帳や予定表を見返せば、日付を思い出せることがあります。
賃金が支払われなかったのであれば、給与明細と口座の入金記録を並べます。支払われるべき額と、実際に入った額の差が示せます。数か月分を並べると、いつから状態が悪化したのかも見えてきます。会社の資金繰りが苦しくなった時期も浮かび上がります。
長時間労働が理由であれば、出退勤の記録が要になります。タイムカードの写し、勤怠システムの記録、自分でつけた手帳。会社の記録が手元にないのであれば、業務上のやり取りの送信時刻からも組み立てられます。家族への連絡や、交通の利用履歴も手がかりになります。
嫌がらせが理由であれば、日々の出来事を記録したものと、体調の変化を示す資料です。医療機関にかかっているのであれば、その記録も添えてください。受診の時期が、嫌がらせを受けていた時期と重なっていることを示せると効果的です。初診のときに事情を伝えていれば、記録として残っている場合もあります。
条件の違いが理由であれば、求人の内容と雇用契約書、そして実際の勤務の状況を比べられる形にします。求人の情報は後から取り下げられることがありますので、画面を保存しておいてください。
通勤が困難になった場合であれば、事業所の移転を伝える通知と、通勤にかかる時間や経路が分かるものです。移転の前後で所要時間がどう変わったかを、数字で示せるようにしておきましょう。経路を検索した結果の画面を保存しておけば足ります。
完璧を目指す必要はありません。手元にあるものから並べて、窓口で相談してみてください。足りないものがあれば、何を集めればよいかを教えてもらえます。
一度で揃わなくても、出直せば済む話です。ひとりで結論を出さず、まず相談してみることをおすすめします。
離職票の区分に納得できないときは、次の順で進めます。
- 離職票の「離職理由」欄にある、本人の意見を書く欄で「異議あり」に印をつける。
- 退職に至った事情を示す資料(退職勧奨のメール、未払いの給与明細など)をそろえる。
- ハローワークの窓口で事情を説明し、資料を提出する。
- ハローワークが会社にも事情を確かめたうえで、区分を判断する。
離職理由に関するよくある質問
自分で退職届を出したら、必ず自己都合になりますか
そうとは限りません。判断されるのは実態であって、退職届を出したかどうかという形式だけで決まるものではないからです。退職を勧められて応じた場合、賃金が支払われない状態が続いていた場合、極端な長時間労働に耐えかねた場合、嫌がらせを受けていた場合などは、辞めざるを得ない事情が会社の側にあったと評価される余地があります。ですから、退職届を出していても、会社都合に準じた扱いを求めることはできます。まずは離職票の記載を確かめ、納得できないのであれば本人の記入欄にその旨を書いてください。
すでに離職票を提出しました。今からでも変更できますか
可能な場合があります。会社が記入した理由がそのまま確定するわけではなく、判断するのは行政の側だからです。実情を示す資料を持参して事情を説明すれば、見直しを求める道が残っています。退職を勧められた際の面談の記録、賃金の未払いを示す給与明細と入金記録、出退勤の記録など、事情に応じた材料を用意してください。すでに給付を受け始めている場合でも、区分が変われば取り扱いが調整されることがあります。時間が経つほど資料も集めにくくなりますので、気づいた時点で窓口へ相談してください。
会社に確認が入ると、揉めませんか
会社に問い合わせが行くことはあります。しかし、それを恐れて黙っていれば、失うのはご自身の生活費です。数か月分に相当する開きが生じることもありますから、影響は小さくありません。そもそも、正確な事実に基づいて区分を決めることは制度上の当然の手続きであって、あなたが会社に迷惑をかけているわけではありません。すでに退職しているのであれば、その後の関係を過度に心配する必要もないでしょう。もし、これを理由に何らかの不利益な扱いを受けたのであれば、それ自体が別の問題として扱われます。
会社都合になると、次の就職で不利になりませんか
その心配は要りません。離職票の記載が次の就職先に伝わる仕組みにはなっていないからです。応募の際に提出を求められることもありませんし、面接で区分を尋ねられることも通常はありません。むしろ、会社の都合による離職であれば、退職の理由を説明する際にも筋を通しやすくなります。倒産や人員削減による離職は、本人の能力とは無関係だからです。不利になるのではないかという不安から自己都合を選んでしまうのは、実質を失って形だけを守ることになります。制度の趣旨に沿って、正確な区分を求めてください。
