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マタハラとは?違法になる言動と会社に求められる対応

マタハラとは?違法になる言動と会社に求められる対応

この記事で分かること

  • 妊娠や出産に関する嫌がらせは法律で明確に禁じられている
  • 禁じられるのは処遇の不利益と就業環境を害する言動の二つである
  • 制度を利用したことへの言動と妊娠の状態への言動に分けて整理される
  • 制度を使っていなくても妊娠しているというだけで対象になる
  • 会社には防ぐための五つの措置を講じる義務が課されている
  • 加害した個人だけでなく義務を怠った会社の責任も問える
  • 業務の調整そのものは会社が行うべき対応であり区別が必要

妊娠や出産に関する嫌がらせは、法律ではっきりと禁じられています。しかも会社には、そうした言動が起きないよう措置を講じる義務まで課されているのです。ですから、何もせずに放置していること自体が、会社の落ち度として扱われます。人手が足りないのは、あなたが妊娠したからではありません。人員の手当てをするのは会社の役割であって、あなたが負い目を感じる筋合いはどこにもないのです。

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心ない言葉に、我慢する必要はありません

妊娠を報告した日から、周りの空気が変わった。おめでとうと言われたのは最初だけで、その後は迷惑そうな態度が続いている。

直接なにか言われるわけではない。ただ、確実に扱いが変わったと感じる。そういう段階から始まることも少なくありません。気のせいだろうか、と自分を疑ってしまう。その段階がいちばん苦しいところです。誰にも相談できないまま、ひとりで抱え込むことになります。

けれども、その違和感はたいてい正しいものです。日々の空気を感じ取っているのは、あなた自身だからです。まずは、その感覚を否定しないでください。

おかしいと感じる力が残っているうちが、動きどきです。慣れてしまう前に、外の目を入れてください。職場の中だけで基準を作ってしまうと、感覚が麻痺していきます。

この忙しい時期に、と言われた。前の人はもっと直前まで働いていた、と比べられた。つわりで休んだ翌日に、みんなに謝っておいてねと告げられた。

どれも、その場では聞き流すしかありません。反論すれば、余計に立場が悪くなりそうだからです。これから休みをもらう立場だと思えば、なおさら強く出られません。

その負い目につけ込まれている、とも言えます。制度を使うことは、誰かへの借りではありません。

保険料を納め、働いてきたことへの当然の見返りです。そして、次に休む方のためにも道を残すことになります。もっとも、そこまで引き受けなくて構いません。優先すべきはご自身です。

ひとつひとつは、聞き流せる程度のことかもしれません。けれども、それが毎日続けば、確実に心をすり減らしていきます。目に見える暴力ではないぶん、周囲にも伝わりにくい。そこがつらいところです。

家族に話しても、そのくらいはどこでもあると言われてしまうこともあります。ですが、どこにでもあることと、許されることは別です。

広く起きているからこそ、法律で正面から禁じられています。放っておいても直らないから、義務として定められました。

会社任せにできない領域だと判断されたということです。それだけ、根深い問題だということでもあります。

そして多くの方が、こう考えます。自分が休むせいで迷惑をかけているのだから、仕方がない。その思い込みが、我慢を長引かせます。

そして、我慢しているうちに体調まで崩してしまいます。そうなれば、休むことがさらに増え、責められる材料も増えていきます。

この悪循環を、どこかで断ち切る必要があります。断ち切る手立ては、いくつも用意されています。ひとりで背負う必要はありません。

そうではありません。妊娠や出産に関する嫌がらせは、法律で明確に禁じられた行為です。

会社には、こうした言動が起きないよう措置を講じる義務まで課されています。放置していること自体が、会社の落ち度になります。努力すればよいという性質のものではなく、具体的に何をすべきかまで定められています。

ですから、何もしていない会社には、はっきりと落ち度があります。この点は、後の章で具体的に見ていきます。

会社に何を求められるのかが分かれば、動きやすくなります。何が禁じられているのかから見ていきます。

そこが分かれば、自分の状況も位置づけられます。位置づけられれば、次にすべきことも決まります。

手が回らないのは、あなたが子を授かったせいではありません。要員をそろえるのは会社が担うべき仕事であり、あなたが引け目を覚える理由はどこにもありません。誰かが休めば代わりが要る。それは、あらゆる職場で起きることです。

病気でも、介護でも同じです。妊娠だけが特別に責められる理由はありません。むしろ、社会全体で支えるべき場面です。制度が用意されているのは、まさにそのためです。あなたひとりが背負う話ではありません。負い目を手放すところから始めてください。それが、いちばん最初の一歩です。

この記事では、何がマタハラにあたるのか、二つの型による整理、実際に問題となる言動、会社に課されている義務、相談先、そして記録と体調の守り方をお話しします。

むずかしい言葉は避けて書きました。条文を覚える必要はありません。何が禁じられているのかが分かれば十分です。

そして、会社が何をしなければならないのかも押さえておいてください。そこが交渉の足場になります。相手に義務があると分かっていれば、伝え方も変わります。お願いではなく、求めとして話せるようになるからです。その違いは、相手にも伝わります。

根拠を持って話す人には、雑な対応をしにくくなるものです。そのための知識を、この記事でお渡しします。

いま渦中にいる方は、読みながら気になる場面を書き留めてみてください。それがそのまま記録になります。体調のすぐれない日は、必要な章だけを読んでいただいても構いません。

無理をせず、読める範囲で構いません。いま告げられたばかりの方は、相談先の章から先に読んでいただいても結構です。順番どおりに読む必要はありません。必要になったときに、戻って読んでいただければ十分です。気になる場面があれば、そこだけ拾ってください。

マタハラとは何を指すのか

まず、言葉の中身を確かめておきましょう。名前がつくと、自分の受けているものを説明しやすくなります。

説明できれば、相談もしやすくなります。これはマタハラにあたるのではないか、と切り出せるようになるからです。

言葉があるだけで、相手の受け止め方も変わります。会社の側も、その言葉が出れば身構えるからです。法的な問題になると分かるからです。それだけで態度が改まることも、実際にあります。

マタハラとは、妊娠や出産、それに関連する制度の利用を理由として、職場で就業環境が害されることを指します。働きにくくさせられている状態、と言い換えてもよいでしょう。

能力を発揮できなくなっている、出勤するのがつらくなっている。そうした状態です。実際に休職や退職に至っていなくても構いません。働きにくさが生じていれば足りる、という考え方です。限界まで我慢する必要はありません。

早い段階で申し出ることに、何ら遠慮は要りません。耐えきってから訴えるより、はるかに回復も早くなります。

法律の条文にこの呼び名が出てくるわけではありません。しかし、その中身にあたる行為は、法律ではっきりと禁じられています。俗称だから曖昧だ、ということはありません。

むしろ、判断の枠組みははっきり定められています。指針として、具体的な場面まで示されています。

ですから、これは嫌がらせなのかと迷ったときにも、当てはめて考えられます。次の章で、その区分を具体的に見ていきます。自分に当てはまるものを探しながら読んでみてください。禁じられているのは、大きく二つです。

処遇の話と、言動の話。この二つに分かれます。どちらも禁じられている、と押さえておいてください。順に見ていきます。どちらに当たるかで、主張の組み立て方も変わってきます。とはいえ、迷ったら両方を伝えれば足ります。選別するのは、受け取る側の仕事です。

ひとつが、妊娠や出産、休業の取得などを理由とする不利益な取り扱いです。解雇、雇止め、降格、減給、望まない配置転換。こうした処遇の面での不利益がこれにあたります。賞与の算定で不利に扱うことや、昇進の対象から外すことも含まれます。

休んだ期間を欠勤とみなして計算に組み込む扱いも、同じく問われます。退職金や年金の計算に響いてくる部分ですので、確かめておく価値があります。就業規則や退職金規程を見れば、扱いが分かります。在職中に写しを取っておくと安心です。退職してしまえば、社内の資料には触れられなくなります。

もうひとつが、就業環境を害する言動です。処遇そのものは変わらなくても、言葉や態度によって働きにくくさせる行為を指します。賃金も役職も変わっていないから問題ない、ということにはなりません。

働き続けられなくさせる、という点では同じだからです。むしろ、こちらのほうが日々の負担は大きいかもしれません。毎日顔を合わせる場での言動だからです。逃げ場がないという点で、こたえ方が違います。

職場にいる時間すべてが、負担の時間になってしまいます。この二つめが、日常のなかでもっとも起きやすい形です。そして、外からはもっとも見えにくい形でもあります。だからこそ、記録が意味を持ちます。

形の残らないものを、形にする作業だからです。その方法は、最後の章でお話しします。特別な道具は要りません。紙とペンがあれば足ります。携帯の覚え書きでも構いません。

そして、会社にはこうした言動を防ぐための措置を講じる義務が課されています。相談の窓口を設け、実際に起きたら適切に対応する。それが求められています。この義務については、後の章で詳しく取り上げます。知っておくと、会社への伝え方が変わります。お願いする立場ではないと分かるからです。

会社が果たすべきことを、果たしていないだけです。そう捉えられれば、切り出す言葉も見つかります。具体的に何を求めればよいかも、はっきりしてきます。

補足
加害する側は上司に限りません。同僚からの言動も対象になりますし、男性が育児のための休業を取得する場合にも同じ保護が及びます。誰が誰に対して行ったかで、扱いが変わるものではありません。

二つの型に分けて考える

就業環境を害する言動については、さらに二つに分けて整理されています。行政の指針で示されている区分です。

覚える必要はありませんが、自分がどちらに当たるかを考える手がかりになります。どちらであっても保護される、という結論は同じです。安心して読み進めてください。どちらの型かを見極める作業は、相談の場でも役に立ちます。

説明が短く済むぶん、中身の話に時間を使えます。ひとつめが、制度を利用したこと、あるいは利用しようとしたことに向けられるものです。

権利を使ったことへの当てつけ、と言い換えられます。使わせないために圧力をかける、という形も含まれます。

申し出る前から諦めさせる、という点でとりわけ悪質です。実際に取れなかったという結果まで生じるからです。

取らないと決めたのは自分だ、と後から言われかねません。ですから、申し出た事実そのものを記録に残してください。

産前産後の休業を取りたいと申し出た。育児のための休業を希望した。時間外労働の免除を求めた。短時間勤務の制度を使った。妊婦健診に行くための時間を確保してほしいと伝えた。いずれも、法律で認められた制度の利用です。使うこと自体に、何ら問題はありません。

使ったことを咎められるのであれば、制度を置いた意味がなくなります。法律もその点を踏まえて、はっきりと禁じています。会社の裁量が入り込む余地はありません。前例がないから、という説明も通りません。

これらに対して、取らせないと言う、取ったら不利になると告げる、繰り返し嫌味を言う。こうした言動が該当します。直接の拒否だけでなく、取りにくい空気を作ることも含まれます。

本当に取るの、という一言が繰り返されるだけでも、実質的には同じことです。取りたいと言い出せない状況を作ることが、目的になっているからです。

言われた回数と時期を、書き留めておいてください。誰から言われたかも、忘れずに残しておきましょう。

複数の人から言われているのであれば、職場全体の問題として扱えます。二つめが、妊娠や出産という状態そのものに向けられるものです。

制度とは関係なく、妊娠していること自体が的にされる形です。報告した途端に態度が変わった、という場合がこれにあたります。

その日を境に何が変わったかを、書き出してみてください。担当していた業務、声のかけられ方、会議への呼ばれ方。細かなことでも構いません。

並べてみると、変化がはっきり見えてくることがあります。自分ひとりの思い過ごしではなかった、と分かるはずです。

妊娠したこと自体を非難する、体調不良で休んだことを繰り返し責める、辞めることを前提とした発言を続ける。いつまで働くつもりなのか、と繰り返し尋ねられるのも同じです。一度の確認であれば業務上の必要もありますが、繰り返されれば意味が変わってきます。

人員の計画を立てるための確認なのか、辞めさせるための圧力なのか。回数がその違いを語ります。すでに答えているのに、また尋ねられるのであれば、目的は別のところにあります。その意図を読み取れれば、応じ方も変わります。すでにお答えしています、と返して構いません。

制度を使っていなくても、妊娠しているというだけで対象になるということです。ここを知らずに、まだ休んでいないから訴えられないと思い込む方がいます。

報告した直後から、保護は働いています。むしろ、この時期の言動こそ問題になりやすくなります。

報告から休業に入るまでの数か月が、いちばん起きやすい期間だからです。この時期の記録は、とりわけ丁寧に残しておいてください。後から振り返る余裕は、出産後にはなくなります。

この二つを分ける意味は、どちらも守られていると知ることにあります。制度を使っていないから我慢するしかない、ということはありません。どちらの型であっても、会社には防ぐ義務が課されています。

ご自身が受けているものが、どちらに近いかを考えてみてください。両方が重なっていることも珍しくありません。重なっているのであれば、まとめて伝えて構いません。切り分けて説明する必要はありません。受けている扱いを、そのまま伝えれば足ります。

整理は、相談を受ける側がしてくれます。うまく説明できなくても構いません。時系列に並べたメモを渡すだけでも、十分に伝わります。

マタハラは、大きく二つの型に分けられます。

型 内容 言動の例
制度等の利用への嫌がらせ型 産休・育休、時短勤務などの制度を使うことへの嫌がらせ 「育休を取るなら昇進はないと思え」「時短なんて周りが迷惑している」
状態への嫌がらせ型 妊娠した、出産した、つわりで休んだことなどへの嫌がらせ 「妊娠するなら忙しい時期を避けてほしかった」と繰り返し言う、仕事を一方的に取り上げる

業務の分担や安全への配慮から、上司が「体調はどうか」「業務量を減らそうか」と確かめることは、マタハラにあたりません。問題になるのは、本人の意に反して不利益を示したり、働きにくくさせたりする言動です。

実際に問題となる言動

次に、具体的な場面を挙げていきます。心当たりがないか確かめてみてください。八つ挙げますが、これに限られるわけではありません。

似た場面があれば、同じように扱われる可能性があります。ここに書かれていないから対象外だ、と考えないでください。

大切なのは、就業環境が害されているかどうかです。働きにくいと感じているのであれば、相談する理由になります。

相談することに、資格は要りません。

  • 妊娠したなら辞めるべきだ、という趣旨の発言を繰り返す。
  • 制度を使うなら評価が下がると告げる。
  • 休むことでどれだけ迷惑がかかるかを、繰り返し聞かせる。
  • 体調不良で休んだことを、周囲に対して非難がましく伝える。
  • 前例がないから認められない、と制度の利用を拒む。
  • 担当していた業務を、理由の説明もなく取り上げる。
  • 妊娠を理由に、会議や打ち合わせから外す。
  • 復職の見通しについて、戻る場所はないと告げる。

これらのうち、業務の取り上げや会議からの排除は、処遇の面での不利益にもあたり得ます。言動の問題であると同時に、扱いそのものの問題にもなるということです。

二重に主張できる場面だと考えてください。処遇が変わったのであれば、その回復も求められます。

元の業務に戻すことを求める、という形です。減らされた賃金があれば、その回復も求められます。

一方で、業務の分担を実際に調整すること自体は、必要な対応です。体に負担のかかる業務から外すのは、むしろ会社が行うべきことです。すべての配慮を嫌がらせと受け取ってしまうと、かえって必要な措置まで受けられなくなります。体を守るための調整は、遠慮なく受けてください。むしろ、調整を申し出ないほうが危険です。

体を守るのは、あなた自身の役割でもあります。会社が気づいてくれるのを待つ必要はありません。

区別の手がかりは、本人の意向を確かめたかどうかにあります。相談のうえで決まったことなのか、頭ごなしに通告されたことなのか。

また、業務の都合を説明することも、それ自体は許されます。問題になるのは、その伝え方が繰り返しであったり、辞めさせる意図を含んでいたりする場合です。一度の説明と、毎日の繰り返しでは、意味がまったく違います。

回数を数えておくことに、意味があるということです。何度目だったのかを示せると、状況の異常さが伝わります。数えることが、そのまま主張の力になります。一度きりか、毎日か。その差は決定的です。

迷ったときは、自分で結論を出さなくて構いません。気になった場面を書き留めておき、後で誰かに見てもらえばよいわけです。判断は他人に委ねられます。あなたがすべきは、事実を残すことです。

残しておけば、後からいくらでも判断してもらえます。逆に、残っていなければ判断のしようがありません。弁護士も、材料がなければ動けません。ですから、今日から始めてほしいのです。

会社に課されている義務

ここが、この記事でお伝えしたい要の部分です。知っている方は多くありませんが、知っておく価値の高い部分です。

会社には、妊娠や出産に関する嫌がらせを防ぐために、具体的な措置を講じる義務があります。努力すればよいという性質のものではありません。求められている内容を整理しておきます。

五つあります。自分の職場でどこまで行われているかを、照らし合わせてみてください。ひとつでも欠けていれば、それを指摘できます。そして、多くの会社が全部は満たしていません。確かめてみる価値は、十分にあります。足りていない点が見つかれば、それが交渉の足場になります。

まず、方針を明確にし、働く人に周知することです。こうした言動は許さないという姿勢を、はっきり示さなければなりません。就業規則や社内の掲示に、そうした記載があるかを確かめてみてください。

次に、相談に応じる体制を整えることです。窓口を設け、担当者を決め、その存在を知らせておく必要があります。窓口があることすら知らされていないのであれば、その時点で不十分です。

三つめが、実際に相談があったときに、迅速かつ適切に対応することです。事実関係を確かめ、必要な措置を取る。受け付けただけで終わらせることは許されません。

四つめが、原因を取り除くための対応です。加害した側への注意や配置の見直しが含まれます。被害を受けた側を動かして済ませるのでは、対応として不十分な場合があります。

五つめが、相談したことを理由に不利益な扱いをしない旨を定め、周知することです。安心して相談できる状態を作ることまで、義務の内容に含まれています。

これらが行われていないのであれば、会社は義務を果たしていないことになります。ここが重要です。加害した個人だけでなく、会社の責任を問うことができるということです。個人に請求しても支払う資力がない場合がありますので、回収という面でも意味があります。

相談したのに調査もされなかった、窓口はあるが機能していない。そうした事情は、会社の責任を示す材料になります。ですから、相談した事実と、その後の会社の対応は必ず記録しておいてください。

相談と、動かないときの手立て

では、どこに持ち込めばよいのでしょうか。目的によって、向いている窓口が変わります。

まず、社内の窓口です。会社が動けば、いちばん早く状況が変わります。配置を見直す、加害した側に注意する。会社にしかできないことが数多くあります。

相談の際には、取り扱いについて確かめておいてください。誰まで情報が共有されるのか、加害した側に伝えるのかどうか。確かめた内容も、記録に残しておきましょう。約束と違う扱いをされた場合の材料になります。

次に、都道府県の労働局です。妊娠や出産に関する取り扱いを専門に扱う部署が置かれています。この分野を日常的に扱っていますので、事情も伝わりやすいはずです。

ここでは、会社に対する助言や指導を行ってもらえますし、話し合いの仲立ちをする仕組みも用意されています。外部から連絡が入るだけで、会社の姿勢が変わることもあります。

費用がかからず、電話でも相談できますので、外出がつらい時期でも使えます。匿名での相談も受け付けています。

三つめが、損害の賠償を求めるという道です。加害した個人に対しても、義務を果たさなかった会社に対しても求められます。両方を相手にすることもできますし、どちらか一方に絞ることもできます。

話し合いから始め、応じなければ裁判所の手続きへ進むという流れになります。出産や育児を控えた時期ですので、進め方は体調と相談しながら決めてください。

四つめが、体調を崩した場合の労働災害の申請です。仕事が原因で心身を損なったのであれば、治療費や休業中の補償を受けられる余地があります。嫌がらせによる心の病についても、認められる場面があります。この場合の窓口は労働基準監督署です。会社が協力しなくても、本人から手続きを進められます。

会社が渋るのは、保険料への影響を気にしてのことが少なくありません。それはあなたが背負う事情ではありません。

記録と体調の守り方

最後に、いま何をしておくべきかをお話しします。今日から始められることばかりです。

まず、記録です。いつ、どこで、誰が、どんな言葉を発したか。この四点を、その晩のうちに書き残してください。手帳でも、携帯の覚え書きでも構いません。続けることのほうが大切です。

言われた言葉は、できるだけそのままの表現で残してください。要約すると、その重さが伝わらなくなります。思い出すのがつらい言葉ほど、書き留める価値は高くなります。

制度の利用を申し出た日と、それに対する会社の反応も書いておきましょう。時期の対応が、後で意味を持ちます。申し出た直後に扱いが変わったのであれば、その符合が主張を支えます。そして、これ以上に大切なのが体調です。ここだけは、はっきりお伝えしておきます。

妊娠している時期は、心の重さがそのまま身体に出ます。寝つけない、食べられない、お腹が硬くなる。こうした兆しを見過ごさないでください。母体だけの問題ではありません。お腹の子にも影響が及びかねません。ですから、我慢を美徳にしないでください。

変調を感じたら、早めに主治医に相談してください。職場でのことも伝えておけば、必要な指導を受けられることがあります。診察の場で職場の話をすることに、遠慮は要りません。母体に影響する事情だからです。

医師から指導を受けたのであれば、その内容を会社へ伝えることで、勤務時間を短くしたり業務を軽くしたりするよう求められます。伝達のための決まった様式も設けられています。記録より、まず健康です。争うのは、体が守られてからで構いません。無事に出産することを、いちばんに置いてください。

被害を受けたときは、次の順に動くと記録が生き、相談先も動きやすくなります。

  1. 言われた日時、場所、相手、言葉を、その日のうちに書き留める。
  2. 社内の相談窓口や人事部に、書面やメールで相談する。
  3. 会社が動かなければ、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する。
  4. 慰謝料の請求や退職の条件の交渉を考えるなら、弁護士に相談する。

マタハラに関するよくある質問

これは嫌がらせなのか、業務上の説明なのか判断がつきません

業務の都合を伝えること自体は許されますし、体に負担のかかる業務から外すことは、むしろ会社が行うべき対応です。分かれ目になるのは、本人の意向を確かめたかどうか、そして伝え方が度を超えていないかという点です。話し合ったうえでの調整なのか、一方的に決められたのか。一度の説明なのか、繰り返し聞かされているのか。辞めさせる意図がうかがえるかどうかも見られます。ご自身で結論を出す必要はありません。気になった場面を日付とともに書き留めておき、後で相談の際に見てもらってください。

制度を使っていなくても対象になりますか

なります。就業環境を害する言動は二つに分けて整理されており、ひとつは制度を利用したことや利用しようとしたことに向けられるもの、もうひとつは妊娠や出産という状態そのものに向けられるものだからです。ですから、まだ休業を申し出ていなくても、妊娠していること自体を非難されたり、体調不良で休んだことを繰り返し責められたりすれば、それは禁じられた言動にあたります。制度を使っていないから我慢するしかない、ということはありません。安心して相談してください。

相談したのに、会社が何もしてくれません

それ自体が問題になります。会社には、相談に応じる体制を整えるだけでなく、実際に相談があったときに迅速かつ適切に対応する義務が課されているからです。事実関係を確かめ、原因を取り除くための措置を取ることまで求められています。窓口はあるが機能していない、相談したのに調査もされなかった。こうした事情は、会社が義務を果たしていないことを示す材料になります。ですから、いつ誰に何を伝え、それに対して何が行われたかを必ず記録してください。そのうえで、都道府県の労働局に相談することができます。

体調を崩してしまいました。どうすればよいですか

まず、主治医に相談してください。妊娠中は精神的な負担が身体に直接響きますし、お腹の子にも影響が及びかねません。回復と安全が最優先です。そのうえで、医師から指導を受けたのであれば、その内容を会社に伝えてください。勤務時間の短縮や業務の軽減を求めることができ、会社は必要な措置を取らなければなりません。伝えるための専用の書式も用意されています。また、仕事が原因で心身を損なったのであれば、労働災害として認められる余地もあります。労働基準監督署で相談してみてください。

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