閉じる

133,121view

産休・育休が取れない!会社は所得を拒否できる?それとも違法?

この記事で分かること

  • 育休拒否に対する罰則は、厚生労働大臣による報告・勧告や罰金20万円など
  • 男性も育休を取得することを育児・介護休業法は奨励している
  • 育休拒否には民事での訴訟も検討できる

育児・介護休業法により「条件を満たした労働者の育休取得を会社は拒むことができない」と定められており、育休拒否は違法行為です。これは、男性の場合も同様です。この記事では、育休拒否の罰則、育休の申請と延長の方法、および育休を拒否された場合の対処法について解説します。

産休・育休が取れない!会社が拒否した場合の罰則は?

産休・育休拒否の罰則は報告の要請や勧告と企業名の公表、20万円以下の罰金

育児・介護休業法により、条件を満たす労働者から産休・育休の申出があった場合は、それを拒むことはできないと定められています(第6条)。

育休を企業が拒否することは法律違反(違法)であるため、育児・介護休業法において育休拒否に対し以下のような罰則が定められています。

1. 厚生労働大臣による報告の要請および助言・指導・勧告

厚生労働大臣は育休を拒否した企業に対して報告を求め、また助言や指導、勧告を行います(第56条)。

2. 企業名の公表

厚生労働大臣の勧告に企業が従わなかった場合、企業名や違反内容が公表されます(第56条の2)。

3. 20万円以下の罰金

厚生労働大臣の要請に反して報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の罰金が科されます(第66条)。

産休・育休による不利益な取扱いは法律により禁止

育児・介護休業法により、産休・育休の取得による不利益な取扱いは禁止されています。「不利益な取扱い」とは、具体的には以下のようなものです。

  • 解雇する
  • 契約の更新をしない
  • 退職やパートになることを強要する
  • 自宅待機を命ずる
  • 降格する、人事考課で不利益な評価をする
  • 減給やボーナスを減らす
  • 不利益な配置転換をする
  • 就業環境を害する

産休・育休によるハラスメントの防止措置を講ずる義務

育児・介護休業法においては、産休・育休に関する不利益な取扱いが禁止されているだけでなく、上司や同僚からの育休に関するハラスメントを防止する措置を講ずることが企業に対して義務付けられています。ハラスメントについて、厚生労働省の指針では2つの型が示されています。

ハラスメントの型1 制度等の利用への嫌がらせ型

「制度等の利用への嫌がらせ型」とは、制度の利用を理由として不利益な取扱いを示唆したり、阻害しようとしたり、嫌がらせをしたりすることです。ハラスメントの具体例として、次のようなものがあります。

  • 妊娠で立ち仕事を会社から免除してもらっていたら、「あなたばかり座って仕事をするのはズルい」と同僚から仲間はずれにされた。
  • 男性が育休を申出たら、上司から「男のくせに育休を取るのはおかしい」と育休取得を断念させられた。

ハラスメントの型2 状態への嫌がらせ型

「状態への嫌がらせ型」とは、

  • 妊娠したこと
  • 出産したこと
  • 育休を取得したこと
  • つわりなどで仕事の能率が下がったこと

などを理由に、不利益な取扱いを示唆する言動をしたり嫌がらせをしたりすることです。ハラスメントの具体例として次のようなものがあります。

  • 先輩から「就職早々妊娠して産休・育休を取ろうなどというのは図々しい」としつこく嫌味を言われた。

企業に対して義務付けられるハラスメントの防止措置

男女雇用機会均等法および育児・介護休業法により、産休・育休にまつわるハラスメントを防止するための措置として、企業に対して次のことが義務付けられています。

  1. 妊娠・出産や育休についての企業の方針を明確にし、社内に周知・啓発すること。
  2. ハラスメント被害者や目撃者が相談するための窓口を社内に設置すること。
  3. ハラスメントの相談があった際には、事実確認、被害者への配慮、および行為者への処分などを迅速に行うこと。
  4. 育休にまつわるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するために、業務体制の整備など必要な措置をとること。
  5. ハラスメント被害者や行為者のプライバシーを保護するための措置を講じ、事実関係の解明に協力した人に対して不利益な取扱いをしないことを定め、そのことを社内に周知・啓発すること。
ワンポイントアドバイス
育休を企業が拒否することは、法律で禁止されている違法行為です。法律によって定められている罰則は「20万円以下の罰金」など軽いように見えますが、会社から不利益な取扱いを受けた場合は民事での訴訟も検討できます。妊娠・出産による降格に、裁判所が高額の慰謝料を認めた事例もあります。育休を拒否された場合には、まずは弁護士に相談してみましょう。

男性も取得できる?産休・育休の条件と申請・延長の方法

結論から言ってしまうと日本では男性は産休を取得することはできません。

しかし、育休は男性も取得することができます。育休が取得できる条件と、夫婦で育休を取ると適用される特例、および育休の申請と延長の方法を見ていきましょう。

男性も取得が可能!育休の条件

育休の対象や期間など、育休の条件について見ていきます。

育休の対象

育休の対象は、「1歳に満たない子供を持つ労働者」とされています。「労働者」に男女の別は規定されていませんので、もちろん男性でも育休を取得することができます。

ただし、有期で契約している労働者については、次の条件を満たすことが必要です。

  • 同じ会社に1年以上雇用されていること
  • 子供が1歳6ヶ月になる以前に契約が満了し、更新されないことが明らかではないこと

育休の期間

育休の期間は、原則として「子供が1歳になるまで」です。ただし、「保育園に入れない」などの理由がある際には、2歳までを限度として延長することができます。

夫婦で育休を取ると適用される特例

育休は、夫婦で取ることも認められています。夫婦で育休を取る際には、それぞれが1年を限度として、「子供が1歳2ヶ月になるまで」育休を取得することができます。

育休の申請と延長の方法

育休の申請と延長は、会社に対し、必要事項を記入した書面を、出生を証明する書類を添えて提出することにより申出ます。申出は、初回の申請の場合には出産予定日の1ヶ月前まで、延長の場合には2週間前までに行います。出産予定日より前に出産するなどし、育休の開始が早まる場合には、1週間前までにその旨を会社に申出ます。

ワンポイントアドバイス
男性が育休を取得することについては、まだ社会的な理解が十分ではないこともあるでしょう。しかし、育児・介護休業法では夫婦揃って育休を取得する際の特例を設けるなどし、男性の育休取得を奨励しています。男性も遠慮なく育休を取得することが、育児・介護休業法の精神にかなっているといえるでしょう。

会社が産休・育休を拒否した場合の対処法

会社が産休・育休を拒否した場合、どうしたら良いでしょうか? ここでは、育休拒否の対処法について見ていきましょう。

会社の相談窓口に相談する

育休を拒否された場合には、まずは会社の相談窓口に相談してみましょう。

上で解説した通り、産休・育休についての相談ができる窓口を設置することは、育児・介護休業法によって企業に対して義務付けられています。

ただし、中小企業などの場合なら、平成29年1月に改正された育児・介護休業法について、会社がまだ詳しく把握していないことも考えられます。

育休が、法律によって労働者に認められた権利であること、会社はそれを拒むことができないと法律で定められていることを、上司に対して話してみましょう。

法律を遵守しようとする会社であれば、「申し訳ない、そんな法律があるとは知らなかった」と、速やかな対応をしてくれるでしょう。

会社や上司と口頭で相談しても解決しない場合には、「育児休業の取得を請求する申入書」を、会社宛に内容証明郵便で送ってみましょう。内容証明郵便は、後に裁判になった際に証拠ともなるものですから、会社がこちらの本気度を察知して態度を改めることもあります。

労働局に相談する

会社や上司と相談しても解決しない場合には、労働局に相談することも解決法の1つです労働局に対する相談は、

  • 紛争解決の援助
  • 調停

の2つがあります。

労働局による紛争解決の援助

育休の拒否については、労働局に紛争解決の援助を申込むことができます。これは育児・介護休業法の定め(第52上の2)に基づくもので、労働局が会社に対して助言や指導を行います。

「会社は従業員に対し紛争解決の援助を求めたことを理由として不利益な取扱いをしてはならない」ことも、この法律に定められています。

労働局による調停

紛争解決の援助を申込んでも解決しない場合には、労働局による調停を申立てることもできます。調停では、専門家による調停委員が会社と労働者双方の話を聞き、調停案を作成します。

弁護士に相談する

育休の拒否については、早い段階で弁護士に相談することもおすすめです。会社の態度によっては、労働局に相談するより訴訟を提起した方が解決の見込みが高い場合もあります。トラブルのケースに応じて、弁護士は最善の解決策を提案してくれるでしょう。

ワンポイントアドバイス
育休は、労働者に対して法律で認められた権利であり、会社はそれを拒否することはできませんし、不利益な取扱いをすることもできません。会社が育休を拒否しても、労働者は自ら仕事を中断して育休を取ることができますし、会社はそれによって降格や解雇などはできません。仮に、育休を理由に降格や解雇されたとしても、裁判で争えば「解雇は無効」と判断されることになります。

産休・育休を会社から拒否されたら弁護士に相談しよう

育休を拒否された場合でも、特に男性の場合なら、「会社で事を荒立てたくない」と泣き寝入りしたくなることもあるでしょう。

しかし、訴訟などの法的措置までを講じなくても、事を極力荒立てないようにして会社に育休を認めさせる交渉をすることはできます。

法律の専門知識と高度な交渉力を持つ弁護士に、まずは相談してみましょう。

残業代未払い・不当解雇など労働問題は弁護士に相談を
  • サービス残業、休日出勤がよくある
  • タイムカードの記録と実際の残業時間が異なる
  • 管理職だから残業代は支給されないと言われた
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
  • 自主退職しなければ解雇と言われた
  • 突然の雇い止めを宣告された
上記に当てはまるなら弁護士に相談