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辞めるしかないのだろうか、と思い詰めていませんか
朝、玄関で足が止まる。あの人の顔を思い浮かべるだけで動悸がする。休みの日も、月曜のことを考えると気が重い。
楽しかったはずの休日が、次の出勤までの猶予にしか感じられない。そんな日々を送っている方もいるでしょう。
家族にも心配をかけたくなくて、平気な顔をしてしまう。そうやって抱え込む方がとても多いのです。
周りに相談しても、どこにでもある話だと流される。上司に言えば、あなたにも問題があるのではと返される。だんだん、自分が悪いのかもしれないと思えてくる。
この、自分を疑い始める段階がいちばん危険です。判断する力そのものが削られていくからです。
正常な感覚を保てているうちに、外の目を入れてください。
おかしいと感じる力が残っているうちが、動きどきです。
そのために、この記事を読んでいるのだと思ってください。
読むという行為自体が、外の情報を入れることだからです。
そして最後に浮かぶのが、辞めるしかないのだろうか、という考えです。
辞めれば終わる。たしかに、その日から顔を合わせずに済みます。
ですが、失うものも同時に考えてみてください。
収入、積み上げてきた経験、同僚とのつながり。どれも簡単には取り戻せません。
失うものと、得られるものを並べたうえで決めてほしいのです。
並べてみて、それでも辞めるという結論なら、迷いは残りません。
ここで立ち止まってください。職場での嫌がらせは、あなたが職を手放すことで解決すべき問題ではありません。
加害している側が居座り、被害を受けた側が去っていく。これほど筋の通らない結末はないでしょう。
しかも、去った後に同じことが次の誰かに繰り返されます。
あなたが我慢しても、職場は変わらないということです。
むしろ、問題が表に出ないまま温存されてしまいます。
とはいえ、職場を変えることまで背負う必要はありません。まずご自身を守ってください。
結果として職場が変わることはあっても、それは目的ではありません。
しかも、辞めてしまえば収入が途絶えます。次の仕事が決まる保証もありません。心身が弱っている状態で就職活動を進めるのは、想像以上に厳しいものです。
面接で退職の理由を問われるたびに、思い出したくない場面を語ることにもなります。
短期間で辞めた経歴が、次の選考で不利に働くこともあるでしょう。
本来、責められるべきはあなたではないのに、です。
この理不尽さを、そのまま引き受ける必要はありません。
いま辞めるという選択が正しいかどうかは、ほかの道を知ってから判断しても遅くありません。
知ったうえで辞めるのであれば、それは立派な決断です。問題は、それしかないと思い込んでいる状態です。
追い詰められて選んだものは、選択とは呼べません。
選べる状態を取り戻すことが、まず必要です。
そのために、道が複数あることを知ってください。
順に見ていきましょう。
この記事では、どこからが嫌がらせにあたるのか、代表的な型、証拠として何を残すか、体と心を守ること、相談先の選び方、そして会社が動かないときの手立てをお話しします。
むずかしい言葉は避けて書きました。条文を覚える必要はありません。どこに線が引かれ、誰に持ち込めばよいのかが分かれば十分です。
いま渦中にいる方は、読みながら気になる出来事を書き出してみてください。それがそのまま記録になります。
読み終える頃には、一枚の記録ができているはずです。
それが、相談へ持っていく最初の材料になります。
読み終えるころには、辞める以外の選択肢がいくつも見えているはずです。
そのうえで、どれを選ぶかはあなたが決めてください。
並行して進められるものも多いので、ひとつに絞る必要もありません。
試してみて合わなければ、次の道へ移れば済みます。
ひとつ断られたからといって、行き止まりではありません。
窓口によって扱える範囲が違うだけのことです。
どこからがパワハラにあたるのか
まず、線引きを押さえておきましょう。
自分の受けているものに名前がつくだけで、気持ちの整理はずいぶん進みます。
これは我慢すべきことではなかったのだ、と分かるからです。
三つの要素に分けて見ていきましょう。
職場での嫌がらせについては、法律で定義が置かれています。三つの要素がそろったものを指すと整理されています。
曖昧な言葉のようでいて、判断の枠組みはきちんと定められているのです。
感覚の問題ではなく、要素に当てはめて判断されます。
ですから、自分の感じ方が過敏なのではと悩む必要もありません。
要素に当てはまるかどうかを、淡々と確かめていけばよいのです。
ひとつめが、優越的な関係を背景としていることです。上司と部下という関係が典型ですが、それだけではありません。
逆らえば仕事に支障が出る。その関係があれば、優越的だと評価されます。
形式的な上下関係だけを見るのではない、ということです。
ですから、同僚からの嫌がらせであっても諦める必要はありません。
集団で一人を追い込む形も、同じように扱われます。
人数の差そのものが、優越的な関係を作り出すからです。
同僚であっても、その人の協力がなければ仕事が回らない。集団で一人に対して行われている。こうした場合も、優越的な関係にあたります。
部下から上司に対して行われる場合も、知識や経験の差によっては該当し得ます。役職の上下だけで決まるものではありません。
二つめが、業務上必要かつ相当な範囲を超えていることです。
実務でもっとも争われるのが、この要素です。
会社は必ず、指導の範囲だったと反論してくるからです。
その反論を崩せるかどうかが、争いの行方を決めます。
崩す材料になるのが、次の章でお話しする記録です。
指導だったという主張は、具体的な事実の前では通りにくくなります。
ここが、指導との境目になります。仕事の進め方を注意すること自体は、上司の役割です。問題は、その言い方や程度が度を超えているかどうかです。
ミスを指摘されたこと自体を嫌がらせだと言うのは無理があります。しかし、そのミスを何か月も蒸し返されるのであれば、話は変わってきます。
回数、場所、言い方。この三つが度を超えていないかを見てください。
一度きりであっても、内容によっては十分に問題になります。
身体への攻撃や、著しく人格を傷つける言葉であれば、回数は問われません。
反対に、軽い注意であっても執拗に続けば問題になります。
三つめが、就業環境が害されていることです。働き続けるうえで見過ごせない支障が生じている状態を指します。
能力を発揮できなくなった、出勤するのがつらくなった。こうした状態が続いているのであれば、この要素を満たします。
実際に休職や退職に至っていなくても構いません。
働きにくさが生じていれば足りる、という考え方です。
耐えきれなくなるまで我慢する必要はないということでもあります。
早い段階で申し出ることに、なんら遠慮は要りません。
この三つがそろえば、法律上の嫌がらせにあたります。会社には、こうした行為を防ぐための措置を講じる義務が課されています。
つまり、放置していること自体が会社の落ち度になるということです。
加害している個人だけでなく、会社の責任も問える。これは覚えておいてよい点です。
個人に請求しても支払う資力がない場合がありますので、実際の回収という面でも意味があります。
この点は、後の章であらためて触れます。
まずは、会社にも責任があるという枠組みを覚えておいてください。
自分が受けているものが該当するかどうか、判断がつかない方も多いでしょう。無理に自分で結論を出さなくて構いません。
むしろ、これくらいは我慢すべきだと自分に言い聞かせている方ほど、実際には度を超えた扱いを受けているものです。
基準が職場のなかだけで作られてしまうと、感覚が麻痺していきます。
外の人に話してみると、驚かれて初めて気づく。そういうことがよくあります。
家族や友人に話すことも、立派な第一歩です。
気になる出来事を書き留めておき、後で誰かに見てもらえばよいのです。
判断は他人に委ねて構いません。あなたがすべきは、記録を残すことです。
後から見返したときに、点が線になって見えてくることがあります。
ひとつずつは小さく思えた出来事が、並べると別の意味を持ちます。
継続していたこと、繰り返されていたことが示せるからです。
単発の出来事より、積み重ねのほうが重く評価されます。
代表的な型を知っておく
次に、どういう行為が問題になるのかを整理します。行政の指針では、大きく六つの型が示されています。
これに当てはまらなければ該当しない、というものではありませんが、整理の手がかりになります。
自分の受けているものがどこに近いかを考えながら読んでみてください。
六つに分けて挙げていきます。
どれも、実際の相談で見かける形です。
該当するものに印を付けながら読んでみてください。
- 身体的な攻撃。叩く、蹴る、物を投げつけるといった行為です。
- 精神的な攻撃。人格を否定する言葉、大勢の前での叱責、繰り返される威圧的な言動。
- 人間関係からの切り離し。無視する、会議から外す、一人だけ別室に移す。
- 過大な要求。到底終わらない量の仕事を押しつける、経験のない業務を放置したまま任せる。
- 過小な要求。仕事を取り上げる、能力に見合わない単純作業だけをさせる。
- 個の侵害。私生活に過度に立ち入る、病歴や家族の事情を許可なく広める。
このうち、相談として多いのは二つめと三つめです。目に見える暴力よりも、言葉と扱いによるもののほうが圧倒的に多いのが実情です。
だからこそ、外からは見えにくく、証明も難しくなります。
だからこそ、記録の重みが増すのです。
目に見えないものを、目に見える形に変える作業だと考えてください。
その作業ができるのは、当事者であるあなただけです。
専門家も、材料がなければ動けません。
五つめの過小な要求は、意外に思われるかもしれません。しかし、仕事を与えられないことは、職場での存在を否定されることでもあります。
忙しい同僚のなかで、自分だけが何もすることがない。その孤独は、叱責よりもこたえることがあります。
能力を疑われているように感じ、自信も削られていきます。
本人が音を上げるのを待つ、という意図が隠れていることもあります。
その場合は、辞めさせるための行為として別の問題にもつながります。
退職に追い込むための手段として使われることも多く、それ自体が問題として扱われます。
座っているだけの日々が続くのであれば、その状態を記録に残しておいてください。
何日間、どういう業務を与えられなかったか。日ごとに書き留めておきましょう。
自分が受けているものがどの型に近いのかを考えてみてください。言葉にできれば、相談する際にも伝わりやすくなります。
複数の型が重なっていることも珍しくありません。その場合は、まとめて伝えて構いません。
重なっているほど、状況の深刻さも伝わりやすくなります。
ひとつずつ切り分けて考えなくて構いません。
全体としてどういう扱いを受けているかを伝えれば足ります。
証拠として何を残すか
ここが、その後の展開を決める部分です。
そして、今日から始められることでもあります。
誰の許可も要りません。
会社に知られる心配もありません。
記録を取ること自体は、何ら咎められる行為ではないからです。
嫌がらせをめぐる争いでは、何が行われたのかを示せるかどうかがすべてになります。会社は、指導の範囲だったと主張してくるからです。
言った言わないの水掛け論になれば、立場の弱い側が不利になります。それを避けるための備えです。
会社の側には、人事の記録も、担当者の証言もあります。こちらも同じだけの材料を持っておく必要があります。
そして、示すには具体性が要ります。つらかった、という言葉だけでは足りません。
いつ、どこで、誰が、何を。この四つを揃えることが目標です。
感情を書く必要はありません。事実だけで十分に伝わります。
抑えた筆致のほうが、かえって重く受け取られるものです。
読む側が、その重さを自分で受け取ってくれるからです。
残しておきたいものを挙げます。
すべてを完璧に集める必要はありません。できるところから始めてください。
六つ挙げますが、全部そろわなくても構いません。
手が届くものから順に確保していってください。
ひとつあるだけでも、何もないよりはるかに違います。
まず、日々の記録です。日付、時刻、場所、誰がいたか、何を言われたか。この五つを書き留めてください。
手帳でも、携帯の覚え書きでも構いません。その日のうちに書くことのほうが大切です。
後からまとめて書いたものより、日々の記載のほうが重く見られるからです。
数行でも構いませんので、続けることを優先してください。
言われた言葉は、できるだけそのままの表現で残してください。要約すると、きつさが伝わらなくなります。
思い出すのがつらい言葉ほど、記録としての価値は高くなります。書けるところまでで構いません。
次に、録音です。自分が加わっている会話を残す行為は、それ自体が咎められるものではありません。
どういう調子で言われたのかは、文字では伝わりにくい部分です。音として残っていると、状況が一目で伝わります。
常に録音できる状態にしておくのは負担でしょうが、呼び出しがあると分かっている場面では準備しておく価値があります。
朝礼や定例の会議など、繰り返し起きる場面を狙うという方法もあります。
いつ起きるか分かっている場面であれば、備えやすいはずです。
操作に手間取らないよう、あらかじめ試しておくとよいでしょう。
雑音が入ると聞き取りにくくなりますので、置き場所も工夫してみてください。
三つめが、やり取りが残るものです。メール、社内のメッセージ、指示の書面。文字として残っているものは強い材料になります。
削除されてしまう前に、写しを取っておいてください。会社の設備の中にしかないものは、退職すれば手が届かなくなります。
自分宛てに転送しておく、画面を撮っておく。方法はいくつもあります。
ただし、業務上の秘密にあたるものまで持ち出すのは避けてください。自分の扱いに関わるものにとどめておけば安全です。
四つめが、業務の状況を示すものです。仕事量が急に増えた、あるいは仕事を取り上げられた。これらは業務日報や予定表から示せます。
以前と比べてどう変わったのかを並べられると、扱いの異常さが伝わります。
過去の予定表が残っていれば、それが比較の材料になります。
五つめが、体調の記録です。眠れない、食欲がない、動悸がする。日付とともに書き留めておいてください。
受診しているのであれば、その日付と診断の内容も残しておきましょう。
六つめが、周囲の証言です。同じ場面を見ていた同僚がいるなら、その方の名前を控えておきましょう。
助けてくれなかったことを責める必要はありません。次は自分かもしれないと考えれば、口を出せないのも無理はないからです。
いますぐ協力を求める必要はありません。名前さえ分かっていれば、後から話を聞ける可能性が残ります。
在職中は言いにくくても、退職後であれば話してくれる方もいます。
体と心を守ることを優先する
記録の話をしましたが、それより優先すべきことがあります。
ここは、はっきりお伝えしておきたい部分です。
ご自身の健康です。
記録も、相談も、健康があってこそ続けられます。
嫌がらせを受け続けると、心身に変調が生じます。眠れなくなる、食べられなくなる、涙が止まらなくなる。仕事に行けなくなる方もいます。
本人は気づかないことも多く、家族から指摘されて初めて分かる場合もあります。
そこまで至ってから対処するのでは、回復に長い時間がかかります。
早い段階で手を打てば、それだけ元に戻りやすくなります。
ですから、変化を感じたら早めに医療機関にかかってください。争いのためではなく、まずご自身のためです。
心療内科や精神科に行くことに抵抗を感じる方もいるでしょう。ですが、体の不調で内科にかかるのと何ら変わりません。
受診すれば記録も残りますが、それは結果にすぎません。
証拠のために受診する、という順序で考えないでください。
必要であれば、休職という選択もあります。診断書があれば、制度として休むことができます。
就業規則に休職の定めがあるかを確かめてみてください。期間や、その間の賃金の扱いも書かれているはずです。
休むことは逃げではありません。立て直すための時間を確保する行動です。
距離を取ることで、状況を客観的に見られるようになる方も多いのです。
また、仕事が原因で心身を損なったのであれば、労働災害として認められる余地があります。治療費や休業中の補償を受けられる可能性があるということです。
嫌がらせによる心の病についても、認められる場面があります。諦める前に確かめてください。
この点は見落とされがちですので、体調を崩しているのであれば必ず確かめてください。
会社が申請に協力しない場合でも、本人から手続きを進めることができます。
相談先の選び方
次に、どこへ持ち込むかという話です。目的によって選ぶ先が変わります。
ひとつに絞る必要はありません。並行して使うこともできます。
まず、社内の窓口です。会社には、嫌がらせに関する相談を受け付ける体制を整える義務が課されています。
就業規則や社内の掲示に、窓口の案内が置かれているはずです。
窓口があるのであれば、まずそこを使うという選び方には合理性があります。会社が動けば、いちばん早く状況が変わるからです。
配置を変える、加害者に注意する。会社にしかできないことが数多くあります。
ただし、相談したことが加害者に伝わり、かえって悪化するのではないかという不安もあるでしょう。
とくに、加害者が窓口の担当者と近い立場にある場合は心配になります。
その場合は、相談の際に取り扱いについて確かめてください。誰まで情報が共有されるのか、加害者に伝えるかどうか。
相談したことを理由に不利益な扱いをすることは認められませんが、事実上の悪化を防ぐには、事前の確認が有効です。
確認した内容も、記録に残しておいてください。約束と違う扱いをされた場合の材料になります。
次に、労働組合です。加入しているのであれば、会社との話し合いを求めることができます。
組合が間に入ることで、個人では動かなかった話が進むこともあります。
勤め先に組合が置かれていなくても、一人から入れる組合が各地にあります。これも道のひとつです。
三つめが、都道府県が設けている労働相談の窓口です。話し合いの仲立ちをしてもらえる仕組みが用意されています。
会社の外の目が入るという点で、社内の窓口とは違う効き目があります。
費用がかからず、比較的短い期間で結論が出るという利点があります。
ただし、相手方が応じなければ手続きは進みません。強制する力はないからです。
四つめが、労働基準監督署です。ただし、嫌がらせそのものは条文に照らして白黒がつく事柄ではないため、扱ってもらいにくい領域です。
体調を崩して労働災害の申請をする場面では、こちらが窓口になります。
入り口を間違えないよう、目的をはっきりさせてから出向いてください。
五つめが、専門家への相談です。損害の賠償を求めたい、会社の対応そのものを問いたい。そうした場合には、この道になります。
費用の心配で足が止まる方もいるでしょう。収入によっては費用を立て替える公的な仕組みも使えます。
会社が動かないときにできること
相談したのに何も変わらない。そういう場合の話をしておきます。
実際、ここでつまずく方が少なくありません。
まず、会社には嫌がらせを防ぐ措置を講じる義務があります。相談を受けたのに調査もしない、加害者に注意もしないというのであれば、その不作為自体が問題になります。
相談窓口を形だけ置いて機能させていない。それも、義務を果たしているとは言えません。
ですから、相談した事実と、その後の会社の対応を記録しておいてください。いつ、誰に、何を伝えたか。それに対して何が行われたか。
何もされなかったのであれば、何もされなかったという事実を書き留めてください。それ自体が意味を持ちます。
この記録があると、会社の責任を問う際の材料になります。
加害した個人だけを相手にするより、会社に責任を認めさせたほうが、支払いを受けられる見込みも高くなります。
次に、損害の賠償を求めるという道があります。加害した個人に対しても、適切な対応を怠った会社に対しても求められます。
両方を相手にすることもできますし、どちらか一方を選ぶこともできます。
手続きとしては、話し合いから始め、応じなければ裁判所へ進むという流れです。労働に関する争いには、短い期間での解決を目指す枠組みも用意されています。
もっとも、嫌がらせの事案は事実関係が複雑になりやすく、訴訟でじっくり争ったほうが向いている場合もあります。
三つめが、配置の変更を求めることです。加害者と離れられれば、状況は大きく改善します。
ただし、被害を受けた側が動かされる形になると、実質的な不利益を受けることにもなりかねません。どちらが動くのかは、慎重に交渉してください。
本来、環境を害している側が離れるのが筋です。そう伝えて構いません。
四つめが、辞めるという選択です。これも、ひとつの合理的な判断です。
健康を損なってまで留まる必要はありません。ただし、辞めるにしても、条件を整えてからにしてください。
勢いで辞めてしまうと、受け取れるはずのものまで取りこぼします。
辞めた後でも、損害の賠償を求めることはできます。辞めることと、責任を問うことは別の話です。
むしろ、辞めた後のほうが動きやすくなる面もあります。職場での立場を気にせずに済むからです。
ただし、時間が経つほど記録は集めにくくなります。在職中に手元へ確保しておいてください。
職場のパワハラに関するよくある質問
これは指導なのか嫌がらせなのか、判断がつきません
分かれ目は、何のために、どうやって伝えたかという点にあります。相手に伸びてほしいという狙いがあり、仕事に必要な範囲にとどまっていれば指導です。反対に、人柄そのものをけなす、周囲に見せつけるように叱る、同じことを執拗に蒸し返す、仕事と関わりのない事柄まで引き合いに出す。こうしたものが混じり込んだ時点で、指導とは呼べなくなります。もっとも、ご自身で結論を出す必要はありません。判断に迷う出来事こそ、日付と言われた言葉を書き留めておいてください。積み重ねてみると、全体としての異常さが見えてくることがあります。相談する際も、その記録があれば的確な助言を受けやすくなります。
録音してもよいのでしょうか
自分が加わっている会話を残すこと自体は、通常とがめられません。嫌がらせをめぐる争いでは、どんな言葉がどういう調子で発せられたかが決め手になりますので、有力な材料になります。ただし、常に録音し続けるのは負担が大きいでしょう。呼び出しがあると分かっている場面や、繰り返し起きる状況を狙って準備するという使い方が現実的です。あわせて、日付と時刻、同席者、言われた言葉を文字でも残しておいてください。録音は探すのに手間がかかりますので、記録と組み合わせておくと後で扱いやすくなります。
相談したら、かえって立場が悪くなりませんか
相談したことを理由に不利益な扱いをすることは認められていません。会社には、相談を受け付ける体制を整え、相談者を守る義務が課されているからです。もっとも、事実上の悪化を心配される気持ちは理解できます。ですから、相談の際には取り扱いについて確かめてください。誰まで情報が共有されるのか、加害者に伝えるのかどうか。この点を先に確認しておけば、心づもりもできます。社内の窓口が信用できないのであれば、労働組合や、都道府県が設けている相談の窓口を使うという選び方もあります。
体調を崩して働けなくなりました。何ができますか
まず、受診を続けてください。回復が最優先です。そのうえで、いくつかの手立てがあります。診断書があれば休職の制度を利用できますし、仕事が原因で心身を損なったのであれば、労働災害として認められる余地もあります。治療費や休業中の補償を受けられる可能性がありますので、労働基準監督署に相談してみてください。あわせて、それまでの経緯を記録しておくことが大切です。いつからどういう扱いを受け、いつ体調が変わったのか。時系列で並べておけば、因果関係を示す材料になります。
