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懲戒解雇と言われて、これからどうなるのか不安な方へ
呼び出された部屋で、懲戒解雇にすると告げられた。理由の説明はほとんどなく、書類にサインするよう言われた。何が起きているのか整理する間もないまま、その日のうちに私物をまとめることになった。
同僚に挨拶する時間すら与えられなかった。何が起きたのか、周囲にどう伝わっているのかも分からない。そうした形で職場を離れることになった方もいるでしょう。
そのうえ、身に覚えのない噂が広がっているかもしれないと考えると、いたたまれない気持ちになります。
頭に浮かぶのは、これからの生活のことでしょう。次の仕事は見つかるのか。退職金はどうなるのか。家族に何と説明すればいいのか。
住宅の返済がある方、子どもの学費を抱えている方であれば、不安はなおさら大きいはずです。眠れない夜を過ごしている方もいるでしょう。そして、心のどこかで思っているはずです。本当に、そこまでのことをしたのだろうか、と。
周囲に相談しようにも、懲戒解雇という言葉が重くて口に出せない。自分が悪かったのだと思い込もうとしてしまう。そういう方に、私たちは何度も出会ってきました。
ですが、事情を並べてみると、会社の処分のほうに無理があった。そういう例は本当に少なくありません。まずは事実を整理してみましょう。
ここでお伝えしておきたいことがあります。会社が懲戒解雇だと言えば、それがそのまま有効になるわけではありません。懲戒解雇は、会社が持つ処分のなかでもっとも重いものです。だからこそ、認められるための条件は厳しく設けられています。
実際、争われた末に無効と判断された事例は数多くあります。会社の判断が常に正しいわけではありません。
会社は組織として結論を出しますが、その過程が公正だったとは限りません。思い込みや、社内の力関係が入り込んでいることもあります。
誰かをかばうために別の誰かを処分する、という構図が生まれることもあります。組織の判断が常に理にかなっているとは限りません。
もうひとつ知っておいてほしいのが、時間の重みです。解雇の効力を争うのであれば、早く動くほど道は広くなります。時間が経つほど、受け入れたと見られやすくなってしまうからです。
数か月が過ぎてから相談に来られる方も多いのですが、その間に取れたはずの手が失われていることがあります。まだ日が浅いのであれば、それ自体が強みです。今日この段階で調べ始めたということは、それだけで一歩前に出ているということです。
この記事では、懲戒解雇とはどういう処分なのか、有効と認められるための条件、無効になりやすい場面、手続きの不備という争点、退職金や失業給付の扱い、そして納得できないときの動き方をお話しします。
専門用語はできるだけ避けて書きました。条文を覚える必要はありません。何が問われているのかという骨格さえつかめれば十分です。
いま感じている理不尽さには、法律上の受け皿があるかもしれません。まずは自分の置かれた状況を整理するところから始めてください。
整理といっても、難しいことではありません。何を理由とされたのか、いつ何が行われたのか。この二つを書き出すところからで十分です。読み進めるうちに、確かめるべき点が見えてくるはずです。
そして、確かめる作業のほとんどは、手元の書類を並べることから始まります。特別な知識は要りません。何が書かれているかを読むだけで、見えてくることがあります。
懲戒解雇とはどういう処分か
まず、言葉の整理から始めましょう。解雇にはいくつかの種類があり、それぞれ性質が違います。
会社の説明のなかで、この区別が曖昧にされていることもあります。まずはどれにあたるのかを確かめてください。
書面に何と書かれているか。口頭の説明とずれていないか。この二つを照らし合わせてみてください。
懲戒解雇は、職場の規律に反する行為に対する制裁として行われる解雇です。処分としての側面を持つ点が、ほかの解雇と大きく異なります。
制裁である以上、あらかじめ何が禁じられているのかが示されていなければなりません。後出しで罰することはできない、という考え方が根底にあります。
これに対して普通解雇は、能力が不足している、健康上の理由で働けないといった事情を理由とするものです。制裁ではなく、契約を続けられないという判断に基づきます。
同じ解雇でも、制裁として行うのか、契約を続けられないから行うのかで、会社が示すべき理由の中身が変わってきます。
もうひとつ、諭旨解雇という扱いを設けている会社もあります。懲戒解雇に相当する事情があるものの、本人に退職を促し、自ら辞める形を取らせるというものです。
本人にとっては経歴上の傷が浅くなるという面がありますが、退職届を出せば解雇そのものを争いにくくなります。促されたからといって、すぐに応じないでください。整理解雇は、会社の経営上の事情によるものですから、これもまた別の枠組みで判断されます。
本人に落ち度がないという点で、懲戒解雇とは正反対の性質を持ちます。会社の都合を本人の責任にすり替えていないか、注意して見る必要があります。
なぜ区別が大切なのかというと、有効かどうかを判断する物差しが違うからです。懲戒解雇として争うのか、普通解雇として争うのかで、主張の組み立てが変わります。
また、懲戒解雇が無効とされた場合に、会社が予備的に普通解雇を主張してくることもあります。そうした展開も想定しておくと、慌てずに済みます。
懲戒解雇が重い処分とされる理由は、失うものの大きさにあります。退職金が支払われないことがあり、再就職の際に説明を求められる場面も出てきます。
失業給付の受け取り方にも影響します。生活そのものが揺らぐ処分だ、と言っても大げさではありません。ですから、内容を確かめずに受け入れてしまうのはあまりに惜しいのです。そのため、会社の側にも慎重さが求められます。軽々しく行える処分ではありません。
それでも、実務では驚くほど安易に持ち出されています。それゆえ、争える事案が数多く残っています。
有効と認められるための条件
では、どういう場合に懲戒解雇が有効と認められるのでしょうか。押さえるべき点を順に挙げます。ひとつでも欠けていれば争える、と考えて読み進めてください。五つの視点に整理してお話しします。
ひとつめが、就業規則に定めがあることです。どういう行為がどの処分にあたるのかが、あらかじめ書かれていなければなりません。
後から規程を作って過去の行為に適用する、という扱いは認められません。行為の時点で定めがあったかどうかが問われます。
就業規則がいつ作られ、いつ改められたのか。写しがあるなら、その日付も確かめておいてください。
そして、その就業規則が働く人に周知されている必要があります。存在すら知らされていない規程を根拠にすることはできません。
周知といっても、全員が読んでいる必要はありません。読もうと思えば読める状態に置かれていたかどうかです。金庫にしまわれていた、という状態では足りません。
二つめが、実際の行為が定められた事由にあてはまることです。会社が問題視している行為が、規程のどの項目に該当するのか。ここが説明できなければなりません。
会社の規程には、その他これに準ずる行為といった包括的な項目が置かれていることがあります。しかし、この項目を使えば何でも処分できるというわけではありません。
三つめが、処分としての重さが釣り合っていることです。行為の性質や結果の重大さに照らして、解雇という最も重い処分がふさわしいかどうかが問われます。
会社に生じた損害の大きさ、故意だったのか不注意だったのか、これまでの勤務態度はどうだったか。こうした点が総合的に見られます。
長年まじめに勤めてきたという事実は、それ自体が有利に働きます。表彰を受けたことがある、評価が高かったといった記録があれば、探しておいてください。
四つめが、公平に扱われていることです。同じような行為をした他の人が軽い処分で済んでいるのに、自分だけが解雇されている。そうした事情があれば、争う材料になります。
過去に同じような事案がなかったかを思い出してみてください。同僚が知っていることもありますので、連絡が取れるなら聞いてみる価値があります。五つめが、手続きが踏まれていることです。ここは次の章で詳しくお話しします。
この五つめは、実務でとりわけ争いになりやすい部分です。会社の側が軽視しがちだからです。これらのどれかを欠いていれば、処分は無効と判断される可能性があります。
あらためて、確かめるべき点を並べておきます。
- 就業規則に懲戒の定めがあり、その内容を知る機会があったか。
- 問題とされた行為が、規程のどの項目にあたるとされているか。
- その行為の重さに対して、解雇という処分が釣り合っているか。
- 同じような行為をした人が、より軽い処分で済んでいないか。
- 処分の前に、自分の言い分を述べる場が与えられたか。
- 会社が主張する事実に、そもそも争いはないか。
ひとつでも引っかかる点があれば、それが争いの入り口になります。すべてを自分で結論づける必要はありません。気になる点をメモにまとめて相談に持ち込めば、そこから見通しを立てられます。
会社が主張する事実そのものに争いがある場合も少なくありません。やっていないことを理由にされている、あるいは事実が大きく誇張されている。そうした場合には、まず事実関係から争うことになります。
手続きの途中で、会社の主張が変わっていくこともあります。最初に言われた理由を書き留めておくと、そのずれに気づけます。
ですから、何を理由とされているのかを正確に把握することが出発点です。曖昧なまま受け入れてしまわないでください。
口頭で告げられただけであれば、書面で示すよう求めてください。この求めには、会社は応じなければならないことになっています。
無効になりやすい場面
実務で争われてきた場面を整理しておきます。自分に当てはまるものがないか確かめてみてください。五つの型に分けてお話しします。いくつも重なっていることもあります。そのときは、束ねて主張していくことになります。
もっとも多いのが、処分が重すぎるという場面です。行為があったこと自体は認めるとしても、それに対して解雇という結論は行き過ぎではないか、という争い方です。
すべてを否定しなければ争えない、というわけではありません。認めるところは認めたうえで、処分の重さを問うという組み立て方があります。
たとえば、遅刻や欠勤が続いていた場合。回数や期間、事情の説明があったか、注意や軽い処分を経ていたか。こうした点が見られます。
体調や家庭の事情を伝えていたのに配慮されなかった、というのであれば、なおさら会社の側の対応が問われます。
伝えた事実を示せるかどうかが分かれ目になります。メールやメッセージが残っていないか、探してみてください。
一度の失敗をもって直ちに解雇に至るのであれば、段階を踏んでいないと評価されやすくなります。会社には、まず注意し、改善の機会を与えるという過程が求められます。
注意や指導の記録が残っていないのであれば、その過程がなかったことの裏づけにもなります。会社が示せないのであれば、それは会社にとって不利に働きます。
次に多いのが、事実の認定に問題がある場面です。会社が一方的に決めつけている、確かめもせずに結論を出している。そうした事情があれば、処分の前提が崩れます。
誰かの申告だけを根拠に処分が決まった、本人に一度も確かめていない。こうした進め方であれば、認定の信用性そのものが揺らぎます。
調査の記録が残っているかどうかも問われます。会社が何をどう調べたのかを示せないのであれば、それは会社の側の弱点になります。
三つめが、業務と関係のない私生活上の行為を理由とする場面です。私生活での出来事は、原則として会社の処分の対象になりません。
勤務時間の外で、職場と関わりのない場面で起きたこと。それをどこまで会社が問題にできるのかは、慎重に判断されます。
もっとも、会社の信用を大きく損なうような場合には例外もあります。とはいえ、その範囲は限られています。
会社の名前が公になった、業務に直接の支障が生じた。そうした具体的な影響が示されなければ、私生活上の行為を理由とすることは難しいと考えられています。
四つめが、実質的には別の目的で行われている場面です。会社に意見を述べたことへの報復、あるいは辞めさせたいという意図が先にあり、後から理由を探してきた。そうした構図が見えることがあります。
本来の目的が別にあるのなら、処分としての正当性は失われます。表向きの理由と、実際の動機がずれていないかを見てください。
処分の前後に何があったかを振り返ってみてください。未払いの賃金を求めた直後ではなかったか。嫌がらせを申し出た後ではなかったか。退職を促されて断った後ではなかったか。
時期の重なりは、目的を推し量る有力な手がかりになります。カレンダーに沿って出来事を書き出してみてください。自分では偶然だと思っていた並びが、並べてみると不自然に見えることがあります。
五つめが、時間が経ちすぎている場面です。ずっと前の出来事を持ち出して処分するのであれば、なぜ今なのかという疑問が生じます。
会社が知ってから相当の期間が過ぎているのに放置していたのであれば、処分する必要性が乏しかったと見られる余地があります。いつ会社がその事実を把握したのか。ここも押さえておきたい点です。
手続きの不備という争点
内容の当否とは別に、進め方そのものが争点になることがあります。ここは見落とされがちですが、有力な主張になり得ます。
会社が処分そのものには自信を持っていても、進め方までは意識していない。そうした事案は珍しくありません。とくに、社内に人事の専門部署がない会社では、手続きが省かれがちです。
まず、弁明の機会が与えられたかという点です。処分を受ける前に、自分の言い分を述べる場があったでしょうか。
形だけ呼ばれて、すでに決まった結論を告げられただけ。それは弁明の機会とは言えません。反論する材料を示す時間が与えられていたかどうかが問われます。
就業規則に弁明の機会を設ける旨が定められているのであれば、それを飛ばした処分は手続きに反することになります。定めがない場合でも、一切聞かれないまま処分されたのであれば、公正さを欠くと評価される余地があります。
その場で聞かれたとしても、いきなり答えを求められたのであれば十分とは言えません。準備する時間が与えられていたかどうかも見られます。
次に、社内の委員会などの手続きです。懲戒委員会にかけると定められているのに、開かれないまま処分が決まった。そうした場合も同じです。
就業規則にどんな手続きが定められているかを、あらためて読んでみてください。会社自身が定めたルールを守っていないのであれば、それは強い主張になります。
三つめが、処分の内容を書面で示したかという点です。どの規定に基づき、どういう事実を理由とするのか。これが示されていなければ、争う側は何に反論すればよいのか分かりません。
書面がないまま争いが始まると、会社は後から理由を追加してきます。それを封じるためにも、早い段階で書面を確保しておいてください。すでに退職した後でも、求めることはできます。遅いと思わずに動いてみてください。
四つめが、解雇の予告に関する扱いです。懲戒解雇なのだから予告も手当もいらない、と考えている会社は少なくありませんが、その理解は正しくありません。
予告を省くには、行政官庁の認定を受ける必要があります。この手続きを経ていないのであれば、予告か、それに代わる手当が必要になります。
この認定は、誰でも受けられるものではありません。よほど重い事情がある場合に限られますので、実際に受けている会社は多くないのが実情です。
ですから、即日で辞めさせられて何も支払われていないのであれば、その点だけでも確かめる価値があります。
辞めさせられたこと自体を受け入れるとしても、ここだけを取り出して求められます。当座をしのぐ支えになる場面もあるでしょう。
手続きの不備は、内容の当否より示しやすいという利点があります。何が行われ、何が行われなかったか。事実として示せるからです。
行為があったかどうかの争いは、水掛け論になりがちです。それに比べて、手続きを踏んだかどうかは記録の有無で判断できます。ですから、内容の面で分が悪いと感じている方こそ、手続きの面に目を向ける価値があります。
懲戒解雇の有効性は、次の点から確かめられます。
| 確かめる点 | 無効を主張しやすい事情 |
|---|---|
| 就業規則の根拠 | 懲戒解雇の事由が就業規則に書かれていない、または周知されていない |
| 事実の裏付け | 会社の言う事実に証拠がない、または事実が違う |
| 処分の重さ | 行為に比べて重すぎる、ほかの社員は軽い処分で済んでいる |
| 手続き | 弁明の機会がなかった、就業規則で定めた懲戒委員会を開いていない |
懲戒解雇されても、退職金を全額支給しないことが認められるのは、長年の勤続の功労を打ち消すほどの重大な背信行為がある場合に限られます。失業給付は、自分の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)とされると、給付制限が3か月になります。
退職金と失業給付はどうなるか
生活に直結する部分ですので、丁寧に見ていきます。争うかどうかを判断するうえでも、ここを把握しておく必要があります。
まず退職金です。懲戒解雇の場合は退職金を支給しない、あるいは減額すると定めている会社が多くあります。
実際、その一文を示されただけで諦めてしまう方がほとんどです。ここでもう一歩踏み込めるかどうかが、受け取れる額を左右します。
ただし、規程にそう書かれていれば当然に不支給になる、というわけではありません。退職金には、それまでの勤務に対する対価という性質があります。
長く働いてきた分だけ積み上がってきたもの、という側面があります。処分を理由に一度で消し去れる性質のものではありません。
会社の説明を受けて、規程にそう書いてあるのだから仕方ないと諦めた方が、実際にはとても少なくありません。
ですから、それをすべて失わせるには、これまでの功労を帳消しにするほどの重い事情が必要だと考えられています。
実際に争われた事例では、全額の不支給までは認められず、一部の支給が命じられたものもあります。規程を示されて諦めてしまう前に、確かめてみてください。
勤続の年数が長いほど、この主張は通りやすくなります。何年勤めてきたのかを、まず整理してみてください。
次に失業給付です。会社の都合による離職か、自分の都合による離職かで、受け取れる時期や期間が変わります。この差は、当面の生活を左右します。次の仕事が決まるまでの資金繰りに直結するからです。
懲戒解雇の場合、本人の責めに帰すべき重大な理由による離職として扱われ、給付の開始が遅れることがあります。生活への影響は小さくありません。
ただし、これは会社が離職票にどう記載したかによって決まる部分が大きく、その記載が実態と合っているとは限りません。
もっとも、この判断をするのは会社ではなく行政の側です。離職票の記載に納得できないのであれば、異議を述べることができます。
離職票を受け取ったら、記載された理由を必ず確かめてください。その場でサインを求められても、内容に納得できないのであれば、その旨を書き添えて構いません。
解雇の効力そのものを争っている場合には、その旨を申し出ておくことも大切です。係争中であることを踏まえた取り扱いが用意されています。
争っているあいだ収入が途絶えてしまう、という不安は当然のものです。制度の存在を知っておくだけでも、判断がしやすくなります。
納得できないときの動き方
ここからは、実際にどう動くかという話です。順を追ってお伝えします。
気持ちの整理がつかないうちでも、書面だけは先に集めておいてください。時間が経つほど手に入りにくくなります。
最初にすべきことは、書面をそろえることです。とくに大切なのが、解雇の理由が書かれた書面です。
会社に対して、解雇の理由を記載した証明書を交付するよう求めることができます。会社はこれに応じなければなりません。
この一枚があると、会社は途中で言い分を差し替えにくくなります。その後の展開を左右しますので、必ず手に入れてください。
伝える手段は、話し言葉ではなく文書か電子メールを選んでください。求めたという事実そのものが記録として残ります。
あわせて、就業規則、雇用契約書、給与明細、そして処分に至る経緯が分かるやり取りを集めます。
会社の設備のなかにしかないものは、もう手が届かないかもしれません。それでも、自分宛てに送っていたメールや、手元の書類は残っているはずです。次に、自分が何を望むのかを決めます。ここが方針を分ける分岐点です。
ここが定まらないまま動き出すと、途中で迷いが生じます。急がなくて構いませんので、一度考えてみてください。
職場に戻りたいのであれば、解雇が無効であることを主張し、働く意思があることを示し続けることになります。
働く意思を示すというのは、就労を求める意思を会社に伝えておくということです。何も言わないまま時間が過ぎると、争う姿勢が弱いと見られかねません。
戻る気はないが、経歴に懲戒解雇と残るのは避けたい。そう考える方も多いはずです。その場合には、合意によって退職する形に切り替えられないかを交渉することになります。この形で決着すれば、離職の理由も変わります。次の就職活動での説明もしやすくなるでしょう。
会社の側にも、争いが長引くことを避けたいという事情があります。処分を撤回して合意退職とする、という着地は実際にあり得るのです。
会社にとっても、懲戒解雇が無効と判断されれば、その間の賃金を支払うことになります。早めに折り合いたいと考える理由があります。
金銭による解決を目指すのであれば、解決金を得て終わらせるという道もあります。実務では、この形で決着する事案が多くを占めます。
いくらであれば受け入れられるのか、その線を先に決めておくと判断がしやすくなります。金額だけでなく、解決までにかかる期間も含めて考えてください。
交渉で折り合わなければ、裁判所の手続きに進むことになります。労働に関する争いには、比較的短い期間での解決を目指す枠組みも用意されています。
収入によっては費用の立替えを受けられる公的な仕組みもありますので、まずは尋ねてみてください。
懲戒解雇を告げられたら、次の順で動いてください。
- 解雇理由証明書を請求し、どの行為が理由とされたのかを確かめる。
- 就業規則の懲戒の条文と、懲戒の手続きの定めを取り寄せる。
- 会社の主張する事実に反論できる資料や証言を集める。
- 退職金規程の不支給の定めと、その当てはめ方を確かめる。
懲戒解雇に関するよくある質問
会社が言うような事実はありません。どうすればよいですか
解雇の理由が書かれた書面を会社に求めてください。どの規定に基づき、どういう事実を理由としているのかが記載されているはずです。求められれば会社は交付しなければなりませんし、この書面があると後から理由を付け足すことが難しくなります。そのうえで、指摘された事実について自分の側の説明を時系列で整理してください。関係するやり取りや記録があれば集めます。事実そのものに争いがあるのなら、処分の前提が崩れることになりますので、争う余地は十分にあります。感情的に反論するより、記録で示すことを心がけてください。
退職金は本当にもらえないのでしょうか
諦めるのは早いかもしれません。就業規則に懲戒解雇の場合は支給しないと定められていても、それだけで当然に不支給が確定するわけではないからです。退職金にはそれまでの勤務に対する対価という性質がありますので、全額を失わせるには、長年の功労を帳消しにするほど重い事情が必要だと考えられています。実際に争われた事例でも、一部の支給が命じられたものがあります。まずは退職金規程の記載を確かめ、勤続の年数や処分の理由とされた行為の内容とあわせて整理してみてください。
即日で辞めさせられ、何も支払われていません
確かめる価値があります。懲戒解雇であれば予告も手当も不要だと考えている会社がありますが、それは正確ではありません。予告を省くには、行政官庁の認定を受ける必要があるからです。この手続きを経ていないのであれば、三十日前の予告か、それに代わる手当のいずれかが求められます。認定を受けたかどうかは会社に尋ねて構いませんし、答えられないのであれば、それ自体が手がかりになります。解雇の効力を争わない場合でも、この部分だけを請求することは可能です。
職場に戻る気はありません。それでも争う意味はありますか
あります。争う目的は、必ずしも復職だけではないからです。懲戒解雇という記録が残ることを避けたいのであれば、処分を撤回させて合意による退職に切り替える交渉が考えられます。会社の側にも争いを長引かせたくない事情がありますので、この着地は実際にあり得ます。また、解雇が無効であれば、その間の賃金を請求できる立場になります。金銭による解決を目指すという選び方も十分に現実的です。ただし、時間が経つほど受け入れたと見られやすくなりますので、早めに動いてください。
