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フレックスタイム制とは?コアタイムと残業代の仕組み

フレックスタイム制とは?コアタイムと残業代の仕組み

この記事で分かること

  • 始業と終業の時刻を働く人自身が決められることがこの制度の核心
  • 会社が時刻を指定しているならフレックスタイム制とは呼べない
  • コアタイムが長すぎて選べる幅が残らない運用は趣旨から外れる
  • 清算期間の総枠を超えた分は上乗せの対象になる
  • 超えた分を次の期間へ繰り越す扱いは認められていない
  • 深夜の時間帯と法律上の休日の上乗せは制度と関係なく必要になる
  • 就業規則の定めと働き手の代表との取り決めの両方が要る

フレックスタイム制が入っていても、残業代が出る場面はきちんと残されています。清算期間を通した労働時間の合計が、あらかじめ決められた総枠を超えていれば、その分は上乗せの対象になるからです。多く働いた分を翌月へ繰り越すという扱いも認められていません。加えて、就業規則の定めと働き手の代表との取り決めがそろっていなければ、制度そのものが効力を持たないことがあります。

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自由なはずなのに、なぜか窮屈だと感じていませんか

フレックスタイム制を導入しています。求人にそう書かれていたから応募した。ところが働き始めてみると、思っていたような自由はどこにもない。

子どもの送りに間に合う時刻に出られると思っていた。通院の予定を組めると思っていた。その期待があったからこそ、落差が大きく感じられるのでしょう。

そして、期待が裏切られたことを口に出しにくいのがこの制度の厄介なところです。自由な仕組みがあるのに使えていないのは自分のせいだ、と感じてしまうからです。

朝は結局いつもの時刻に集まっている。早く帰ろうとすると空気が重くなる。残業代は出ないと言われている。そんな職場の話を、私たちはよく聞きます。

誰も先に帰らないから帰りづらい。フレックスという言葉があるせいで、かえって不満を口にしにくい。そんな空気に置かれている方もいるでしょう。

ですが、それはあなたの問題ではありません。制度が正しく運用されていないか、そもそも制度として成立していないか。原因は別のところにあります。

相談の場でも、自分の使い方が下手なだけだと思っていました、と話される方がいます。ですが、確かめてみると制度そのものに不備があった。そういう例は珍しくありません。

制度の名前だけが独り歩きして、中身が伴っていない。あるいは、中身はあるけれど働く側がその仕組みを知らされていない。どちらの場合も、損をするのは働いている人のほうです。

自分が何時間働くべきなのか、その総枠すら知らされていない。そういう職場も珍しくありません。基準が分からなければ、多いのか少ないのかを判断しようがないのです。

基準を知らされていないこと自体が、制度の運用として不十分だと言えます。働く人が自分で時間を決める仕組みなのに、決めるための物差しが渡されていないからです。

ここで最初にお伝えしておきます。フレックスタイム制が入っていても、残業代が発生する場面はきちんと残されています。制度があるから出ない、という説明は正確ではありません。

むしろ、判断の仕方が通常と違うぶん、見落とされやすい制度だと言ったほうが実態に近いでしょう。さらに言えば、制度を導入するには決められた手続きを踏む必要があります。この点は、争いになったときの最大の焦点になります。

実際に相談を受けて調べてみると、必要な取り決めが結ばれていなかった、あるいは中身が足りなかったという例は少なくありません。名前だけが使われている状態です。

この記事では、フレックスタイム制がどういう仕組みなのか、コアタイムとは何か、清算期間での過不足の扱い、どういうときに残業代が出るのか、そして制度が無効になる場面をお話ししていきます。

あわせて、実際に相談として持ち込まれる典型的な場面も挙げます。自分の職場と照らし合わせながら読んでみてください。おかしいと気づける目を持つこと。それがこの記事の狙いです。

逆に、気づかなければ何も始まりません。読み終えるころには、自分の職場の運用が筋の通ったものかどうかが見えているはずです。

確かめる作業のほとんどは、会社に何かを申し出る前に、自分ひとりで進められます。まずは知ることから始めてください。

フレックスタイム制とはどういう仕組みか

まず、骨格から押さえていきましょう。ひとつの原則さえ覚えておけば、あとは応用です。その原則とは、時刻を決めるのは働く人だ、というものです。

フレックスタイム制の核心は、始業と終業の時刻を働く人自身が決められるという点にあります。ここが、ほかの労働時間の制度と決定的に違うところです。

この一点が守られているかどうかが、すべての出発点になります。ここが崩れていれば、あとの議論は必要ありません。

会社があらかじめ決めた総枠のなかで、いつ出ていつ帰るかを本人が選ぶ。それがこの制度の姿です。

今日は用事があるから早く上がり、明日はその分を取り返す。そうした調整が自分の判断でできることに、この制度の意味があります。

育児や介護を抱えている方、通院が必要な方にとっては、働き続けられるかどうかを左右する仕組みでもあります。だからこそ、形だけの運用は問題です。

ですから、会社が始業と終業の時刻を指定しているのであれば、それはもはやフレックスタイム制とは呼べません。名前だけが残っている状態です。

朝礼があるから何時までに来い、と決められているのであれば、その時点で自分では決められていません。制度が正しく運用されているかを見る、いちばん分かりやすい物差しです。

ここで、似た名前の制度と比べておきましょう。一定の期間を平均して労働時間を判断する制度がありますが、こちらはどの日を何時間にするかを会社が決めます。

どちらも期間全体で労働時間を判断するという点では似ています。しかし、働く側から見た自由度はまったく違います。

求人に書かれていた制度がどちらだったのか、あらためて確かめてみる価値があります。名称が混同されて使われている場合もあるからです。

つまり、決める主体が違うのです。片方は会社が配分し、もう片方は働く人が選ぶ。ここを混同すると、話が噛み合わなくなります。

会社の説明が曖昧なときは、始業と終業を決めるのは誰ですかと、そのまま尋ねて構いません。答え方そのものが手がかりになります。

補足
在宅勤務や時差出勤と混同されることもあります。これらは働く場所や時間帯の話であって、始業と終業を自分で決められるかどうかとは別の問題です。求人に書かれていた制度が実際にはどれなのか、雇用契約書で確かめてみてください。

制度を導入するには、就業規則に始業と終業の時刻を働く人の決定に委ねる旨を定めたうえで、働き手の代表との間で書面による取り決めを結ぶ必要があります。

就業規則は会社が作るものですが、取り決めは働く人の側の代表と結ぶものです。ここに、働く人の関与が担保される仕組みが置かれています。この二段構えになっている点は覚えておいてください。片方だけでは足りないのです。

就業規則だけがあって取り決めがない、という職場は実際にあります。逆に、取り決めはあるが就業規則に何も書かれていないという場合もあります。どちらも不備です。

コアタイムとフレキシブルタイム

次に、実際の運用でよく出てくる二つの言葉を整理します。

この二つの言葉は、求人や社内の説明でも頻繁に登場します。意味を正確につかんでおきましょう。

どちらも取り決めのなかで定められる事柄です。口頭で伝えられているだけなら、根拠を確かめてください。

コアタイムというのは、必ず働いていなければならない時間帯のことです。会議や打ち合わせを組むために、多くの職場が設けています。

全員が確実にそろう時間帯があれば、業務は回しやすくなります。会社にとっては合理的な仕組みですし、働く側にとっても打ち合わせの予定が立てやすいという面はあります。

ですから、コアタイムがあること自体を問題視する必要はありません。問題になるのは、その長さと運用のしかたです。

これに対してフレキシブルタイムは、出退勤を自由に選べる時間帯を指します。この枠のなかであれば、何時に来ても何時に帰っても構いません。

この枠の外で働いた時間をどう扱うかも、取り決めで決められているはずです。枠外の勤務を認めない運用になっている職場もあります。

大切なのは、コアタイムを設けるかどうかは任意だという点です。設けなければならないものではありませんし、設けるのであれば取り決めのなかに定めておく必要があります。

取り決めに書かれていないコアタイムを、事実上のルールとして押しつけられている。そうした運用があるなら、それは根拠を欠いています。

そして、ここが実務での争点になります。コアタイムがあまりに長いと、自由に決められる幅がほとんど残らないからです。

制度の趣旨は、働く人が始業と終業を決められることにあります。その余地がなくなれば、趣旨そのものが失われます。

働く人が選べる部分がごくわずかしかない運用は、制度の趣旨から外れていると評価される余地があります。名目上はフレックスでも、実質は固定の勤務時間だということになります。

自分の職場のコアタイムがどれだけの長さか、確かめてみてください。所定の労働時間とほとんど変わらないのであれば、それは疑ってよい状態です。

実際、コアタイムの前後にわずかな幅を残しているだけ、という運用を見かけることがあります。これでは自分で決めているとは言いにくいでしょう。

また、フレキシブルタイムのほうが極端に短い場合も同じです。選べる幅がなければ、自分で決めているとは言えません。

朝の三十分、夕方の三十分だけが選べる幅だとしたら、それは時差出勤に近いものです。制度の名前と実態が合っているかを見てください。もうひとつ気をつけたいのが、コアタイムに遅れた場合の扱いです。ここは金額に直結する部分ですので、明細と照らし合わせながら読んでみてください。

コアタイムに間に合わなければ遅刻として扱われますが、それによって賃金を減らせるのは、実際に働かなかった時間の分に限られます。総枠を満たしているのに一律で控除するような運用は、問題になり得ます。

そもそも、清算期間の合計で総枠を満たしているのであれば、働くべき時間は働いていることになります。日ごとの遅刻を理由に賃金を減らすという発想自体が、この制度になじみません。

にもかかわらず、通常の勤務と同じ感覚で控除を行っている職場があります。給与明細に控除の項目があるなら、その根拠を確かめてみてください。

もっとも、コアタイムに遅れたこと自体を職場の規律の問題として扱うことは別の話です。賃金を減らす根拠になるかどうかとは、切り分けて考えてください。

清算期間と、過不足の扱い

ここが、フレックスタイム制を理解するうえでの要になります。清算期間という言葉さえ押さえておけば、残りは自然に理解できます。逆に、ここを飛ばすと制度全体が理解できません。少し辛抱して読み進めてみてください。

清算期間というのは、労働時間を通算して過不足を判断する期間のことです。この期間ごとに、働いた時間の合計と、あらかじめ決められた総枠とを比べます。

この総枠は、期間に含まれる日数から算出されます。ですから、月によって総枠の時間数は変わります。毎月同じではないという点は押さえておいてください。

日数の少ない月は総枠も小さくなります。いつもと同じように働いていたつもりでも、その月だけ超えているということが起こり得るのです。

清算期間の長さは、取り決めのなかで定められます。一か月とする職場が多いのですが、法律で認められた範囲であれば、より長く設定することもできます。

期間が長いほど、働き手の側からは自分の状況が見えにくくなります。今どれだけ働いていて、残りどれだけ働けばよいのか。それを把握しづらくなるからです。

ただし、一か月を超える期間を設定する場合には、追加の要件が課されます。届け出が必要になりますし、期間を細かく区切ったうえでそれぞれに上限が設けられます。長い期間に労働が偏らないようにするための仕組みです。

期間が長いほど、繁忙期に労働が集中しやすくなります。そのぶん健康への影響も大きくなりますから、歯止めが用意されているわけです。

自分の職場の清算期間がどれだけの長さかは、取り決めの書面に書かれています。まずはそこを確かめてください。

さて、期間が終わったときに、働いた時間が総枠を上回っていたとします。この超えた分が、上乗せの対象になります。この判断は、期間が終わってはじめて可能になります。月の途中で計算しても、結論は出ません。

逆に、総枠に足りなかった場合はどうなるでしょうか。ここには二つのやり方があります。どちらのやり方が採られているかで、手取りへの影響がまったく変わります。

控除されるのであれば、その月の手取りが減ります。繰り越しであれば、翌月に働くことで埋め合わせられます。

ひとつは、足りない分に対応する賃金を控除するというやり方です。もうひとつは、足りない分を次の期間に繰り越し、次の期間で働いてもらうというやり方です。

どちらを採るかは、取り決めのなかで定められているはずです。何も定められていないのに一方的に控除されているのであれば、確かめる余地があります。

注意したいのは、超えた分については繰り越せないという点です。多く働いた分を次の期間に持ち越して、そこで少なく働かせる。この扱いは認められません。

ここは、この制度をめぐるトラブルのなかでもとりわけ多い部分です。悪気なく運用されている場合もありますが、結果として賃金が支払われていないことに変わりはありません。

なぜかというと、超えた分はその期間の賃金として支払われるべきものだからです。持ち越してしまえば、支払いを先延ばしにすることになります。

賃金は、決められた期日に全額を支払わなければならないという原則があります。繰り越しはこの原則に反する扱いになります。

この原則は、働く人の生活を守るために置かれているものです。会社の都合で先送りできるものではありません。

この点を勘違いしている職場は、実は少なくありません。先月多めに働いたから今月は早く帰っていい、と言われた覚えはないでしょうか。

親切のつもりで言われているのかもしれません。しかし、本来受け取れるはずだった賃金と引き換えになっているのだとしたら、それは親切ではありません。

清算期間の法定労働時間の総枠は、「40時間×清算期間の暦日数÷7」で計算します。1か月単位の場合の目安は次のとおりです。

清算期間の暦日数 法定労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

この総枠を超えて働いた時間が、25%以上の割増がつく時間外労働です。2019年4月からは清算期間を最長3か月まで延ばせるようになりましたが、1か月を超える場合でも、各月ごとに週平均50時間を超えた分は、その月の残業代として支払われなければなりません。「3か月でならすから今月は払わない」という説明は、この点を見落としていないか確かめてください。

この制度でも残業代は出る

いよいよ本題です。フレックスタイム制のもとで、どういうときに上乗せが必要になるのでしょうか。出ないものだと思い込んだまま何年も働いてきた、という方が本当に少なくありません。積み上がった額は、思っているより大きくなっている場合があります。

基本は、清算期間を通した合計で判断します。日ごとに長く働いた日があっても、それだけでは対象になりません。期間全体で見て総枠を超えているかどうかです。

逆に、毎日わずかずつ長く働いていた場合でも、合計すれば総枠を超えていることがあります。日ごとに見ていては気づけない部分です。

一日あたり三十分ほどの超過でも、一か月を通せばまとまった時間になります。本人も会社も、残業をしたという意識すら持たないまま超えていることがあります。

ですから、ある日に長時間働いたからといって、その日のうちに残業代が発生するわけではありません。ここが、通常の働き方との大きな違いになります。

この性質を逆手にとって、いくら働いても残業代は出ないと説明されることがあります。しかし、それは判断の時期が違うというだけの話です。逆に言えば、期間が終わってみなければ結論が出ません。

会社の勤怠システムに記録されているとしても、自分の手元にも残しておいてください。退職すればシステムには触れられなくなります。

一か月を超える清算期間を設定している職場では、もう少し複雑になります。期間全体での判断に加えて、区切られた期間ごとの上限を超えていないかも見ることになります。

この二段階の判断が抜け落ちている職場は少なくありません。期間の終わりにまとめて計算するだけでは、途中の偏りを拾えないからです。そして、ここからが見落とされやすい部分です。

制度の説明では触れられないことが多く、会社の担当者も気づいていない場合があります。悪意の有無にかかわらず、支払われていない事実は変わりません。

深夜の時間帯に働いた分については、この制度とは関係なく上乗せが必要になります。原則として夜十時から翌朝五時までの時間帯にあたる部分です。

この上乗せは、清算期間の合計が総枠に届いていなくても発生します。総枠のなかに収まっているから不要だ、という理屈は通りません。

自分で選んで遅くまで働いたのだから対象外だ、という説明を受けることがあります。しかし、深夜の上乗せは働く時間帯そのものに着目したものですから、誰が決めたかは関係ありません。

フレックスタイム制のもとでは、夜型の働き方を選ぶ方もいます。その場合、深夜の上乗せが毎月まとまった額になることもあります。明細に深夜に関する項目があるか、確かめてみてください。

手続きに不備があれば制度は無効になる

フレックスタイム制も、名乗ればよいというものではありません。

制度として成り立つための条件が細かく定められており、その一つでも欠けていれば効力が認められないことがあります。

まず、就業規則に定めが必要です。始業と終業の時刻を働く人の決定に委ねる旨が書かれていなければなりません。

ここが曖昧に書かれている職場もあります。会社が定める時間帯において、といった留保が付いているのであれば、それが実質的に指定になっていないかを見る必要があります。

次に、働き手の代表との間で書面による取り決めを結ぶ必要があります。この取り決めには、対象となる労働者の範囲、清算期間とその起算日、清算期間における総枠、そして一日の標準となる労働時間を定めることが求められます。

これらのうち、清算期間における総枠がとりわけ重要です。この数字が分からなければ、超えているかどうかを誰も判断できないからです。

コアタイムやフレキシブルタイムを設けるのであれば、それも取り決めのなかで定めておくことになります。

逆に言えば、取り決めを見れば、自分の職場のルールがすべて分かるということです。写しを手に入れる価値は十分にあります。これらが欠けていれば、制度としての効力は認められません。

その場合、日ごと、週ごとの上限を超えた分がそのまま対象になります。これは金額として大きな違いを生みます。

清算期間の合計では総枠に収まっていた月でも、日ごとに見れば上限を超えた日があったはずです。その差が、そのまま請求できる額の差になります。

自分の職場で、代表がどう選ばれたか覚えているでしょうか。選出があったことすら知らないという方は、その事実自体を書き留めておいてください。

注意
就業規則にフレックスタイム制と書いてあるだけでは足りません。働き手の代表との取り決めがあるか、そのなかに清算期間と総枠が具体的に定められているか。ここまで確かめてください。取り決めの写しを見せてほしいと求めることは、正当な行為です。

なお、法律上の休日に働いた場合の上乗せは、この制度が入っていても別に必要になります。清算期間の総枠のなかで処理して終わり、というわけにはいきません。あわせて確かめておくとよいでしょう。

よくあるトラブルと確かめ方

次に、実際に相談として持ち込まれる場面を挙げておきます。心当たりがないか確かめてみてください。どれか一つでも当てはまるようなら、確かめる価値があります。

複数当てはまるようなら、制度が正しく運用されていない可能性が高いと言えます。

  • 始業と終業の時刻を、実際には会社が指定している。
  • コアタイムが長すぎて、自由に決められる幅がほとんどない。
  • 清算期間の総枠が示されておらず、自分が何時間働くべきなのか分からない。
  • 期間の合計が総枠を超えているのに、上乗せが支払われていない。
  • 超えた分を次の期間に繰り越されている。
  • 深夜まで働いた分の上乗せが計算されていない。
  • 早く帰ろうとすると、上司から嫌な顔をされる。

最後の項目は、法律の問題というより職場の風土の話です。しかし、それによって実際に自由に決められないのであれば、制度が形骸化していることの表れでもあります。

形骸化しているかどうかは、周囲の出退勤を見れば分かります。全員が同じ時刻に来て同じ時刻に帰っているのであれば、選べているとは言えません。

もっとも、風土そのものを法律で正すことは簡単ではありません。まずは金額に関わる部分から確かめていくのが現実的です。

確かめる手順をお伝えします。まず、就業規則と取り決めの書面を確かめてください。清算期間はいつからいつまでか、総枠は何時間か、コアタイムはどこまでかを読み取ります。

次に、自分の勤務時間を記録します。何時に出て何時に帰ったか。手帳に書き留めるだけで構いません。習慣にしてしまえば負担にはなりません。

三つめに、給与明細を数か月分並べます。期間の合計が総枠を超えた月に、額が動いているかどうかを見てください。

できれば一年分を並べてみてください。繁忙期と閑散期の差まで含めて眺めると、不自然さに気づきやすくなります。

四つめに、勤怠の記録と自分の記録を突き合わせます。会社が把握している時間と実際が食い違っていれば、そこが問題の入り口です。

食い違いが見つかったら、その差がどこから生じているのかを考えてみてください。打刻の前後に働いていた時間が拾われていない、という例がよくあります。

始業前の準備や、終業後の片づけ。これらが指示のもとで行われていたのであれば、労働時間にあたる余地があります。

自分の働き方がきちんと扱われているかは、次の順で確かめていくと分かりやすくなります。

  1. 就業規則に、始業と終業を労働者の決定に委ねる旨が書かれているかを見る。
  2. 労使協定で、清算期間、総労働時間、コアタイムなどが定められているかを確かめる。
  3. 清算期間ごとの実労働時間を、勤怠記録で合計する。
  4. 総枠を超えた時間に、割増のついた賃金が支払われているかを給与明細で照らし合わせる。

コアタイムがほぼ一日中に及び、始業や終業の時刻を実際には選べない場合は、フレックスタイム制とは認められないことがあります。その場合は、通常の働き方として、1日8時間を超えた分に残業代が発生します。

フレックスタイム制に関するよくある質問

フレックスだから残業代は出ないと言われました

正確ではありません。フレックスタイム制は、始業と終業の時刻を働く人が決められるという仕組みであって、上乗せの制度そのものをなくすものではないからです。清算期間を通した合計が、あらかじめ決められた総枠を超えていれば、その超えた分は上乗せの対象になります。加えて、深夜の時間帯に働いた分については、この制度とは関係なく上乗せが必要です。法律上の休日に働いた分も同じです。まずは自分の清算期間の総枠が何時間なのかを確かめ、実際に働いた時間の合計と比べてみてください。

コアタイムが長く、実際にはほとんど自由がありません

疑ってよい状態です。コアタイムを設けること自体は認められていますが、それが長すぎて自由に決められる幅がほとんど残らないのであれば、制度の趣旨から外れていると評価される余地があります。名目上はフレックスでも、実質は固定の勤務時間だということになるからです。まずは、取り決めのなかでコアタイムがどう定められているかを確かめてください。そのうえで、所定の労働時間と比べてどれだけの幅が残されているのかを見てみましょう。制度が無効と判断されれば、通常の考え方に戻して計算されることになります。

先月多く働いたので今月は少なくてよいと言われました

その扱いは認められません。清算期間の総枠を超えて働いた分は、その期間の賃金として支払われるべきものだからです。次の期間に繰り越して、そこで少なく働かせるという処理をすれば、支払いを先延ばしにすることになってしまいます。なお、逆に足りなかった場合については、次の期間に繰り越して働いてもらうという扱いが認められています。不足は繰り越せるが超過は繰り越せない、という非対称な仕組みだと覚えておいてください。過去の明細を並べて、超えた月に支払いがあったかを確かめてみましょう。

就業規則にフレックスと書いてあれば、それで有効ですか

足りない可能性があります。制度を有効に運用するには、就業規則の定めに加えて、働き手の代表との間で書面による取り決めを結ぶ必要があるからです。そして、その取り決めには対象となる労働者の範囲、清算期間とその起算日、清算期間における総枠、一日の標準となる労働時間を定めることが求められます。コアタイムを設けるのであれば、それも定めておく必要があります。まずは取り決めの写しを見せてほしいと会社に求めてください。存在しない、あるいは中身が足りないのであれば、それ自体が大きな手がかりになります。

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