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忙しい月なのに残業代が出ないと言われていませんか
今月は繁忙期で、一日十時間を超える日が何度もあった。それなのに給与明細を見ると、残業代の欄は空白のまま。会社に尋ねると、うちは変形労働時間制だからと返ってくる。
制度の名前を出されると、それ以上踏み込みにくくなります。専門的な話だと感じてしまい、自分が知らないだけなのだろうと引き下がる。そういう方がほとんどでしょう。
けれども、引き下がる必要はありません。制度の骨格は、思っているほど複雑ではないからです。押さえるべき点はいくつかに絞られます。
その一言で会話が終わってしまう。何をどう聞き返せばよいのか分からない。そんな経験をした方は、決して少なくありません。
同僚に聞いても、同じように首をかしげるだけ。誰も仕組みを説明できないまま、そういうものだと受け入れて働いている。そんな職場は珍しくありません。
説明できる人がいないということ自体、制度が正しく運用されているか怪しいという合図でもあります。本来、働く人に知らされていなければならない内容だからです。
変形労働時間制という言葉は、たしかに耳慣れないものです。名前だけ聞くと、労働時間の決まりごとが丸ごと外れる制度のように感じられるかもしれません。
ですが、そんな制度が存在するはずもありません。労働時間についての決まりごとは、働く人の健康と生活を守るためにあるからです。
会社の都合だけで、その守りを外せる仕組みが用意されているわけがないのです。
けれども、そうではありません。この制度が入っていても、残業代が発生する場面はきちんと残されています。むしろ、計算の仕方が少し複雑になるぶん、見落とされやすい制度なのです。
加えて、制度を入れるには決められた手続きを踏む必要があります。その手続きに不備があれば、制度そのものが効力を持ちません。その場合、通常の考え方に戻して計算し直すことになります。
ここが、この制度をめぐる争いの最大の焦点です。制度が有効かどうかで、受け取れる額がまったく変わってくるからです。
ですから、確かめる順序としても、まず制度が有効に成立しているかを見ることになります。計算の話は、その後です。
実際、相談を受けて調べてみると、必要な手続きが取られていなかったという例は珍しくありません。名前だけが使われている、という状態です。
就業規則を見せてもらったら、変形労働時間制を採用するという一文があるだけだった。各日の労働時間はどこにも書かれていなかった。そういう例は、実務のなかで何度も目にします。
この場合、制度としての効力が認められず、通常の考え方に戻して計算し直すことになります。すると、それまで出ていなかった残業代がまとまった額になることもあるのです。
この記事では、変形労働時間制がどういう仕組みなのか、期間の区切り方による違い、どういうときに残業代が出るのか、そして制度が無効になる場面と、よくある違法な運用についてお話ししていきます。
あわせて、おかしいと感じたときに何から手をつければよいのかも整理します。順番を知っておくだけで、動きやすくなるはずです。
細かな計算まで自分でできるようになる必要はありません。おかしいと気づける目を持つこと。それがこの記事の目的です。
気づきさえすれば、あとは専門家が引き受けられます。逆に、気づかなければ何も始まりません。
読み終えるころには、会社の説明のどこを確かめればよいのかが見えているはずです。
確かめる作業の多くは、誰にも知られずに始められます。まずは手元の書類を見るところからで十分です。
変形労働時間制とはどういう仕組みか
まず、仕組みの骨格からお話ししましょう。難しい話ではありません。
要点はひとつです。労働時間を測る物差しの当て方が変わる、というだけのことです。
通常の考え方では、労働時間の上限は一日ごと、そして一週ごとに決められています。この上限を超えて働けば、その部分について上乗せが必要になります。
この二つの物差しは同時に働きます。一日では超えていなくても、週の合計で超えていれば対象になるということです。
変形労働時間制は、この二つの物差しの当て方を変えるものだと考えてください。物差しそのものがなくなるわけではありません。
変形労働時間制は、この物差しを一定の期間全体に広げるものです。ある日は長く、ある日は短く。そうやって働いても、期間全体を平均して上限の範囲に収まっていればよい、という考え方をします。
言い換えれば、忙しい日に長く働かせるかわりに、他の日を短くして帳尻を合わせる仕組みです。この帳尻合わせが実際に行われているかどうかが、後で大きな争点になります。
帳尻を合わせるための短い日が設定されていないのであれば、それは平均するという仕組みではありません。単に長く働かせているだけです。
なぜこんな仕組みがあるのでしょうか。仕事の量が時期によって大きく変わる職場があるからです。
毎日きっちり同じ時間で区切ってしまうと、忙しい日は回らず、暇な日は手持ち無沙汰になる。そうした無駄をなくすために設けられた仕組みだと考えてください。
年末に集中する業種、月末に山が来る職種、季節によって客足が変わる店舗。こうした職場では、毎日同じ時間で区切るより、繁閑に合わせて配分したほうが合理的だという考え方があります。
宿泊業や観光業、農業に関わる仕事、決算の時期に業務が集中する部署。制度が想定しているのは、こうした働き方です。
逆に言えば、年間を通して業務量が一定している職場で、この制度を持ち出す必然性は乏しいはずです。そこも一つの見どころになります。
働く側から見ても、忙しくない時期にまとまった休みを取れるという利点はあり得ます。制度そのものが働き手に不利だと決まっているわけではありません。
本来の使い方がされていれば、繁忙期に集中して働き、その分を閑散期の休みで取り戻すという働き方も可能になります。制度の存在自体を疑う必要はないのです。
問題は、この仕組みが本来の趣旨から離れて使われる場合です。単に残業代を抑えるための道具として持ち出される。そういう場面が実際にあるのです。
忙しい日を長く設定するだけで、暇な日を短くしていない。それでは、ただ働く時間が増えているだけです。制度の名前を借りているにすぎません。
ここで押さえておきたいのは、どの日を何時間の勤務にするかは、あらかじめ決めておかなければならないという点です。働いてみてから後で振り分ける、という使い方は認められません。
前もって決めておくからこそ、働く側は自分の予定を立てられます。いつ長く働くことになるのかが直前まで分からないのであれば、この制度が働き手にもたらすはずの利点は失われてしまいます。
この前提が崩れている職場は、実はかなりあります。あとで詳しくお話しします。
崩れているかどうかは、シフトがいつ出されているかを見れば、かなりの部分が分かります。
期間の区切り方によって型が分かれる
変形労働時間制には、平均する期間の長さによっていくつかの型があります。どれが使われているかで、確かめるべき点も変わってきます。
自分の職場でどの型が使われているのかは、就業規則か、働き手の代表との取り決めの書面に書かれているはずです。まずはそこを見てください。
ひとつめが、一か月以内の期間で平均する型です。月末や月初に業務が集中する職場でよく使われています。もっとも導入されている例が多い型です。
給与の締め日に合わせて期間を設定している職場が多いでしょう。自分の職場の締め日と、対象期間の起算日が一致しているかを見ておくと、理解しやすくなります。
二つめが、一年以内の期間で平均する型です。季節によって忙しさが大きく変わる業種で使われます。夏に集中する職場、年度末に山が来る職場などです。
期間が長いぶん、途中で自分の労働時間がどうなっているのかを把握しにくくなります。働き手の側から見ると、もっとも見通しの立ちにくい型と言えるでしょう。
この型には、より厳しい制限が設けられています。一日あたり、そして一週あたりに設定できる時間に上限がありますし、連続して働かせられる日数にも制限があります。期間が長くなるほど、働き手への負担が大きくなりかねないからです。
また、期間の途中で対象となる労働者が入れ替わった場合の扱いにも決まりがあります。途中で入社した方、途中で退職した方については、あらためて精算が必要になることがあります。
年度の途中で入社したのに何も精算されていない、という方は確かめてみる価値があります。
三つめが、一週間単位の型です。こちらは、規模の小さい特定の業種に限って認められています。日ごとの業務量を前もって見通しにくい職場を想定したものです。
この型は使える場面が限られていますので、該当しない業種や規模の会社が持ち出しているのであれば、その時点で問題があります。
自分の職場がこの型を使っていると説明されたのであれば、業種と規模の要件を満たしているかを確かめてみてください。
どの型であっても、共通していることがあります。それは、どの日にどれだけ働くのかを、期間が始まる前に決めておかなければならないという点です。
この一点さえ覚えておけば、自分の職場の運用が筋の通ったものかどうかは、かなりの部分まで判断できます。
そして、決めた内容は働き手に知らされていなければなりません。自分がいつ何時間働くことになっているのかを知らないまま期間を過ごしている、という状態は本来おかしいのです。
知らされていたかどうかは、後になって争いになります。掲示されていた、共有のフォルダに入っていた、口頭で伝えた。会社の説明はさまざまですが、実際に見た記憶があるかどうかを思い出してみてください。
あなたの職場でシフトが出るのはいつでしょうか。前月のうちに出ているのか、それとも直前まで分からないのか。ここは確かめる価値があります。
もし手元にシフト表が残っているなら、いつ配られたものかも含めて保管しておいてください。配布の時期そのものが、後で意味を持ちます。
この制度でも残業代は出る
いよいよ本題です。変形労働時間制のもとで、どういうときに残業代が発生するのでしょうか。
ここを知らないまま、出ないものだと思い込んでいる方が本当に多いのです。
考え方は三段階になります。順に見ていきましょう。
三段階と聞くと身構えるかもしれませんが、日、週、期間全体という順に見ていくだけです。
まず、日ごとの判断です。あらかじめ長めに設定されていた日については、その設定された時間を超えた分が対象になります。設定が通常の上限より短い日については、法律上の上限を超えた分が対象です。
ここで注意したいのは、長めに設定されていた日については、その設定時間に達するまでは上乗せの対象にならないという点です。だからこそ、どの日が何時間に設定されていたのかが決定的に重要になります。
裏を返せば、会社が後から都合よく設定を書き換えられるのであれば、いくらでも上乗せを避けられてしまいます。前もって決めておくという要件が厳しく求められるのは、このためです。
設定そのものが存在しないのであれば、この判断ができません。その場合は通常の考え方に戻ることになります。
次に、週ごとの判断です。日ごとの判断で拾えなかった部分について、その週に設定されていた時間を超えていないかを見ます。
週の起点をいつとするかは、あらかじめ定められているはずです。ここがずれると集計の結果も変わりますので、規程で確かめておいてください。
最後に、期間全体での判断です。日ごと、週ごとで拾えなかった部分について、期間を通した上限を超えていないかを確かめます。
期間全体の上限は、その期間に含まれる日数から算出されます。月によって日数が違えば、上限も変わってくるということです。
この三段階を経て、超えている部分について上乗せが必要になるわけです。同じ時間を二重に数えないよう順に拾っていく、と考えると分かりやすいでしょう。
手順が複雑に見えるかもしれませんが、要は取りこぼしなく、かつ重複なく拾うための順序です。細かな計算まで自分でやる必要はありません。
ここで大切なのは、期間の途中では結論が出ないという点です。月の途中で計算しても、その月が終わってみなければ全体の判断はできません。
この性質があるために、精算そのものが忘れられがちです。日々の給与計算では拾えない部分が残るからです。
給与の担当者が制度を正しく理解していない職場では、最初の段階の判断だけで終わってしまい、期間全体の見直しが行われないことがあります。
だからこそ、日々の勤務時間を自分で記録しておく意味があります。あとから遡って積み上げる作業になるからです。
記録がなければ、期間全体の合計を出すことができません。会社の記録に頼るしかなくなり、それが正確でなければ確かめようがなくなってしまいます。
また、深夜の時間帯に働いた分については、この制度とは関係なく上乗せが必要です。夜十時から翌朝五時までの時間帯に働いていれば、それだけで発生します。
この点は見落とされやすいところです。変形労働時間制だからすべて対象外だ、という誤った説明とあわせて、深夜の分まで支払われていない例が見られます。
法律上の休日に働いた場合も同じです。休日についての上乗せは、変形労働時間制が入っていても別に必要になります。
どの日が法律上の休日にあたるかは、就業規則の定め方によって決まります。あわせて確かめておくとよいでしょう。
手続きに不備があれば制度は無効になる
ここからが、実務でもっとも重要な部分です。変形労働時間制は、名乗ればよいというものではありません。
制度として成り立つための条件が、細かく定められています。そして、その一つでも欠けていれば効力が認められないことがあるのです。
制度を入れるには、就業規則で定めるか、働き手の代表との間で書面による取り決めを結ぶ必要があります。型によって、必要な手続きは異なります。
一か月以内の型であれば就業規則で定める方法が使えますが、一年以内の型では働き手の代表との書面による取り決めが求められます。型ごとに求められるものが違う点は押さえておいてください。
そして、その内容にも決まりがあります。対象となる期間、その期間の起算日、どの労働者が対象になるのか、そして各日や各週の労働時間。これらが定められていなければなりません。
とりわけ、各日や各週の労働時間が具体的に定められているかは、確かめる価値が高い部分です。ここが空欄のままの規程は、実際にかなりあります。
ここが抜けていると、制度としての効力が認められないことになります。効力がなければ、通常の考え方に戻して計算されます。
この違いは、思っている以上に大きなものです。長めに設定されていたはずの日についても、通常の上限を超えた部分がそのまま対象になるからです。
繁忙期に長時間の勤務が続いていた方であれば、この差はまとまった額になります。制度が有効かどうかを確かめる価値は、ここにあります。
つまり、一日ごと、一週ごとの上限を超えた分がそのまま対象になるということです。これは金額として大きな違いを生みます。
働き手の代表を選ぶ手続きにも注意が必要です。会社が一方的に指名した人では、代表として認められない場合があります。
投票や話し合いなど、働く人たちの意思が反映される方法で選ばれている必要があります。総務の担当者が自動的に就いていた、というような運用は問題になり得ます。
あなたの職場では、代表がどうやって選ばれたか覚えているでしょうか。そもそも選出があったことすら知らない。そういう方も多いはずです。
選出があった記憶がないのであれば、その事実自体を書き留めておいてください。手続きの不備を示す手がかりになります。
また、届け出が必要とされている場合に、それがされていないという例もあります。手続きの一つひとつが、制度の効力を支えているのです。
届け出がされているかどうかは、会社に尋ねれば分かります。控えに受付の印が押されているはずですから、見せてもらえるかを聞いてみてください。
もっとも、これらを自分ひとりで判断するのは簡単ではありません。まずは、規程を確かめて写しを取っておく。そこまでで十分です。
写しさえあれば、あとは専門家が読み解けます。判断の部分まで背負う必要はありません。
よくある違法な運用
次に、実際によく見かける問題のある使い方を挙げておきます。心当たりがないか確かめてみてください。
どれか一つでも当てはまるようなら、制度が正しく運用されていない可能性があります。
- 期間が始まった後になってから、その月のシフトを決めている。
- いったん決めた勤務時間を、会社の都合で頻繁に変更している。
- 忙しい日だけ長く設定し、暇な日を短くする調整をしていない。
- そもそも各日の労働時間が定められておらず、実績に合わせて後から辻褄を合わせている。
- 期間全体で見れば上限を超えているのに、精算がされていない。
- 深夜や法律上の休日の上乗せが、まったく計算されていない。
とりわけ多いのが、最初の二つです。前もって決めておくという前提が守られていなければ、そもそも制度の趣旨から外れています。
この二つは、働いている本人がいちばん実感している部分でもあります。制度の中身を知らなくても、シフトがいつ出るかは毎月体験しているからです。
シフトが直前まで出ない職場、出た後も頻繁に差し替えられる職場。こうした運用は、変形労働時間制の枠組みとは相容れません。
人が足りないから急に出てほしい、という連絡が日常的に入る職場もあるでしょう。事情は理解できますが、それを繰り返していれば、前もって決めておくという前提は形だけのものになってしまいます。
三つめも見落とされがちです。忙しい日を長く設定するだけで、その分を他の日で短くしていないのであれば、単に労働時間が増えているだけということになります。
自分のシフトを一か月分並べて、通常の勤務時間より短い日がどれだけあるかを数えてみてください。ほとんどないのであれば、平均するという仕組みは働いていません。
四つめについては、そもそも制度として成立していない可能性が高いと言えます。実績に合わせて後から割り振るのは、平均するという考え方とはまったく違うものです。
働いた結果を見てから、その月の勤務時間をそう決めていたことにする。これが認められるなら、どんな長時間の勤務も制度の名前で正当化できてしまいます。
五つめの精算漏れは、期間が長い型ほど起こりやすくなります。一年単位で運用している職場では、期間の終わりに全体を見直す作業が必要になるからです。
途中で退職した場合も同じです。期間の途中までしか働いていない以上、その時点までの実際の労働時間で精算し直す必要があります。ここが抜けている例は多く見られます。
こうした運用が続いている職場では、記録を残しておくことが特に大切になります。あとから会社の説明が変わることもあるからです。
シフト表の写し、変更を伝えられた連絡、実際に働いた時間のメモ。この三つがそろえば、運用の実態はかなりの部分まで示せます。
おかしいと感じたときにすること
では、実際に確かめて動くにはどうすればよいのでしょうか。順を追ってお話しします。
最初にすることは、就業規則と、取り決めの書面を確かめることです。どの型が使われているのか。対象期間はいつからいつまでか。各日の労働時間はどう定められているか。ここを読み取ります。
読んでも分からない部分があって構いません。写しさえ手元にあれば、後から確かめられます。まずは中身を見て、写しを取ることを目指してください。
就業規則は、働く人がいつでも読める状態に置いておくべきものとされています。求めても示されないのであれば、その姿勢そのものを疑ってよいでしょう。
共有のフォルダに入っている、事務所の棚に置いてある、掲示板に貼られている。置き場所は職場によって違いますので、まずは同僚に尋ねてみてもよいでしょう。
次に、シフトがいつ出されているかを記録してください。前もって決められていたのか、後から埋められたのか。この事実は制度の効力そのものに関わります。
配られた日付が分かるものが残っていれば理想的です。難しければ、いつ受け取ったかを自分でメモしておくだけでも構いません。
三つめに、日々の勤務時間を自分で記録します。何時に出て何時に帰ったか。手帳に書き留めるだけで構いません。期間全体で判断する制度である以上、この積み重ねが決定的に効いてきます。
四つめに、給与明細を数か月分並べてみてください。忙しかった月と、そうでない月。額の動き方に不自然さがないかを見ます。
忙しかった月にも額が動いていないのであれば、そもそも計算がされていない疑いが出てきます。あわせて、深夜や休日に関する項目が立てられているかも確かめてください。
そのうえで、会社に説明を求める段階に進みます。いきなり請求という形にせず、自分の労働時間がどう計算されているのか教えてほしい、という尋ね方から入るとよいでしょう。
会社の側に隠す意図がなければ、尋ねただけで話が片づくこともあります。担当者が制度を勘違いしていただけだった、という結末も実際にあるのです。
やり取りは形に残る方法で行ってください。説明の内容が後から変わることもあります。
会社が説明を避ける、あるいは筋の通らない説明を繰り返す。そうした場合には、外部の力を借りる段階だと考えてください。行政の窓口に持ち込む方法もあれば、専門家に直接ぶつける方法もあります。
労働基準監督署は法律違反があるかどうかを見る役所です。制度の手続きに不備があれば指導が入ることもありますが、個別の金額まで踏み込んで解決してくれるわけではありません。目的に応じて使い分けてください。
なお、賃金を求められる期間は無期限ではありません。法律の改正で以前より長くなったとはいえ、古い月の分から順に範囲の外へ出ていきます。悩んでいるあいだにも、取り戻せる額は少しずつ目減りしていくのです。
ひとりで抱え込まないでください。制度の中身が複雑なぶん、外から見てもらう価値は大きいはずです。
相談したからといって、必ず請求しなければならないわけではありません。まずは自分の職場の運用が正しいのかを確かめる。それだけでも意味があります。
おかしいと感じたその感覚は、たいてい何かを捉えています。放っておかずに、確かめてみてください。
変形労働時間制に関するよくある質問
変形労働時間制だと、残業代は一切出ないのですか
そんなことはありません。この制度は、労働時間の上限を判断する物差しを一定の期間全体に広げるものであって、上乗せの仕組みそのものをなくすものではないからです。あらかじめ長めに設定されていた日については設定された時間を超えた分、そうでない日については法律上の上限を超えた分が対象になります。さらに、週ごと、期間全体という順で判断が重ねられます。加えて、深夜の時間帯に働いた分や、法律上の休日に働いた分については、この制度とは関係なく上乗せが必要です。出ないと言われたら、根拠を確かめてください。
シフトが毎月直前まで出ません。これは問題ですか
問題になり得ます。変形労働時間制では、どの日に何時間働くのかを、対象となる期間が始まる前に決めておくことが前提とされているからです。働いてみてから後で振り分ける、という使い方は認められていません。シフトが直前まで出ない、あるいは出た後も頻繁に差し替えられるという運用が続いているのであれば、制度の前提が崩れている可能性があります。この場合、制度としての効力が否定され、通常の考え方に戻して計算されることもあります。シフトがいつ出されたかを記録に残しておいてください。
就業規則に一行だけ書いてあります。それで足りますか
足りない可能性が高いと言えます。制度を有効に運用するには、対象となる期間、その起算日、対象となる労働者の範囲、そして各日と各週の労働時間が具体的に定められている必要があるからです。変形労働時間制を採用するという趣旨の一文があるだけでは、その要件を満たしているとは言えません。また、型によっては働き手の代表との書面による取り決めや、行政への届け出が求められます。まずは規程の写しを取り、どこまで書かれているかを確かめてください。書かれていないこと自体が手がかりになります。
期間が終わった後に、まとめて精算されるのが普通ですか
期間全体での判断は、その期間が終わってみなければできません。ですから、期間の終了後に精算が行われること自体は不自然ではありません。問題は、その精算が実際に行われているかどうかです。とりわけ一年単位で運用している職場では、期間の終わりに全体を見直す作業が必要になりますが、これが抜け落ちている例が見られます。ご自身で日々の勤務時間を記録しておけば、期間の合計を出して確かめることができます。合計が上限を超えているのに何も支払われていないのであれば、確かめる価値は十分にあります。
