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解雇を争いたい、でも生活が持たない
解雇には納得できない。無効だと主張して争うつもりでいる。けれども、争っているあいだ収入はどうすればいいのか。
手続きには数か月から年単位の時間がかかることもあります。その間をどう乗り切るのか、見通しが立たなければ踏み出せません。気持ちだけで押し切れる期間ではありません。
だからこそ、生活の設計を先に立てておく必要があります。いつまで、いくらで持ちこたえられるのか。そこを見積もってから動くほうが確実です。
その見積もりに、この仕組みを織り込めるかどうかで結論が変わります。入ってくるものがあると分かれば、耐えられる期間はぐっと延びます。
この問いは、解雇の相談を受けるなかで必ず出てきます。そして、答えに詰まる方がとても多い部分でもあります。
正義感だけでは家賃も食費も払えません。理不尽だと分かっていても、生活の前では立ち止まらざるを得ません。その葛藤を抱えたまま、何もできずに時間だけが過ぎていく。それがいちばん惜しい状態です。
そして、時間が経つほど解雇を受け入れたと見られやすくなります。迷っている期間そのものが不利に働きます。ですから、生活の手当てと争いの準備は、同時に進めるのが正解です。
争うということは、まだその会社の従業員だと主張することです。従業員なのですから、職を失ったことを前提とする給付とは相容れないように見えます。この理屈は、たしかに筋が通っているように思えます。ですから、多くの方が諦めてしまいます。
けれども、法律はそこまで冷たくはありません。争う人が生活に困るような設計にはなっていません。順に見ていけば、その仕組みが分かります。知らなければ使えないというだけの話です。
逆に言えば、知ってさえいれば誰でも使えます。実際、窓口でその点を指摘され、手続きが止まってしまったという話も耳にします。
担当者によっては、争っているなら対象外だと説明されることもあるようです。そこで引き下がってしまうと、生活の支えを自ら手放すことになります。制度の名前を出して、あらためて確かめてほしいと伝えてください。
ですが、諦める必要はありません。解雇の効力を争っている方のために、仮給付という仕組みが用意されています。
これは、争いの決着がつくまでのあいだ、暫定的に給付を受けられるようにするものです。名前のとおり、仮に受け取っておくという扱いになります。後で結論が出たときに、あらためて整理し直す。そういう前提での支給です。
この仕組みがあるおかげで、生活を維持しながら争いを続けることができます。逆に言えば、これを知らないままだと、生活のために争いを諦めるという選択を迫られかねません。
会社の側は、そうなることを見込んでいることさえあります。時間を味方につけて、こちらが折れるのを待つという構図です。その構図を崩せるかどうかが、争いの行方を左右します。
こちらが生活を維持できると分かれば、会社の態度も変わってきます。長引かせても意味がないと判断すれば、早期の解決に動くこともあります。
この記事では、争っている場合の扱い、仮給付という仕組みの中身、受けるまでの段取り、勝ったときの返還、負けたときや和解したときの扱い、そして迷ったときの考え方をお話しします。
受給の条件や手続きの一般的な流れについては、別の記事に譲ります。ここでは、争っている方に固有の論点だけを扱います。
加入していた期間の条件や、受け取れる期間の長さといった基本の部分は、そちらで確かめてください。この記事は、その基本を押さえたうえで読んでいただくと理解しやすくなります。
重なる説明は省いていますので、初めての方は先にそちらをご覧ください。お金の心配で権利を手放すことのないよう、まずは仕組みを知ってください。
知っているかどうかだけで、選べる道の数が変わります。そして、選べる道が多いほど、交渉でも有利になります。生活に追われて焦る必要がなくなれば、条件を吟味する余裕も生まれるからです。
争っていると給付が受けられないのか
まず、なぜこの問題が生じるのかを整理しておきます。理屈が分かれば、窓口での説明もしやすくなります。
なぜ自分がこの扱いを求めるのかを、自分の言葉で言えるようになるからです。窓口では、事情を簡潔に説明できることが何より役に立ちます。
失業に関する給付は、職を失った状態にある人を対象としています。働く意思と能力がありながら、就くべき職がない。その状態を支える仕組みです。この前提があるために、在籍を主張することとの間に緊張が生まれます。
言い分が食い違っているあいだ、どちらの前提で扱うのかが定まりません。そのため、決着までの扱いを別に定める必要が出てきます。そこで登場するのが、次にお話しする仕組みです。
ところが、解雇の効力を争っている方は、自分はまだ従業員であると主張していることになります。
辞めていないと言いながら、辞めた人向けの給付を求める。形のうえでは、たしかにちぐはぐに映ります。けれども、辞めさせられたと会社が言っている以上、現に働けていないことも事実です。
働きたくても職場に入れてもらえない。その状態は、失業と何が違うのかという話になります。形式ではなく実態を見れば、支えが必要な状況であることは明らかです。
もし主張が認められれば、労働契約は続いていたことになりますから、その期間の賃金を会社に請求できる立場になります。働けなかったのは会社が就労を拒んだからであり、その責任は会社が負うべきものだからです。
この請求が認められれば、その期間の収入は結果として確保されることになります。ただし、それは決着した後の話です。いま必要なお金にはなりません。
数か月先の入金では、今月の家賃は払えません。つまり、賃金と給付の両方を受け取れることになってしまう。ここに矛盾が生じるわけです。
制度としては、この重なりを避けたいという事情があります。限られた財源で運営されている以上、当然の配慮でもあります。
だからといって、争っている人が何も受け取れないとなれば、どうなるでしょうか。答えははっきりしています。争える人がごく限られてしまいます。蓄えのある方だけが権利を主張できる、という結果になってしまいます。
収入が完全に途絶えたまま、数か月から年単位の手続きを続けなければなりません。それに耐えられる方は多くありません。住宅の返済がある方、子どもの学費を抱えている方であれば、なおさらです。
貯えを取り崩し続けられる期間には、限りがあります。そして、底が見えてくると、条件の悪い和解にも応じてしまいがちです。それこそが、会社の狙いである場合もあります。
結果として、争う権利があっても、生活のために手を引かざるを得なくなる。これでは、争える人と争えない人が資力によって分かれてしまいます。それは、権利があるということの意味を失わせてしまいます。
使えない権利は、ないのと同じだからです。制度がその点を放置していないことは、覚えておいてよいでしょう。安心して争える環境を整えることも、制度の役割だからです。
この不都合を解消するために設けられたのが、仮給付という扱いです。制度としての筋を保ちながら、現実の生活も守る。その折り合いをつけるための工夫です。だから、遠慮せずに使ってよいわけです。後ろめたく思う必要はどこにもありません。保険料を納めてきたことへの正当な見返りです。
仮給付という仕組み
では、中身を見ていきます。特別な制度というより、通常の給付に条件を付けた形だと考えてください。入り口も、通う先も、通常と変わりません。違うのは、後で精算があり得るという一点だけです。そこさえ理解しておけば、迷うことはありません。次に、実際の進め方を見ていきます。
仮給付とは、解雇の効力に争いがある場合に、その決着がつくまでのあいだ、暫定的に給付を行うという取り扱いです。結論が出るまで判断を保留し、とりあえず支給しておく。そういう発想です。
生活を止めないことを優先し、細かな整理は後回しにするという考え方です。順序として、これは理にかなっています。
あくまで仮の措置ですから、後で争いの結果が出たときに、あらためて精算されることになります。精算という言葉に身構える必要はありません。順に説明していきます。
結論から言えば、損をする仕組みにはなっていません。受け取っておいて後悔する場面は、ほとんどないと言ってよいでしょう。むしろ、受け取らなかったことを悔やむ方のほうが多数です。
ここが通常の給付と大きく違う点です。受け取ったお金が、後から返還の対象になり得るということです。受け取った時点では、まだ自分のものと確定していない。そう理解しておいてください。
そのつもりでいれば、後の精算にも慌てずに済みます。使い切ってしまわず、いくらか残しておくという考え方もあります。もっとも、生活が苦しければそこまでの余裕はないでしょう。無理をする必要はありません。
とはいえ、いま生活を維持できることの意味は計り知れません。返す可能性があるとしても、当座をしのげるかどうかは決定的です。
手元に何も入らない状態で数か月を過ごすのと、毎月いくらかでも入ってくるのとでは、精神的な余裕がまったく違います。その余裕が、交渉の場での判断にも影響します。
追い詰められた状態では、冷静な判断はできません。その意味でも、生活の支えを確保しておくことには戦略的な意味があります。
受け取れる額や期間の考え方は、通常の給付と同じように扱われます。特別に減らされるわけではありません。仮だからといって、金額が目減りすることはありません。この点は安心してよいところです。
離職の理由については、解雇された方であれば会社の側に理由がある離職として扱われることになります。会社の都合による離職であれば、受け取り始めるまでの期間も短くなります。
争っている方にとっては、この差が生活を大きく左右します。それゆえ、記載の確認を怠らないでください。そこに違和感があれば、その場で申し出れば足ります。
ここは重要な点です。争っているからといって、自分から辞めたことにされる筋合いはありません。受け取り始めるまでの期間にも関わってきますので、記載は必ず確かめてください。
そして、この扱いを受けるには、こちらから申し出る必要があります。黙っていれば、窓口の側から提案してくれるとは限りません。
担当者が制度を熟知しているとは限らないからです。件数として多い扱いではないため、案内が漏れることもあります。その場で判断がつかないようであれば、責任者に確かめてほしいと伝えて構いません。
制度の存在を知らないまま、争っているなら受け取れませんと言われて引き下がってしまう。そうした例が実際にあります。
ですから、仮給付という言葉を出せるかどうかが分かれ目になります。この記事を読んだ方は、そこで一歩踏み込んでください。言葉ひとつで、その後の数か月が変わります。
知らなかったで済ませるには、あまりに大きな差です。ひとこと尋ねるだけですから、必ず確かめてください。
通常の受給と仮給付の違いを整理しておきます。
| 比べる点 | 通常の受給 | 仮給付 |
|---|---|---|
| 前提 | 離職したことを受け入れている | 解雇の効力を争っている |
| 必要なもの | 離職票 | 離職票に加え、労働審判や訴訟を起こしたことが分かる書類の写しなど |
| 解雇が無効とされたとき | 関係なし | 会社から解雇期間中の賃金を受け取れば、仮給付の分は返還する |
| 解雇が有効とされたとき | 関係なし | 仮給付がそのまま通常の給付として扱われる |
仮給付を受けるまでの段取り
実際にどう進めるのかをお話しします。特別に難しい手続きではありません。通常の流れに、ひとつ申し出を加えるだけです。準備するものも、それほど多くはありません。手元にあるものを集めるだけで足ります。
不足があれば、窓口で何が必要かを教えてもらえます。まず必要になるのが、争っていることを示す材料です。
そろえておきたいものを挙げておきます。
- 解雇を告げられたことが分かる書面。通知書や辞令が該当します。
- 解雇の理由を記載した証明書。会社に交付を求められます。
- 効力を認めない旨を会社へ伝えた書面の控え。
- 手続きを起こしているのであれば、申立書や訴状の写し。
- 離職票。記載された理由を確かめてから提出します。
- これまでの経緯をまとめたメモ。窓口での説明が短く済みます。
すべてが揃っていなくても構いません。あるものを持って相談してください。
会社に対して解雇の効力を認めない旨を伝えた書面、労働審判の申立書、訴状。こうしたものが手がかりになります。裁判所に手続きを起こしていれば、受付印のある書類が残っているはずです。
代理人を立てているのであれば、写しを用意してもらえます。依頼している場合は、窓口での説明も相談しておくとよいでしょう。どう伝えれば通りやすいかを助言してもらえます。
まだ手続きを起こしていない段階であれば、内容証明郵便で会社に通知した控えを持参してください。争う意思を形にしておくことが大切です。
文面は凝ったものでなくて構いません。処分を受け入れるつもりはなく、これからも勤め続けたいという意思が読み取れれば足ります。
この一通は、争いの全体を通じて何度も役に立ちます。まだ送っていないのであれば、早めに出しておいてください。争う意思を示した日付が残ることに、大きな意味があるからです。
次に、離職票の扱いです。会社が解雇を主張している以上、離職票そのものは交付されるのが通常でしょう。会社は辞めたものとして処理しているのですから、書類の上ではそう扱われます。ですから、多くの場合は問題なく受け取れます。届かない場合の対処は、後ほど触れます。会社が渋る場面も、決して珍しくはありません。
受け取ったら、記載された理由を確かめてください。解雇であるにもかかわらず自己都合と書かれているなら、その旨を申し出る必要があります。会社の記載がそのまま結論になるわけではありません。判断するのは行政の側です。
こちらの認識を書き込む欄も設けられていますので、遠慮なく記入してください。会社に気を使う必要はありません。
会社が離職票を出さないという場合もあります。争っているのだから在籍中だ、という理屈で拒まれることがあります。
会社にとっては、解雇したと認めることになるので出したくない。そういう思惑が働くこともあります。とくに、退職を勧めたが本人が応じなかった、という経緯がある場合に起きやすい対応です。
その場合でも、窓口に事情を説明すれば手立てがあります。会社の対応によって、あなたが給付を受けられなくなるのは筋が通らないからです。会社に交付を求めた事実が分かるものがあれば、話は早く進みます。
メールでの依頼や、書面の控えを残しておいてください。そのうえで、通常と同じように求職の申込みを行い、仮給付として扱ってほしい旨を伝えます。
この申し出は、口頭で構いません。ただ、伝えた日と担当者の名前は控えておいてください。後から話が食い違ったときに、記録があれば話が早く済みます。
あわせて、争いの状況について報告を求められることがあります。手続きが進んだら、その都度伝えるようにしてください。
期日が入った、和解の話が出た、結論が出た。節目ごとに報告しておけば、後の精算も滑らかに進みます。報告を怠ると、後でまとめて調整することになり、負担が大きくなります。その都度伝えておくほうが、結局は楽です。
争いに勝ったときの返還
ここが、多くの方が気にする部分です。
返さなければならないのなら、そもそも受け取らないほうがよいのではないか。そう考える方もいるでしょう。ですが、その判断は仕組みを誤解しています。
返す場面と、返さない場面を分けて理解しておきましょう。結末によって、扱いはまったく違います。
解雇が無効だと認められた場合、あなたは辞めていなかったことになります。ですから、その期間について会社から賃金を受け取れる立場になります。解雇の日から決着までの期間が長ければ、その額もまとまったものになります。月々の賃金に、経過した月数を掛けた規模になると考えてください。
賃金を受け取るのであれば、職を失っていたことを前提とする給付を重ねて受け取る理由はなくなります。そこで、仮に受け取っていた分を返還することになるわけです。二重に受け取ることはできない、という当たり前の整理です。ここに不公平はありません。納得しやすい整理だと言えるでしょう。
ここで大切なのは、返す原資が手元に入ってくるという点です。会社から賃金が支払われ、そのなかから返還する。そういう順序になります。
先に返してから賃金を受け取る、という順序ではありません。ここを誤解して不安になる方が少なくありません。
ですから、返還そのものを恐れる必要はありません。何もないところから捻出するわけではないからです。
むしろ、賃金として受け取れる額のほうが大きくなるのが通常です。差し引きでは手元に残ります。ですから、勝った場合のほうが結果として有利になります。
実務では、会社が賃金を支払う際に、この調整を織り込んで処理することもあります。その場合、こちらが自分で返還の手続きを取る必要はありません。とはいえ、扱いは事案によって異なりますので、確かめておいてください。
また、返還した分については、あらためて給付を受けられる余地が残ります。復職せずに退職することになった場合などです。この場合、退職した時点であらためて失業の状態になるからです。
この点は事情によって扱いが変わりますので、決着したら早めに窓口へ相談してください。放っておくと、受け取れるはずの分を取り逃がすことがあります。
争いに敗れたとき、和解したとき
次に、それ以外の結末についてです。
まず、解雇が有効だと判断された場合。この場合は、やはり職を失っていたということになります。主張は通らなかったけれど、失業していたという事実は変わらないからです。
ですから、仮に受け取っていた分がそのまま正式な給付として確定します。返還は生じません。手続きとしても、とくに何かを求められるわけではありません。
この点は覚えておいてください。主張が通らなかったことを理由に、すでに受け取った分まで失うことはありません。次に、話し合いで決着した場合です。実務では、この形がもっとも多くなります。判決や審判まで進まず、途中で条件がまとまるという流れです。
解雇が撤回され、合意によって退職するという内容で決着することが一般的でしょう。この場合、退職した日がいつになるかによって扱いが変わります。
合意のなかで退職の日を遡って定めるのか、それとも和解の日にするのか。ここが給付の扱いに影響してきます。
遡って定めれば、その日以降は失業していたことになります。和解の日とすれば、それまでは在籍していたことになります。
また、解決金という名目で支払われるお金が、賃金にあたるものとして扱われるのかどうかも問題になります。
賃金として扱われるのであれば、その期間の分について精算が必要になります。名目の付け方が結果を左右します。
ですから、和解の内容を詰める段階で、この点も意識しておく必要があります。金額だけを見て合意すると、後で思わぬ精算が生じることがあります。手元に残る額で考えるのであれば、名目の付け方まで含めて交渉の対象になります。合意書の文言をどう定めるかで結果が変わりますので、弁護士に相談しながら進めてください。
署名する前に、この点を確かめる時間を取ってください。いったん成立してしまえば、後から直すことはできません。
受け取るか争うかで迷ったときの考え方
最後に、判断の指針をお伝えします。ここまで読んで、それでも迷いが残る方に向けた話です。
まず押さえておきたいのは、この二つは択一ではないということです。受け取るか、争うか。そう問いを立てた時点で、すでに前提が違っています。
争いながら受け取る。それを可能にするためにこの仕組みがあるのですから、どちらかを選べと迫られているわけではありません。両立させることこそが、制度の設計者が想定した使い方です。
にもかかわらず、多くの方がここで悩みます。給付を受けたら解雇を認めたことになるのではないか、と心配するからです。この不安は、よく理解できます。実際、行動の一つひとつが後で解釈されることになるからです。
その心配は要りません。仮給付という形で受け取るのであれば、争う姿勢と矛盾しないと整理されているからです。むしろ、仮給付を申し出ること自体が、争っていることの表明にもなります。
とはいえ、注意すべき点もあります。通常の給付として受け取り、何も申し出ないまま長い期間が過ぎてしまうと、解雇を受け入れたと見られる余地が生じます。
会社の側から、給付を受けているのだから辞めたことを認めているはずだ、と主張されることもあり得ます。ですから、争うつもりがあるのなら、その意思を早い段階で形にしておいてください。
形にするといっても、難しいことではありません。書面を一通送り、窓口でひとこと伝えるだけです。
会社に対して解雇の効力を認めない旨を伝え、窓口では仮給付として扱ってほしいと申し出る。この二つを揃えておけば、姿勢は明確になります。後から経緯を説明するときにも、この二つがあれば筋が通ります。
そして、次の仕事を探すことも並行して進めて構いません。求職活動をしていることは、給付を受けるための条件でもあります。むしろ、活動していなければ受け取れません。ここは通常の給付と変わりません。
職探しを始めたからといって、復職を求める主張が弱まるわけではありません。生活を守るための行動として、当然に理解される範囲です。収入が途絶えているのに何もしないでいるほうが、かえって不自然でしょう。
仮に次の職に就いたとしても、それまでの主張が消えるわけではありません。安心して探してください。
仮給付を受けるまでの流れは次のとおりです。
- 会社から離職票を受け取る(解雇を認めない立場でも受け取ってよい)。
- 労働審判や訴訟、労働委員会への申立てなど、争いを始める。
- 申立書の写しなどを持ってハローワークに行き、解雇を争っていることを伝える。
- 通常と同じように失業の認定を受け、仮給付を受け取る。
和解で解決金を受け取って退職する場合は、和解の内容によって返還の要否が変わります。退職日を解雇の日とするのか、和解の日にずらすのかで扱いが異なるため、和解の条項は弁護士と慎重に詰めてください。
仮給付に関するよくある質問
給付を受けると、解雇を認めたことになりませんか
仮給付という形で受け取るのであれば、争う姿勢と矛盾しないと整理されています。これはまさに、解雇の効力を争っている方が生活を維持できるようにするために設けられた取り扱いだからです。ただし、何も申し出ないまま通常の給付として受け取り続け、長い期間が過ぎてしまうと、解雇を受け入れたと見られる余地が生じます。ですから、争うつもりがあるのなら、会社に対して効力を認めない旨を書面で伝えたうえで、窓口では仮給付として扱ってほしいと申し出てください。この二つを揃えておけば、姿勢が曖昧になることはありません。
争いに勝ったら、受け取った分は全部返すのですか
解雇が無効だと認められれば、あなたは辞めていなかったことになりますので、その期間の賃金を会社から受け取れる立場になります。賃金を受け取る以上、職を失っていたことを前提とする給付を重ねて受け取る理由はなくなりますから、仮に受け取っていた分は返還することになります。もっとも、返す原資は会社から支払われる賃金です。何もないところから捻出するわけではありませんので、返還そのものを恐れる必要はありません。なお、復職せずに退職することになった場合には、あらためて給付を受けられる余地も残ります。
負けた場合はどうなりますか
解雇が有効だと判断された場合は、やはり職を失っていたということになりますので、仮に受け取っていた分がそのまま正式な給付として確定します。返還は生じません。争って負けたからといって、受け取ったものを取り上げられるわけではありません。この点を知っておくと、争うかどうかの判断もしやすくなるはずです。負けたときに二重の打撃を受けるのではないか、という心配で足が止まっている方は、ここで安心してください。ただし、求職活動の要件など、通常の給付と同じ条件は満たしている必要があります。
会社が離職票を出してくれません
争っているのだから在籍中だ、という理屈で拒まれることがあります。しかし、会社の対応によってあなたが給付を受けられなくなるのは筋が通りません。窓口に事情を説明すれば手立てがありますので、まずは相談してください。その際、会社に交付を求めた事実が分かるもの、たとえばメールや書面の控えがあると話が早く進みます。あわせて、解雇されたことを示す通知や、効力を争っている旨を会社へ伝えた書面も持参してください。会社との争いと、生活を支える手続きは、切り離して進めることができます。
