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いくらになるのか分からないまま辞めようとしていませんか
退職を考え始めたとき、多くの方が気にするのが退職金です。ところが、自分がいくら受け取れるのかを把握している方は、驚くほど少ないのです。入社のときに説明を受けた記憶はあっても、そのまま何年も過ぎている。多くの方がそうです。日々の仕事に追われていれば、無理もないことです。
周りに聞いても、はっきりした答えは返ってきません。人事に尋ねるのは、辞める意思を知られるようで気が引ける。そのまま曖昧なままにしてしまう。
結果として、振り込まれた額を見てから驚くことになります。想定と大きく違っていても、そこから動くのでは遅いのです。辞める時期をずらせば増えていたのに、と後から気づく方もいます。
受け取ってしまった後では、やり直しがききません。だからこそ、辞めると決める前に確かめる意味があります。
けれども、この金額は生活設計を左右します。次の仕事が決まるまでの支えにもなりますし、住宅の返済や子どもの学費にも関わってきます。老後の備えとして数えている方であれば、なおさら早く把握しておく必要があります。
額が想定と違えば、備え方そのものを組み直す必要が出てきます。早く分かるほど、打てる手も多くなります。
そして、もうひとつ知っておいてほしいことがあります。退職金は、どの会社でも必ず支払われるというものではありません。
法律が支給を義務づけているわけではないからです。あるかどうかも、いくらになるかも、会社が定めるところによります。ここは、毎月の賃金とは大きく違う点です。
賃金であれば、支払わないこと自体が違反になります。退職金はそうではありません。ただし、規程で定めた後は賃金に準じた扱いを受けます。
ただし、いったん規程で定めたのであれば話は別です。その定めは労働条件の一部となり、会社の気分で減らしたり止めたりできるものではなくなります。定めがあるかどうか。それが、請求できるかどうかの分かれ目になります。逆に言えば、定めさえあれば強く求められるということです。
ですから、確かめるべきは相場の数字ではありません。自分の会社の規程に何と書かれているか。それがすべての出発点です。よその会社の平均がいくらであっても、あなたが受け取る額とは関係がありません。
同じ業種でも、設計が違えば結果はまるで変わります。参考になるのは、あなたの会社の規程だけです。そこに書かれた計算式が、そのまま答えになります。
この記事では、規程のどこを見ればよいのか、計算の仕組み、減額や不支給とされる場面、支払われないときの請求、そして辞める前に確かめることをお話しします。
金額の目安は示しません。会社ごとに設計がまるで違うため、平均を眺めても判断の役に立たないからです。かわりに、自分で見積もるための手順をお伝えします。
一度覚えれば、転職した先でも同じように使えます。他社の平均を眺めるより、自分の規程を一度開いてみるほうが、はるかに役に立ちます。
読み方さえ分かれば、三十分もあれば見込みは立ちます。その三十分が、この先の生活設計を変えます。順を追って進めていきましょう。まずは前提の確認からです。ここを飛ばすと、後の話が空回りします。
退職金は必ずもらえるものではない
まず、前提から整理しておきます。ここを誤解していると、請求の筋道そのものを間違えます。
当然もらえるものだ、と思い込んでいる方が多いからです。ここは正直にお伝えしておかなければなりません。
期待したまま辞めて、後で落胆するのを避けるためです。確かめてから決めれば、想定外は起きません。
賃金については、法律が最低限の水準や支払い方を細かく定めています。ところが、退職金についてはそうした定めがありません。いくら以上支払わなければならない、という決まりは存在しません。
ですから、勤めた年数が長ければ自動的に増えるというものでもありません。増える設計になっているかどうかも、規程次第です。
頭打ちになる年数が定められていることもあります。その場合、それ以上勤めても額は変わらないことになります。
制度を設けるかどうかは、会社の判断に委ねられています。実際、制度そのものを持たない会社も数多くあります。ですから、入社の際に確かめておくべき労働条件のひとつでもあります。
いま在籍している方も、遅くはありません。今日確かめれば済む話です。制度がないと分かれば、それはそれで備え方が決まります。
自分で積み立てるという判断につながるからです。知らないまま老後を迎えるより、はるかに良い状態です。ここで大切なのが、規程の有無です。ここがすべての起点になります。
あるかないかで、その後の話がまったく変わってしまいます。まずここを確かめてください。次の章で、その探し方をお話しします。
就業規則や退職金規程で支給の条件と計算の方法が定められているのであれば、それは労働条件の一部になります。会社は、その定めに従って支払う義務を負うのです。約束した以上は守らなければならない、という当たり前の話です。
制度を作るかどうかは自由でも、作った後は縛られるということです。この点は、しっかり押さえておいてください。
会社の裁量で自由に減らせるものではない、ということです。反対に、何も定めがないのであれば、請求の根拠を欠くことになります。
あるはずだと思い込んでいたけれど、実は制度がなかった。そういう場面も現実にあります。ですから、辞める前に確かめる意味があります。
もっとも、規程がない場合でも諦めるのは早いかもしれません。長年にわたって同じ基準で支払われてきた実績があるのであれば、慣行として認められる余地があるからです。書かれていないから存在しない、と言い切れるわけではないということです。
実際の取り扱いが積み重なっていれば、それが基準として認められる場合があります。何人分もの実績があるほど、この主張は強くなります。計算の仕方が一定していたかどうかも見られます。
過去に辞めた方が受け取っていた、その計算の仕方が一定していた。こうした事情があれば、確かめてみる価値があります。先に辞めた同僚に事情を聞ければ、それが手がかりになります。
金額そのものを聞き出さなくても、支払われたかどうかが分かれば十分です。そこから先は、弁護士が制度の有無を確かめる手立てを持っています。ひとりで結論を出さなくて構いません。諦める前に、一度相談してみてください。
規程のどこを見ればよいか
では、実際に確かめる作業に入りましょう。誰の許可も要りませんし、費用もかかりません。必要なのは、規程を一部手に入れることだけです。あとは読み方の問題です。
専門知識は要りません。書いてあるとおりに追えば足ります。分からない用語があれば、その部分だけ後で確かめれば済みます。
まず、規程を手に入れてください。就業規則は職場で見られる状態に置かれているべきものですし、退職金についての定めは別の規程になっていることも多くあります。
就業規則だけを見て、退職金の記載がないと判断しないでください。別冊になっている場合があります。
就業規則に、退職金については別に定めるという一文が置かれていることもあります。その場合は、その別の規程を探すことになります。この一文を見落とすと、制度がないと誤解してしまいます。
置き場所は職場によってさまざまです。同僚に尋ねてみると、意外とあっさり見つかることもあります。
入社のときに渡された書類の束に含まれていることもあります。封を切っていない封筒が家のどこかに眠っているかもしれません。
まずは探してみてください。見当たらなければ、総務や人事に尋ねて構いません。辞める意思を打ち明ける必要はありません。
示すことを渋られるのであれば、その対応自体が気になる兆候です。就業規則を見せないという扱いは、それ自体が問題になり得ます。
行政の窓口に持ち込める事柄です。条文に照らして判断できる事柄なので、動いてもらいやすい領域でもあります。
手に入ったら、次の項目を順に探してください。七つあります。見出しを追っていけば、それほど時間はかかりません。
付箋を貼りながら読むと、後で見返しやすくなります。読み飛ばしがちですが、どれも金額に直結する項目です。
ひとつ見落とすだけで、見積もりが大きく狂います。
- 支給の対象になる人の範囲。正社員に限るのか、他の雇用形態も含むのか。
- 支給を受けるために必要な勤続の年数。一定の年数に満たなければ支給しないと定められていることがあります。
- 計算の基礎になる金額。基本給なのか、別に定めた金額なのか。
- 勤続の年数に応じた係数や支給率の表。
- 退職の理由による違い。自己都合と会社都合で差を設けているかどうか。
- 減額や不支給の定め。どういう場合に適用されるのか。
- 支払いの時期と方法。いつまでに、どう支払われるのか。
この七つが読み取れれば、自分の退職金についてほぼ把握できたことになります。
とくに大切なのは、三つめの基礎になる金額と、五つめの退職理由による違いです。ここで想定と食い違うことが多いからです。この二つを取り違えると、見込み額が大きくずれます。
後の章で、それぞれ詳しく取り上げます。とくに退職理由による差は、交渉の余地がある部分です。写しさえ手元にあれば、後から誰かに確かめてもらえます。
写しを取ること自体は、何ら咎められる行為ではありません。自分の労働条件を記した書面だからです。在職中でなければ手に入らない場合もありますので、いまのうちに確保しておいてください。後から見せてほしいと求めても、応じてもらえないことがあります。
計算の仕組みを読み解く
次に、計算の考え方を見ていきます。仕組みは会社によって違いますが、大きくはいくつかの型に分かれます。自分の会社がどれに当たるかを見極めることが目標です。四つの型に分けて説明します。どれに当たるかで、いつ受け取れるかも変わります。
辞めてすぐ入るのか、何年も先なのか。生活設計に直結する違いです。ここを取り違えると、当座の資金が足りなくなります。
もっとも多いのが、基礎となる金額に、勤続の年数に応じた率を掛けるという方式です。規程に一覧表が載っていることが多く、自分の年数の行を見れば率が分かります。
入社日から数えて、いま何年目にあたるのかを先に確かめておきましょう。端数の月をどう扱うかも、規程に書かれているはずです。切り上げるのか切り捨てるのかで、区切りをまたぐかどうかが変わることもあります。
ここで注意したいのが、基礎となる金額が何を指すのかという点です。退職時の基本給とする会社もあれば、別に退職金算定の基礎額を定めている会社もあります。手当を含めるのか、基本給だけなのか。ここも確かめてください。
手当の割合が大きい方ほど、この違いは効いてきます。基本給が低く抑えられている職場では、とくに注意が必要です。
後者の場合、日々の給与が上がっても基礎額は変わらない、という設計になっていることがあります。想定より少なくなる原因のひとつです。基本給の何倍という感覚で見積もっていると、大きく外すことになります。
規程に別の基礎額が定められているなら、そちらを使って計算してください。その基礎額がいつの時点のものかも、あわせて確かめておきましょう。
次に多いのが、在籍した各年に一定の点数や金額を積み上げていく方式です。役職や評価に応じて年ごとの積み上げが変わる仕組みになっていることもあります。
この型では、毎年の積み上げが通知されることもあります。手元に届いていないか確かめてみてください。通知があれば、現時点での見込み額がそのまま分かります。届いていないのであれば、会社に尋ねてみてください。
三つめが、外部の制度を利用している場合です。会社が掛金を拠出し、その運用の結果が退職時に支払われるという形です。中小の会社で広く使われている仕組みです。
掛金を納めていた期間が短ければ、受け取れる額も限られます。いつから加入していたかを確かめておいてください。
この場合、会社から直接支払われるのではなく、制度の運営主体から支給されることになります。手続きの流れも変わってきますので、規程で確かめてください。
会社に請求しても、そちらでは扱えないと言われることがあります。窓口を間違えないようにしてください。
四つめとして、自分で運用先を選ぶ制度を採っている会社もあります。この場合は、原則として決められた年齢に達するまで受け取れません。老後のための備えという性格が強い制度だからです。いま必要な資金として当てにしていると、計算が狂います。
退職金があると聞いていたのに、辞めてもすぐ手元に入らない。そうした食い違いは、この型で起こりがちです。
次の勤め先へ引き継げる仕組みも用意されていますので、転職の際には手続きを確かめてください。手続きを怠ると、不利な扱いになる場合もあります。
自分の会社がどの型なのかを、まず見極めてください。それによって、いつ受け取れるのかも変わってきます。複数の型を組み合わせている会社もあります。規程を通して読めば分かります。
一部は会社から、一部は外部の制度から、という形もあり得ます。その場合、請求先も二つに分かれることになります。
退職金の計算方法には、いくつかの型があります。
| 型 | 計算の仕組み |
|---|---|
| 基本給連動型 | 退職時の基本給×勤続年数に応じた支給率×退職理由による係数 |
| 定額型 | 勤続年数ごとに決められた額 |
| ポイント制 | 毎年の職位や評価に応じてたまったポイント×単価 |
| 外部の制度 | 中小企業退職金共済や確定拠出年金など、会社の外で積み立てる |
基本給連動型では、自己都合で辞めた場合に、会社都合より低い係数をかける規程がよく見られます。退職勧奨に応じて辞めるのに自己都合として計算されていないか、確かめてください。
減額や不支給とされる場面
ここからは、争いになりやすい部分です。実際の相談も、この論点が中心になることが少なくありません。
思っていた額をもらえなかった、という訴えです。その原因の多くは、規程を読んでいなかったことにあります。読んでいれば防げた落胆も、少なくありません。
規程には、一定の場合に退職金を減額し、あるいは支給しないという定めが置かれていることがあります。三つの場面に分けて見ていきます。
いずれも、争える余地が残っている類型です。規程に書いてあるから仕方ない、と諦めないでください。
書かれていることと、認められることは別だからです。代表的なのが、懲戒解雇の場合です。多くの会社が、この場合には支給しないと定めています。
処分を告げられた時点で、退職金の話まで持ち出されることもあります。辞めれば退職金は出ない、と告げて自ら辞めさせようとする場面もあります。その言葉を鵜呑みにせず、まず規程を確かめてください。
ここで諦めてしまう方が非常に多いのですが、規程にそう書かれていれば当然に不支給が確定する、というわけではありません。規程を示されると、争いようがないと感じてしまうのも無理はありません。
ですが、そこで手を引くのはあまりに惜しいのです。長く勤めた方ほど、失うものは大きくなります。争う価値も、それだけ大きいということです。
先ほど触れたとおり、退職金にはこれまでの勤務に対する対価という性質があります。長年積み上げてきたものを、一度の処分ですべて失わせるには、それに見合うだけの重い事情が必要だと考えられています。
その行為が、それまでの功労を帳消しにするほどのものだったのか。そこが問われることになります。会社に生じた損害の大きさや、それまでの勤務ぶりも見られます。
実際に争われた事例でも、全額の不支給までは認められず、一部の支給が命じられたものがあります。まずは、何年勤めたのかを整理してみてください。
次に多いのが、自己都合による退職の場合の減額です。会社の都合による退職に比べて支給率を低くする定めは、広く見られます。差の幅は会社によって異なりますので、規程の表を見比べてみてください。差が大きい職場ほど、退職理由の扱いが金額を左右します。
これ自体は不合理とは言えません。ただし、実際には退職を勧められて応じたのに、自己都合として処理されている場合があります。円満に辞めたことにしましょう、と勧められて応じた場合が典型です。その円満さの代償として、退職金まで減らされていることになります。
その場合は、退職の理由そのものを争う余地があります。書類の上でどう処理されたかではなく、実際に何があったかで判断されるからです。面談の記録や、やり取りが残るメールがあれば、それが裏づけになります。いつ誰から辞めるよう促されたのか。それが示せれば、扱いは変わり得ます。
三つめが、競合する会社へ移った場合の定めです。同業他社へ転職したときは支給しない、あるいは返還を求めるという内容です。転職先を決めてから辞める方は、この定めの有無を必ず確かめてください。
この種の定めは、職業を選ぶ自由に関わりますので、無制限に効力が認められるわけではありません。範囲や期間が広すぎれば、争える余地があります。
どこまでを競合とするのか、いつまで制限するのか。その定め方が過度であれば、そのまま適用されるとは限りません。会社に守るべき正当な利益があるか、代わりの補償が用意されているかも見られます。
支払われないときの請求
規程で定められているのに支払われない。あるいは、納得できない額しか振り込まれない。そうした場合の進め方をお話しします。いきなり争う必要はありません。順序があります。
まず、支払いの時期を確かめてください。規程に定めがあるはずです。定めがない場合でも、請求してから相当の期間内には支払われるべきものです。
退職から数か月後と定めている会社もありますので、まだ期日が来ていないだけということもあります。まずはそこを確かめてから動いてください。
期日を過ぎているのであれば、書面で請求してください。内容証明郵便を使えば、いつどんな内容で求めたかが記録に残ります。口頭で催促しただけでは、催促した事実そのものを否定されかねません。
その際、規程のどの条項に基づき、どういう計算で、いくらを求めるのかを示してください。根拠を示せば、会社も応じやすくなります。感情的な訴えより、条項を引いた計算のほうがはるかに効きます。会社の担当者も、根拠が示されれば社内で説明しやすくなります。
計算が合わないという場合には、内訳の説明を求めることもできます。どの基礎額に、どの率を掛けたのか。この求めに応じないのであれば、その対応自体が不自然です。
説明を受けたら、規程の記載と突き合わせてください。ここで食い違いが見つかることは、決して珍しくありません。
担当者が制度を正しく理解していないだけ、という場合もあります。指摘すれば直ることもあります。争いにする前に、まず確かめてみる価値があります。
会社が応じないのであれば、次の段階です。退職金は賃金にあたる性質を持ちますので、支払いを求める手続きを取ることができます。規程という明確な根拠があるぶん、主張は組み立てやすい類型です。金額がはっきりしていれば、争点も絞られます。
働く人の争いごとには、期日を絞って決着を目指す手続きも設けられています。金額がはっきりしている事案であれば、比較的進めやすいでしょう。数か月で決着することも珍しくありません。
なお、会社が倒産して支払えないという場合には、また別の仕組みが用意されています。諦める前に確かめてください。国が賃金の一部を立て替える制度があり、退職金もその対象に含まれます。上限は設けられていますが、まったく受け取れないまま終わるわけではありません。
辞める前に確かめておくこと
最後に、退職を決める前にしておきたいことを整理します。辞めてからでは手遅れになるものが含まれています。
まず、規程を読んで自分の見込み額を出しておくことです。おおよそで構いません。細かな端数まで合わせる必要はありません。規模がつかめれば十分です。百万円単位なのか、十万円単位なのか。それが分かるだけで判断は変わります。
この数字がないまま辞めると、次の生活の設計が立ちません。逆に、見込みが立てば、いつ辞めるべきかの判断もしやすくなります。転職までの空白期間をどれだけ許容できるかも、この額次第です。
次に、勤続の年数の区切りを確かめてください。規程では、一定の年数を境に支給率が上がる設計になっていることがあります。区切りをまたぐかどうかで、受け取る額が変わってきます。
三年、五年、十年といった節目に段差が置かれていることが多いでしょう。あと数か月で区切りを越えるのであれば、辞める時期をずらすという判断もあり得ます。
もっとも、心身の限界に近いのであれば、金額より健康を優先してください。体を壊してしまえば、次の仕事を探すこともできなくなります。
三つめが、退職の理由の扱いです。自己都合と会社都合で差が設けられているのであれば、どちらとして処理されるかが金額に直結します。失業に関する給付の扱いも変わりますので、二重に効いてくる部分です。
退職を勧められている場面であれば、条件を詰めるなかでこの点も交渉の対象にできます。金銭の上乗せだけでなく、退職理由の記載も条件のひとつに加えてください。会社にとっては、上乗せより応じやすい場合もあります。
四つめが、規程の変更の有無です。在籍中に退職金の制度が変更されていないかを確かめてください。古い規程の写しが残っていれば、見比べることができます。
働く人にとって不利益な変更については、一定の条件を満たさなければ効力が認められません。知らないうちに減らされていた、という場面もあり得ます。変更の際に説明があったか、同意を求められたか。記憶をたどってみてください。何も知らされないまま変わっていたのであれば、その点を指摘できます。
辞める前に、次の点を確かめておきましょう。
- 就業規則とは別に、退職金規程があるかを会社に確かめ、写しをもらう。
- 自分の勤続年数と、退職の理由ごとの係数を当てはめて試算する。
- 支払いの時期(退職後何か月以内か)を確かめる。
- 中小企業退職金共済など、会社の外の制度に加入しているかを確かめる。
退職金を請求する権利は、5年で時効にかかります。
退職金に関するよくある質問
うちの会社に退職金があるのか分かりません
まず、就業規則と退職金規程を確かめてください。退職金についての定めは、就業規則とは別の規程になっていることが多くあります。就業規則は職場で見られる状態に置かれているべきものですから、求めても示されないのであれば、その対応自体が問題です。総務や人事に尋ねても構いません。自分の労働条件を確かめたいと伝えれば足りますので、辞める意思を打ち明ける必要はありません。規程が見当たらない場合でも、過去に辞めた方が一定の基準で受け取っていた実績があるのなら、慣行として認められる余地があります。
懲戒解雇だと、退職金は本当にゼロですか
そうとは限りません。規程にそう書かれていても、その一文だけで結論が固まるわけではないからです。この給付には、それまで働いてきたことへの見返りという顔があります。長い年月をかけて積み上がったものを処分ひとつで丸ごと消し去るには、それに釣り合う重大な事情が要ると考えられています。裁判の場でも、丸ごと打ち切ることまでは認めず、一部を払うよう命じた例が積み重なっています。勤めた年月が長い方ほど、この筋道は通りやすくなります。規程の文言、処分の理由とされた行為、そして在籍した年数。この三つを書き出すところから始めてください。
思っていた額より少なく振り込まれました
内訳の説明を求めてください。どの金額を基礎とし、どの率を掛けたのか。それが規程の記載と一致しているかを突き合わせます。よくあるのが、計算の基礎となる金額が退職時の基本給ではなく、別に定められた算定基礎額になっているという場合です。日々の給与が上がっても基礎額は変わらない設計になっていることがあり、想定より少なくなる原因になります。また、自己都合として処理されて支給率が下げられている場合もありますので、退職の理由がどう扱われたかもあわせて確かめてください。
退職金を請求できる期間に限りはありますか
あります。退職金は賃金にあたる性質を持ちますので、請求できる期間には限りが設けられています。もっとも、毎月の賃金よりは長い期間が確保されていますから、退職から少し時間が経っていても諦める必要はありません。規程で定められた支払いの時期を確かめてください。その時期が起点になります。そのうえで、書面で請求しておくことをおすすめします。求めた事実が記録として残りますし、会社の対応によっては、そこから話が動くこともあります。時間が経つほど資料も集めにくくなりますので、早めに動いてください。
