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退職金の平均相場は?退職金の仕組みと計算方法
この記事で分かること
- 退職金は、それぞれの会社の就業規則や労働協約により支給条件が明確に定められている場合であれば、支払われる
- 退職金の支給基準なども各企業に任され、金額に最も影響するのが、勤続年数や年齢などである
- 一般的には、各々の企業の就業規則などに「退職金規定」が設けられており、詳細な支給基準や支給日などが記載されている
8割の企業が退職金制度を導入していますが、退職金それ自体は法律で決められたものではありません。それぞれの会社の就業規則や労働協約により支給条件が明確に定められている場合であれば、支払われるものといえます。退職金の支給基準なども各企業に任され、金額に大きく影響するのが、勤続年数や年齢などです。また、他にも職種や学歴など様々な要素で金額が決定します。退職金を正確に知るためにもまずは社内規定の確認を行い、疑問や不満があれば公的な窓口や、弁護士などの士業専門家への相談をお勧めします。
退職金の仕組み
人口減少に伴い、老後の生活が心配だと感じている方も多いのではないでしょうか。老後の生活の基礎となる年金受給も先細りとなれば、頼みの綱は「退職金」です。ここでは、退職金の全体的な仕組みについて、一から説明します。
退職金とは?
まず、退職金とはどのような制度なのでしょうか。その内容についてみていきましょう。
退職金制度導入企業の割合は8割
厚生労働省の平成30年『就労条件総合調査』によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は80.5%だと発表されています。
具体的には、従業員数1,000人以上の企業が92.3%の割合、300~999人未満の企業が91.8%の割合、100~299人未満の企業が84.9%の割合、30~99人未満の企業が77.6%の割合で退職給付制度を取り入れているとの結果となりました。
出典元:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査結果の概要 退職給付(一時金・年金)制度
退職金制度は法律に規定はない
さて、ここでいう「退職給付制度」ですが、厚生労働省の用語の説明では、「任意退職、定年、解雇、死亡等の事由で雇用関係が消滅することによって、事業主又はその委託機関等から当該労働者(又は当該労働者と特定の関係にある者)に対して、一定の金額を支給する制度」となっています。
出典元:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 結果の概況 用語の説明
簡単に説明すれば、雇用関係の消滅の際に一定の金額を給付される制度といえ、一般的に社会では「退職金」と呼ばれています。イメージとしては、「退職」に伴って支払われるという観念がありますが、雇用関係の消滅が理由となるので、死亡や解雇、また、定年前に自己都合の理由での退職であっても支給される可能性があります。
なお、「退職金」を導入していない企業も当然存在します。つまり、退職金は必ず支払わなければならないと、法律で定められているものではなく、退職金制度の導入については各企業に任されているといえます。
退職金制度の根拠は?
それでは、退職金制度はどのような根拠で存在するのでしょうか。
法律にはないですが、それぞれの会社の就業規則や労働協約により支給条件が明確に定められている場合は、労働基準法11条の「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対象として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」の「労働の対償」としての「賃金」にあたると解されています(小田急電鉄事件東京高裁判例)。
その法的性格は様々で、下記の3つの性格があるとされています。
- 賃金後払い的性格
- 功労報償的性格
- 生活保障的性格
退職給付制度の形態は1つではない
次に、退職金として支払われる形態は大きく分けて3つあります。
- 退職金一時制度
- 企業年金制度
- 退職金前払い制度
なお、実際に企業で採用されている割合ですが、「退職金一時制度のみ」は73.3%、「企業年金制度のみ」は8.6%、「両制度併用」は18.1%となっています。
出典元:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査結果の概要 退職給付(一時金・年金)制度
退職金一時制度
退職時に一括して退職金を支給する制度です。退職金の金額は、個人の事情により異なることが多く、勤続年数や学歴、退職理由などが考慮され算出されます。なお、退職一時金制度では、受給する金額が多ければ課税控除額も大きくなり、税金の優遇措置が積極的に受けられます。
企業年金制度
退職後、一定期間または生涯にわたって、一定の金額を年金として支給する制度です。ただし、年金を一時金として受け取ることができる場合もあり、2つの制度を併用して導入している企業もあります。なお、国民年金などの年金制度とは異なり企業が任意で加入する制度です。その種類は以下の通り、1つではありません。
「確定給付企業年金」
…加入した期間に基づいて、予め給付額が定められている企業年金制度
規約型(労使合意の年金規約に基づき外部機関で積立)と基金型に分かれます。
「確定拠出年金」
…拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額に基づいて給付額が決定される年金制度
最終的に受給できる金額は、運用実績によって異なります。
「厚生年金基金」
…国が行う老齢厚生年金の一部(報酬比例部分)の支給を代行し、更に上乗せして年金給付を行う制度
国民年金、厚生年金に上乗せされる年金制度でしたが、資産保全の観点から存続が難しい状況となり、現在は新規設立が認められていません。
退職金前払い制度
前払いという言葉通り、退職時に支払われる退職金を、退職する前の在職時から、給与や賞与(ボーナス)に上乗せして受給できる制度です。
なお、実際の運用では、前項の2つの制度である「退職一時金制度」や「企業年金制度」を選択できるような形態を導入しているようです。というもの、前払いとして給与に上乗せされれば、給与所得に含まれる関係上、支払うべき税金が高くなるからです。
中小企業独自の制度(中小企業退職金共済制度)もある
中小企業退職金共済法に基づいて、企業が退職金支払いを目的に、国が支援する独立行政法人の「勤労者退職金共済機構」と契約を結び退職金の積み立てを委託する制度です。
外部機関で退職金の原資を積み立てて準備するため、中小企業が倒産した場合でも、退職金を受給できることとなります。
なお、制度としては退職時に一括で受け取ることのできる「退職一時金制度」や、一定の金額を年金として受け取ることのできる「企業年金制度」があります。
まずは、勤務先の企業に退職金の制度があるか、確認することをお勧めします。
退職金の平均相場の金額は?
それでは、受け取ることのできる退職金の金額はどれくらいなのでしょうか。ここでは、平均的な退職金の相場について説明します。
退職金の金額は様々な要素で決まる!
じつは、退職金の金額は一律ではありません。そもそも、退職金の導入自体が各企業で判断することができ、退職金の支給基準などもそれぞれに任されているといえます。
学歴での金額の違いは一目瞭然
厚生労働省の平成30年『就労条件総合調査』によると、平成29年の1年間に20年以上勤めた45歳以上の退職者で、定年を迎えた人がもらった退職金(一時金・年金)の平均は、以下となります。
学歴 | 退職金 |
---|---|
高校卒(現業職) | 1,159万円 |
高校卒(管理・事務・技術職) | 1,618万円 |
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) | 1,983万円 |
出典元:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査結果の概要 退職給付(一時金・年金)の支給実態
同じ時期の退職でも退職理由によって金額が異なる?
厚生労働省の平成30年『就労条件総合調査』によると、平成29年の1年間に20年以上勤めた45歳以上の退職者についてみると、退職理由は大きく4つに分かれ、以下の結果が発表されています。
退職理由 | 比率 |
---|---|
定年 | 64.3% |
定年以外(会社都合) | 5.4% |
定年以外(自己都合) | 22.8% |
定年以外(早期退職優遇) | 7.5% |
実際に、平成29年の1年間に20年以上勤めた45歳以上の退職者で比較すると、退職理由が異なるだけで、以下のような退職金の差額が発生します。
「大学・大学院卒(管理・事務・技術職)」の場合
退職理由 | 退職金 |
---|---|
定年 | 1,983万円 |
定年以外(会社都合) | 2,156万円 |
定年以外(自己都合) | 1,519万円 |
定年以外(早期退職優遇) | 2,326万円 |
「高校卒(管理・事務・技術職)」の場合
退職理由 | 退職金 |
---|---|
定年 | 1,618万円 |
定年以外(会社都合) | 1,969万円 |
定年以外(自己都合) | 1,079万円 |
定年以外(早期退職優遇) | 2,094万円 |
「高校卒(現業職)」の場合
退職理由 | 退職金 |
---|---|
定年 | 1,159万円 |
定年以外(会社都合) | 1,118万円 |
定年以外(自己都合) | 686万円 |
定年以外(早期退職優遇) | 1,459万円 |
出典元:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査結果の概要 退職給付(一時金・年金)の支給実態
退職金の金額には勤続年数が大きく影響する!
ただ、やはり退職金の金額を決定する上で、大きな影響を及ぼすのは、勤続年数・年齢の上昇といえるようです。退職時期が遅くなるほど、退職金も増えていきますが、増加割合は単純な比例ではありません。職種や学歴により増加のピークは異なります。
1歳あたりで増加していく金額は、「管理・事務・技術労働者(総合職)」において、大学卒では勤続年数 30 年からの3年間が最も大きく、1年間あたり102.7万円との結果も出ています。高校卒では勤続年数 30 年からの5年間が最も大きく、1年間あたり 93.2 万円となっています。
出典元:公益社団法人全国労働基準関係団体連合会 「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」「標準者退職金の支給額および支給月数 ─総額─」
実際に退職金を計算してみよう
それでは、実際に退職金はどのようにして計算されるのでしょうか。ここでは退職金の計算方法を説明します。
退職金の計算方法
一般的には、各々の企業の就業規則などに「退職金規定」が設けられており、詳細な支給基準や支給日などが記載されているはずです。見つからない場合は、人事部門に問い合わせをしてもいいでしょう。なお、ここでは、退職一時金の算定方式について、様々な方法をご紹介します。
定額制
退職一時金が、勤続年数などで設定され、予めその金額が定められている方式です。従業員からすれば、自己で算出する必要もなく、支給予定金額が非常に明確であるといえます。ただ、成果報酬型ではないため、退職金が従業員のモチベーションには繋がりにくいデメリットも挙げられます。
退職時基本給連動型
退職時の基本給をベースにして、「勤続年数」や「退職理由(会社都合か自己都合か)」などの支給率を掛け合わせて、最終的な支給額を決定する方式です。勤続年数が長ければ退職金が高くなる傾向になります。
こちらも成果報酬型とはいえず、さらに中途採用者などは勤続年数が比較的短い場合もあり、これまでの一企業で定年まで働くという、日本の長期雇用を前提にしている制度といえます。
別テーブル方式
退職時の基本給をベースにせず、別に設定された退職金の算定基礎額をベースにする制度です。例えば、役職などの等級別に算定基礎額が定められており、これに勤続年数や退職理由などの支給率を掛け合わせて、最終的な支給額を決定します。
退職時の基本給をベースにしないため、退職金独自のルールを用いて、退職金の支給額を調整することができます。
ポイント制
それぞれの要素にポイントを設定し、ポイントの合計に、1ポイントの単価を掛けて退職金の支給額を決定します。
例えば、役職や職能、資格、勤続年数、人事考課など様々な要素を取り入れることができます。成果報酬の要素も取り入れることができ、近年はポイント制を導入する企業が増えている傾向にあります。
退職金と税金の関係
退職金についての心配事の1つに「税金」があります。退職金という所得に対して税金はかかるのでしょうか。
退職金には、賃金の後払い的性格もありますが、長年の勤務に対する功労報償的性格や、今後の生活保障的性格があるため、退職所得控除(課税されない金額)の設定や、他の所得と分離した課税など、全体的に課税を抑えるような仕組みとなっています。
なお、「退職所得控除額」は以下となっています。
- 勤続年数が20年以下の退職所得控除額…40万円×勤続年数
- 勤続年数が20年超の退職所得控除額…800万円+70万円×(勤続年数-20年)
下記は退職金にかかる所得税の計算式です。
課税される退職所得金額 =(退職金-退職所得控除)×1/2
例)40年勤務、退職金2000万円の場合
退職所得控除は、800万円+70万円×(40-20年)=2200万円
この場合、退職金よりも控除額が上回るため、税金はかからないことになります。
退職金に疑問や不満があれば弁護士に相談しよう
退職金が想定以上の金額であれば何の問題もないですが、想定よりも少なかった、ましてや退職金の支給がなかったという場合には、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
退職の際に揉めたくないという気持ちがあっても、正当な権利として主張できる場合もあり、対処方法は様々です。まずはどのような選択肢があるのかだけでも、相談して検討するのはいかがでしょうか。
- サービス残業、休日出勤がよくある
- タイムカードの記録と実際の残業時間が異なる
- 管理職だから残業代は支給されないと言われた
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
- 自主退職しなければ解雇と言われた
- 突然の雇い止めを宣告された