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有給取得で給料カットは違法?会社側の正しい対応

有給取得で給料カットは違法?会社側の正しい対応

この記事で分かること

  • 有給休暇の取得を理由に給料を減らすことは原則として認められない
  • 有給休暇は条件を満たせば当然に発生する社員の権利である
  • 皆勤手当の不支給や賞与査定での減点など間接的な不利益にも注意する
  • 有給の日の賃金は決められた算定方法から選び社内ルールとして定める
  • 忙しい時期でも一律には断れず計画的な取得の割り振りが役立つ
  • 就業規則の整備と取りやすい環境づくりがトラブルを防ぐ
  • 対応に迷えば企業の労務にくわしい弁護士に相談する

有給休暇は、休んでも賃金が支払われる社員の権利であり、取得したことを理由に給料を減らすことは、原則として認められません。皆勤手当の不支給や賞与査定での減点といった、間接的な不利益にも注意が必要です。有給の日の賃金は、決められた算定方法から選んで、就業規則で明確にしておきましょう。取りやすい環境を整えつつ、判断に迷うときは企業の労務にくわしい専門家に相談すると安心です。

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有給休暇を取得した社員の給料は減らせるのか

社員が有給休暇を取った。その分の給料は、当然カットしてよいはずだ。そう考えている経営者の方は、少なくありません。しかし、この感覚のまま賃金を差し引いてしまうと、思わぬトラブルを招くことがあります。まずは結論からお伝えします。有給休暇を取得したことを理由に、その社員の給料を減らすことは、原則として認められていません。ここを取り違えたまま運用を続けている会社は、意外に多いのです。

有給休暇は、休んでも賃金が支払われる休暇です。名前のとおり、給料が有るまま休める制度なのですから、取得した分を差し引いてしまえば、そもそも制度の意味がなくなってしまいます。ノーワーク・ノーペイ、つまり働かない時間には賃金を払わないという考え方は、一般には正しいものです。けれども、有給休暇はその例外として、法律がわざわざ設けた仕組みです。働いていない時間であっても、賃金が保障される。それが有給休暇の本質なのです。

とはいえ、有給休暇をめぐる会社の悩みは、賃金の支払いだけにとどまりません。忙しい時期にまとめて取られては困る。特定の社員ばかりが取得する。取得を理由に、査定でどう扱えばよいのか。日々の労務のなかで、経営者が頭を悩ませる場面は数多くあります。そうしたときに、感覚だけで対応してしまうと、知らないうちに法律に反した扱いをしてしまうことがあるのです。

この記事では、有給休暇とはそもそもどのような制度なのか、取得を理由とした賃金カットがなぜ問題になるのか、賃金以外に気をつけたい扱いは何か、そして会社としてどう向き合えばよいのかまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。有給休暇をめぐる扱いは、一つ間違えると社員との信頼を損ない、争いに発展することもあります。だからこそ、正しい考え方を、あらかじめ押さえておくことが大切なのです。

経営者にとって、有給休暇は決して敵ではありません。社員が心身を休め、また元気に働けるようにするための、大切な仕組みです。適切に運用できれば、社員の満足につながり、職場の雰囲気もよくなります。むしろ、扱いを誤ってこじれさせてしまうことのほうが、会社にとっては大きな損失なのです。制度を正しく理解し、前向きに活かしていく。その姿勢が、結局は会社を守ることにつながります。

読者の方のなかには、すでに社員から有給の取り方について不満の声が上がっていて、対応に迷っている、という方もいるかもしれません。あるいは、これから制度をきちんと整えたいと考えている段階の方もいるでしょう。どちらの場合でも、まずは有給休暇の基本を正しく押さえることが出発点になります。そのうえで、自社の実情に合った運用を組み立てていけばよいのです。順を追って見ていきましょう。

なお、この記事でお伝えするのは、有給休暇をめぐる基本の考え方です。実際の場面では、社員一人ひとりの事情や、会社の状況によって、判断が変わってくることもあります。ここで得た知識を土台にしながら、迷う場面では専門家の助言も得て、慎重に対応を進めていただければと思います。基本を知っておくことは、そうした判断の確かな支えになります。

そもそも有給休暇とはどんな制度か

有給休暇とは、正しくは年次有給休暇といい、働くことが決められている日について、その労働の義務を免除しながら、賃金は支払われるという休暇のことをいいます。ふだんは働くはずの日に休んでも、給料が減らされない。それが有給休暇です。社員にとっては、生活の心配をせずに休める、心強い仕組みだといえます。

この有給休暇は、会社が恩恵として与えているものではありません。一定の期間まじめに働いた社員には、法律上、当然に発生する権利です。会社が付与するかどうかを選べるものではなく、条件を満たせば自動的に生じます。ここを誤解して、うちは有給を認めていない、といった扱いをしてしまうと、それ自体が法律に反することになります。まずは、有給休暇が社員の権利であるという点を、しっかり押さえておく必要があります。

有給休暇は、入社してから一定の期間、決められた割合以上まじめに出勤した社員に対して、初めて一定の日数が与えられます。そして、勤続年数が長くなるにつれて、付与される日数も段階的に増えていきます。長く働いてくれた社員ほど、より多く休めるようになる仕組みになっているのです。フルタイムで働く社員だけでなく、勤務日数の少ないパートやアルバイトの社員にも、その勤務の割合に応じた日数が与えられます。

ここで見落とされがちなのが、パートやアルバイトの社員に対する有給休暇です。短時間の勤務だから有給はない、と思い込んでいる経営者もいますが、それは誤りです。勤務日数が少ない社員であっても、一定の条件を満たせば、その勤務の割合に応じた日数の有給休暇が発生します。雇用の形にかかわらず、条件を満たす社員には有給が生じる。この点も、あわせて押さえておきましょう。

一度発生した有給休暇には、使える期限があります。付与された時点から一定の期間が過ぎると、使わなかった分は消えてしまいます。ただし、その年に使いきれなかった分は、翌年に繰り越すことができます。社員がいつ、どれだけの有給を持っているのかを、会社が正確に把握しておかないと、後になって食い違いが生じることがあります。日数の管理は、思いのほか大切な実務なのです。

さらに近年は、一定の日数以上の有給休暇が与えられている社員については、会社が確実に一定の日数を取得させることが義務づけられています。社員が自分から言い出さなくても、会社の側から取得を促し、実際に休ませる責任があるのです。有給を取りにくい雰囲気のまま放置していると、この義務を果たせず、会社が責任を問われることにもなりかねません。制度は、取得を後押しする方向へと進んでいるのです。

ワンポイントアドバイス
有給休暇は、社員から請求されて初めて生じるものではなく、条件を満たせば当然に発生する権利です。うちは認めていない、という運用は成り立ちません。まずは各社員が何日の有給を持っているかを正確に管理することが、トラブルを防ぐ第一歩になります。

有給の取得を理由にした賃金カットは認められない

ここが、この記事の核心です。社員が有給休暇を取得したことを理由に、その社員の給料を減らすことは、法律上、禁じられています。有給を取った分だけ日給を差し引く、という扱いは、たとえ会社にそのつもりがなくても、有給休暇の制度そのものを否定することになってしまいます。休んでも賃金が保障されるという有給の性質からすれば、当然のことなのです。

この点を、経営者の立場から少し補っておきましょう。有給を取った分の給料を引けないのは、会社にとって負担に感じられるかもしれません。しかし、有給休暇は、社員が休んで英気を養い、また力を発揮してもらうための制度です。休んだ社員が元気を取り戻し、その後によい働きをしてくれるなら、それは会社にとっても得るものが大きいはずです。目先の負担だけでなく、長い目で制度をとらえることが大切です。

もう少し踏み込んでお伝えすると、法律は、有給休暇を取得した社員に対して、賃金を減らすことをはじめ、不利益な取り扱いをしてはならないと定めています。つまり、問題になるのは、休んだ日の給料を直接カットする場合だけではありません。有給を取ったことを口実にして、社員が不利になるような扱いをすること全般が、認められないのです。ここは、多くの経営者が見落としがちな点です。

たとえば、有給休暇の分をきちんと支払っているつもりでも、その社員だけを昇給の対象から外したり、賞与を減らしたりすれば、それは実質的に有給取得を理由とした不利益な扱いになりかねません。表向きは賃金を払っていても、別のかたちで社員を不利にすれば、結局は有給を取りにくくさせているのと変わらないからです。会社としては、そうした間接的な不利益にも目を配る必要があります。

間接的な不利益が問題になりやすいのは、会社にその自覚がないまま行われることが多いからです。皆勤手当を出さない、査定で少し下げる。一つひとつは小さなことに見えても、社員から見れば、有給を取ったせいで損をした、という印象になります。その積み重ねが、やがて有給を取りにくい空気を生み、社員の不満を育てていきます。小さな扱いにこそ、注意を払う必要があるのです。

ここで押さえておきたいのは、有給休暇はあくまで社員の権利であり、それを行使したことを理由に、会社が社員を不利に扱ってはならないという発想です。有給を取られると困る、という気持ちが、つい不利益な扱いにつながってしまうことがあります。しかし、権利の行使に対して不利益を与えることは、その権利を実質的に奪うことにほかなりません。会社は、社員が安心して有給を取れる環境を整えることを求められているのです。

では、有給を取得した日について、会社はどのように賃金を計算すればよいのでしょうか。有給の日に支払う賃金の算定方法には、いくつかの決められたやり方があり、会社はそのいずれかを選んで、あらかじめ社内のルールとして定めておくことになります。どの方法によるかは会社の判断に委ねられていますが、いったん定めた方法を、社員によって都合よく使い分けるようなことは認められません。公平で一貫した運用が求められます。

賃金の算定方法をどれにするかは、会社の実情に合わせて選べばよいのですが、いったん決めたら、その方法を全社員に等しく適用することが大切です。ある社員には有利な方法、別の社員には不利な方法、といった使い分けをすれば、それ自体が公平を欠く扱いとなり、社員の不信を招きます。有給の日の賃金は、一貫したルールのもとで、誰に対しても同じように計算する。この当たり前を、確実に守ることが求められます。

賃金の算定方法をきちんと定めていないと、有給を取った社員ごとに支払額がばらついたり、後から計算し直す手間が生じたりします。あらかじめルールを明確にしておけば、こうした混乱を避けられます。就業規則などに、有給休暇の日の賃金の算定方法を、はっきりと書いておくことが大切です。備えがあれば、いざ有給が取得されたときにも、迷わず適切に処理できます。

賃金カット以外にも注意したい不利益な扱い

有給取得を理由とした不利益な扱いは、賃金の直接のカットだけとは限りません。むしろ、経営者が悪気なくやってしまいがちな、間接的な不利益こそ注意が必要です。ここでは、見落とされやすい扱いを整理しておきましょう。自社の運用に、思い当たる点がないか、確かめながら読んでいただければと思います。

  • 皆勤手当や精勤手当を、有給休暇を取った月には支給しない、あるいは減額する扱い。
  • 賞与の査定にあたって、有給を取得した日を欠勤と同じように扱い、支給額を下げる扱い。
  • 昇給や昇格の判断において、有給の取得日数が多いことを、マイナスの評価として考慮する扱い。
  • 有給を取得した社員に対して、意図的に不利な配置や業務を割り当てる扱い。

これらはいずれも、表向きは賃金を支払っていても、有給を取ったことを理由に社員を不利にしている点で、問題になりうる扱いです。とりわけ皆勤手当の扱いは、注意が必要です。皆勤という言葉から、有給で休めば手当が出ないのは当然だ、と感じてしまいがちです。しかし、有給休暇は法律で保障された権利ですから、それを取得したことをもって皆勤ではないと扱えば、結局は有給取得を妨げることになりかねないのです。

賞与の査定についても、同じ考え方があてはまります。有給を取った日を、無断欠勤や遅刻と同じように減点の対象にしてしまえば、社員は賞与を減らされたくないために、有給を取りにくくなります。それは、権利の行使を事実上ためらわせる扱いです。査定の基準を定めるときには、有給取得を不利に扱うことのないよう、慎重に組み立てる必要があります。

それでは、査定において有給の取得をどう扱えばよいのか、と迷う方もいるでしょう。基本の考え方は単純です。有給休暇は権利の行使ですから、それを取得したこと自体を、評価のうえでマイナスに考慮してはならない、ということです。あくまで、仕事の成果や働きぶりそのものを評価する。有給を取ったかどうかは、評価の対象から切り離しておく。この線引きを、査定の基準にはっきりと落とし込んでおくことが望まれます。

こうした線引きを明確にしておくと、社員にとっても評価の見通しが立ちやすくなります。有給を取ったら査定が下がるかもしれない、という不安があると、社員は権利であるはずの有給を、ためらいながら使うことになります。評価は仕事そのもので決まると分かっていれば、社員は安心して休み、休んだ分また力を尽くしてくれます。公正な評価は、社員の信頼を支える土台なのです。

注意
賃金を払っているから問題ない、と考えるのは危険です。皆勤手当の不支給や賞与査定での減点など、間接的なかたちであっても、有給取得を理由に社員を不利にすれば、認められない扱いになりかねません。手当や査定の基準を、あらためて見直しておくことをおすすめします。

会社として気をつけたいのは、社員が有給を取ったときに、無意識のうちに不利な扱いをしてしまわないか、という点です。制度を正しく理解していないと、これくらいはよいだろう、という感覚で対応してしまい、それが積み重なってトラブルに発展することがあります。社員は、自分の権利が正当に扱われているかを、思いのほか敏感に見ています。公平で透明な運用こそが、信頼を守る鍵になるのです。

会社が有給をめぐって適切に対応するには

有給を取得した分の賃金を減らせないとなると、忙しい時期に集中して取られては困る、と感じる経営者もいるでしょう。この点について、会社にまったく手立てがないわけではありません。有給休暇は、原則として社員が希望する日に取得できますが、その日に休まれると事業の正常な運営が妨げられるような場合には、会社が取得の時季をずらすよう求めることが認められています。ただし、これはあくまで例外的な措置です。

この時季をずらす仕組みは、単に忙しいから、人手が足りないから、といった理由で気軽に使えるものではありません。その社員が休むことで、事業の運営に本当に支障が出るといえるだけの事情が必要です。安易にこの仕組みを持ち出して有給の取得を拒めば、それ自体が権利の侵害となり、トラブルの火種になります。使えるのは、あくまで限られた場面に限られる、という点を理解しておく必要があります。

また、会社と社員の代表とがあらかじめ取り決めをすることで、有給のうち一定の日数について、会社が計画的に取得日を割り振る仕組みもあります。繁忙期を避けて、あらかじめ取得日を組んでおけば、業務への影響を抑えながら、社員にも確実に休んでもらえます。こうした仕組みをうまく使えば、有給の取得と事業の運営とを、両立させやすくなります。制度を敵視するのではなく、活かす発想が大切です。

読者の方のなかには、特定の社員が有給を頻繁に取り、他の社員との間で不公平感が生じている、という悩みを抱えている方もいるかもしれません。こうした場合も、有給の取得そのものを責めることはできません。大切なのは、業務の割り振りや人員の配置を工夫し、誰かが休んでも回る体制をつくっておくことです。特定の人に負担が偏らない仕組みを整えることが、根本的な解決につながります。

不公平感への対処で大切なのは、休んだ社員を責めるのではなく、休んでも回る職場をつくるという発想の転換です。誰か一人が抜けると業務が止まってしまう状態は、そもそも会社の体制として危うい面があります。仕事を複数の社員で分担できるようにし、必要な情報を共有しておく。そうした備えがあれば、有給の取得が特定の社員に集中しても、職場全体で吸収できるようになります。

会社が有給をめぐって適切に対応するうえで、もう一つ欠かせないのが、日ごろの記録と管理です。誰がいつ有給を取得し、あと何日残っているのか。これを正確に把握しておかないと、社員との間で日数の食い違いが起き、余計なトラブルを招きます。取得の状況をきちんと記録し、社員にも分かるようにしておく。地道なことですが、こうした管理の積み重ねが、争いを未然に防ぐのです。

近年は、有給の取得状況を記録し、管理することが、会社の実務としてより重視されるようになっています。一定の日数以上の有給がある社員には、確実に一定の日数を取得させる責任があるためです。誰があと何日取得する必要があるのかを把握し、計画的に取得を促していく。こうした管理を怠ると、義務を果たせないだけでなく、社員との間で日数の食い違いも生じやすくなります。

有給をめぐるトラブルを防ぐための備え

有給休暇をめぐる争いの多くは、実は、制度に対する会社と社員の理解のずれから生じます。会社は当然カットできると思っていた、社員は権利だと思っていた。この食い違いが、感情的な対立に発展してしまうのです。だからこそ、日ごろからルールを明確にし、社員と共有しておくことが、何よりの備えになります。ここでは、そのための具体的な取り組みを見ていきましょう。

まず取り組みたいのが、就業規則の整備です。有給休暇の付与の条件、取得の手続き、有給の日の賃金の算定方法などを、就業規則にはっきりと書いておきます。ルールが明文化されていれば、社員も安心して有給を取れますし、会社も一貫した対応がとれます。口頭の慣行だけで運用していると、人によって扱いがぶれ、後々のトラブルの原因になります。書いておくことの意味は、想像以上に大きいのです。

次に大切なのが、有給を取りやすい雰囲気づくりです。制度として権利が保障されていても、職場に有給を取りにくい空気があれば、社員は遠慮してしまいます。そうした状況を放置すると、取得の義務を果たせないだけでなく、社員の不満もたまっていきます。上司の側から取得を促したり、計画的に取得日を組んだりして、休むことが当たり前だといえる環境を整えることが大切です。

読者の方のなかには、有給を取りやすくすると業務が回らなくなるのではないか、と心配する方もいるでしょう。しかし、実際には、計画的に取得を促し、業務を分担できる体制を整えている会社ほど、かえって現場が安定しているものです。急な欠勤に慌てるより、あらかじめ休みを見込んで人員を配置しておくほうが、運営はスムーズになります。有給の取得と業務の両立は、工夫しだいで十分に実現できるのです。

有給を取りやすい雰囲気は、一朝一夕には生まれません。しかし、経営者や管理職が率先して休み、休むことを前向きにとらえる姿勢を示していけば、少しずつ職場の空気は変わっていきます。誰かが休んでも支え合える体制があれば、社員は安心して有給を取れます。そうした環境は、結果として社員の意欲を高め、離職を防ぐことにもつながっていくのです。

さらに、管理する側が制度を正しく理解しておくことも欠かせません。現場の管理職が、有給は取った分だけ給料を引いてよい、といった誤った認識を持っていると、知らないうちに不適切な扱いをしてしまいます。制度についての正しい知識を、管理職の間で共有しておく。研修や周知を通じて、認識をそろえておくことが、トラブルの予防につながります。

管理職の認識をそろえておくことは、現場での不適切な対応を防ぐうえで、とりわけ重要です。制度を正しく理解している上司のもとでは、社員も安心して有給を取れますし、無用な対立も起きにくくなります。逆に、現場の判断がばらばらだと、同じ会社のなかで扱いに差が生じ、それが不満の種になります。制度についての正しい知識を、会社全体で共有しておくことが大切です。

こうした備えを整えておけば、社員から有給についての不満や疑問が出たときにも、落ち着いて対応できます。逆に、備えがないまま場当たり的に対応していると、対応がぶれ、社員の不信を招きます。有給をめぐるトラブルは、平時の備えでその多くを防げるのです。まだ整っていない部分があれば、この機会に見直しておくことをおすすめします。

会社が取り組むべきことと専門家の活用

ここまで、有給休暇の基本から、賃金カットが認められない理由、注意したい不利益な扱い、そして会社としての備えまでを見てきました。あらためて整理すると、会社が有給をめぐって取り組むべきことは、いくつかの柱にまとめられます。有給を社員の権利として正しく理解すること。取得を理由とした不利益な扱いをしないこと。ルールを明確にし、取得しやすい環境を整えること。この三つが、基本の姿勢になります。

この三つの柱は、どれか一つだけを守ればよい、というものではありません。有給を権利として理解していても、取りにくい雰囲気を放置していれば、社員は休めません。ルールを整えていても、運用で不利益な扱いをしていれば、意味がありません。三つがそろって初めて、有給休暇の適切な運用が実現するのです。自社の取り組みを、この三つの観点から点検してみることをおすすめします。

これらは、いずれも特別なことではありません。しかし、日々の忙しさのなかでは、つい後回しになりがちなことでもあります。有給をめぐるトラブルが実際に起きてから慌てて対応するのではなく、何も起きていないうちに、制度を整え、認識をそろえておく。その地道な取り組みこそが、社員との信頼を守り、会社を安定させる土台になるのです。

とはいえ、有給休暇をめぐる問題は、細かな点まで含めると、判断の難しい場面が数多くあります。特定の社員の取り方をめぐって対立が深まっている、有給の日の賃金の計算方法に迷いがある、就業規則をどう定めればよいか分からない。こうした具体的な悩みに直面したときには、自己流で判断せず、専門家の助けを借りることをおすすめします。誤った対応は、かえって問題をこじらせてしまうからです。

とりわけ、すでに社員との間でトラブルが生じている場合には、企業の労務にくわしい弁護士に相談することが有効です。弁護士は、法律の考え方をふまえて、会社がとるべき対応を具体的に助言してくれます。感情的な対立に発展する前に、冷静に筋道を立てて対処できれば、被害を最小限に抑えられます。困ったときに相談できる相手がいることは、経営者にとって大きな安心につながります。

また、トラブルが起きてからだけでなく、平時から相談できる体制を整えておくことにも意味があります。就業規則の見直しや、労務全般の運用について、日ごろから助言を得られる関係を築いておけば、問題が大きくなる前に手を打てます。有給休暇に限らず、労務をめぐる悩みは尽きないものです。信頼できる専門家とつながっておくことが、安定した経営を支えてくれるのです。

有給休暇は、社員の生活と健康を守るための、大切な制度です。会社にとっても、社員が元気に働き続けてくれることは、何よりの財産です。制度を正しく理解し、前向きに運用していくことは、社員のためであると同時に、会社自身のためでもあります。この記事が、有給休暇と向き合ううえでの確かな一助となり、より良い職場づくりの後押しになれば幸いです。

有給休暇と給料に関するよくある質問

有給休暇を取った日の給料は、減らしてもよいですか

有給休暇は、休んでも賃金が支払われる休暇ですから、取得した日について給料を減らすことは認められません。有給を取った分だけ日給を差し引くような扱いは、有給休暇の制度そのものを否定することになります。有給の日にいくら支払うかについては、いくつかの決められた算定方法があり、会社はそのいずれかを、あらかじめ社内のルールとして定めておくことになります。

皆勤手当は、有給休暇を取った月には支払わなくてもよいですか

有給休暇を取得したことを理由に皆勤手当を支払わない、あるいは減額する扱いは、認められない可能性が高いといえます。有給休暇は法律で保障された社員の権利ですから、それを行使したことをもって皆勤ではないと扱えば、実質的に有給の取得を妨げることになりかねないからです。手当の支給の条件を定めるときには、有給取得を不利に扱わないよう注意が必要です。

忙しい時期に有給を取られたくないのですが、断れますか

有給休暇は原則として社員が希望する日に取得できますが、その日に休まれると事業の正常な運営が妨げられるといえる場合には、会社が取得の時季をずらすよう求めることが認められています。ただし、これは例外的な措置で、単に忙しいというだけでは使えません。あらかじめ計画的に取得日を割り振る仕組みを活用するなど、業務との両立を工夫することが望まれます。

有給休暇をめぐって社員とトラブルになったら、どうすればよいですか

有給の取り方や賃金の扱いをめぐって社員と対立が生じたときは、感情的に対応せず、まずは制度の正しい考え方に立ち返ることが大切です。そのうえで、判断に迷う場合や対立が深まっている場合には、企業の労務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。早い段階で適切な助言を得られれば、争いが大きくなる前に、冷静に筋道を立てて対処しやすくなります。

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