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セクハラした社員は解雇できる?懲戒処分の進め方

セクハラした社員は解雇できる?懲戒処分の進め方

この記事で分かること

  • セクハラの悪質さと加害者を直ちに解雇できるかは別の問題である
  • まず事実を正確に確かめ行為に見合った処分を慎重に見きわめる
  • 懲戒処分には段階があり解雇は最も重い処分にあたる
  • 解雇には重い理由と適切な手続きと過去との整合性が問われる
  • 退職勧奨は社員の自由な意思による退職でなければならない
  • 事実確認や手続きを欠いた解雇は無効とされるおそれがある
  • 対応に迷えば企業法務にくわしい弁護士に相談する

セクハラが許されない行為であることと、加害者を直ちに解雇できることとは別の問題です。まず事実を正確に確かめ、行為の重さに見合った処分を慎重に見きわめる必要があります。懲戒処分には段階があり、最も重い解雇には、重い理由と適切な手続き、過去の対応との整合性が問われます。退職勧奨は社員の自由な意思が前提です。手続きを欠いた解雇は無効となりうるため、迷えば専門家に相談すると安心です。

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セクハラした社員は解雇できる?|まず知っておきたいこと

社内でセクハラが発覚した。被害を受けた社員のためにも、加害者となった社員には、厳しく対応したい。いっそ解雇してしまいたい。そう考える経営者の方も多いでしょう。セクハラは、被害者を深く傷つける、決して許されない行為です。しかし、加害者を解雇できるかというと、話はそう単純ではありません。まずは、セクハラをした社員への対応をめぐって、会社が知っておくべきことから見ていきましょう。

セクハラをした社員を解雇したい、という思いは、ごく自然なものです。けれど、解雇は、会社が思い立てば自由にできるものではありません。手順を踏まず、勢いで解雇すれば、かえって会社が不利な立場に立たされることもあります。この記事では、セクハラをした社員への対応を、順を追って見ていきます。適切な対応の道すじを、ここで押さえておきましょう。冷静な対応が、会社を守ります。

セクハラの問題では、加害者への怒りから、つい勢いで動いてしまいがちです。しかし、勢いで下した処分が、後で無効とされれば、会社はかえって窮地に立たされます。被害者を守り、加害者に適切な責任をとらせるためにこそ、冷静さが必要なのです。怒りは正当なものであっても、対応そのものは、あくまで冷静に、筋道立てて進める。それが、結局は最も確かな対応につながります。

セクハラとは、職場において、相手の意に反する性的な言動によって、相手に不利益を与えたり、就業の環境を害したりすることをいいます。こうした行為は、被害を受けた社員の尊厳を傷つけ、時にその人が働き続けることさえ難しくする、重大な問題です。会社には、セクハラを防ぎ、起きたときには適切に対応する責任があります。加害者への対応も、その責任の一環として、きちんと行う必要があります。

会社がセクハラに適切に対応することは、被害を受けた社員のためであると同時に、職場全体の秩序を守るためでもあります。セクハラが放置される職場では、社員は安心して働けません。加害者に、その行為に見合った責任をきちんととらせることは、そうした行為は許されないという会社の姿勢を示し、職場の規律を保つことにもつながります。対応の一つひとつに、重い意味があるのです。

ここで大切なのは、セクハラをした社員への対応と、その社員を解雇できるかどうかは、分けて考える必要がある、という点です。セクハラが許されない行為であることと、その加害者を直ちに解雇できることとは、同じではありません。加害者にどのような処分が適切かは、その行為の内容や程度などを踏まえて、慎重に判断する必要があります。厳しく対応したいという思いと、法的に適切な対応とを、切り分けて考えることが大切です。

ここで押さえておきたいのは、加害者を厳しく処分したいという気持ちと、その処分が法的に認められるかどうかは、別の問題だという発想です。セクハラが悪質だからといって、どんな処分でも許されるわけではありません。行為の重さに見合い、正しい手順を踏んだ処分でなければ、かえって無効とされかねません。感情と、法的に有効な対応とを切り分けることが、出発点になります。

この記事では、セクハラを理由に解雇する前に確認すべきこと、懲戒処分にはどんな種類があるのか、解雇が認められるための考え方、そして退職勧奨という選択肢までを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。セクハラという難しい問題に、会社として適切に対応できるよう、基本をしっかり理解しておきましょう。

セクハラを理由に解雇する前に確認すべきこと

セクハラをした社員を解雇したいと考えたとき、その前に、必ず確認しておくべきことがあります。ここを飛ばして解雇に進むと、後で大きな問題になりかねません。解雇の前に確認すべきことを見ていきましょう。慎重な確認が、適切な対応の土台になります。

まず何よりも大切なのは、セクハラの事実を、正確に確かめることです。誰が、いつ、どのような行為をしたのか。被害を受けた社員は、どのような被害を受けたのか。こうした事実を、一方の言い分だけでなく、双方から丁寧に確かめる必要があります。事実があいまいなまま処分を進めれば、後でその処分の正当性を問われたときに、会社は立ち行かなくなります。事実の確認は、すべての出発点なのです。

とりわけセクハラは、密室で行われることも多く、当事者以外に見ていた人がいない、ということも少なくありません。だからこそ、双方の言い分を丁寧に聞き取り、状況を裏づける事情がないかを、慎重に確かめることが大切になります。片方の話だけを鵜呑みにして処分を進めれば、後でその判断の根拠を問われたときに、立ち行かなくなります。地道な事実確認こそが、確かな対応の土台なのです。

次に、確かめた事実に照らして、どのような処分が適切なのかを、慎重に検討することです。セクハラといっても、その内容や程度はさまざまです。行為の重さに見合った処分を選ぶ必要があり、いきなり最も重い処分である解雇が適切とは限りません。行為の内容や程度、これまでの経緯などを踏まえて、ふさわしい処分を見きわめることが求められます。処分の重さは、行為の重さに応じて考えるのが基本です。

もっとも、行為の重さをどう評価するかは、そう簡単ではありません。同じような言動でも、その状況や、相手が受けた被害の深刻さによって、重さの受け止め方は変わります。表面的な行為の形だけでなく、その背後にある事情まで含めて、総合的に重さを見きわめる必要があるのです。この評価を誤ると、処分の選択も狂ってしまいます。だからこそ、慎重な検討が欠かせません。

また、被害を受けた社員への配慮も、忘れてはなりません。加害者への対応に気を取られるあまり、被害を受けた社員のケアがおろそかになっては、本末転倒です。被害者が安心して働き続けられるよう、その心情に寄り添い、必要な配慮をすることが大切です。加害者への処分と、被害者への配慮は、どちらも欠かせない、車の両輪なのです。被害者を守ることが、対応の根本にあります。

そもそも、セクハラへの対応が求められるのは、被害を受けた社員を守るためです。その原点を見失い、加害者を罰することだけに目が向いてしまっては、対応の意味が薄れてしまいます。被害者が安心を取り戻し、また前を向いて働けるようにする。それこそが、対応の最も大切な目的なのだということを、常に心にとめておきたいところです。

ここで大切なのは、感情に流されて、拙速に処分を決めないことです。セクハラは許しがたい行為ですから、加害者を厳しく処分したいと思うのは当然です。しかし、その思いのままに、事実確認も不十分なまま、重い処分を下せば、かえって処分そのものが問題になりかねません。厳しく対応したい気持ちを抑えて、冷静に、慎重に判断することが求められます。急がば回れの姿勢が大切です。

セクハラの発覚直後は、社内も動揺し、早く決着をつけたいという空気になりがちです。しかし、その焦りに流されて拙速に処分を下せば、かえって禍根を残します。多少時間がかかっても、事実を確かめ、慎重に処分を検討する。その落ち着いた対応こそが、結局は、被害者を守り、会社を守る最短の道になります。急ぐべきは決着ではなく、被害者への配慮なのです。

もう一つ心にとめておきたいのは、拙速な対応は、被害者のためにもならない、という点です。会社が焦って処分を下し、それが後で覆されれば、被害者は、加害者が結局は責任を免れる様子を、目の当たりにすることになります。それは、被害者をさらに傷つけます。時間をかけてでも、覆されない確かな処分を成立させること。それこそが、被害者の思いに応える、誠実な対応なのです。

懲戒処分の種類と、解雇の位置づけ

セクハラをした社員への処分を考えるうえで、知っておきたいのが、懲戒処分にはいくつかの種類があり、解雇はその中で最も重いものだ、ということです。処分の種類と、そのなかでの解雇の位置づけを見ていきましょう。全体像を知ることが、適切な処分の選択につながります。

懲戒処分とは、会社が、規律に反する行為をした社員に対して、制裁として行う処分のことです。この懲戒処分には、軽いものから重いものまで、いくつかの段階があります。会社は、社員の行為の内容や程度に応じて、これらのなかから、ふさわしい処分を選ぶことになります。処分に段階があるのは、行為の重さに見合った対応をとれるようにするためです。

懲戒処分の種類を、軽いものから順に大まかに挙げると、次のようになります。行為の重さに応じて、これらを使い分けることになります。

  • 本人に反省を促す、比較的軽い処分。
  • 一定期間、就業を禁じるなどの、中程度の処分。
  • 役職を解いたり、降格させたりする処分。
  • そして、最も重い処分である、懲戒による解雇。

このように、懲戒処分には段階があり、解雇は、そのなかで最も重いものです。最も重い処分であるだけに、解雇が認められるためには、それにふさわしいだけの重い理由が必要になります。軽微な行為に対して、いきなり解雇という最も重い処分を下せば、その処分は重すぎるとして、認められないことがあります。処分の重さと行為の重さとの釣り合いが、問われるのです。

この釣り合いという考え方は、処分を決めるうえでの、いわば物差しです。同じセクハラでも、その内容や程度は一様ではありません。悪質で重い行為には重い処分を、比較的軽い行為には軽い処分を、というように、行為の重さに応じて処分を選ぶ。この釣り合いを欠いた処分は、重すぎるとして問題とされます。処分を決めるときは、常にこの釣り合いを意識することが大切です。

だからこそ、セクハラをした社員への処分を考えるときも、直ちに解雇と決めつけるのではなく、その行為の重さに見合った処分は何かを、慎重に見きわめる必要があります。行為が極めて悪質で、重い場合には解雇が認められることもありますが、そうでない場合には、より軽い処分がふさわしいこともあります。処分の選択は、慎重な判断を要する、難しい問題なのです。

処分が軽すぎれば、被害者や周りの社員は、会社の姿勢に不信を抱きます。逆に、重すぎれば、その処分が無効とされ、会社が窮地に立たされます。軽すぎても重すぎてもいけない、という難しさが、処分の選択にはあるのです。行為の重さを正しく見きわめ、それに見合った処分を選ぶ。この見きわめには、経験に裏打ちされた判断が求められます。だからこそ、専門家の知見が生きるのです。

解雇が認められるための考え方

セクハラをした社員を、懲戒により解雇する場合、その解雇が認められるためには、どのような点が問われるのでしょうか。解雇が認められるための考え方を知っておくことは、適切な対応のために欠かせません。その考え方を見ていきましょう。ここを誤ると、解雇が無効とされかねません。

まず問われるのは、解雇という最も重い処分に見合うだけの、重い理由があるかどうかです。セクハラの行為が、解雇もやむをえないといえるほど、悪質で重いものであることが求められます。行為の内容や程度、被害の大きさ、これまでの経緯などを踏まえて、解雇に値するだけの重さがあるかが、慎重に判断されます。解雇に値する重さがなければ、その解雇は認められないのです。

次に問われるのは、処分に至るまでの手続きが、適切に踏まれているかどうかです。事実をきちんと確かめたか、本人に言い分を述べる機会を与えたか、といった手続きが、適切に行われている必要があります。たとえ行為が重くても、こうした手続きを欠いたまま解雇すれば、その解雇は、手続きの面から問題とされることがあります。手続きの適切さも、解雇の有効性を左右する重要な要素なのです。

手続きを軽んじてはならないのは、それが、処分を受ける社員の言い分を聞く機会を保障するものだからです。たとえ行為が重くても、本人に弁明の機会も与えずに一方的に解雇すれば、その進め方の不当さが問われます。処分の中身が正しいかどうかだけでなく、そこに至る手続きが公正だったかどうかも、同じくらい重く問われるのだと、心にとめておく必要があります。

また、同じような行為に対して、これまで会社がどう対応してきたか、という点も関わってきます。過去に同じような行為があったときには軽い処分で済ませていたのに、今回だけ解雇する、といった場合には、その扱いの違いが問題とされることもあります。処分は、公平に、一貫して行われる必要があるのです。過去の対応との整合性も、意識しておく必要があります。

会社の処分は、その場その場の判断で、ばらばらに行われてよいものではありません。過去に、同じような行為をどう扱ってきたのか。その積み重ねが、いわば会社の基準として、今回の処分の妥当性を測るものさしになります。過去には見過ごしていた行為を、ある社員に対してだけ厳しく処分すれば、その不公平さが問題とされかねません。一貫した対応が求められるのです。

こうした点をめぐる判断は、専門的で、難しいものです。解雇が認められるかどうかは、個々の事情によって大きく変わります。自己流で判断して解雇に踏み切り、後でその解雇が無効とされれば、会社は大きな痛手を負います。セクハラをした社員の解雇を考えるときは、事前に専門家に相談することを強くおすすめします。専門家の助言が、判断の誤りを防ぎます。

解雇が認められるかどうかの見きわめは、経験のない人にとっては、極めて難しいものです。自分では解雇もやむをえないと思っても、専門家の目で見れば、処分が重すぎる、あるいは手続きが足りない、と判断されることもあります。取り返しのつかない事態を招く前に、専門家に相談し、その見立てを得ておく。それが、判断の誤りによる大きな痛手を避ける、確かな手立てになります。

退職勧奨という選択肢

セクハラをした社員への対応として、懲戒による解雇のほかに、退職を促すという選択肢もあります。これはどのようなもので、どんな点に気をつければよいのでしょうか。退職勧奨という選択肢について見ていきましょう。解雇とは異なる進め方を知っておくことも大切です。

退職勧奨とは、会社が社員に対して、自ら退職するよう促すことをいいます。会社が一方的に雇用を終わらせる解雇とは異なり、あくまで社員本人の意思による退職を促す、という点に特徴があります。社員がこれに応じて、双方が合意して退職に至れば、解雇をめぐるような争いは生じにくくなります。話し合いによって円満に解決を図る、一つの方法だといえます。

解雇をめぐっては、後々、その有効性を争われることが少なくありません。これに対して、社員が納得して自ら退職に応じた場合には、そうした争いは生じにくくなります。双方が合意のうえで区切りをつけるため、しこりも残りにくいのです。もちろん、社員が応じるとは限りませんが、円満な解決を目指すうえで、退職勧奨は検討に値する選択肢だといえます。

ただし、退職勧奨には、気をつけるべき点があります。それは、あくまで社員の自由な意思による退職でなければならない、ということです。退職を促すあまり、社員を追い詰めたり、脅すような形で退職を迫ったりすれば、それは正当な退職勧奨とはいえなくなります。度を越した退職の働きかけは、それ自体が問題となりかねません。社員の意思を尊重した、節度ある対応が求められます。

退職勧奨と、退職の強要とは、紙一重のところがあります。促すつもりが、度を越せば、社員を追い詰める強要になってしまいます。何度も執拗に迫る、退職しなければ不利益を被ると思わせる、といった対応は、節度を超えたものと見られかねません。あくまで、社員が自らの意思で判断できる状況を保ちながら、冷静に話を進めることが大切なのです。

また、退職勧奨に社員が応じるかどうかは、社員本人の判断に委ねられます。会社が退職を促しても、社員がこれに応じなければ、退職を強いることはできません。応じない社員を、無理に退職させようとすれば、それは実質的な解雇と変わらなくなり、解雇と同じ問題を抱えることになります。あくまで、社員の自由な意思を尊重することが、退職勧奨の大前提なのです。

退職勧奨は、うまく用いれば、円満な解決につながる有効な選択肢です。しかし、その進め方を誤ると、かえって新たな問題を生みかねません。どのように進めれば、社員の意思を尊重しつつ、適切に退職を促せるのか。その見きわめは、簡単ではありません。退職勧奨を検討するときも、専門家の助言を得ながら進めるのが確実です。慎重な進め方が、円満な解決の鍵になります。

退職勧奨は、進め方一つで、円満な合意にもなれば、深刻な争いにもなります。社員の心情に配慮し、丁寧に話を進めれば、双方が納得できる形に着地しやすくなります。反対に、一方的に押しつけるように迫れば、社員は反発し、かえってこじれます。どう切り出し、どう話を進めるか。その一つひとつに配慮が要るからこそ、経験のある専門家の助けが生きるのです。

対応を誤るとどうなるか

セクハラをした社員への対応を誤ると、会社は思わぬ問題に直面することがあります。どんなことになりうるのかを知っておくことは、適切な対応の大切さを実感するうえで役立ちます。会社が直面しうるものを見ていきましょう。リスクを知ることが、慎重な対応につながります。

まず、事実確認や手続きが不十分なまま解雇すれば、その解雇が無効とされることがあります。解雇が無効とされれば、その社員との雇用関係は続いていることになり、会社は、さまざまな対応を迫られます。セクハラをした社員を処分したはずが、かえって会社が不利な立場に立たされる。そうした事態は、避けなければなりません。拙速な解雇は、こうしたリスクをはらんでいるのです。

解雇が無効とされれば、会社は、その社員をあらためて受け入れざるをえなくなるなど、思わぬ対応を迫られます。セクハラをした社員に厳しく臨んだつもりが、結果として、その社員との関係をかえってこじらせ、会社が難しい立場に追い込まれる。そうした皮肉な事態を招かないためにも、解雇に踏み切る前の、慎重な見きわめが欠かせないのです。焦りは禁物だといえます。

注意
セクハラをした社員だからといって、事実確認や手続きを欠いたまま解雇すると、その解雇が無効とされ、かえって会社が不利な立場に立たされることがあります。また、行為の重さに見合わない重すぎる処分も、認められないことがあります。厳しく対応したい気持ちは分かりますが、まずは冷静に、慎重に手順を踏むことが欠かせません。

次に、行為の重さに見合わない、重すぎる処分をした場合も、その処分が認められないことがあります。比較的軽い行為に対して、いきなり解雇という重い処分を下せば、処分が重すぎるとして問題とされます。加害者を厳しく処分したいという思いが強くても、行為の重さを超えた処分は、かえって会社の立場を危うくするのです。処分は、行為に見合ったものでなければなりません。

加害者を厳しく罰したいという被害者や周囲の思いは、当然のものです。しかし、その思いに応えようとして、行為の重さを超えた処分を下せば、その処分は法的に維持できません。結果として、加害者に何の責任もとらせられない、という最悪の事態にもなりかねないのです。適切な重さの処分を確実に成立させることこそが、被害者の思いに真に応える道なのだといえます。

また、被害を受けた社員への配慮を欠いた対応も、大きな問題を招きます。加害者への処分にばかり気を取られ、被害者のケアを怠れば、被害者は、会社にも失望することになります。セクハラへの対応は、加害者を処分すれば終わり、というものではありません。被害者が安心して働き続けられるようにするところまで含めて、はじめて適切な対応といえるのです。被害者への配慮を忘れてはなりません。

被害を受けた社員は、加害者が処分されたとしても、受けた傷がすぐに癒えるわけではありません。同じ職場で働き続けることに、不安を覚えることもあるでしょう。会社には、被害者が安心して働き続けられるよう、その後も継続して配慮することが求められます。加害者への処分で幕を引くのではなく、被害者が日常を取り戻すところまで見届ける。その姿勢が問われるのです。

会社が取り組むべきことと専門家の活用

ここまで、セクハラをした社員への対応について見てきました。最後に、会社としてどう取り組んでいけばよいか、そして専門家をどう活かせばよいかを整理しておきましょう。冷静で慎重な対応と、日ごろの備えが、会社を守ります。

まず心がけたいのは、セクハラへの対応を、感情ではなく、冷静な判断に基づいて進めることです。セクハラは許されない行為である以上、加害者を厳しく処分したいと考えるのは自然なことでしょう。しかし、その思いのままに拙速に動けば、対応そのものが問題になりかねません。厳しく対応したいという思いと、法的に適切な対応とを切り分け、冷静に手順を踏むことが大切です。

次に、セクハラをした社員への対応は、専門的な判断を要することを踏まえ、無理に自社だけで抱え込まないことです。解雇が認められるか、どの処分が適切か、退職勧奨をどう進めるかなど、判断の難しい場面が数多くあります。あいまいなまま進めて対応を誤れば、かえって会社が不利な立場に立たされかねません。判断に迷う点は、専門家に確かめながら進めるのが確実です。

また、そもそもセクハラを起こさないための備えを、日ごろから怠らないことも大切です。セクハラを許さない姿勢を示し、相談できる仕組みを整え、社員の理解を深めていく。そうした地道な取り組みが、セクハラを未然に防ぎます。セクハラへの最良の対応は、そもそもセクハラを起こさないことなのです。事後の対応だけでなく、平時の予防にこそ、力を入れたいところです。

セクハラが起きてしまえば、被害者は傷つき、会社は難しい対応を迫られます。どれほど適切に対応しても、起きてしまった事実は変えられません。だからこそ、最も大切なのは、そもそもセクハラを起こさない職場をつくることです。許さない姿勢を明確にし、相談の場を整え、社員の理解を深める。こうした平時の備えこそが、被害者も会社も守る、最も確かな道なのです。

セクハラをした社員への処分や、解雇が認められるかの判断、退職勧奨の進め方に不安があるときは、企業の法務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。専門家の力を借りれば、処分の選択や手続きを、誤りなく進められます。日ごろから相談できる関係を築いておくと、セクハラの問題が生じたときにも、落ち着いて対応できます。

セクハラの問題は、いつ、どのような形で発覚するか分かりません。だからこそ、いざ問題が起きてから慌てて相談先を探すのではなく、日ごろから会社の事情を分かってくれる専門家とつながっておくことに意味があります。ふだんから関係があれば、発覚した直後から、すぐに助言を得ながら対応を進められます。その備えが、対応の質を大きく左右するのです。

セクハラと解雇に関するよくある質問

セクハラをした社員は、すぐに解雇できますか

セクハラが許されない行為であることと、その加害者を直ちに解雇できることとは、別のことです。解雇は最も重い処分であり、それに見合うだけの重い理由と、適切な手続きが必要です。まずはセクハラの事実を正確に確かめ、行為の重さに見合った処分を慎重に見きわめる必要があります。いきなり解雇と決めつけず、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

セクハラを理由とする解雇が、認められないのはどんな場合ですか

行為の重さに見合わない重すぎる処分である場合や、事実確認や本人への弁明の機会といった手続きを欠いている場合には、解雇が認められないことがあります。また、過去の同じような行為には軽い処分で済ませていたのに今回だけ解雇する、といった扱いの違いも問題とされることがあります。解雇が認められるかの判断は難しいため、事前に専門家に相談することが大切です。

退職勧奨で、セクハラをした社員に退職を促してもよいですか

退職を促すこと自体は選択肢の一つですが、あくまで社員の自由な意思による退職でなければなりません。社員を追い詰めたり、脅すような形で退職を迫ったりすれば、正当な退職勧奨とはいえなくなります。また、社員が応じなければ退職を強いることはできません。社員の意思を尊重した節度ある対応が求められるため、進め方は専門家に相談すると安心です。

セクハラへの対応で不安があるときは、どこに相談すればよいですか

加害者への処分や、解雇が認められるかの判断、退職勧奨の進め方で判断に迷うときは、企業の法務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。対応を誤ると、解雇が無効とされたり、被害者への配慮を欠いたりしかねません。平時から相談できる体制を整えておけば、セクハラの問題が生じたときにも、慌てず適切に対応を進めやすくなります。

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