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深夜残業・休日出勤の強制は違法?パワハラとの境界

深夜残業・休日出勤の強制は違法?パワハラとの境界

この記事で分かること

  • 時間外や休日、深夜の労働は決められた手続きを踏めば行わせることができる
  • 残業には社員の代表との取り決めと届出が前提で割増賃金の支払いも必要
  • 業務上の必要を超えた過度な強要はパワハラにあたる可能性がある
  • 会社は社員の労働時間を把握し健康に配慮する安全配慮義務を負う
  • パワハラを防ぐ方針の明示や相談窓口の設置が会社に求められる
  • 適法な指示か違法な強要かは必要性と求め方が分かれ目になる
  • 判断に迷えば企業の労務にくわしい弁護士に相談する

時間外や休日、深夜の労働は、必要な手続きを踏み割増賃金を払えば行わせることができますが、けっして無制限ではありません。業務上の必要を超えて過度に強要したり、断ろうとする社員を威圧したりすれば、パワハラにあたることもあります。会社は社員の労働時間を把握して健康に配慮し、ハラスメントを防ぐ体制を整える必要があります。判断に迷うときは、企業の労務にくわしい専門家に相談すると安心です。

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深夜残業や休日出勤の強制は違法になるのか

人手が足りない。納期が迫っている。そうしたとき、社員に深夜まで残業してもらったり、休日に出勤してもらったりする場面は、事業を営んでいれば避けられません。けれども、その求め方しだいでは、会社が思っている以上に重い問題を招くことがあります。まずは結論からお伝えします。時間外や休日、深夜の労働は、決められたルールを守れば行わせることができますが、そのルールを外れたり、過度に強要したりすれば、違法となり、場合によってはパワーハラスメントにあたることもあるのです。

経営者のなかには、雇っているのだから、必要なときに残業や休日出勤を求めるのは当然だ、と考える方もいるでしょう。確かに、一定のルールのもとであれば、会社は社員に時間外の労働を命じることができます。しかし、それは無制限ではありません。手続きを踏まずに命じたり、社員の心身の限界を超えて執拗に求めたりすれば、それはもはや正当な業務の指示ではなくなります。ルールの範囲を超えた強要は、社員を追い詰め、会社をも危うくするのです。

とりわけ近年は、長時間労働やハラスメントに対する社会の目が、格段に厳しくなっています。深夜まで残業を強いられた、休日出勤を断れなかった、といった社員の不満は、以前なら表に出なかったものが、今では相談や紛争として表面化しやすくなっています。会社としては、こうした変化をふまえ、時間外の労働をどう求めるべきか、あらためて考え直す必要があるのです。

この記事では、時間外労働や休日労働、深夜労働にはどのようなルールがあるのか、どのような場合に強制がパワーハラスメントにあたるのか、会社は長時間労働にどう向き合うべきか、そして適法な労働と違法な強要の線引きはどこにあるのかまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。社員に無理をさせないことは、社員を守るためであると同時に、会社を守るためでもあるのです。

読者の方のなかには、すでに社員から残業の求め方について不満の声が上がっていて、対応に迷っている方もいるかもしれません。あるいは、これから労働時間の管理をきちんと整えたいと考えている段階の方もいるでしょう。どちらの場合でも、まずは時間外の労働をめぐる基本のルールを正しく理解することが、出発点になります。感覚だけで対応していると、知らないうちに一線を越えてしまうことがあるからです。

大切なのは、時間外の労働を、社員に無理を押しつける手段としてではなく、ルールに則った、限られた範囲の協力として位置づけることです。社員の健康と生活を守りながら、必要な業務を回していく。そのバランスを保つことが、経営者に求められています。順を追って、その考え方を見ていきましょう。まずは、時間外労働や休日労働、深夜労働の基本のルールからです。

なお、この記事でお伝えするのは、時間外の労働をめぐる基本の考え方です。実際の場面では、業務の内容や社員の状況によって、判断が変わってくることもあります。ここで得た知識を土台にしながら、迷う場面では専門家の助言も得て、慎重に対応を進めていただければと思います。基本を知っておくことが、いざというときの確かな支えになります。

時間外労働・休日労働・深夜労働の基本ルール

まず押さえておきたいのが、労働時間には法律で定められた上限があるということです。一日、そして一週間について、働かせてよい時間の枠が決められており、その枠を超えて社員を働かせることは、原則として認められていません。この枠を超える労働が、いわゆる時間外労働、残業にあたります。残業は、あくまで例外的なものとして位置づけられているのです。

この点は、経営者の感覚と食い違いやすいところです。残業が日常になっている職場では、時間外に働くことが当たり前のように感じられます。しかし、法律の建前はあくまで逆で、決められた時間内で働くのが原則であり、残業はやむを得ない例外にすぎません。この原則と例外の関係を意識できているかどうかが、労働時間に対する会社の姿勢を大きく左右するのです。

では、その枠を超えて残業をさせるには、どうすればよいのでしょうか。会社が社員に時間外の労働や休日の労働をさせるためには、あらかじめ社員の代表との間で、時間外労働に関する取り決めを結び、それを届け出ておく必要があります。この手続きを踏まずに残業をさせれば、それ自体が法律に反することになります。残業を命じる前提として、まずこの手続きが欠かせない、という点を理解しておきましょう。

この取り決めは、会社が一方的に決めればよいものではありません。社員の側の代表との間で結ぶ必要があり、社員の理解のうえに成り立つものです。手続きを軽く考えて、形だけ整えたり、そもそも結んでいなかったりする会社もありますが、それは大きなリスクを抱えることになります。残業を求めるなら、まずこの土台をきちんと固めておくことが、何より先に必要なのです。

さらに、この取り決めを結んだうえでも、残業をさせられる時間には上限が設けられています。いくら取り決めがあるからといって、際限なく残業をさせてよいわけではありません。社員の健康を守るために、一定の時間を超える残業は認められない仕組みになっているのです。会社は、この上限の範囲内で、必要な残業を求めることになります。上限を超える働かせ方は、それだけで問題となります。

この上限は、社員の健康を守るために設けられた、いわば最後の防波堤です。上限に迫るほどの残業が続いているとすれば、それはすでに、社員に相当な負担がかかっている状態だといえます。会社としては、上限ぎりぎりまで働かせてよい、と考えるのではなく、そもそも上限に近づかないよう、業務のあり方を見直していく姿勢が望まれます。上限は目標ではなく、越えてはならない一線なのです。

賃金についても、決められたルールがあります。社員に時間外の労働をさせた場合、会社は通常の賃金に一定の割合を上乗せした割増賃金を支払わなければなりません。休日に労働させた場合も同様に、割増賃金の支払いが必要です。残業や休日出勤には、通常より高い賃金を払う義務がある。この点も、会社が確実に守るべきルールの一つです。

そして、この記事の題名にもある深夜労働です。夜の遅い時間帯から早朝にかけての時間帯に社員を働かせた場合には、その時間帯の労働について、さらに割増賃金を支払う必要があります。深夜の時間帯に働くことは、社員の心身に大きな負担をかけます。だからこそ、その負担に見合うだけの割増賃金が求められているのです。時間外の労働が深夜に及べば、割増の負担が重なることもあります。

これらの割増賃金は、社員の負担に見合った対価であると同時に、会社にとっては、安易な残業への歯止めとしての意味も持っています。残業をさせれば、それだけ割増の負担が生じるのですから、会社は本当に必要な残業だけを求めるようになる。そうした仕組みを通じて、長時間労働を抑えていこうという考え方が、その背景にはあるのです。割増賃金は、単なる支払い義務にとどまらない意味を持っています。

ワンポイントアドバイス
残業や休日出勤をさせるには、あらかじめ社員の代表との取り決めを結び、届け出ておくことが前提になります。この手続きを踏まないまま残業をさせれば、それ自体が違法です。まずは自社が必要な手続きを踏んでいるか、労働時間の管理が適切にできているかを確認しておきましょう。

強制がパワハラにあたるのはどんな場合か

ここが、この記事の重要な論点です。時間外や休日、深夜の労働は、ルールを守れば行わせることができます。しかし、その求め方が度を越えると、正当な業務の指示の範囲を超え、パワーハラスメントにあたることがあります。適法な残業の指示と、ハラスメントとしての強要とは、どこで分かれるのか。この線引きを理解しておくことが、会社にとって欠かせません。

パワーハラスメントとは、職場において、立場の優位性を背景に、業務上必要な範囲を超えて、社員に苦痛を与えたり、職場の環境を悪化させたりする行為をいいます。時間外の労働の求め方も、この観点から見れば、ハラスメントになりうるのです。上司という立場を使って、業務上の必要を超えた過度な残業を強いれば、それは社員への嫌がらせと変わらなくなってしまいます。

たとえば、こなしきれない量の業務を押しつけたうえで、深夜までの残業を当然のように求め続ける。特定の社員だけを狙って、必要もないのに休日出勤を繰り返し命じる。断ろうとする社員に対して、威圧的な態度で出勤を迫る。こうした行為は、業務上の必要を超えた、過大な要求や、見せしめのような扱いとして、パワーハラスメントにあたる可能性があります。残業や休日出勤の指示が、社員をいじめる手段になってしまっているのです。

ここで押さえておきたいのは、業務上の必要があるかどうか、その範囲を超えていないかどうかが、適法な指示とハラスメントを分ける大きな鍵になるという発想です。本当に必要な残業であれば、ルールの範囲で求めることに問題はありません。しかし、必要もないのに、あるいは社員の限界を明らかに超えてまで残業を強いれば、それは業務の指示の名を借りた嫌がらせになります。会社は、この境目を強く意識しなければなりません。

また、強要のしかたも問題になります。残業や休日出勤を求めること自体は必要であっても、その伝え方が、社員を人前で叱責したり、断れない雰囲気で追い詰めたりするものであれば、それもハラスメントの色合いを帯びてきます。何を求めるかだけでなく、どう求めるかも、会社は気を配る必要があります。指示は、社員の人格を尊重したかたちで行われなければならないのです。

読者の方のなかには、うちは強制などしていない、社員が自発的に残っているだけだ、と考える方もいるかもしれません。しかし、断れない空気のなかでの残業は、形式的には自発的でも、実質的には強要に近いものです。社員が本当に自由に断れる状況なのか、断ったら不利益を受けると感じてはいないか。その実態を、会社は冷静に見つめる必要があります。

この実態を見極めるうえで、ひとつの手がかりになるのが、社員の様子です。残業を求められたときに、明らかに疲れきっているのに断れずにいる。休日出勤のたびに表情がこわばっている。そうしたサインがあれば、それは自発的な協力ではなく、追い詰められた末の服従かもしれません。社員が発する声にならないサインに、経営者や管理職が気づけるかどうかが、問われているのです。

長時間労働と会社の安全配慮義務

時間外の労働をめぐって、会社が忘れてはならないのが、社員の安全と健康に配慮する義務です。会社は、社員が心身の健康を損なうことなく働けるよう、環境を整える責任を負っています。長時間の労働は、この健康を直接に脅かすものです。深夜まで残業を続けたり、休日もろくに休めなかったりすれば、社員の心と体は、確実にむしばまれていきます。

過度な長時間労働が続くと、社員は疲労を蓄積させ、やがて体調を崩したり、心の健康を損なったりすることがあります。最悪の場合には、取り返しのつかない事態を招くことすらあります。そうした事態が起きたとき、会社が安全への配慮を怠っていたと判断されれば、会社は重い責任を問われます。長時間労働の問題は、社員の健康と、会社の責任とが、直接に結びついているのです。

ここで大切なのは、社員が残業を望んでいるように見える場合でも、会社の配慮の義務がなくなるわけではない、という点です。社員が自ら長時間働いていたとしても、会社がその状況を放置し、健康への配慮をしていなければ、責任を免れることはできません。会社には、社員の労働時間を把握し、働きすぎている社員がいれば、その負担を減らす手立てをとることが求められます。

具体的には、労働時間を正確に記録し、把握しておくことが出発点になります。誰がどれだけ働いているのかが分からなければ、働きすぎに気づくこともできません。そのうえで、特定の社員に業務が偏っていないか、常態的に長時間労働になっていないかを確認し、必要に応じて人員の配置や業務の分担を見直していく。こうした地道な管理こそが、社員の健康と会社の責任の双方を守るのです。

また、長時間労働が続いている社員については、心身の状態に気を配り、必要であれば医師による面談などの機会を設けることも大切です。疲れがたまっている社員のサインを見逃さず、早めに手を打つ。そうした配慮の積み重ねが、深刻な事態を防ぎます。社員の健康は、会社にとってかけがえのない財産です。それを守ることは、経営者の基本の務めなのです。

長時間労働への配慮は、社員のためだけでなく、会社の持続のためにも欠かせません。無理を重ねて社員が体を壊せば、その社員が抜けた穴を埋めるために、かえって周りの負担が増します。優秀な社員が心身を損なって離れていけば、会社は大きな戦力を失います。目先の業務を回すために社員を酷使することは、長い目で見れば、会社自身の力を削ぐことにつながるのです。

会社に求められるパワハラ防止の取り組み

時間外の労働の強要に限らず、会社には、職場でのパワーハラスメントを防ぐための取り組みが求められています。ハラスメントが起きてから対応するのではなく、そもそも起きないようにする。そのための体制を整えておくことが、会社の責任として位置づけられているのです。ここでは、その取り組みの柱を見ていきましょう。

まず取り組みたいのが、会社としての方針を明確に示すことです。パワーハラスメントを許さないという姿勢を、はっきりと社内に表明し、どのような行為がハラスメントにあたるのかを、社員に周知しておきます。方針が曖昧なままだと、現場ではこれくらいはよいだろう、という判断が横行し、いつのまにか一線を越えてしまいます。会社の明確な意思表示が、抑止の出発点になります。

方針を示すときには、抽象的な言葉で終わらせず、具体的な行為の例をあげて伝えると効果的です。どのような言動がハラスメントにあたるのかが具体的に分かれば、社員も管理職も、自分の行いを振り返りやすくなります。だめだと分かっていても、何がだめなのかが曖昧では、行動は変わりません。会社の方針は、現場の一人ひとりが自分ごととして受けとめられるかたちで、示される必要があります。

次に大切なのが、相談を受けとめる窓口を設けておくことです。ハラスメントを受けた社員や、その様子に気づいた社員が、安心して相談できる先を用意しておく。相談したことで不利益を受けることがないようにしておく。こうした窓口があれば、問題が深刻化する前に把握でき、早めに対処できます。声を上げられる場所があること自体が、社員の安心につながるのです。

窓口を設けるときに大切なのは、相談しやすさへの配慮です。相談したことが周囲に知られてしまう、相談しても取り合ってもらえない、と社員が感じれば、せっかくの窓口も使われません。相談の秘密が守られ、真剣に受けとめてもらえると分かって初めて、社員は安心して声を上げられます。窓口は、置くだけでなく、実際に機能するように育てていくことが求められます。

さらに、管理職への教育も欠かせません。パワーハラスメントの多くは、上司と部下の関係のなかで起こります。管理職が、何がハラスメントにあたるのかを正しく理解し、適切な指示のしかたを身につけていなければ、悪気なく社員を傷つけてしまうことがあります。研修などを通じて、管理職の意識と知識を高めておくことが、ハラスメントの予防に直結します。

管理職への教育で伝えたいのは、指示のしかたにも配慮が必要だ、という点です。同じ内容の指示であっても、頭ごなしに命じるのと、事情を説明して協力を求めるのとでは、受け取る社員の負担はまるで違います。忙しいときこそ、言葉づかいや伝え方に気を配る。そうした姿勢が、現場の信頼を保ち、ハラスメントの芽を摘みます。指示は、人格を尊重したかたちで行われるべきものなのです。

こうした取り組みは、時間外の労働の求め方にも、そのままあてはまります。残業や休日出勤を、どのように求めれば適切なのか。断る社員にどう向き合うべきなのか。管理職がこれを理解していれば、正当な業務の指示が、いつのまにかハラスメントに変わってしまう事態を防げます。ハラスメント防止の取り組みは、日々の労務管理と切り離せないものなのです。

適法な時間外労働と違法な強要の線引き

ここまでの内容をふまえて、適法な時間外労働と、違法な強要やハラスメントとの線引きを、あらためて整理しておきましょう。この境目を会社がはっきりと意識できていれば、必要な残業を求めつつ、社員を追い詰めてしまう事態を避けられます。判断のよりどころとして、いくつかの観点を押さえておくことが役立ちます。

  • あらかじめ社員の代表との取り決めを結び、届け出るなど、必要な手続きを踏んでいるか。
  • 残業をさせる時間が、法律で定められた上限の範囲に収まっているか。
  • 時間外や休日、深夜の労働について、割増賃金を正しく支払っているか。
  • その残業や休日出勤に、本当に業務上の必要があるといえるか。
  • 社員が断ろうとしたときに、威圧的な態度で追い詰めていないか。

これらの観点をすべて満たしていれば、時間外の労働を求めることに、基本的な問題はありません。逆に、手続きを踏んでいなかったり、必要もないのに強要していたり、断れない雰囲気で追い詰めていたりすれば、それは適法な範囲を超えている疑いがあります。一つひとつの観点に照らして、自社の運用を点検してみることが大切です。

これらの観点は、いわば自社の労務管理を映す鏡でもあります。点検してみて、どこかに引っかかる点があれば、そこには改善の余地があるということです。手続きが不十分なら整える、割増賃金の計算に不安があれば見直す、業務が特定の社員に偏っていれば分担し直す。一つずつ手を打っていけば、時間外の労働をめぐる問題の多くは、未然に防げるようになります。

とりわけ注意したいのが、業務上の必要性と、強要のしかたです。手続きや上限、割増賃金といった形式的な要件は、意識していれば守りやすいものです。しかし、その残業が本当に必要なのか、社員を無理に追い詰めていないか、という点は、つい見過ごされがちです。形式を整えるだけでなく、実態として社員に過度な負担を強いていないかを、常に問い直す姿勢が求められます。

注意
手続きや割増賃金といった形式を満たしていても、必要のない残業を執拗に強いたり、断る社員を威圧したりすれば、パワーハラスメントとして問題になりかねません。何を求めるかだけでなく、どう求めるかにも十分に配慮することが大切です。

会社が線引きに迷うのは、多くの場合、業務の必要性の判断が難しい場面です。繁忙期に一時的に残業を求めることと、慢性的に長時間労働を強いることとは、意味が大きく異なります。一時的で、必要性があり、社員の健康にも配慮されているなら、問題は生じにくいものです。しかし、それが常態化し、社員の負担が限界を超えていけば、たとえ形式が整っていても、実態としては深刻な問題になっていくのです。

読者の方のなかには、繁忙期をどう乗り切るかで悩んでいる方も多いでしょう。大切なのは、繁忙を一時的なものにとどめ、社員に無理が続かないよう工夫することです。応援の人員を確保する、業務の優先順位を整理する、繁忙が過ぎたら十分に休ませる。そうした配慮があれば、一時的な残業は、社員も納得して協力してくれます。問題になるのは、無理が常態化し、出口が見えなくなったときなのです。

会社が取り組むべきことと専門家の活用

ここまで、時間外の労働をめぐる基本のルールから、ハラスメントにあたる場合、安全配慮の義務、そして適法と違法の線引きまでを見てきました。あらためて整理すると、会社が取り組むべきことは、いくつかの柱にまとめられます。必要な手続きを踏み、割増賃金を正しく払うこと。業務上の必要を超えた強要をしないこと。社員の労働時間と健康に配慮すること。そして、ハラスメントを防ぐ体制を整えること。これらが基本の姿勢になります。

これらの柱は、どれか一つだけを守ればよいというものではありません。手続きや割増賃金を整えていても、社員を追い詰めていれば意味がありませんし、健康に配慮していても、ハラスメントを放置していれば問題は残ります。すべてがそろって初めて、社員が安心して働ける職場が実現します。自社の取り組みを、これらの観点から総合的に点検してみることをおすすめします。

これらは、いずれも特別なことではありません。しかし、忙しい現場では、つい後回しになったり、その場の勢いで一線を越えてしまったりしがちなことでもあります。問題が起きてから慌てて対応するのではなく、何も起きていないうちに、ルールを整え、管理職の認識をそろえ、社員が声を上げられる仕組みをつくっておく。その備えこそが、社員を守り、会社を安定させる土台になります。

とはいえ、時間外の労働やハラスメントをめぐる問題は、細かな点まで含めると、判断の難しい場面が数多くあります。この残業の求め方は許されるのか、社員から不満が出ているがどう対応すべきか、就業規則や労働時間の管理をどう整えればよいか。こうした具体的な悩みに直面したときには、自己流で判断せず、専門家の助けを借りることをおすすめします。誤った対応は、かえって問題をこじらせてしまうからです。

とりわけ、すでに社員との間でトラブルが生じていたり、ハラスメントを疑われる事態になっていたりする場合には、企業の労務にくわしい弁護士に相談することが有効です。弁護士は、法律の考え方をふまえて、会社がとるべき対応を具体的に助言してくれます。感情的な対立や深刻な紛争に発展する前に、冷静に筋道を立てて対処できれば、被害を最小限に抑えられます。

また、トラブルが起きてからだけでなく、平時から相談できる体制を整えておくことにも意味があります。労働時間の管理や、ハラスメント防止の仕組みづくりについて、日ごろから助言を得られる関係を築いておけば、問題が大きくなる前に手を打てます。社員が安心して働ける職場をつくることは、優れた人材をひきつけ、会社を長く支える力になります。信頼できる専門家とつながっておくことが、その助けになるのです。

時間外の労働をめぐる問題は、放置すれば社員の健康を損ない、会社の責任を招く、重い問題です。しかし、正しく理解し、丁寧に管理すれば、必要な業務を回しながら、社員を守ることは十分にできます。社員に無理をさせないことは、遠回りに見えて、実は会社を最も確かに支える道なのです。この記事が、時間外の労働と向き合ううえでの一助となれば幸いです。

深夜残業・休日出勤の強制に関するよくある質問

社員に残業や休日出勤をさせるには、何が必要ですか

会社が社員に時間外の労働や休日の労働をさせるには、あらかじめ社員の代表との間で時間外労働に関する取り決めを結び、それを届け出ておくことが前提になります。この手続きを踏まずに残業をさせれば、それ自体が違法です。さらに、残業をさせる時間には上限があり、時間外や休日、深夜の労働については、通常より高い割増賃金を支払う必要があります。

残業を強く求めることが、パワハラになることはありますか

あります。業務上の必要を超えて過度な残業を強いたり、必要もないのに特定の社員に休日出勤を繰り返し命じたり、断ろうとする社員を威圧的に追い詰めたりすれば、パワーハラスメントにあたる可能性があります。何を求めるかだけでなく、どのように求めるかも問われます。業務上の必要があるか、その範囲を超えていないかが、適法な指示との分かれ目になります。

社員が自分から残業しているなら、会社の責任は問われませんか

社員が自発的に残業しているように見える場合でも、会社の責任がなくなるわけではありません。会社には社員の労働時間を把握し、健康に配慮する義務があるため、働きすぎを放置していれば責任を問われることがあります。また、断れない雰囲気のなかでの残業は、形のうえでは自発的でも、実質的には強要に近いものです。実態を冷静に見つめる必要があります。

残業やハラスメントをめぐってトラブルになったら、どうすればよいですか

時間外の労働の求め方や、ハラスメントを疑われる事態をめぐって社員と対立が生じたときは、感情的に対応せず、まずは法律のルールに立ち返ることが大切です。そのうえで、判断に迷う場合や事態が深刻な場合には、企業の労務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。早い段階で適切な助言を得られれば、争いが大きくなる前に、冷静に対処しやすくなります。

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