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労災が起きたら|会社の対応と労災申請の進め方

労災が起きたら|会社の対応と労災申請の進め方

この記事で分かること

  • 労災は仕事が原因のケガや病気や通勤中のケガを補償する仕組みである
  • 仕事に起因するか通勤途中かが労災かどうかの判断の鍵になる
  • まず従業員の治療を優先し事実を正確に記録することが大切
  • 労災の申請には会社の誠実な協力が求められる
  • 労災を隠したり申請に非協力的な態度をとってはならない
  • 安全な環境づくりと意識づけで労災を未然に防ぐことが重要
  • 対応に迷えば企業法務にくわしい弁護士に相談する

労災とは、仕事が原因のケガや病気、通勤途中のケガを補償する仕組みです。仕事に起因するか、通勤の途中かが、労災かどうかの判断の鍵になります。労災が起きたら、まず従業員の治療を優先し、事実を正確に記録することが大切です。申請には会社の誠実な協力が求められ、隠したり非協力的な態度をとってはなりません。安全な環境づくりで未然に防ぐことも重要で、迷うときは専門家に相談すると安心です。

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労災とは|仕事が原因のケガや病気を補償する仕組み

従業員が、仕事中にケガをした。あるいは、仕事が原因で病気になった。事業を営んでいれば、そうした場面に、いつ直面してもおかしくありません。そんなとき、会社はどう対応すればよいのか。従業員のために、何をしてあげられるのか。いざそのときになって慌てないためにも、労災についての基本を、あらかじめ押さえておくことが大切です。まずは、労災とは何かというところから見ていきましょう。

労災という言葉は、多くの方が耳にしたことがあるでしょう。しかし、その中身や、会社としての対応の仕方までは、はっきりとは分からない、という経営者の方も少なくありません。従業員が仕事でケガや病気になったとき、会社は何をすべきなのか。この点を、順を追って理解しておきましょう。備えがあれば、いざというときにも落ち着いて対応できます。

従業員のケガや病気は、多くの場合、突然起こります。慌ただしいなかで、正しい対応を、その場で一から考えるのは容易ではありません。だからこそ、あらかじめ知識として備えておくことが役立ちます。何をすべきかが頭に入っていれば、動揺せずに、必要な対応を順に進められます。いざというときの落ち着きは、平時の備えから生まれるのです。

労災とは、労働災害の略で、従業員が仕事に関連してケガをしたり、病気になったり、あるいは仕事の行き帰りでケガをしたりすることをいいます。そして、こうした労災に対しては、その従業員を補償するための仕組みが設けられています。仕事が原因で従業員が傷病を負ったとき、その従業員が治療を受けたり、働けない間の生活を支えられたりするよう、社会全体で支える仕組みが用意されているのです。

この仕組みがあることは、従業員にとってはもちろん、会社にとっても意味のあることです。従業員が仕事で傷病を負ったとき、その補償を、会社が一から抱え込むのではなく、社会の仕組みによって支えられる。従業員の生活を守りながら、会社の負担も一定の範囲にとどめられる。労災を補償する仕組みは、働く人と会社の双方を支える、大切な社会の備えなのだといえます。

もっとも、この仕組みがあるからといって、会社の責任がなくなるわけではありません。安全への配慮を怠って労災を招いた場合には、会社は別途その責任を問われることもあります。仕組みに支えられる部分と、会社が自ら負うべき責任の部分とは、分けて考えておく必要があります。仕組みに頼りきるのではなく、まずは労災を起こさないことが、会社の基本の姿勢なのです。

ここで大切なのは、労災への対応は、会社の任意の親切ではなく、会社が果たすべき務めとして定められている、という点です。従業員が仕事でケガや病気をしたとき、会社には、その従業員が必要な補償を受けられるよう、しかるべき対応をとることが求められます。従業員を雇う以上、その従業員の安全に配慮し、いざというときには適切に対応する。それが、会社に課された責任なのです。

ここで押さえておきたいのは、労災への対応は、隠したり避けたりするものではなく、従業員を守るために正面から取り組むべきものだという発想です。労災が起きたことを知られたくない、という気持ちが働くこともあるかもしれません。しかし、そうした後ろ向きの対応は、従業員を苦しめ、会社自身をも危うくします。誠実に向き合うことこそが、結局は会社を守る道なのです。

この記事では、労災にあたるのはどんな場合か、労災が起きたとき会社は何をすべきか、労災の申請はどう進めるのか、そして会社が気をつけるべきことは何かまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。従業員のケガや病気という、いざというときに、迷わず動けるよう、基本をしっかり理解しておきましょう。

労災は、いつ、どの従業員に起こるか分かりません。ふだんは安全に見える職場でも、思わぬ拍子に事故は起こりえます。だからこそ、何も起きていないうちに、対応の考え方を知っておくことが大切です。いざ従業員がケガや病気をしたとき、あらかじめ備えがあれば、慌てずに、なすべきことを順に進められます。この記事が、その備えの一助になれば幸いです。

なお、労災をめぐる対応は、細かな点まで含めると、判断の難しい場面が数多くあります。この記事では、その全体像と、会社が押さえておきたい基本の考え方をお伝えします。個々の具体的な場面での判断は、状況によって変わりますから、実際に労災が起きたときには、専門家の助言も得ながら、慎重に対応を進めていただければと思います。

どんな場合が労災にあたるのか

労災への対応を考えるうえで、まず知っておきたいのが、どんな場合が労災にあたるのか、ということです。ここを理解しておかないと、労災なのかどうかの判断を誤りかねません。労災と認められる場合の考え方を見ていきましょう。判断の軸を知っておくことが大切です。

労災にあたるかどうかを考えるうえで、大きく分けて二つの場面があります。一つは、仕事そのものが原因となって、ケガや病気が生じた場合です。もう一つは、仕事のための行き帰りの途中で、ケガをした場合です。この二つの場面で生じた傷病が、労災として扱われる可能性があります。まずは、この大まかな枠組みを押さえておきましょう。

一つ目の、仕事が原因でケガや病気が生じた場合について見てみましょう。たとえば、業務中に機械にはさまれてケガをした、重い物を運んでいて腰を痛めた、といった場合が考えられます。また、ケガだけでなく、仕事が原因で病気になった場合も、これに含まれることがあります。仕事との関わりのなかで生じた傷病かどうかが、判断の重要な鍵になります。

ここでいう仕事との関わりとは、単にその日に出勤していた、というだけのことではありません。その傷病が、仕事を行うなかで、仕事に起因して生じたといえるかどうかが問われます。同じケガでも、業務中に生じたものか、休憩中の私的な行動で生じたものかによって、扱いが変わることもあります。仕事とのつながりを、丁寧に見ていく必要があるのです。

二つ目は、仕事のための行き帰りの途中でケガをした場合です。従業員が、家と職場との間を、通常の道すじで行き来する途中でケガをしたようなときも、労災として扱われる可能性があります。ただし、行き帰りの途中で、仕事とは関係のない私的な用事に立ち寄った場合など、扱いが変わることもあります。行き帰りのどこまでが対象になるかは、慎重な判断を要する場面です。

たとえば、帰り道に、通常の道すじを外れて私的な用事を済ませ、その途中でケガをしたような場合、行き帰りの途中とはいえない、と判断されることがあります。一方で、日常の買い物のためにわずかに立ち寄った、といった場合には、扱いが異なることもあります。どこまでが仕事のための行き帰りといえるかは、こうした細かな事情によって左右されるのです。

ここで注意したいのは、労災にあたるかどうかの判断は、必ずしも簡単ではない、という点です。とりわけ、仕事が原因で病気になった場合や、行き帰りの途中の出来事については、その傷病が本当に仕事と関わりがあるといえるのか、判断が難しいことがあります。労災かどうかの判断に迷うときは、自己判断で決めてしまう前に、専門家に相談することをおすすめします。誤った判断は、後々のトラブルにつながりかねません。

とりわけ判断が難しいのは、仕事が原因で病気になった場合です。ケガであれば、いつ、どこで負ったかがはっきりしていることが多いものです。しかし、病気は、じわじわと進むこともあり、仕事との関わりが一見して分かりにくいことがあります。それでも、仕事の負担が積み重なって生じた病気であれば、労災として扱われることもあります。見た目の分かりやすさだけで判断せず、慎重に見きわめることが求められます。

労災が起きたとき会社がすべきこと

実際に従業員が仕事でケガや病気をしたとき、会社は何をすべきなのでしょうか。慌てず、適切に対応するために、すべきことの大まかな流れを知っておくことが大切です。会社が取るべき対応を見ていきましょう。段取りを整えておくことが、円滑な対応につながります。

まず何よりも優先すべきは、ケガや病気をした従業員の、身の安全と手当てです。従業員が仕事でケガをしたら、まずは、その従業員が速やかに治療を受けられるようにする。命や健康に関わる場面では、何をおいても、これが最優先です。ほかのことは、まず従業員の安全を確保してから考える。この順序を、決して忘れてはなりません。

労災が起きたときに会社がすべきことを、大まかに整理すると、次のようになります。いずれも、従業員を守り、務めを果たすうえで欠かせない対応です。

  • まず、ケガや病気をした従業員が、速やかに治療を受けられるようにする。
  • いつ、どこで、どのように傷病が生じたのかという事実を、正確に記録する。
  • 労災にあたる場合は、従業員が補償を受けられるよう、手続きに協力する。
  • なぜ起きたのかを振り返り、再発を防ぐための手立てを講じる。

これらを、順を追って、もれなく進めていくことが大切です。とりわけ、従業員の安全の確保が最優先であることは、いつも心にとめておきたいところです。

事務的な手続きや、事実の記録も大切ですが、それらは、従業員の安全が確保されたうえでのことです。目の前で従業員が苦しんでいるのに、まず書類を、というのでは、本末転倒です。何よりもまず、人の命と健康を守る。その当たり前の優先順位を、いざというときにも見失わないことが、何より大切なのです。

次に、何が起きたのかという事実を、正確に把握し、記録しておくことです。いつ、どこで、どのような状況で、どんなケガや病気が生じたのか。こうした事実を、できるだけ正確に確かめ、記録に残しておきます。この記録は、後で労災の申請を進めるうえでも、重要な土台になります。事実があいまいなままだと、その後の対応にも支障が出かねません。

そして、その傷病が労災にあたる場合には、従業員が補償を受けられるよう、必要な手続きを進めます。労災の補償を受けるには、しかるべき手続きが必要です。会社は、従業員がこうした補償を受けられるよう、手続きに協力し、必要な対応をとることが求められます。従業員が、傷病を負ったうえに、受けられるはずの補償まで受けられない、という事態は避けなければなりません。

傷病を負った従業員にとって、補償を受けられるかどうかは、その後の生活を大きく左右します。治療に専念し、また職場に戻ってくるためにも、必要な補償が確実に受けられることが大切です。会社が手続きに協力せず、そのために従業員が補償を受けられなければ、従業員は二重に苦しむことになります。そうした事態を招かぬよう、会社の誠実な対応が求められるのです。

また、こうした一連の対応と並行して、なぜそのような事態が起きたのかを振り返り、再発を防ぐための手立てを考えることも大切です。同じような労災が繰り返されては、従業員の安全が守られません。起きてしまったことへの対応だけでなく、二度と起こさないための備えまで、あわせて考えることが求められます。事後の対応と、今後への備えは、車の両輪なのです。

労災が起きると、その対応に追われて、原因の振り返りが後回しになりがちです。しかし、なぜ起きたのかを突き止め、手を打たなければ、同じことが繰り返されかねません。一度の労災を、職場の安全を見直す機会ととらえ、再発防止につなげる。その姿勢が、従業員をこの先も守り続けることにつながります。起きたことへの対応と、次への備えは、切り離せないものなのです。

労災の申請はどう進めるのか

従業員が労災にあたる傷病を負ったとき、その補償を受けるためには、申請の手続きが必要になります。この手続きは、どう進めていけばよいのでしょうか。申請の流れの基本を見ていきましょう。あらかじめ流れをつかんでおくことが、いざというときの支えになります。

労災の補償を受けるための手続きは、大まかにいえば、必要な書類を整えて、しかるべき窓口に申請する、という流れで進みます。傷病を負った従業員が補償を受けられるよう、決められた様式の書類を用意し、所定の手続きを行っていくことになります。申請にあたっては、傷病の状況や、それが仕事と関わって生じたことなどを、明らかにしていく必要があります。

この申請にあたって、会社には、手続きへの協力が求められます。労災の申請では、その傷病が仕事に関連して生じたことなどについて、会社が事実を確かめ、必要な事項を証明する場面があります。従業員が円滑に補償を受けられるよう、会社が誠実に協力することが大切です。会社の協力が得られなければ、従業員は、申請そのものに難儀することになりかねません。

ここで大切なのは、会社が、労災の申請に非協力的な態度をとらないことです。労災が起きたことを知られたくない、という思いから、申請に消極的になったり、事実を正確に伝えなかったりするのは、あってはならないことです。従業員が受けられるはずの補償を受けられるよう、会社は誠実に協力する。それが、従業員を雇う会社としての、当然の務めなのです。

労災の申請は、本来、傷病を負った従業員のためのものです。その従業員が補償を受けるのを、雇い主である会社が妨げるようなことは、あってはなりません。むしろ会社は、従業員が円滑に補償を受けられるよう、進んで手を差し伸べるべき立場にあります。従業員が困っているときに支えるのが、雇う者の務めであることを、忘れずにいたいところです。

もっとも、労災の申請の手続きは、慣れていないと、戸惑うことも少なくありません。どんな書類が必要で、どう手続きを進めればよいのか。判断に迷う場面も出てくるでしょう。そうしたときは、専門家の力を借りるのが確実です。手続きを正しく進めることで、従業員が滞りなく補償を受けられ、会社としても、務めをきちんと果たせます。分からないことは、専門家に確かめながら進めるとよいでしょう。

申請の手続きでつまずくと、その分、従業員が補償を受けるのも遅れてしまいます。傷病を負い、不安を抱える従業員にとって、補償が滞りなく受けられるかどうかは、切実な問題です。手続きに不慣れで迷うのであれば、早めに専門家の力を借りることで、従業員を待たせずにすみます。従業員のためにも、手続きは確実に、滞りなく進めたいところです。

労災をめぐって会社が気をつけたいこと

労災をめぐっては、会社が対応を誤ると、思わぬ問題に発展することがあります。どんな点に気をつければよいのかを知っておくことは、適切な対応につながります。会社が気をつけたい点を見ていきましょう。備えを知っておくことが、トラブルを防ぎます。

まず気をつけたいのは、労災を隠したり、なかったことにしようとしたりしないことです。労災が起きたことが表に出るのを避けたい、という思いから、事実を隠そうとするのは、絶対にあってはなりません。こうした対応は、それ自体が重大な問題となるだけでなく、従業員が受けられるはずの補償を奪うことにもなります。労災は、誠実に、正面から対応すべきものなのです。

注意
労災が起きたことを隠そうとしたり、申請に非協力的な態度をとったりすることは、決してあってはなりません。従業員が受けられるはずの補償を妨げるだけでなく、会社自身が重大な責任を問われる事態を招きかねません。労災には、事実から目をそらさず、誠実に正面から対応することが、何よりも大切です。

次に気をつけたいのは、労災が起きた背景に、会社の側の問題がなかったかを、真摯に振り返ることです。従業員が安全に働ける環境を整えるのは、会社の責任です。もし、労災が起きた背景に、安全への配慮が足りなかったといった事情があれば、会社は、その責任を問われることもあります。従業員の安全にどこまで配慮していたかは、労災をめぐって重要な意味を持つのです。

会社には、従業員が安全に働けるよう配慮する責任があります。この責任を十分に果たしていなかったために労災が起きた、と見られる場合には、会社は、補償の仕組みとは別に、責任を問われることもあります。だからこそ、日ごろから安全への配慮を尽くしておくことが、従業員を守るだけでなく、会社自身を守ることにもつながるのです。安全への配慮は、会社の責任の根幹をなすものだといえます。

また、労災をめぐる従業員とのやりとりは、誠実に行うことが大切です。傷病を負った従業員は、体の痛みだけでなく、この先どうなるのかという不安も抱えています。そうした従業員に対して、会社が冷たい対応をとれば、信頼は大きく損なわれます。従業員の状況に寄り添い、誠実に対応する。その姿勢が、いざというときの信頼を守ります。困難な場面でこそ、会社の姿勢が問われるのです。

従業員は、順調なときの会社の言葉よりも、困難に直面したときの会社の行いを、よく覚えているものです。仕事でケガや病気をした従業員に、会社が親身に寄り添えば、その従業員は深い信頼を寄せるでしょう。反対に、冷たく突き放すような対応をとれば、その失望は、長く尾を引きます。労災という試練の場面での対応こそが、会社への信頼を決定づけるのです。

労災を防ぐための備え

労災は、起きてから対応するだけでなく、そもそも起こさないよう備えることが、何より大切です。日ごろの備えが、従業員を守り、会社を守ります。労災を防ぐための備えについて、見ていきましょう。事前の取り組みが、いざというときの安心につながります。

まず大切なのは、従業員が安全に働ける環境を整えることです。危険な作業には、しかるべき安全の対策を講じる。設備の不具合が事故につながらないよう、点検を怠らない。こうした、安全のための地道な取り組みが、労災を防ぐ土台になります。従業員の安全は、日々の積み重ねによって守られるものなのです。手間を惜しまず、備えを重ねることが肝心です。

安全のための取り組みは、目に見える成果がすぐに表れるものではありません。何事もなければ、その効果は実感しにくいでしょう。しかし、その地道な備えがあるからこそ、事故が防がれているのです。備えを怠ったとたんに、事故は起こりえます。何も起きないことのありがたさを忘れず、安全への取り組みを、たゆまず続けていくことが大切です。

ワンポイントアドバイス
労災を防ぐ最も確かな方法は、日ごろから、従業員が安全に働ける環境を整えておくことです。危険な作業への対策、設備の点検、そして従業員への安全の意識づけ。こうした地道な取り組みの積み重ねが、労災を未然に防ぎます。事故が起きてからでは遅いからこそ、平時の備えを大切にしたいところです。

次に、従業員一人ひとりに、安全への意識を持ってもらうことも欠かせません。どれだけ会社が環境を整えても、実際に働く従業員が、危険を意識せずに作業をしていては、事故は防げません。日ごろから、安全に働くことの大切さを伝え、危険に対する意識を高めてもらう。会社と従業員が、ともに安全を守る意識を持つことが大切です。安全は、みんなでつくり上げるものなのです。

会社が用意した安全の仕組みも、現場でそれが守られなければ、意味をなしません。逆に、従業員一人ひとりが安全を意識していても、会社の備えが不十分では、事故を防ぎきれません。安全は、会社と従業員の、どちらか一方の努力で守れるものではないのです。双方が、それぞれの立場で安全に気を配り、力を合わせてはじめて、確かなものになります。

また、万一労災が起きたときに、慌てず対応できるよう、あらかじめ備えておくことも大切です。労災が起きたら、まず何をすべきか、どう手続きを進めるのかを、あらかじめ整理しておく。そうしておけば、いざというときにも、落ち着いて動けます。備えは、労災を防ぐためだけでなく、起きてしまったときに適切に対応するためにも、役立つのです。平時の準備が、有事の対応を支えます。

備えというものは、それが役立つ場面が来るまで、価値が見えにくいものです。しかし、いざ労災が起きたとき、備えのある会社とない会社とでは、対応の落ち着きがまるで違います。何をすべきかを整理し、いざというときの流れを決めておく。そうした準備があれば、突然の事態にも、慌てず対応できます。有事に強い会社は、平時の備えを怠らない会社なのです。

会社が取り組むべきことと専門家の活用

ここまで、労災の基本と、会社がすべき対応、そして備えについて見てきました。最後に、会社としてどう取り組んでいけばよいか、そして専門家をどう活かせばよいかを整理しておきましょう。日ごろの取り組みと、いざというときの適切な対応が、会社を守ります。

まず心がけたいのは、労災に対して、誠実に向き合うことです。従業員が仕事でケガや病気をしたとき、その従業員が必要な補償を受けられるよう、会社が誠実に対応する。それは、従業員を雇う会社としての、基本的な務めです。事実から目をそらさず、正面から向き合う姿勢が、従業員の信頼を守り、ひいては会社を守ることにつながります。

次に、労災への対応は、専門的な判断を要することを踏まえ、無理に自社だけで抱え込まないことです。労災にあたるかどうかの判断や、申請の手続き、会社の責任をめぐる問題など、労災には、判断の難しい場面が少なくありません。あいまいなまま進めて、対応を誤れば、かえって大きな問題になりかねません。判断に迷う点は、専門家に確かめながら進めるのが確実です。

また、労災を防ぐための備えを、日ごろから怠らないことも大切です。従業員が安全に働ける環境を整え、安全への意識を高めていく。そうした地道な取り組みが、労災を未然に防ぎます。労災への最良の対応は、そもそも労災を起こさないことなのです。事後の対応に力を注ぐだけでなく、平時の備えにこそ、力を入れたいところです。

どれほど手厚く事後の対応を整えても、従業員が傷病を負ってしまった事実は変わりません。痛みや不安を、なかったことにはできないのです。だからこそ、何よりも大切なのは、そうした事態を未然に防ぐことです。安全な職場をつくり、事故を起こさない。それが、従業員にとっても会社にとっても、最も望ましい形なのだといえます。

労災への対応や、会社の責任をめぐる問題、労災を防ぐための備えに不安があるときは、企業の法務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。専門家の力を借りれば、労災かどうかの判断や、申請への対応を、誤りなく進められますし、会社の責任をめぐる問題にも、適切に備えられます。日ごろから相談できる関係を築いておくと、労災が起きたときにも、落ち着いて対応できます。

労災は、いつ起こるか分かりません。だからこそ、いざというときに一から相談先を探すのではなく、日ごろから会社の事情を分かってくれる専門家とつながっておくことに意味があります。ふだんから関係があれば、労災が起きた直後から、すぐに助言を得ながら対応を進められます。その備えが、いざというときの対応の質を、大きく左右するのです。

労災に関するよくある質問

どんな場合が労災にあたりますか

仕事そのものが原因でケガや病気が生じた場合と、仕事のための行き帰りの途中でケガをした場合が、労災として扱われる可能性があります。業務中の事故によるケガのほか、仕事が原因で病気になった場合も含まれることがあります。ただし、労災にあたるかどうかの判断は難しいこともあるため、迷うときは自己判断せず、専門家に相談することをおすすめします。

従業員が労災でケガをしたら、会社はまず何をすべきですか

何よりもまず優先すべきは、ケガや病気をした従業員が、速やかに治療を受けられるようにすることです。そのうえで、いつ、どこで、どのような状況で傷病が生じたのかという事実を正確に把握し、記録しておきます。この記録は、後の労災の申請でも重要な土台になります。そして、労災にあたる場合には、従業員が補償を受けられるよう、手続きに協力することが大切です。

労災の申請に、会社は協力しなければなりませんか

労災の申請では、傷病が仕事に関連して生じたことなどについて、会社が事実を確かめ、必要な事項を証明する場面があります。従業員がスムーズに補償を受けられるよう、会社が誠実に協力することが求められます。労災を知られたくないといった理由で申請に非協力的な態度をとることは、従業員の補償を妨げるだけでなく、会社自身の責任を問われる事態も招きかねません。

労災をめぐって不安があるときは、どこに相談すればよいですか

労災にあたるかどうかの判断や、申請の手続き、会社の責任をめぐる問題などで判断に迷うときは、企業の法務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。労災への対応を誤ると、従業員とのトラブルや、会社の責任を問われる事態を招きかねません。平時から相談できる体制を整えておけば、労災が起きたときにも、慌てず適切に対応を進めやすくなります。

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