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業績悪化を理由に給料を未払いにできる?

業績悪化を理由に給料を未払いにできる?

この記事で分かること

  • 給料はその全額をあらかじめ定められた期日に支払わなければならない
  • 会社の業績を理由に給料を一方的に減らしたり遅らせたりはできない
  • 業績の悪化は会社側の事情であり社員に未払いの形で負担させられない
  • 未払いの給料には支払いの遅れに対する負担が加わることもある
  • 給料の未払いは社員の信頼を失わせ優秀な人材の離職を招く
  • 資金繰りが苦しいときは未払いに手を出す前に早めに専門家へ相談する
  • 判断に迷えば企業の法務や労務にくわしい弁護士に相談する

給料は、その全額を、あらかじめ定められた期日に支払わなければならず、会社の業績を理由に一方的に減らしたり遅らせたりはできません。業績の悪化は会社側の事情であり、働いた社員に未払いという形で負担させることはできないのです。未払いは、遅れに対する負担が加わり、信頼を失って人材も去ります。苦しいときは、未払いに手を出す前に早めに相談を。迷うときは専門家に相談すると安心です。

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業績が悪いと給料を払わなくてよいのか

会社の業績が急に落ち込み、資金繰りが厳しくなってきた。このままでは、今月の給料の支払いも危うい。業績が悪いのだから、給料の支払いを少し待ってもらえないだろうか。あるいは、一部を減らして払うことはできないだろうか。そんな考えが頭をよぎった経営者の方に、まずはっきりとお伝えします。業績の悪化を理由に、給料を払わないことは認められません。

給料は、社員が働いたことに対して、会社が支払わなければならないものです。これは、会社の業績が良いか悪いかにかかわらず、変わりません。社員は、約束どおり働いたのですから、それに対する給料を受け取る権利があります。会社の都合で、その支払いを一方的に止めたり、減らしたりすることは、できないのです。ここは、まず押さえておくべき点です。

この点を、多くの経営者は、頭では分かっていても、いざ資金繰りが苦しくなると、つい見失いがちです。手元にお金がないのだから、払えないのは仕方がない。そう考えてしまうのです。しかし、払えないことと、払わなくてよいこととは、まったく別の話です。資金がないという会社の事情は、給料を支払う義務を免れる理由にはならないのです。

経営者としては、業績が悪いなかで給料を払い続けるのは大変だ、という思いもあるでしょう。その苦しさは、よく分かります。しかし、業績の悪化という会社の側の事情を、社員に給料という形で負担させることは、許されません。社員には、その会社を頼りに生活があります。給料が支払われなければ、社員の暮らしは、たちまち立ち行かなくなるのです。

想像してみてください。毎月の給料を頼りに、家賃を払い、食費をまかない、家族を養っている社員が、ある月、突然給料を受け取れなかったら、どうなるでしょうか。その日の暮らしにも、すぐに困ることになります。給料の未払いは、社員にとって、それほど切実な問題なのです。会社の都合で軽々しく手を出してよいものではありません。

ここを軽く見て、給料の未払いに手を出すと、会社は思わぬ事態に直面します。未払いは、社員の信頼を一気に失わせるだけでなく、会社にとって、重い負担を伴う問題に発展します。目先の資金繰りを楽にしようとした判断が、かえって会社をより深い窮地に追い込むことにもなりかねないのです。安易に考えてよいことではありません。

資金繰りに窮すると、視野は狭くなりがちです。目の前の支払いをどう乗り切るかで頭がいっぱいになり、その先のことまで考えが及びません。しかし、給料の未払いは、その場をしのぐどころか、より大きな問題の入り口になります。だからこそ、苦しいときほど、一度立ち止まって、正しい対応を考えることが大切なのです。

この記事では、給料の支払いについて法律がどのような原則を定めているのか、業績の悪化を理由とした未払いがなぜ認められないのか、未払いをすると会社はどうなるのか、そして資金繰りが苦しいときにどうすべきかまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。苦しい状況にある経営者の方に、判断の土台をお伝えします。

読者の方のなかには、まさに今、給料の支払いに窮している方もいるでしょう。あるいは、先行きが不安で、あらかじめ備えておきたい、という方もいるかもしれません。どちらの場合でも、まずは給料の支払いをめぐる原則を、正しく理解することが出発点になります。順を追って見ていきましょう。

なお、この記事でお伝えするのは、給料の支払いをめぐる基本の考え方です。実際の対応は、会社の資金の状況や、社員との関係によって変わってきます。ここで得た知識を土台にしながら、迷う場面では専門家の助言も得て進めていただければと思います。基本を知っておくことが、苦しいときに誤った判断をしない支えになります。

給料の支払いをめぐる法律の原則

まず押さえておきたいのが、給料の支払いについて、法律がどのような原則を定めているのかという点です。ここがあいまいなままだと、悪気なく違法な行為に踏み込んでしまいます。給料の支払いには、社員を守るための、いくつかの大切な原則が定められています。順に見ていきましょう。

まず、給料は、その全額を支払わなければならないという原則があります。会社の判断で、給料の一部を勝手に差し引いたり、支払いを一部にとどめたりすることは、原則として認められません。法律で定められた場合など、限られた例外を除いて、給料は、その全額を社員に支払う必要があります。業績が悪いから一部を減らす、ということはできないのです。

ここでいう全額とは、働いた分の給料の、まるごと全部を指します。半分だけ、あるいは八割だけ、といった一部の支払いは、原則として認められないのです。会社としては、少しでも払えば誠意を示したことになる、と考えるかもしれませんが、そうではありません。約束した給料は、その全額を支払うのが原則だという点を、押さえておく必要があります。

次に、給料は、あらかじめ定められた期日に、きちんと支払わなければならないという原則があります。毎月決まった日に給料を支払うと定めているのであれば、その日に支払う必要があります。業績が悪いから支払いを来月に回す、といった一方的な先延ばしは、この原則に反します。期日どおりに支払うことは、会社の基本的な務めなのです。

支払いの遅れは、たとえわずかな日数であっても、社員の生活に影響します。決まった日に給料が入ることを前提に、社員は支払いの予定を組んでいます。その入金が遅れれば、社員自身の支払いも滞りかねません。数日くらい待ってもらっても、という感覚は、社員の側の事情を見ていないものだといえます。期日を守ることの重みを、意識する必要があります。

ここで押さえておきたいのは、給料はその全額を、あらかじめ定められた期日に支払わなければならず、会社の業績を理由に一方的に減らしたり遅らせたりすることはできないという発想です。全額を、期日に。この二つの原則が、社員の生活を守るための、基本の柱になっています。会社は、この原則の重みを、正しく理解しておく必要があります。

全額を、期日に。言葉にすれば単純ですが、この二つを守ることが、社員の生活の土台を支えています。どちらか一方でも崩れれば、社員は不安のなかに置かれます。会社が果たすべき務めのなかでも、給料をきちんと支払うことは、最も基本的なものの一つです。この原則を軽んじる会社は、社員からの信頼を、根本から失うことになります。

これらの原則が定められているのは、給料が、社員の生活を支える、いわば命綱だからです。給料が、会社の都合で減らされたり、遅れたりするようでは、社員は安心して暮らせません。働いた分の給料が、決まった額、決まった日に、確実に支払われる。その安心があってこそ、社員は落ち着いて働けるのです。だからこそ、法律は、給料を手厚く守っています。

もっとも、給料の額そのものを、将来に向けて見直すことが、およそ許されないわけではありません。ただし、それは、社員の同意を得るなど、きちんとした手順を踏んで行うべきものであって、業績が悪いからと会社が一方的に減らせるものではありません。すでに働いた分の給料を支払わないことと、将来の給料を適正な手順で見直すことは、まったく別の話なのです。

この二つを混同すると、会社は誤った対応に陥ります。業績が厳しいから、と、すでに働いた分の給料を減らすことはできません。一方で、今後の給料の水準を見直す必要があるのなら、社員とよく話し合い、その理解を得たうえで進める道はあります。過去の分は守り、将来については正しい手順を踏む。この区別を、はっきりと持っておくことが大切です。

業績悪化を理由とした未払いが認められない理由

それにしても、なぜ業績の悪化を理由とした給料の未払いは、認められないのでしょうか。その理由を理解しておくことは、法律の原則を、納得して受けとめるうえで大切です。会社が苦しいのなら、少しくらい待ってもらってもよいのではないか。そう感じる方もいるかもしれません。しかし、そこには、明確な理由があるのです。

まず根本にあるのが、業績の悪化は、会社の側の事情だという点です。事業がうまくいくかどうかは、会社の経営に属する問題です。その結果としての業績の悪化を、働いた社員に、給料という形で負担させるのは、筋が通りません。社員は、約束どおり働いたのですから、業績がどうであれ、その対価を受け取る権利があるのです。

考えてみれば、これは当然のことです。社員は、会社の業績が良いときも悪いときも、変わらず働いています。業績が良いからといって、約束以上の給料を当然に受け取れるわけではないのと同じように、業績が悪いからといって、約束した給料を減らされるいわれもありません。働いた分の対価は、業績とは切り離して支払われるべきものなのです。

次に、給料が支払われないことによる社員への打撃が、あまりに大きいという点があります。社員の多くは、給料を頼りに生活しています。給料が支払われなければ、その日の暮らしにも、住まいにも、家族の生活にも、直ちに影響が及びます。会社の資金繰りの苦しさと、社員の生活の危機とを、天秤にかけることはできないのです。

会社が苦しいのは事実でしょう。しかし、その苦しさを社員に転嫁すれば、社員もまた、生活の危機に直面します。会社の危機を、社員の危機にすり替えているにすぎないのです。会社の資金繰りの問題は、あくまで会社が解決すべきものであって、給料を止めることで社員に肩代わりさせるべきものではありません。この筋を、通す必要があります。

厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、これは、会社を守るための考え方でもあります。給料の支払いという一線を守り抜く会社は、社員からの信頼を保ち、苦境からの立て直しにも、社員の力を借りられます。その一線を安易に越える会社は、信頼も人材も失い、立て直しはいっそう困難になります。筋を通すことが、結局は会社自身のためになるのです。

さらに、給料の支払いを会社の都合で止められるとすれば、給料を守る原則そのものが、意味を失うという点もあります。業績が悪ければ払わなくてよい、ということになれば、社員は、いつ給料が止まるか分からない不安のなかで働くことになります。それでは、給料を手厚く守った意味がありません。だからこそ、業績を理由とした未払いは、許されないのです。

もし業績を理由に給料を止めることが許されれば、給料という制度そのものが、当てにならないものになってしまいます。会社の業績次第で給料が変わるなら、社員は、安定した生活を築けません。働いた分は必ず支払われる、という信頼があってこそ、人は安心して働けます。その信頼を守るために、業績を理由とした未払いは、固く禁じられているのです。

こうした理由を踏まえれば、業績の悪化を理由とした給料の未払いが、いかに重い問題かが分かります。それは、単に支払いが遅れるという話ではなく、社員の生活を脅かし、給料を守る原則を掘り崩す行為なのです。会社としては、どれほど苦しくても、給料の支払いだけは、優先して守るべきものだと心得ておく必要があります。

給料の未払いをすると会社はどうなるか

では、実際に給料の未払いに手を出したら、会社にはどのような事態が待っているのでしょうか。ここを知っておくことは、安易な未払いを思いとどまるうえで、とても大切です。少し待ってもらうだけだから、と軽く考えていると、思わぬ重い負担を負うことになります。

まず、支払われるべき給料は、支払いが遅れたからといって、なくなるわけではありません。当然ながら、会社は、その未払いの給料を、社員に支払わなければなりません。それだけでなく、支払いが遅れたことに対して、本来の給料に加えた負担を求められることもあります。未払いは、後で本来の額を払えば済む話ではないのです。

この点は、経営者が見落としがちなところです。今は苦しいが、業績が戻ったら、まとめて払えばよい。そう考えて未払いに手を出すと、後で本来の給料に加えた負担まで求められ、かえって支払う額が増えることになりかねません。支払いを先送りにすることは、負担を軽くするどころか、重くする結果を招くことがあるのです。

さらに、給料の未払いは、社員との信頼を根本から損ないます。給料が支払われなければ、社員は、この会社では生活できないと考え、会社を離れていきます。とりわけ、会社を支えてきた優秀な社員ほど、早く見切りをつけます。苦しいときにこそ支えてほしい人材を、給料の未払いによって失うことになるのです。

会社が苦境にあるときこそ、社員の力が必要です。ところが、給料の未払いは、まさにそのときに、社員の心を会社から離れさせます。しかも、去っていくのは、他社でも通用する優秀な人ほど早い。残ってほしい人材から順に失っていくことは、会社の立て直しにとって、大きな痛手になります。未払いは、会社の再起の芽さえ、摘んでしまうのです。

注意
少し待ってもらうだけ、一部を減らすだけ、という軽い気持ちの未払いが、会社を深刻な事態に追い込みます。未払いの給料の支払いに加えた負担を求められ、社員の信頼を失い、優秀な人材が去っていきます。資金繰りが苦しいときこそ、給料の支払いを優先して守る姿勢が求められます。

加えて、給料の未払いをめぐって、社員との間で争いに発展することもあります。社員が、未払いの給料を求めて、法的な手段に訴える。そうなれば、会社は、その対応に時間と労力を割かれることになります。ただでさえ資金繰りに苦しんでいるなかで、こうした争いへの対応まで背負うのは、大きな負担です。

争いになれば、その解決には、時間も労力もかかります。本来であれば、事業の立て直しに注ぐべき力を、社員との争いに割かれることになります。苦しい状況にある会社にとって、これは二重の負担です。給料をきちんと支払っていれば生じなかった争いに、貴重な力をとられる。未払いは、こうした無用な負担まで、招き寄せるのです。

そして、給料の未払いという事実が外に知られれば、会社の評判は大きく損なわれます。給料を払えない会社、払わない会社。そうした評価が広まれば、新たに人を採ることも難しくなり、取引先の見方にも影響します。目先の資金繰りのために、会社の信用そのものを損なうことになりかねないのです。未払いの代償は、決して小さくありません。

目先の資金繰りを楽にしたいという思いから未払いに手を出すと、失うものは、その場でしのいだ資金をはるかに上回ります。加えた負担、失われた人材、生じた争い、傷ついた信用。これらを合わせれば、未払いによって得たはずの一時のしのぎは、まったく割に合わないものになります。未払いは、損得の面から見ても、賢明な選択ではないのです。

資金繰りが苦しいときにどうすべきか

給料の未払いが許されないことは分かった。では、実際に給料を支払う資金が足りなくなりそうなとき、会社はどうすればよいのでしょうか。ここでは、そうした状況で取るべき対応を考えていきましょう。苦しい状況であっても、未払いに手を出す前に、できることがあります。

  1. まず、会社の資金の状況と、この先の見通しを、正確に把握する。
  2. 給料の支払いを最優先に位置づけ、そのための資金を確保する方策を考える。
  3. 資金を補う手立てがないか、あらゆる可能性を検討する。
  4. それでも立ち行かない場合には、早い段階で専門家に相談する。
  5. 会社の立て直しや、今後の道筋について、専門家とともに考える。

この流れのなかで、まず大切なのが、会社の資金の状況を、正確につかむことです。いつ、いくらの支払いがあり、手元の資金でどこまで対応できるのか。これが見えていなければ、適切な手立ても打てません。どんぶり勘定のまま、なんとかなるだろうと構えていると、気づいたときには給料の支払いにも窮する、という事態を招きます。

資金の状況を把握することは、特別に難しいことではありません。いつ、いくらの入金があり、いつ、いくらの支払いがあるのか。それを一覧できるようにしておくだけでも、資金の流れは見えてきます。この基本ができていれば、給料の支払いが危うくなる前に、その兆しに気づけます。まずは、自社の資金の流れを、正確につかむことから始めていただきたいのです。

次に大切なのが、給料の支払いを、支払いのなかで最優先に位置づけることです。給料は、社員の生活を支える命綱であり、その未払いは、会社に重い責任を招きます。ほかの支払いとの優先順位を考えるなかで、給料の支払いを確保することを、まず第一に考える。この意識を持つことが、大切です。

そして、それでも給料を支払う資金の確保が難しい場合には、一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することです。資金を補う手立てはないか、事業を立て直す道はないか。専門家とともに考えることで、思わぬ道が見えてくることもあります。未払いに手を出す前に、まず相談する。それが、会社にとっても、社員にとっても、望ましい道なのです。

専門家に相談することは、決して後ろ向きなことではありません。むしろ、苦しい状況を打開するための、前向きな一歩です。一人で抱え込んで未払いに追い込まれるより、早く相談し、打てる手を打つ。そのほうが、会社を守り、社員を守る道につながります。相談をためらわない姿勢が、いざというときに、会社を救うのです。

資金繰りの危機に備えて整えておきたいこと

給料の未払いという事態を避けるためには、資金繰りが行き詰まってから慌てるのではなく、日ごろから備えておくことが有効です。会社として整えておくべきことがいくつかあります。ここでは、その要点を見ていきましょう。地道な備えが、いざというときに会社と社員を守ります。

まず取り組みたいのが、会社の資金の流れを、日ごろから把握しておくことです。どのような収入があり、どのような支出があるのか。この先、資金がどう動いていくのか。これを把握できていれば、資金繰りが厳しくなる兆しを、早い段階で捉えられます。兆しに早く気づければ、給料の支払いに窮する前に、手を打つことができます。

資金の流れを把握するというのは、過去の実績を眺めることだけではありません。この先、いつ、どれだけの資金が必要になるのかを、見通しておくことが肝心です。先を見越していれば、資金が足りなくなりそうな時期を、あらかじめ知ることができます。その備えがあれば、給料の支払いに向けて、早めに手を打てるのです。

次に、給料の支払いに充てる資金を、できる限り確保しておくことも大切です。事業が順調なときにこそ、いざというときの備えを蓄えておく。目先の利益をすべて使い切るのではなく、社員の給料を守るための余力を残しておく。そうした備えがあれば、一時的に業績が落ち込んでも、給料の支払いを守り抜くことができます。

もちろん、余力を蓄えるのは、簡単なことではありません。とりわけ小さな会社では、日々の資金繰りに追われ、蓄えにまで手が回らないこともあるでしょう。それでも、わずかでも備えを意識しておくことには、意味があります。まったく余力がない状態と、多少なりとも蓄えがある状態とでは、いざというときの粘りが、まるで違ってくるのです。

さらに、資金繰りに不安を感じたら、手遅れになる前に動く、という心構えを持っておくことも重要です。給料の支払いが危ういと感じてから慌てるのではなく、その手前で、専門家に相談する。この一歩の早さが、未払いという事態を避け、会社を立て直す道を残すことにつながります。早い判断が、選べる道を広げるのです。

資金繰りの問題は、時間がたつほど、選べる手立てが減っていきます。早い段階であれば、資金を補う方法も、事業を立て直す道も、いくつか残されています。しかし、追い詰められてからでは、その多くが手遅れになります。まだ余裕があると感じるうちに動くことが、より多くの選択肢を手元に残しておくことにつながるのです。

そして、平時から相談できる専門家とつながっておくことも、有効な備えになります。日ごろから会社の状況を知る専門家がいれば、資金繰りの危機の兆しを早く捉え、適切な助言を得られます。危機に陥ってから慌てて相談先を探すのではなく、あらかじめ関係を築いておくこと。それ自体が、会社を守る備えになるのです。

会社が取り組むべきことと専門家の活用

ここまで、給料の支払いをめぐる法律の原則から、業績悪化を理由とした未払いが認められない理由、未払いをした場合の帰結、資金繰りが苦しいときの対応、そして日ごろの備えまでを見てきました。あらためて整理すると、会社が心がけるべきことは、いくつかの柱にまとめられます。給料は全額を期日に支払うこと。業績を理由に未払いをしないこと。給料の支払いを最優先に位置づけること。そして、苦しいときは早めに相談すること。これらが基本の姿勢になります。

会社としては、業績が苦しいなかで給料を払い続けることの大変さも、よく分かります。しかし、その苦しさを、社員に給料の未払いという形で背負わせてはなりません。困っているのは会社の側の事情であって、社員が責めを負うべきことではないからです。この線引きを見失うと、目先の判断が、会社をより深い窮地に追い込むことになります。

とはいえ、実際の場面では、判断に迷うことも多いでしょう。この支払いをどう工面すればよいか、社員の給料をどう守ればよいか、立て直しの道はあるのか。とりわけ、資金繰りが行き詰まりつつある場面では、判断を誤れば、取り返しのつかない事態を招きます。少しでも不安があれば、自己流で進めず、専門家の助けを借りることをおすすめします。

とりわけ、給料の支払いに窮している場面や、資金繰りが厳しくなっている場面では、企業の法務や労務にくわしい弁護士に相談することが有効です。弁護士は、給料の支払いをどう守るか、会社の立て直しにどのような道があるかを、状況に照らして具体的に助言してくれます。未払いに手を出す前に専門家に相談することが、会社と社員を守ることにつながります。

また、問題が起きてからだけでなく、平時から相談できる体制を整えておくことにも意味があります。資金繰りの管理や、給料の支払いを守る仕組みについて、日ごろから助言を得られる関係を築いておけば、業績が揺らいだときにも、慌てずに済みます。社員が安心して働ける職場を守る。そのために、信頼できる専門家とつながっておくことが、大きな支えになるのです。

給料をきちんと支払い続けることは、平時には当たり前のことのように見えて、いざ業績が揺らぐと、その重みが分かります。苦しいときにこそ、給料の支払いを守り抜けるかどうかが、会社の真価を問われる場面です。この記事が、給料の支払いをめぐる正しい理解と、いざというときの備えを考える一助となれば幸いです。

業績悪化と給料の未払いに関するよくある質問

業績が悪いとき、給料の支払いを待ってもらえますか

できません。給料は、あらかじめ定められた期日に、その全額を支払わなければならず、会社の業績を理由に一方的に遅らせることは認められません。業績の悪化は会社の側の事情であり、それを、約束どおり働いた社員に給料の未払いという形で負担させることはできないのです。給料は社員の生活を支える命綱であり、どれほど苦しくても、その支払いは優先して守る必要があります。

給料の一部だけを減らして支払うことはできますか

できません。給料からその一部を会社の判断で勝手に差し引くことも、支払いを一部にとどめることも、法律で定められた場合など限られた例外を除いては認められません。全額を支払うのが原則であり、業績を口実に減額することは許されないのです。なお、将来に向けて給料の額を見直すことは、社員の同意を得るなど、きちんとした手順を踏めば別途考えられますが、一方的に減らすことはできません。

給料を未払いにすると、会社はどうなりますか

未払いの給料は当然に支払わなければならず、支払いが遅れたことに対して本来の給料に加えた負担を求められることもあります。さらに、社員の信頼を失って優秀な人材が去り、未払いをめぐって争いに発展することもあります。給料を払えない、払わない会社という評判が広まれば、採用や取引にも影響します。少し待ってもらうだけ、という軽い気持ちの未払いが、会社を深刻な事態に追い込むのです。

資金繰りが苦しいとき、誰に相談すればよいですか

給料の支払いをどう工面するか、会社を立て直す道はあるかといった判断は難しいため、給料の支払いに窮する前に、企業の法務や労務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、給料の支払いをどう守るか、立て直しにどのような道があるかを状況に照らして助言してくれます。未払いに手を出す前に、早い段階で専門家に相談することが、会社と社員を守ることにつながります。

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