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知財を経営の視点から考える
自社の技術や名前を、権利として守っておいたほうがよいらしい。そうは思うものの、何から手をつければよいのか分からない。あるいは、必要になるたびに個別に対応してきたが、それでよいのか不安がある。そうした経営者の方に、お伝えしたいことがあります。知財は、個別の手続きの問題である前に、経営の問題だということです。
この順序が逆になると、取り組みは迷走します。手続きの話から入ると、何のためにそれをするのかが見えないまま、作業だけが積み上がります。まずは、自社の事業にとって何が大切なのかを定め、そのうえで手段を選ぶ。この順序を守ることが、無駄のない取り組みにつながるのです。
知財戦略とは、自社が持つ、あるいはこれから生み出す知的な財産を、事業の方針に沿って、どう守り、どう活かしていくかを考え、方針として定めることをいいます。個々の出願や、個々の対応を、その場ごとに判断するのではなく、経営の方針として一貫した考え方を持つ。それが、知財戦略という発想です。
一貫した考え方があれば、現場での判断も速くなります。この技術は守るべきか、この情報は外に出してよいか。そうした日々の判断に、迷わず答えを出せるようになるからです。方針とは、いちいち経営者が判断しなくても、組織として正しく動けるようにするための仕組みでもあるのです。
なぜ、戦略として考える必要があるのでしょうか。それは、知財を個別に扱っていると、全体として見たときに、守るべきものが守れていなかったり、必要のないものに労力を割いていたりすることが起きるからです。限られた資源のなかで、何に力を注ぐかを決めること。それが、戦略の役割になります。
どの会社にとっても、使える時間も費用も限られています。だからこそ、優先順位をつける必要があるのです。すべてを守ろうとすれば、結局はどれも中途半端になります。何を守り、何は守らないと決めること。この割り切りができるかどうかが、実効性のある取り組みの分かれ目になります。
守らないと決めることにも、勇気が要ります。もしそれをまねされたら、と考えると、何もかも守りたくなるのが人情です。しかし、資源は有限です。優先度の低いものにまで手を広げれば、肝心なものへの手当てが薄くなります。捨てる判断こそ、戦略の本質だといえます。
ここで押さえておきたいのは、知財は個別の手続きの問題である前に事業の方針に沿って何を守り何を活かすかを決める経営の問題だという発想です。手続きの巧拙より、そもそも何のために守るのかという目的が、はるかに重要なのです。ここを外せば、労力は空回りします。
目的があいまいなまま権利を取り集めても、事業に活かせなければ意味がありません。逆に、事業にとって本当に重要な一つを、しっかり守れていれば、それだけで大きな価値になります。数ではなく、狙いの的確さ。それが、知財への取り組みの成果を決めるのです。
この記事では、知財戦略がなぜ経営に必要なのか、それをどう組み立てればよいのか、進めるにあたって何に気をつけるべきか、そして専門家をどう活かすかまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。知財への取り組みを、経営として整理したい方に、その土台となる考え方をお伝えします。
読者の方のなかには、まさに今、知財への取り組みを見直そうとしている方もいるでしょう。あるいは、事業が広がるにつれて、その必要を感じ始めた、という方もいるかもしれません。どちらの場合でも、まずは戦略として考える意味を理解することが出発点になります。順を追って見ていきましょう。
なお、この記事でお伝えするのは、知財を経営として捉えるための基本の考え方です。実際にどのような方針が自社に適しているかは、事業の中身や、持っている強みによって変わってきます。ここで得た視点を土台にしながら、具体的な方針づくりは、専門家とともに進めていただければと思います。
なぜ戦略として考える必要があるのか
知財を、戦略として考えることには、どのような意味があるのでしょうか。ここを理解しておくことが、取り組みの出発点になります。順に見ていきましょう。
まず、限られた資源を、有効に配分できるようになります。知財を守るには、手間も費用もかかります。すべてを同じように守ろうとすれば、資源はたちまち足りなくなります。事業にとって本当に重要なものは何かを見きわめ、そこに力を集中する。この配分の判断こそ、戦略の中核です。
配分を考えるうえでは、その知財が、事業の収益にどう結びついているかを見るとよいでしょう。それがなければ事業が成り立たないものは、最優先で守るべきです。一方、あれば良い程度のものは、後回しでも構いません。事業とのつながりの強さが、優先順位の物差しになります。
次に、守り忘れを防げるようになります。個別に対応していると、目の前の案件には対処できても、全体として何が守られていないかが見えません。方針として整理しておけば、抜けに気づきやすくなります。守るべきものを一覧できる状態にしておくこと自体に、価値があるのです。
洗い出してみると、自社が思っていた以上に多くの財産を持っていると気づくこともあります。逆に、強みだと思っていたものが、実は何も守られていなかったと分かることもあります。この気づきこそが、取り組みの出発点になります。まずは、現状を可視化することから始めましょう。
可視化といっても、立派な資料をつくる必要はありません。一枚の紙に、自社が持つ強みと、それを支えるものを書き出してみる。それだけでも、これまで漠然としていた全体像が、輪郭を持って見えてきます。まずは書き出してみることを、おすすめしたいところです。
さらに、事業の展開と、知財の取り組みを、かみ合わせられるようになります。新しい事業を始める、新たな市場に出る、他社と組む。そうした場面では、必ず知財が関わってきます。事業の計画と連動して知財を考えておけば、必要なときに必要な備えが整っている状態をつくれます。
逆に、事業が動き出してから慌てて知財を考えると、間に合わないことがあります。すでに公にしてしまった、すでに他社が権利を取っていた。そうした事態は、事前の連動がなかったことから生じます。事業の計画を立てる段階で、知財の視点も入れておくことが大切なのです。
新しい取り組みを始める際には、その構想の段階で、知財についても検討する。この習慣があれば、後から慌てることがなくなります。事業の計画と、知財の計画を、別々のものとして扱わない。両者を一体のものとして考える姿勢が、円滑な事業展開を支えることになります。
そして、知財を、守りだけでなく、攻めの材料としても活かせるようになります。技術力の裏づけとして示す、取引や提携の交渉材料とする。そうした活用は、その場の思いつきでは難しく、あらかじめ方針を持っていてこそ可能になります。攻めの視点は、戦略があって初めて生まれるのです。
権利を持っていることは、交渉の場で、無言の説得力になります。技術力を裏づけ、対等な立場を築く材料にもなります。守るためだけに取った権利が、思わぬ形で事業の後押しになることもある。そうした可能性を意識できるかどうかも、戦略を持つことの効用の一つだといえます。
知財戦略をどう組み立てるか
では、知財戦略は、どのように組み立てればよいのでしょうか。難しく考える必要はありません。基本の手順を踏めば、規模の大きくない会社でも取り組めます。ここでは、その流れを整理しておきましょう。
知財戦略というと、大きな会社が専門の部署を置いて取り組むもの、という印象があるかもしれません。しかし、本質は、自社の強みを見きわめ、それを守る手を打つということです。規模にかかわらず、どの会社にも必要な取り組みであり、また、始められる取り組みでもあるのです。
- 自社の事業にとって、何が強みなのかを見きわめる。
- その強みを支えている知的な財産を、洗い出す。
- それぞれについて、守るべき度合いを分ける。
- 守り方を選び、必要な手当てを進める。
- 事業の変化に応じて、折にふれて見直す。
まず出発点となるのが、自社の事業にとって、何が強みなのかを見きわめることです。他社にはない技術か、築いてきた名前への信頼か、独自に蓄えた情報か。この強みが分からなければ、何を守るべきかも定まりません。知財戦略は、自社の強みを見つめ直すことから始まります。
この作業は、経営そのものを見つめ直すことにもつながります。なぜ顧客は自社を選ぶのか。他社にはない何を持っているのか。その問いに答えていく過程で、自社の輪郭が、あらためて明確になります。知財戦略を考えることが、経営の棚卸しにもなるのです。
この作業は、経営者一人で行うより、現場の者を交えて進めるほうが実りがあります。技術に携わる者、営業に携わる者、それぞれが見ている自社の強みは違うからです。異なる視点を持ち寄ることで、より立体的に、自社の強みが浮かび上がってきます。
次に、その強みを支えている知的な財産を、洗い出します。強みの正体が技術であれば、その技術のどの部分が要なのか。名前への信頼であれば、どの名前やしるしが重要なのか。抽象的な強みを、具体的な守るべき対象へと落とし込んでいく作業です。
この落とし込みが、意外に難しいところです。技術力が強みだと言っても、その技術力を構成する要素は多岐にわたります。どの部分が本当に他社にまねできない核なのか。そこを特定できて初めて、守るべき対象がはっきりします。この見きわめには、専門家の助けが役に立ちます。
社内の者は、自社の技術に慣れすぎていて、どこが特別なのかを見失いがちです。当たり前だと思っていた工夫が、外から見れば大きな独自性であることもあります。第三者の目が入ることで、そうした埋もれた強みが掘り起こされる。それも、相談することの効用の一つです。
そして、洗い出したものについて、守るべき度合いを分けます。これは絶対に守らなければならない、これは中程度、これはさほど重要ではない。すべてを一律に扱わず、軽重をつける。この選別ができて初めて、限られた資源を、意味のある形で配分できるようになります。
選別の際には、失った場合にどれだけ困るかを想像してみるとよいでしょう。他社にまねされたら事業が成り立たなくなるものか、それとも困りはするが致命的ではないものか。その影響の大きさが、守るべき度合いの目安になります。実感に即して考えることが、現実的な判断につながります。
また、守るべき度合いは、時間とともに変わることもあります。今は中核でなくても、これから育てていく技術であれば、早めに手を打っておく価値があります。現在の重要性だけでなく、将来の見込みも踏まえて、優先順位を考えることが望まれます。
守り方をどう選び分けるか
守るべきものが定まったら、次は、それぞれをどう守るかを選ぶことになります。守り方は一つではなく、対象の性質によって、適した方法が変わります。ここでは、その選び分けの考え方を見ていきましょう。
まず、権利として守るという方法があります。所定の手続きを踏んで、法律に定められた権利として確保する。他社の使用を防ぎやすくなる一方、その中身は世に公開されることになります。まねされても分かる技術や、対外的に示したい名前などは、この方法が向いています。
製品を分解すれば分かってしまう技術を、秘密にしておくことはできません。そうしたものは、権利として守るほうが理にかなっています。また、名前やしるしについては、広く知られてこそ価値が生まれるものですから、権利として確保しておくことが、多くの場合、有効な選択になります。
次に、秘密として管理するという方法があります。あえて公にせず、社内で厳重に管理することで守る。外からは分からない製造の工夫や、独自に蓄えた情報などは、この方法が適していることがあります。ただし、漏れてしまえば守れなくなるため、管理の徹底が前提になります。
秘密として守る道を選ぶのであれば、その管理の仕組みが問われます。誰がその情報にふれられるのか、持ち出しをどう防ぐのか、退職する者にどう対応するのか。こうした体制が伴わなければ、秘密として守るという選択は、絵に描いた餅になってしまいます。
さらに、契約によって守るという方法もあります。外部に情報を渡す場面では、その扱いについて取り決めを交わしておく。委託先や提携先を通じた流出を防ぐには、この方法が欠かせません。権利や秘密管理とあわせて用いることで、守りはより確かなものになります。
外部との関わりは、事業を広げるうえで避けられません。だからこそ、そこからの流出をどう防ぐかは、重要な課題です。情報を渡す前に、その扱いについて取り決めを交わす。この一手間を習慣にしておくことが、思わぬところからの漏れを防ぐ、確かな備えになります。
そして、これらの方法は、どれか一つを選ぶのではなく、対象ごとに使い分け、組み合わせて用いることが大切です。この技術は権利として、この情報は秘密として、外部に渡すものは契約で。そうした重ね方をしてこそ、抜けのない守りが実現するのです。
一つの方法だけに頼ると、そこに穴があれば、守りは崩れます。複数の方法を重ねておけば、一つが機能しなくても、別の手立てが働きます。守りは、層にして厚くする。そうした発想を持つことが、確かな守りをつくるうえで、大切になるのです。
たとえば、中核となる技術について権利を取ったうえで、その周辺の細かな工夫は秘密として管理し、外部に渡す情報は契約で縛る。このように組み合わせれば、どこか一点を突かれても、全体としての守りは保たれます。単線ではなく、複線で守るという考え方です。
取り組みを進めるうえで気をつけたいこと
知財戦略を実際に進めるにあたっては、いくつか気をつけておきたい点があります。ここを押さえておかないと、方針を立てても実際には機能しません。ここでは、その要点を見ていきましょう。
まず、立てた方針を、社内に浸透させることです。経営者だけが方針を持っていても、実際に技術や情報を扱うのは現場です。何が守るべきものなのか、どう扱うべきなのかを、社員が理解していなければ、方針は絵に描いた餅になります。伝えて、初めて機能するのです。
浸透させるには、なぜそれが必要なのかを伝えることが欠かせません。ただ守れと命じるだけでは、現場は動きません。この技術が漏れたら会社にどのような影響があるのか。それを理解してこそ、社員は自分ごととして扱うようになります。理由の共有が、方針を根づかせるのです。
浸透のためには、具体的な行動として示すことも有効です。この資料は外に出さない、この情報は誰にでも見せない。抽象的な心構えではなく、日々の業務のなかでの具体的な決まりごととして伝える。そうすれば、現場でも迷わず実行できるようになります。
次に、事業の変化に応じて、折にふれて見直すことです。事業が変われば、強みも変わり、守るべきものも変わります。一度立てた方針を、そのまま放置していては、実態とずれていきます。定期的に見直し、実情に合わせて更新していく姿勢が求められます。
見直しの機会は、事業の節目に設けるとよいでしょう。新しい製品を出すとき、新たな市場に入るとき、他社と組むとき。そうした節目ごとに、知財の方針も確かめる。この習慣があれば、方針と実態のずれは、大きくならずに済みます。
ずれは、少しずつ生じるものです。気づいたときには大きく開いていた、ということにならないよう、定期的に確かめる機会を設けておく。決算の時期などに合わせて見直す習慣をつけておけば、無理なく続けられるでしょう。
さらに、他社の権利を侵さないという視点も忘れてはなりません。知財戦略は、自社を守ることだけを考えるものではありません。新たな取り組みを始める際に、他社の権利に触れないかを確かめておくことも、同じくらい重要です。守りと同時に、備えも必要なのです。
知らずに他社の権利を侵してしまえば、事業そのものを止められることもあります。新しい取り組みを始める前に、その点を確かめておく。この確認を怠ると、投じた資源が無駄になりかねません。攻める前に足元を確かめることも、知財戦略の一部だと考えていただきたいのです。
とりわけ、新しい製品の名前を決めるときや、新たな技術を採り入れるときには、注意が必要です。すでに世に出てから指摘を受ければ、名前を変えたり、方式を改めたりする負担が生じます。始める前に確かめておくことが、結局は最も安上がりな進め方になるのです。
そして、完璧を目指しすぎないことも大切です。最初から万全の体制を整えようとすると、負担が大きすぎて動き出せません。まずは最も重要なものから手をつけ、少しずつ広げていく。段階を踏んで進めることが、現実的で、続けられる取り組みにつながります。
最初の一歩は、自社の強みを書き出してみるだけでも構いません。そこから、守るべきものを絞り、優先度の高いものから手を打っていく。完璧を求めて動けないより、不完全でも動き出すほうが、はるかに前進です。まずは始めることを、大切にしていただきたいと思います。
専門家をどう活かすか
知財戦略を進めるうえで、専門家をどう活かせばよいのでしょうか。ここでは、その関わり方について見ていきましょう。使い方によって、得られるものは大きく変わります。
まず、手続きの担い手としてだけでなく、方針づくりの相談相手として活かすことです。個々の出願を依頼するだけでは、その価値は限られます。自社の事業にとって、何をどう守るのが有効かという、方針の段階から相談する。そこにこそ、専門家を活かす本当の意味があります。
手続きだけを頼むのであれば、その専門家との関係は、作業の委託にとどまります。しかし、方針から相談する関係であれば、事業を理解した助言者としての力を借りられます。同じ専門家でも、関わり方によって、得られるものはまるで違ってくるのです。
次に、自社の事業や方針を、率直に共有することです。専門家は、伝えられた情報をもとに助言をします。事業をどう広げたいのか、何を強みと考えているのか。それを共有していなければ、一般論の助言しか得られません。事業の狙いを伝えることが、的確な助言を引き出します。
事業の構想は、経営者の頭のなかにあるものです。それを言葉にして伝えなければ、専門家には見えません。この技術で、こういう市場に出たい。そうした構想を共有できていれば、それを見据えた守り方を提案してもらえます。共有の深さが、助言の質を決めるのです。
さらに、判断に迷う場面では、早めに相談することです。この技術は出願すべきか、この情報は秘密にすべきか。こうした判断は、時機を逃すと選べなくなることがあります。迷った時点で相談する習慣を持てば、取り返しのつかない事態を防げます。
知財の分野では、時機を逃すと選択肢が消えるという特徴があります。公にしてしまえば戻せない、先に権利を取られれば覆せない。この後戻りのできなさが、早い相談の重要性を高めています。迷ったら早めに、という原則を、社内で共有しておきたいところです。
そして、継続的に相談できる関係を築いておくことも有効です。知財は、一度整えて終わりではなく、事業とともに動き続けるものです。日ごろから相談できる相手がいれば、変化に応じた見直しも、無理なく続けられます。継続的な関わりが、戦略を生きたものに保つのです。
また、継続的に関わる専門家であれば、自社の事業への理解も深まっていきます。理解が深いほど、助言も具体的になります。その場限りの相談では得られない、自社に即した助言を得られること。それが、継続的な関係の、大きな価値なのです。
会社が取り組むべきことと専門家の活用
ここまで、知財を戦略として考える意味、組み立て方、守り方の選び分け、進めるうえでの注意、そして専門家の活かし方まで見てきました。あらためて整理すると、会社が心がけるべきことは、いくつかの柱にまとめられます。自社の強みから考えること。軽重をつけて資源を配分すること。対象ごとに守り方を選び分けること。そして、方針の段階から専門家に相談すること。これらが基本の姿勢になります。
知財への取り組みは、手続きの問題として捉えられがちです。しかし、その手前には、何のために守るのかという、経営の判断があります。この判断を欠いたまま個別の手続きを重ねても、労力に見合う成果は得られません。まずは、経営の視点から考えること。それが出発点になります。
経営の視点から考えるとは、突き詰めれば、自社は何で勝負しているのかを問うことです。その答えがはっきりすれば、守るべきものも自ずと定まります。逆に、そこが曖昧なままでは、いくら手続きを重ねても、的を射た守りにはなりません。すべては、この問いから始まるのです。
とはいえ、自社の強みは何か、何をどう守るべきか、どこから手をつけるべきか。こうした判断は、専門的で難しいものです。判断を誤れば、守るべきものを守れないまま、時間と費用を費やすことにもなりかねません。少しでも迷いがあれば、専門家の助けを借りることをおすすめします。
とりわけ、知財への取り組みを見直そうとする場面や、事業を広げていこうとする場面では、知的財産の問題にくわしい弁護士に相談することが有効です。弁護士は、自社の事業に照らして、何をどう守るべきかを、方針の段階から助言してくれます。早い段階での相談が、確かな戦略につながります。
相談の際には、自社の事業の中身と、これからどう広げていきたいかを、率直に伝えるとよいでしょう。専門家は、その情報をもとに、何を優先して守るべきかを示してくれます。技術の話だけでなく、事業の話をすること。それが、実効性のある方針づくりの鍵になります。
また、方針を立てる場面だけでなく、日ごろから相談できる体制を整えておくことにも意味があります。事業の変化に応じて方針を見直し、新たな取り組みの前に確認する。そうした関係があれば、知財は事業の足かせではなく、支えになります。自社の強みを守り、活かす。そのために、信頼できる専門家とつながっておくことが、大きな支えになるのです。
知財は、目に見えにくいだけに、後回しにされがちです。しかし、それは会社の強みそのものを支えるものです。手続きの前に、経営として何を守るかを考える。この記事が、自社の強みを見つめ直し、知財への取り組みを整理するきっかけとなれば幸いです。
知財戦略に関するよくある質問
知財戦略とは、どのようなものですか
自社が持つ、あるいはこれから生み出す知的な財産を、事業の方針に沿ってどう守り、どう活かしていくかを考え、方針として定めることをいいます。個々の出願や対応をその場ごとに判断するのではなく、経営の方針として一貫した考え方を持つという発想です。限られた資源のなかで何に力を注ぐかを決めること、それが戦略の役割になります。
なぜ戦略として考える必要があるのですか
個別に対応していると、全体として見たときに、守るべきものが守れていなかったり、必要のないものに労力を割いていたりすることが起きるからです。戦略として整理しておけば、限られた資源を有効に配分でき、守り忘れも防げます。また、事業の展開と知財の取り組みをかみ合わせられ、知財を守りだけでなく攻めの材料としても活かせるようになります。
知財戦略は、どう組み立てればよいですか
まず、自社の事業にとって何が強みなのかを見きわめることから始まります。次に、その強みを支えている知的な財産を洗い出し、それぞれについて守るべき度合いを分けます。そのうえで、権利として守るのか、秘密として管理するのか、契約で守るのかといった守り方を選び、必要な手当てを進めます。そして、事業の変化に応じて折にふれて見直していきます。
知財戦略は、誰に相談すればよいですか
自社の強みは何か、何をどう守るべきか、どこから手をつけるべきかといった判断は専門的で難しいため、知的財産の問題にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。個々の出願を依頼するだけでなく、方針の段階から相談することに、専門家を活かす本当の意味があります。事業の狙いを率直に共有すれば、より的確な助言を得られます。
