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社員を解雇するのは簡単ではない
この社員には、どうしても辞めてもらいたい。会社の方針に従わない、期待した働きをしてくれない。そうした思いから、解雇を考える経営者の方もいるでしょう。しかし、まずお伝えしておきたいことがあります。日本では、会社が社員を解雇することは、経営者が思っているよりも、ずっと難しいのです。ここを軽く見ると、思わぬ落とし穴にはまります。
とりわけ、小さな会社では、経営者と社員の距離が近いだけに、感情的な行き違いが解雇の話につながりやすい面があります。あの社員とはうまくいかない、顔を合わせるのもつらい。そうした個人的な感情から解雇に踏み切れば、後で必ず問題になります。解雇は、感情ではなく、法律の考え方に沿って判断すべきものなのです。
会社には、社員を雇う自由があるように、辞めてもらうことにも一定の自由があるはずだ。そう考える方もいるかもしれません。しかし、解雇については、法律が社員を手厚く守っており、会社が自由に行えるものではないのです。正当な理由がなく、あるいは正しい手順を踏まずに行った解雇は、無効と判断されることがあります。
なぜ、これほど社員が手厚く守られているのでしょうか。それは、社員にとって、職を失うことが、生活の基盤を失うことを意味するからです。会社を辞めさせられれば、収入の道が絶たれ、暮らしが立ち行かなくなります。その重大さゆえに、法律は、解雇に厳しい歯止めをかけているのです。この趣旨を理解しておくことが大切です。
解雇が無効とされれば、その社員は、なお会社に在籍していることになります。辞めてもらったつもりが、そうではなかった。それだけでなく、会社を離れていた期間の給料についても、支払いを求められることがあります。安易な解雇は、会社にとって、極めて重い負担を招く行為なのです。この点を、まず理解しておく必要があります。
つまり、解雇は、会社にとっても大きなリスクを伴う行為なのです。うまく辞めてもらえるどころか、無効とされて社員が戻り、その間の給料まで支払うことになる。そうなれば、当初の目的を果たせないばかりか、かえって会社の負担は増します。解雇を軽々しく考えることの危うさは、ここにあります。慎重な判断が欠かせません。
とはいえ、どのような場合でも解雇ができない、というわけではありません。正当な理由があり、正しい手順を踏めば、解雇が認められることもあります。大切なのは、解雇が認められるための要件と手順を正しく理解し、慎重に進めることです。感情に任せて解雇を告げるのではなく、法律の考え方に沿って対応することが求められます。
言いかえれば、解雇そのものが絶対にできないわけではなく、正しく進めれば認められる場合もある、ということです。要は、その進め方なのです。要件を満たし、手順を踏み、慎重に対応する。そうすれば、必要な解雇を、争いを避けながら実現できることもあります。大切なのは、正しいやり方を知り、それに沿って進めることなのです。
この記事では、解雇にはどのような種類があるのか、解雇が認められるためには何が必要なのか、解雇を進めるにはどのような手順を踏むべきか、そして解雇をめぐるトラブルをどう防ぐかまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。社員の解雇を考えている経営者の方に、判断の土台をお伝えします。
読者の方のなかには、まさに今、特定の社員の解雇を検討している方もいるでしょう。あるいは、いざというときのために、あらかじめ知っておきたい、という方もいるかもしれません。どちらの場合でも、まずは解雇をめぐる法律の考え方を、正しく理解することが出発点になります。順を追って見ていきましょう。
なお、この記事でお伝えするのは、解雇をめぐる基本の考え方です。実際に解雇が認められるかどうかは、その社員の事情や、会社がそれまでにとってきた対応によって、大きく変わってきます。ここで得た知識を土台にしながら、具体的な場面では、専門家の助言も得て慎重に進めていただければと思います。基本を知ることが、誤った判断を避ける第一歩です。
解雇にはどのような種類があるか
まず、解雇と一口に言っても、いくつかの種類があることを、整理しておきましょう。どの種類の解雇なのかによって、認められるための考え方や、踏むべき手順が変わってきます。自社が考えている解雇が、どれにあたるのかを見きわめることが、出発点になります。
この見きわめが大切なのは、種類によって、会社が示すべきことが変わってくるからです。社員の事情を理由とする解雇と、経営上の必要による解雇とでは、問われる点がまったく異なります。自社の解雇がどの種類なのかを取り違えたまま進めれば、示すべきことを示せず、解雇が認められないという事態を招きかねません。
一つ目が、社員の側に問題があることを理由とする解雇です。仕事の成績が著しく悪い、たびたび問題を起こす、健康上の理由で仕事を続けられない。こうした、社員に関する事情を理由として行う解雇です。この種の解雇では、その事情が、本当に解雇にあたるほどのものといえるかが、慎重に問われることになります。
ここで注意したいのが、経営者の評価と、客観的な事情とのずれです。経営者から見れば期待外れでも、それが直ちに解雇にあたるほどの事情とはいえないことが少なくありません。求める水準に達していないというだけでは、通常、解雇の理由としては足りないのです。その事情がどれほど重いものかを、冷静に見きわめる必要があります。
二つ目が、社員が重大な規律違反などをしたことに対する、制裁としての解雇です。重大な不正を働いた、会社に大きな損害を与えた。こうした、社員の行いに対する制裁として行う解雇です。この種の解雇は、社員にとって最も重い処分であり、それにふさわしいだけの重大な事由があることが求められます。
制裁としての解雇は、社員に科す処分のなかでも、最も重いものです。それだけに、それに見合うだけの、重大な事由が必要とされます。軽微な違反や、一度きりの過ちに対して、いきなりこの重い処分を科せば、処分が重すぎるとして、認められません。事由の重大さと、処分の重さとが、釣り合っている必要があるのです。
三つ目が、会社の経営上の必要から行う、人員削減のための解雇です。業績の悪化などによって、やむをえず人員を減らす場合の解雇です。社員の側に問題があるわけではないため、この種の解雇では、本当にその人員削減が必要なのか、対象の選び方は公正か、といった点が、とりわけ厳しく問われることになります。
この種の解雇が厳しく問われるのは、社員の側に何の落ち度もないからです。会社の都合で職を失わせる以上、その必要性や、対象を選ぶ過程の公正さについて、会社は重い説明を求められます。人員を減らす前に、ほかにとりうる手立てを尽くしたか、という点も問われます。安易に人員削減に頼ることは、認められにくいのです。
ここで押さえておきたいのは、解雇にはその理由によっていくつかの種類があり、それぞれ認められるための考え方や踏むべき手順が異なるという発想です。すべての解雇を、同じ感覚で進めることはできません。まずは、自社が考えている解雇がどの種類にあたるのかを見きわめ、それに応じた対応を取ることが大切なのです。
もっとも、実際には、これらの種類がはっきりと分かれるとは限りません。社員に問題があり、かつ経営も苦しい、といったように、事情が複雑に絡み合うこともあります。そうした場合には、どの理由で解雇を進めるのかを整理したうえで、それぞれに応じた対応を尽くす必要があります。判断が難しいだけに、慎重を要するところです。
解雇が認められるために必要なこと
では、解雇が認められるためには、何が必要なのでしょうか。ここが、解雇をめぐる問題の核心です。会社の判断だけで自由に解雇できるわけではない以上、どのような場合に解雇が認められるのかを、正しく理解しておく必要があります。順に見ていきましょう。
まず、大前提として、解雇には、客観的にみて合理的といえる理由が必要です。経営者が、この社員は気に入らない、という主観的な思いだけで解雇することはできません。誰が見ても、なるほどそれなら解雇もやむをえない、と納得できるような、しっかりとした理由があること。これが、解雇が認められるための、第一の条件になります。
客観的にみて合理的、という言葉が意味するのは、その理由が、経営者の主観を離れて、誰が見ても納得できるものであることです。経営者本人がどれほど正当だと信じていても、それだけでは足りません。第三者が見ても、それなら解雇もやむをえない、と思えるだけの、具体的で確かな理由が必要なのです。ここは、しっかりと押さえておく必要があります。
次に、その解雇が、社会通念に照らして相当といえることも必要です。理由があるとしても、その事情に比べて、解雇という処分が重すぎないか、が問われます。より軽い対応で足りるのではないか、いきなり解雇するのは行き過ぎではないか。そうした観点から、解雇が相当なものといえるかが、慎重に判断されるのです。
理由があることと、解雇が相当であることは、別の話です。たとえ何らかの落ち度があっても、それに対して解雇という最も重い対応を取ることが、行き過ぎではないかが問われます。注意で済むことに解雇を科せば、重すぎるとされます。理由の有無だけでなく、処分の重さの釣り合いまで見られる。この二段構えを理解しておくことが大切です。
とりわけ、社員の側の事情を理由とする解雇では、会社がそれまでにどのような対応をしてきたかも問われます。いきなり解雇するのではなく、注意や指導を重ねて、改善の機会を与えてきたか。そうした段階を踏まずに、いきなり解雇に踏み切れば、その解雇は相当なものとはいえない、と判断されやすくなります。
この点は、実務でとりわけ重要です。会社としては、もう限界だ、と思っていても、外から見れば、改善の機会を与えていなければ、解雇は早すぎると映ります。問題があるなら、まずそれを本人に伝え、直す機会を与える。その手間を踏んだかどうかが、解雇が認められるかどうかを、大きく左右するのです。
さらに、法律によって、そもそも解雇が禁じられている場合があることにも、注意が必要です。妊娠や出産、育児のための休業を取ったことを理由とする解雇や、業務上のケガで療養している一定の期間の解雇など、法律が明確に禁じている解雇があります。こうした解雇は、いかなる理由があっても、原則として認められません。
これらの禁じられた解雇に該当すれば、ほかにどれほど理由があっても、その解雇は認められません。うっかりこうした解雇に踏み込んでしまうと、会社は重い責任を負うことになります。解雇を検討する際には、その解雇が、法律で禁じられたものにあたらないかを、あらかじめ確かめておくことが欠かせないのです。
これらを踏まえれば、解雇が認められるためのハードルは、決して低くないことが分かります。合理的な理由があり、処分として相当で、禁じられた解雇にもあたらない。これらの条件を満たして、初めて解雇が認められるのです。会社としては、この厳しさを正しく理解したうえで、慎重に判断する必要があります。
この厳しさを知らずに、辞めさせたいという思いだけで解雇に踏み切ると、痛い目を見ることになります。逆に、この厳しさを理解していれば、解雇の前に何をすべきかが見えてきます。要件のハードルが高いことを知ることは、あきらめるためではなく、正しく備えるために必要なのです。まずは、この現実を受けとめることが出発点になります。
解雇を進めるための手順
解雇が認められるための要件を踏まえたうえで、実際に解雇を進めるには、どのような手順を踏むべきなのでしょうか。要件を満たしていても、手順を誤れば、後で問題になります。ここでは、解雇を進めるにあたって踏むべき、基本的な手順を整理しておきましょう。
- その社員の何が問題なのかを、具体的に、事実に基づいて整理する。
- いきなり解雇せず、注意や指導を行い、改善の機会を与える。
- それでも改善がみられない場合に、解雇が相当かどうかを慎重に検討する。
- 解雇するにあたっては、法律で定められた予告などの手続きを踏む。
- これらの経緯を、記録として残しておく。
この流れのなかで、まず大切なのが、問題を具体的に、事実に基づいて整理することです。なんとなく能力が低い、態度が悪い、といった漠然とした印象では、解雇の理由にはなりません。いつ、どのような問題があったのかを、具体的な事実として押さえておく。この積み重ねが、解雇の合理的な理由を支える土台になります。
逆に、記録がなく、印象だけで問題を語ろうとすれば、解雇の理由を示すことはできません。あのころ問題が多かった、という漠然とした記憶では、根拠になりません。日ごろから、事実を具体的に記録しておくこと。その地道な作業が、いざというときに、会社の判断を支える確かな裏づけになるのです。
次に欠かせないのが、注意や指導を行い、改善の機会を与えることです。社員に問題があるとしても、それを本人に伝え、直す機会を与えたかどうかが、後で厳しく問われます。会社が改善のために手を尽くしたにもかかわらず、なお改善されなかった。そうした経緯があって初めて、解雇もやむをえないと認められやすくなるのです。
指導は、形だけ行えばよいというものではありません。何が問題で、どう改めてほしいのかを、具体的に伝えることが大切です。そして、それに対して社員がどう応じたかも、見ていく必要があります。会社が真摯に改善を促し、それでもなお改まらなかった。その実質が伴っていてこそ、解雇の相当性が認められやすくなるのです。
そして、実際に解雇するにあたっては、法律で定められた手続きを踏むことも必要です。解雇にあたっては、あらかじめ予告をするか、それに代わる対応をとることが求められます。こうした手続きを怠ると、それ自体が問題となります。要件を満たすことと、正しい手続きを踏むこと。その両方が、揃っている必要があるのです。
どちらか一方が欠けても、問題になります。解雇の理由が十分でも、手続きを怠れば、その点をとがめられます。逆に、手続きを踏んでも、そもそも解雇の理由が足りなければ、解雇は無効とされます。要件と手続きは、車の両輪です。両方を過不足なく満たすことが、有効な解雇の条件になるのだと、心得ておく必要があります。
解雇をめぐるトラブルを防ぐために
解雇は、社員にとって、生活の基盤を失う重大な出来事です。それだけに、解雇をめぐっては、争いに発展しやすいものです。ここでは、解雇をめぐるトラブルを防ぐために、会社が心がけたいことを見ていきましょう。日ごろの備えが、無用な争いを避けることにつながります。
まず大切なのが、日ごろから、社員の勤務の状況を記録しておくことです。問題のある言動があれば、それがいつ、どのようなものであったかを、記録に残しておく。指導をしたのであれば、その内容も残しておく。こうした記録があれば、いざ解雇を検討する際に、その理由を具体的に示すことができます。記録は、会社を守る備えなのです。
記録というと、面倒な作業に思えるかもしれません。しかし、いざ解雇をめぐって争いになったとき、頼りになるのは、当時の事実を示す記録です。記憶は薄れ、言い分は食い違います。そのとき、客観的な記録があるかどうかが、会社の立場を大きく左右します。日ごろの記録は、未来の会社を守るための備えなのだと考えていただきたいのです。
次に、就業規則を整えておくことも重要です。どのような場合に、どのような処分がありうるのかを、就業規則に明確に定めておく。これがあいまいだと、解雇の根拠を示すことが難しくなります。ルールを明確にしておくことは、社員に対する公正さを保つとともに、会社自身を守ることにもつながります。
さらに、解雇を検討する際には、いきなり結論を出さず、段階を踏むことを心がけたいところです。まず注意や指導を行い、それでも改善しなければ、より重い対応を考える。こうした段階を踏むことで、会社が公正に対応してきたことを示せます。急いで解雇に踏み切ることは、かえって争いを招きやすいのです。
急ぐ気持ちは分かります。問題のある社員がいれば、一日でも早く辞めてもらいたいと思うのは、自然なことです。しかし、その焦りが、手順の不備を生みます。段階を飛ばして解雇に踏み切れば、後でその不備を突かれ、かえって解決が長引きます。急がば回れ、という言葉のとおり、慎重に段階を踏むほうが、結局は早く問題を収められるのです。
そして、解雇は、あくまで最後の手段だと位置づけることも大切です。ほかに取りうる対応はないか、配置を変えるなどして活かす道はないか。そうした検討を尽くしたうえで、それでもやむをえない場合に、初めて解雇を考える。この姿勢が、解雇の相当性を支えるとともに、無用な争いを避けることにもつながるのです。
解雇を最後の手段と位置づける姿勢は、社員にも伝わります。会社が、辞めさせる前に、できる限りのことをしてくれた。そう社員が感じれば、たとえ最終的に解雇に至っても、争いにまで発展しにくくなります。逆に、いきなり切り捨てられたと感じれば、社員は納得できず、争いを起こします。姿勢のちがいが、結果を分けるのです。
解雇の前に考えたい選択肢
解雇は重い手段であり、その前に、ほかの道がないかを考えることにも意味があります。社員に辞めてもらう、あるいは問題を解決する方法は、解雇だけではありません。ここでは、解雇の前に検討したい選択肢を見ていきましょう。視野を広く持つことが、より穏当な解決につながります。
まず考えられるのが、注意や指導によって、社員の改善を促すことです。問題があるからといって、すぐに辞めてもらうことを考えるのではなく、まずは直してもらうことを目指す。丁寧な指導によって、社員が変わることもあります。人を育てるという観点からも、まずは改善を促すことが、本来の姿だといえます。
問題があると見える社員も、指導によって見違えるように変わることがあります。何がいけないのかが、本人に伝わっていなかっただけ、ということも少なくありません。きちんと伝え、機会を与えれば、戦力として活躍してくれるかもしれない。その可能性を試さずに切り捨てるのは、会社にとっても損失になりうるのです。
次に、配置を変えることで、その社員が力を発揮できる場を探すことも考えられます。今の仕事が合っていないだけで、別の仕事では力を発揮できるかもしれません。その社員の適性を見きわめ、活かせる場に移す。そうすることで、解雇という重い手段を取らずに、問題が解決することもあるのです。
もっとも、配置を変える場合にも、その異動が権限の範囲内といえるかなど、別の観点からの配慮が必要になることがあります。とはいえ、解雇という取り返しのつかない手段を取る前に、活かす道を探る姿勢そのものには、大きな意味があります。人を切ることを最初に考えるのではなく、活かすことを先に考える。その順序が大切なのです。
さらに、社員との話し合いによって、円満に退職してもらう道もあります。会社と社員が話し合い、社員が納得したうえで、自らの意思で退職する。これは、一方的な解雇とは異なり、双方の合意による解決です。ただし、この場合でも、退職を強要したと受け取られないよう、あくまで社員の自由な意思を尊重することが必要です。
こうした選択肢を検討したうえで、それでもやむをえない場合に、初めて解雇を考える。そうした順序を踏むことが、大切です。解雇を、真っ先の選択肢とするのではなく、あくまで最後の手段と位置づける。その姿勢そのものが、解雇の相当性を支え、争いを避けることにもつながっていくのです。
会社が取り組むべきことと専門家の活用
ここまで、解雇の種類から、認められるための要件、進めるための手順、トラブルを防ぐための備え、そして解雇の前に考えたい選択肢まで見てきました。あらためて整理すると、会社が心がけるべきことは、いくつかの柱にまとめられます。解雇は簡単ではないと理解すること。合理的な理由と相当性を満たすこと。段階を踏んで慎重に進めること。そして、解雇を最後の手段と位置づけること。これらが基本の姿勢になります。
解雇は、社員の生活を大きく左右する、重い判断です。それだけに、会社の側にも、慎重さと、正しい手順が求められます。感情に任せて、あるいは思いつきで解雇を告げれば、その解雇は無効とされ、会社は重い負担を負いかねません。解雇の難しさを正しく理解し、慎重に対応することが、何より大切なのです。
とはいえ、実際の場面では、判断に迷うことが多いでしょう。この事情は解雇の理由になるのか、どこまで指導を尽くせばよいのか、この手順で問題はないか。こうした判断を誤れば、解雇が無効とされ、思わぬ争いを招きます。少しでも不安があれば、自己流で進めず、専門家の助けを借りることをおすすめします。
とりわけ、特定の社員の解雇を検討している場面では、企業の労務にくわしい弁護士に相談することが有効です。弁護士は、その解雇が認められる見込みがあるか、どのような手順を踏むべきかを、法律の考え方に照らして具体的に助言してくれます。解雇を告げる前に専門家の目を通しておくことが、後の大きな争いを防ぐことにつながります。
また、問題が起きてからだけでなく、平時から相談できる体制を整えておくことにも意味があります。就業規則の見直しや、社員への対応の進め方について、日ごろから助言を得られる関係を築いておけば、いざ解雇を検討する際にも、慌てずに済みます。社員との関係を適切に保ちながら会社を運営する。そのために、信頼できる専門家とつながっておくことが、大きな支えになるのです。
解雇は、経営者にとって、避けたい判断の一つです。しかし、避けられない場面もあります。そのとき、正しい知識をもって、慎重に対応できるかどうかが、会社の行方を左右します。感情に流されず、法律の考え方に沿って進める。その姿勢を持つことが、会社と、そして社員を、無用な争いから守ります。この記事が、その一助となれば幸いです。
社員の解雇に関するよくある質問
気に入らない社員を、解雇できますか
できません。日本では、会社が社員を解雇することは容易ではなく、解雇には、客観的にみて合理的な理由と、社会通念に照らした相当性が必要です。経営者の主観的な、気に入らないという思いだけで解雇することはできないのです。とりわけ、注意や指導によって改善の機会を与えるといった段階を踏まずにいきなり解雇すれば、無効と判断されやすくなります。慎重な対応が求められます。
解雇が無効になると、会社はどうなりますか
解雇が無効と判断されると、その社員はなお会社に在籍していることになり、辞めてもらったつもりが、そうではなかったという事態になります。さらに、会社を離れていた期間の給料についても、支払いを求められることがあります。安易な解雇は、会社にとって極めて重い負担を招く行為です。だからこそ、解雇が認められる要件と手順を正しく理解し、慎重に進めることが欠かせません。
解雇する前に、しておくべきことはありますか
とりわけ社員の側の事情を理由とする解雇では、いきなり解雇するのではなく、注意や指導を行い、改善の機会を与えることが欠かせません。会社が改善のために手を尽くしたにもかかわらず、なお改善されなかったという経緯があって初めて、解雇もやむをえないと認められやすくなります。あわせて、問題の内容や指導の経緯を記録に残しておくことが、いざというとき会社を守る備えになります。
社員の解雇について、誰に相談すればよいですか
この事情が解雇の理由になるか、どこまで指導を尽くせばよいか、この手順で問題はないかといった判断は難しいため、企業の労務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、その解雇が認められる見込みがあるか、どのような手順を踏むべきかを法律の考え方に照らして助言してくれます。告げてしまう前に一度専門家に確かめておくことが、後々の深刻な争いを避けることにつながるのです。
