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求人の条件と実際の給料が違うと問題になるのか
求人を出すときには、少しでも良い人に来てほしいと、条件を魅力的に見せたくなるものです。しかし、いざ採用してみると、求人に載せた金額と、実際に支払える給料との間に、開きが出てしまった。あるいは、求人票の条件と、実際の働き方がずれてしまった。そんなとき、社員から、話が違うと言われたら、会社はどうなるのでしょうか。まずは、この点を整理しておきましょう。
結論からお伝えすると、求人に示した条件と、実際の労働の条件が食い違うことは、会社にとって大きなトラブルの火種になります。社員は、求人に示された条件を信じて応募し、入社してきます。その期待を裏切るかたちになれば、社員の不信を招くだけでなく、法律上の問題にも発展しかねないのです。安易に考えてよいことではありません。
とりわけ、人手不足のなかで採用を急ぐと、この問題は起こりやすくなります。とにかく応募を集めたい一心で、条件を良く見せてしまう。その場は人が集まっても、入社後に食い違いが表面化すれば、かえって早期の離職を招きます。急いで採った人ほど早く辞める、という悪循環に陥りかねないのです。
もっとも、求人に示した条件が、そのまま契約の内容として確定するわけではない、という面もあります。求人は、あくまで募集の段階で示す、見込みの条件という性格を持ちます。実際の労働の条件は、採用にあたって、会社と社員との間で改めて取り決められるのが本来のかたちです。ここの理解が、あいまいなまま採用を進めると、後の食い違いを招きます。
この点を、多くの経営者はあまり意識していません。求人に載せた条件で採ったのだから、それで話は済んでいる、と思い込んでいるのです。しかし、本来は、採用の段階で実際の条件を改めて取り決め、それを示すという手続きが必要です。この一手間を省くと、求人の条件と実際との間に、認識のずれが生じてしまいます。
とはいえ、だからといって、求人の条件は当てにならない、と開き直ってよいわけではありません。求人に示した条件と実際とがかけ離れていれば、社員は、だまされたと感じます。そうした不信は、早期の退職や、深刻な争いにつながります。求人の条件をどう扱うかは、会社が思っている以上に、慎重さを要する問題なのです。
採用は、会社と社員の関係の、まさに出発点です。その出発点でつまずけば、その後の関係も、ぎくしゃくしたものになります。逆に、入り口で誠実な対応をしておけば、社員は会社を信頼し、腰を据えて働いてくれます。求人の条件の扱いは、その後の長い関係を左右する、大切な問題だと捉えていただきたいのです。
この記事では、求人に示す条件がどのような性格を持つのか、会社にはどのような義務があるのか、条件が食い違うと何が問題になるのか、そして採用の場面で何に気をつけるべきかまでを、弁護士の視点から順を追って見ていきます。採用をめぐるトラブルを避けるための、土台となる知識をお伝えします。
読者の方のなかには、まさに今、社員から条件が違うと指摘されて、対応に悩んでいる方もいるでしょう。あるいは、これから求人を出すにあたって、後で問題にならないようにしたい、という方もいるかもしれません。どちらの場合でも、まずは求人の条件と実際の条件の関係を、正しく理解することが出発点になります。順を追って見ていきましょう。
なお、この記事でお伝えするのは、求人の条件をめぐる基本の考え方です。実際の判断は、求人の示し方や、採用の過程でのやり取りによって変わってきます。ここで得た知識を土台にしながら、迷う場面では専門家の助言も得て進めていただければと思います。基本を知っておくことが、採用をめぐる無用な争いを避ける支えになります。
求人に示す条件はどのような性格を持つか
まず押さえておきたいのが、求人に示す条件が、どのような性格を持つのかという点です。ここがあいまいなままだと、後の議論も、腑に落ちないままになってしまいます。求人の条件と、実際に結ばれる労働の契約とは、いったいどのような関係にあるのでしょうか。順に見ていきましょう。
求人に示す条件は、応募を考える人に対して、こうした条件で働いてもらう見込みですと伝える、募集の段階のものです。この段階では、まだ具体的な誰かとの間で、契約が結ばれているわけではありません。あくまで、これから応募し、採用に至れば、おおむねこうした条件になる、という見込みを示しているにとどまります。
この見込みという性格は、求人の条件が幅を持って示されることが多いことにも、表れています。経験や能力によって処遇が変わりうるからこそ、求人の段階では、一定の幅のなかで示される。裏を返せば、実際にどの水準になるかは、その人ごとに、採用の段階で定まるということです。求人は、その手前の見取り図にすぎないのです。
そして、実際の労働の条件は、採用が決まる段階で、会社とその社員との間で、改めて取り決められるのが本来のかたちです。求人に示した条件をたたき台としながら、その人の経験や能力なども踏まえて、実際にどのような条件で働いてもらうかを、両者の間で確定させる。この確定した条件こそが、労働の契約の中身になります。
ですから、採用の段階で実際の条件を取り決めるという過程は、決して省いてよいものではありません。ここを曖昧にしたまま働き始めてもらうと、何が契約の内容なのかが、はっきりしないままになります。そして、後で認識の食い違いが生じたときに、どちらの言い分が正しいのかを、決める手がかりがなくなってしまうのです。
ここで押さえておきたいのは、求人に示す条件は募集段階の見込みであって、実際の労働の条件は採用にあたって改めて取り決められ、その確定した内容が契約の中身になるという発想です。求人の条件がそのまま自動的に契約になるわけではない、という点を理解しておくことが、後の議論の前提になります。
もっとも、これは、求人の条件が意味を持たない、ということではありません。社員は、その条件を信じて応募してきています。ですから、実際の条件を取り決める際に、求人の条件から大きくかけ離れた内容を、社員によく説明もせず一方的に示すようなことをすれば、それは信義に反するものとして、問題になりえます。
つまり、求人はあくまで見込みだといっても、それを都合よく反故にしてよいわけではありません。社員が、その条件を信じて人生の選択をしている以上、そこには一定の重みがあります。見込みだからと軽んじる姿勢は、社員の信頼を損ない、法律上も問題を招く。この点を、はき違えないことが大切です。
つまり、求人の条件は、そのまま契約になるわけではないけれども、まったく自由に変えてよいものでもない。この、少し込み入った関係を理解しておくことが大切です。求人はあくまで見込みだが、社員の信頼の土台にもなっている。この両面を押さえておきましょう。
この両面を理解していれば、採用の場面での振る舞いも、自然と定まってきます。求人の条件をたたき台としつつ、実際の条件は誠実に取り決めて、きちんと示す。求人と実際が違うなら、その理由も含めて正直に伝える。見込みと信頼という二つの側面に目を配ることが、トラブルを避ける鍵になるのです。
会社が負う労働条件の明示義務
求人の条件の性格を踏まえたうえで、次に理解しておきたいのが、会社に課された義務です。採用の場面では、会社は、労働の条件を社員にきちんと示す義務を負っています。これは、法律上の務めであって、あいまいにしてよいものではありません。順に見ていきましょう。
まず、求人を出す段階でも、会社は、募集にあたって労働の条件を示すことが求められます。どのような仕事で、どのような勤務時間で、どの程度の賃金を見込んでいるのか。こうした基本的な条件を、応募を考える人に対して明らかにする。求人の条件は見込みだとはいえ、いいかげんに示してよいわけではないのです。
この募集段階での明示は、応募する人が、自分に合った仕事かどうかを判断するための土台になります。条件があいまいなまま示されれば、応募する側も、正しい判断ができません。結果として、入社してから、こんなはずではなかった、という食い違いが生じます。募集の段階から、条件を分かりやすく示すことが求められるのです。
さらに重要なのが、実際に採用して労働の契約を結ぶ段階です。この段階では、会社は、その社員に適用される労働の条件を、明確に示さなければなりません。とりわけ、賃金や勤務時間、契約の期間、仕事の内容や勤務する場所といった、重要な事項については、書面などのかたちで、はっきりと示すことが求められています。
この、契約を結ぶ段階での条件の明示は、口約束で済ませてはならない、重要な手続きです。あいまいなまま働き始めてもらうと、後になって、聞いていた条件と違う、という食い違いが必ず生じます。それを防ぐために、法律は、重要な条件を明確に示すことを、会社に義務づけているのです。
この明示すべき事項には、いつまでの契約なのか、どのような仕事をするのか、どこで働くのか、賃金はいくらで、いつ支払われるのか、勤務の時間はどうなっているのか、といった、働くうえで欠かせない基本が含まれます。これらは、社員が安心して働くために、当然知っておくべきことばかりです。だからこそ、明確に示すことが求められています。
ここで注意したいのが、求人の条件から実際の条件が変わる場合の扱いです。求人に示した条件と、実際に適用する条件とが異なることになった場合には、そのことを、社員にきちんと明らかにする必要があります。黙って条件を変えて示すのではなく、変更があったことを、はっきりと社員に伝える。この誠実さが求められます。
ここを軽く見て、求人と違う条件を、しれっと書面に記して済ませようとすると、社員は後でそれに気づき、不信を募らせます。変わったなら変わったと、はっきり伝える。そのうえで、なぜ変わったのかを説明し、納得してもらう。その手間を惜しまないことが、かえって、後の大きなトラブルを防ぐことにつながるのです。
条件が食い違うと何が問題になるか
では、求人の条件と実際の条件が食い違った場合、具体的にどのような問題が生じるのでしょうか。ここを知っておくことは、採用の場面での慎重さを促すうえで、とても大切です。話が違うと言われても大したことにはならない、と高をくくっていると、思わぬ事態を招きます。
まず生じるのが、社員との間の信頼の問題です。社員は、求人の条件を信じて、他の選択肢を断り、その会社を選んで入社してきています。その条件が実際と違っていれば、社員は、だまされたと感じます。この不信は、簡単には拭えません。入社したばかりの社員が、早々に会社への信頼を失うことになるのです。
一度失われた信頼を取り戻すのは、容易ではありません。最初にだまされたという印象を持たれると、その後、会社が何を言っても、色眼鏡で見られてしまいます。会社としては、そんなつもりはなかったとしても、社員がそう受け取れば、関係はこじれます。入り口での印象が、その後を大きく左右するのです。
この不信は、しばしば早期の退職につながります。せっかく採用し、育て始めた社員が、条件の食い違いを理由に辞めてしまう。会社にとっては、採用にかけた手間も費用も、無駄になってしまいます。それだけでなく、条件の食い違いで社員が辞めたという評判が広まれば、その後の採用にも、影響が及びかねません。
ここで大切なのは、社員の側の立場に立ってみることです。求人の条件を頼りに、いまの仕事を辞め、あるいは他の内定を断って、その会社を選んだ。それだけの決断をして入ってきた社員にとって、条件が違うということは、その決断の前提が崩れることを意味します。その重みを想像できるかどうかが、対応の分かれ目になるのです。
さらに、法律上の争いに発展することもあります。実際に適用される条件が、求人に示した条件を下回る場合、社員は、求人の条件どおりの扱いを求めて争うことがあります。どこまでの主張が認められるかは、求人の条件がどのように示され、実際の条件がどのように取り決められたかによって変わりますが、いずれにせよ、争いそのものが会社の負担になります。
争いになれば、会社は、その対応に時間と労力を割かれます。求人をどう出したか、条件をどう示したかといった経緯を、一つひとつ確かめられることになります。そのとき、記録が乏しければ、会社は自らの正当性を示せず、苦しい立場に立たされます。一人の採用をめぐる争いが、思いのほか大きな負担になりうるのです。
とりわけ問題が深刻になりやすいのが、会社の側に、求人の条件を実際より良く見せようという意図があった場合です。人を集めるために、実際には支払えない金額を求人に載せる。こうしたやり方は、社員の信頼を裏切るだけでなく、悪質なものとして、より重く問われることになります。求人で誇張することの代償は、決して小さくないのです。
目先の応募を集めるために誇張した条件は、いわば、後で払うことになる借金のようなものです。その場は人が集まっても、食い違いが表面化すれば、離職や争いというかたちで、代償を払うことになります。しかも、その代償は、誇張が大きいほど重くなります。正直に示すことが、結局は最も安上がりなのだと、心得ておくべきです。
採用の場面で会社が気をつけたいこと
求人の条件をめぐるトラブルを避けるために、会社は採用の場面で何に気をつければよいのでしょうか。ここまでの内容を踏まえ、実務で心がけたい点を整理しておきましょう。この点検を丁寧に行っておけば、後の食い違いを大きく減らせます。
- 求人に条件を示すときは、実際に提供できる範囲を踏まえて、誇張のない内容にする。
- 賃金などを幅で示す場合は、その幅がどのような場合にどう変わるのかを、分かるようにしておく。
- 採用が決まったら、実際に適用する条件を、書面などで明確に社員に示す。
- 求人の条件から変わる点があれば、変更したことを社員にはっきり伝え、理解を得る。
- 社員が条件を理解し、納得したうえで契約に至ったことを、記録に残しておく。
この流れのなかで、まず大切なのが、求人の段階で誇張をしないことです。人を集めたいという思いから、つい良い条件を並べたくなりますが、実際に提供できる範囲を超えた条件を示せば、後で必ず食い違いが生じます。求人の条件は、実際に支払える、実現できる範囲にとどめる。これが、トラブルを防ぐ出発点です。
実際に提供できる範囲にとどめるといっても、条件を悪く見せる必要はありません。自社の良いところを、正直に、魅力的に伝えることは、何ら問題ありません。問題なのは、実態を超えた条件を、あたかも事実であるかのように示すことです。正直であることと、魅力的に伝えることは、両立します。そこを取り違えないことが大切です。
次に大切なのが、賃金を幅で示す場合の扱いです。求人では、賃金をいくらからいくらまで、というかたちで幅を持たせて示すことがよくあります。しかし、その幅の上のほうだけを見て応募してきた社員が、実際には下のほうの金額だった、と知れば、話が違うと感じます。どのような場合にどの水準になるのかを、あらかじめ示しておくことが望まれます。
たとえば、経験や資格に応じて処遇が変わるのであれば、その基準を分かるようにしておく。手当が付く条件があるなら、それがどのような場合に付くのかを示しておく。こうした情報があれば、応募する人は、自分の場合はどの水準になりそうかを、あらかじめ見当をつけられます。それが、入社後の食い違いを防ぐことにつながります。
そして、最も重要なのが、契約を結ぶ段階で、実際の条件を明確に示すことです。求人がどうであれ、実際に適用される条件を、書面などのかたちで、はっきりと社員に伝える。そして、社員がそれを理解し、納得したうえで、契約に至る。この過程をきちんと踏むことが、後の食い違いを防ぐ、最も確実な方法なのです。
この過程は、社員のためだけでなく、会社のためでもあります。実際の条件を明確に示し、社員が納得して契約に至った。その事実が残っていれば、後で社員が条件は違うと主張しても、会社は、きちんと示して合意していたことを示せます。誠実な手続きは、そのまま、会社を守る備えにもなるのです。
トラブルを防ぐための社内の備え
求人の条件をめぐるトラブルは、その場の対応だけでなく、日ごろの備えによって、大きく減らすことができます。会社として整えておくべきことがいくつかあります。ここでは、その要点を見ていきましょう。地道な備えが、採用をめぐる無用な争いを防ぎます。
まず取り組みたいのが、求人を出す際の社内の手順を整えることです。誰が、どのような内容で求人を出すのかが、担当者任せになっていると、実態とかけ離れた条件が示されることがあります。求人の内容を、実際の条件と照らして確認する仕組みを設けておけば、そうした食い違いを未然に防げます。
とりわけ、求人を外部の媒体に載せる場合には、注意が必要です。掲載の担当者と、実際の労働の条件を把握している者とが別であれば、両者の間で認識がずれることがあります。求人を出す前に、実際の条件を知る者が内容を確かめる。その一手間を仕組みにしておくことで、思わぬ食い違いを防げます。
次に、労働の条件を示す書面の様式を、あらかじめ整えておくことも大切です。採用のたびに、その都度あいまいなかたちで条件を伝えていると、示すべき事項の漏れが生じます。重要な条件を漏れなく記した様式を用意しておけば、誰が採用を担当しても、必要な条件をきちんと示すことができます。
様式を整えておくことには、示すべき事項の漏れを防ぐという以上の意味があります。決まった様式があれば、条件を示すという手続きそのものが、採用の流れのなかに自然と組み込まれます。担当者が、うっかり口約束で済ませてしまう、といった事態も避けられます。仕組みで支えることが、確実な対応につながるのです。
さらに、採用の過程を記録に残す習慣も役立ちます。どのような条件を示し、社員がそれをどう理解して契約に至ったのか。その経緯を残しておけば、後で食い違いが問題になったときにも、会社は、きちんと条件を示していたことを示せます。記録は、面倒に見えて、実は会社を守る備えなのです。
この記録は、特別なものである必要はありません。示した条件の書面の控えや、社員が確認したことが分かるもの。そうしたものを、きちんと保管しておくだけでも、十分に意味があります。日ごろから、採用の経緯を残す習慣をつけておくこと。その小さな積み重ねが、いざというときに、会社の立場を支えるのです。
そして何より、良い人を集めたいという思いと、実態を正しく伝えるべきだという要請との、バランスを意識することが大切です。誇張して人を集めても、条件の食い違いで辞められれば、意味がありません。実態を正直に伝えたうえで、なお選んでもらえる会社を目指す。その姿勢こそが、長く働いてくれる社員との出会いにつながるのです。
誇張して集めた人は、より良い条件を見つければ、簡単に去っていきます。一方、実態を正直に伝えたうえで、それでも来てくれた人は、その会社を納得して選んでいます。だからこそ、腰を据えて働いてくれる可能性が高いのです。目先の応募数を追うのではなく、長く働いてくれる人との出会いを大切にする。それが、賢明な採用のあり方といえるでしょう。
会社が取り組むべきことと専門家の活用
ここまで、求人に示す条件の性格から、会社の明示義務、条件が食い違った場合の問題、採用の場面での注意、そして日ごろの備えまでを見てきました。あらためて整理すると、会社が心がけるべきことは、いくつかの柱にまとめられます。求人では誇張しないこと。契約の段階で実際の条件を明確に示すこと。変更があれば正直に伝えること。そして、その経緯を記録に残すこと。これらが基本の姿勢になります。
採用は、会社にとって、良い人材を迎え入れる大切な機会です。しかし、その入り口で、条件をめぐる不信を生んでしまえば、せっかくの縁も、長くは続きません。求人の条件を魅力的に見せたい気持ちは分かりますが、実態とかけ離れた条件は、結局、会社自身の首を絞めることになります。正直さこそが、良い採用の土台なのです。
考えてみれば、これは当然のことでもあります。誠実に条件を示す会社には、その誠実さを信じて人が集まり、腰を据えて働いてくれます。ごまかしの上に築いた関係は、いずれほころびます。良い人材との長い関係を望むなら、その第一歩である採用の場面から、正直であること。それが、遠回りのようでいて、実は最も確かな道なのです。
とはいえ、実際の場面では、判断に迷うことも多いでしょう。求人にこの条件を示してよいか、実際の条件をどう取り決めればよいか、社員から条件が違うと言われたときにどう対応すべきか。こうした判断を誤れば、思わぬ争いを招きます。少しでも不安があれば、自己流で進めず、専門家の助けを借りることをおすすめします。
とりわけ、社員から条件をめぐって異議を申し立てられている場面や、採用の進め方を見直そうとしている場面では、企業の労務にくわしい弁護士に相談することが有効です。弁護士は、その求人や条件の示し方に問題がないか、どのように対応すべきかを、法律の考え方に照らして具体的に助言してくれます。専門家の目を通しておけば、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
また、問題が起きてからだけでなく、平時から相談できる体制を整えておくことにも意味があります。求人の出し方や、労働の条件を示す書面の整え方について、日ごろから助言を得られる関係を築いておけば、採用のたびに慌てずに済みます。良い人材を、正しいかたちで迎え入れる。そのために、信頼できる専門家とつながっておくことが、大きな支えになるのです。
採用をめぐるトラブルは、その多くが、入り口での誠実さによって防げるものです。求人で誇張せず、実際の条件を明確に示し、変更があれば正直に伝える。当たり前のようでいて、忙しさのなかでは、つい疎かになりがちなことばかりです。この記事が、自社の採用のやり方を見直すきっかけとなれば幸いです。
求人条件と実際の給料に関するよくある質問
求人に示した条件は、そのまま契約になりますか
求人に示した条件が、そのまま自動的に契約の内容として確定するわけではありません。求人は、募集の段階で示す見込みの条件という性格を持ち、実際の労働の条件は、採用にあたって会社と社員との間で改めて取り決められるのが本来のかたちです。ただし、求人の条件は社員の信頼の土台でもあるため、そこから大きくかけ離れた条件を一方的に示せば、信義に反するとして問題になりえます。
採用のときに、条件を書面で示す必要はありますか
あります。会社は、労働の契約を結ぶ段階で、その社員に適用される労働の条件を明確に示す義務を負っています。とりわけ、賃金や勤務時間、契約の期間、仕事の内容や勤務する場所といった重要な事項については、書面などのかたちではっきりと示すことが求められます。口約束で済ませると後で食い違いが生じるため、この明示は必ず行ってください。
求人より低い条件で採用したら、問題になりますか
求人の条件から実際の条件が変わること自体は、直ちに違法とは限りませんが、その変更を社員にきちんと伝えず一方的に示せば、大きな問題になります。実際の条件が求人を下回る場合、社員が求人どおりの扱いを求めて争うこともあります。条件を変える必要があるなら、変更したことをはっきり伝え、社員の理解を得たうえで契約に至ることが欠かせません。
採用条件をめぐるトラブルは、誰に相談すればよいですか
この求人にこの条件を示してよいか、社員から条件が違うと言われたときにどう対応すべきかといった判断は難しいため、企業の労務にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、求人や条件の示し方に問題がないか、どう対応すべきかを法律の考え方に照らして助言してくれます。採用の進め方を見直す際にも、専門家の目を通しておけばトラブルを未然に防ぎやすくなります。
