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民事再生の手続きとは?民事再生のメリットを知っておこう
この記事で分かること
- 民事再生は事業の廃業が前提となる清算型と違って、事業をそのまま継続させられる
- 民事再生をすれば、経営陣が退陣することなく事業の立て直しができる
- 弁護士に手続を一任すれば、債権者への対応や書類作成などの負担が軽減できる
会社の経営が傾いたときに、「倒産」の2文字が経営者の頭をよぎることもあるでしょう。ある程度余力があれば、会社を存続させる余地は残されています。民事再生を考えるのであれば、まだ余力があるうちに早めに弁護士に相談して対策を練ることが必要です。
民事再生と会社清算はどう違う?
会社を経営していく以上、会社の資金繰りに困ってどうにもならなくなる可能性はゼロではありません。そのようなときに利用できる倒産手続きの方法として、民事再生をはじめとする再建型倒産手続きと、破産をはじめとする清算型倒産手続きの2つのパターンがあります。
民事再生とは事業を続けながら会社の再建を目指せる手続き
民事再生手続きとは、「再建型」と呼ばれる倒産手続きのひとつです。再建型とは、経営者が事業を存続しながら裁判所の監督の下で経営を立て直すことを指します。手続きとしては、民事再生法に基づいて裁判所に民事再生の申し立てをし、再生計画を立てて債権者集会で債権者に了承をもらい、自社の再建を目指します。
民事再生開始の要件
民事再生開始の要件は以下の2つです。
破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるとき
「破産の原因たる事実」とは、支払不能・支払停止・債務超過のいずれかの状態になることを指します。
事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき
これは、自社の全財産をもってしても債務を弁済することができない状態のことを指します。
民事再生手続きにかかる費用とは
民事再生の手続に必要な費用は、大きく分けて裁判所に納める予納金と弁護士費用の2つがあります。それぞれどれくらいの金額になるのかについて見ていきましょう。
裁判所に納める予納金
予納金は負債額によって異なりますが、東京地裁の場合、負債額別の予納金は以下の表のようになります。
債務総額 | 予納金額 |
---|---|
5000万円未満 | 200万円 |
5000万円~1億円未満 | 300万円 |
1億円~10億円未満 | 500万円 |
10億円~50億円未満 | 600万円 |
50億円~100億円未満 | 700万円~800万円 |
100億円~250億円未満 | 800万円~900万円 |
250億円~500億円未満 | 1000万円~1100万円 |
500億円~1000億円未満 | 1200万円~1300万円 |
1000億円以上 | 1300万円以上 |
弁護士費用
民事再生手続きは自力でもできますが、裁判所に提出する書類を作ったり、すべての債権者や取引先と交渉をすることは大変な困難を伴います。そのため、民事再生手続きは弁護士に一任することが望ましいでしょう。その際にかかる弁護士費用の相場は、着手金・成功報酬合わせておおむね400万円~1200万円程度です。このほかに、裁判所に出向くときの日当や交通費などが別途必要となります。
清算型倒産手続きとは、事業を廃業するときの手続き
清算型倒産手続きとは、キャッシュフローがどうにもまわらない、当面の運転資金が用意できないなどで再建が見込めず事業を廃業するときに取る手続きのことを指します。清算型倒産手続きには、特別清算・破産・私的(任意)整理の3つがあります。
- 特別清算
- 破産
- 私的(任意)整理
特別清算
特別清算は、株式会社のみが行うことができる倒産手続きです。まず会社を解散した上で裁判所に特別清算の申し立てを行い、清算人(その会社の取締役が選任されるケースが多い)が会社の財産を換金処分し、裁判所の監督下で弁済方法や返済額について債権者集会を開いて決めてもらいます。そしてその決定に従って債務を弁済し、最終的に会社を清算します。
破産
破産とは、あらゆる法人が利用できる倒産手続きです。まず、裁判所に破産の申し立てをすると裁判所で審尋が行われ、破産手続きが決定します。その後、財産を管理するための管財人が選任され、管財人のもとで財産が債権者に分配されて裁判所から免責許可が下りれば手続きが終了となります。
私的(任意)整理
私的(任意)整理とは、裁判外で債権者と債務の弁済について取り決めを行う手続きです。裁判所を介さない分費用は安く済み、なおかつ手続きを秘密裏に進めることができますが、債権者全員の同意が得られなければ、法的手続きに移行することになることもあります。
民事再生手続きの流れとは
民事再生は裁判所への申立てに始まり、さまざまな過程を経なければなりません。民事再生の申立てから手続き終了まではおよそ半年程度かかるため、ある程度長丁場になることを覚悟しておくことが必要です。
民事再生の流れを抑えておけば弁護士との面談もスムーズ
民事再生手続きは、弁護士に法律相談をするところから始まります。そのときに、以下の流れを抑えておくと、弁護士との面談もスムーズに進むでしょう。
- 法律相談・委任契約
- 民事再生・保全処分の申し立て・債務者審尋
- 保全処分の決定、監督委員の選任
- 債権者説明会を開催
- 民事再生手続き開始の決定
- 財産評定・財務・業務状況の報告
- 債権者集会・再生計画案の議決、認可、遂行
法律相談・委任契約
まずは弁護士に相談に行き、会社の経営状況や財務状況から再建可能であるかどうかを弁護士に判断してもらいます。ある程度資力がなければ、裁判所から民事再生の認可が下りるのは難しいため、早めに相談することが必要です。再建できる可能性があれば、費用などの説明を受け弁護士と委任契約を結びます。
民事再生・保全処分の申し立て・債務者審尋
民事再生や保全処分の申立書を弁護士が作成し、裁判所に民事再生と保全処分の申立てをします。保全命令が出される前に、裁判所から会社の代表者や経理担当者などが事情を訊かれることもありますが、その場合は担当弁護士に同行してもらうと心強いでしょう。
保全処分の決定、監督委員の選任
保全処分の決定がされると、債務の弁済が一切禁止されます。また、裁判所により民事再生を監督するための「監督委員(通常は弁護士が任命される)」が選任されます。
債権者説明会を開催
申立てから約1週間後に、会社の主催で債権者説明会を開くケースも多く見られます。債権者説明会では、債権者に誠意をもってお詫びをし、取引の継続や再建に向けての協力をお願いしましょう。また、監督委員も出席するため、開催状況が裁判所に報告されます。
民事再生手続き開始の決定
民事再生の要件を満たしていることが裁判所から認められると、申立てから1~2週間ほどで民事再生手続き開始の決定が下されます。裁判所から債権者に対して再生手続き開始通知書と債権届出の用紙が郵送されるので、債権者は債権の届出をします。
財産評定・財務・業務状況の報告
再生手続き開始決定後、債務者は再生手続き開始時点での会社の財産価格を評定し、財産目録・貸借対照表・業務報告書を作成します。また、債権者から届け出のあった債権について1つ1つ認否を確認し、認否書を作成することも必要です。これらの書類はすべて裁判所に提出します。
再生計画案作成
債権者に債務を一部免除してもらった上で、残債務について返済計画を立てます。債務の減額に協力してもらうためには、債権者への説明・交渉も不可欠です。債権者への対応については、弁護士に対応してもらうとスムーズでしょう。
債権者集会・再生計画案の議決、認可、遂行
債権者集会を開いて、再生計画案について議決が執り行われます。可決されるには、出席した債権者の過半数が賛成し、かつ賛成者の債権が全体の債権額(議決権額)の半分以上であることが必要です。再生案が可決され、裁判所から認可されれば、その計画に従って債務を弁済することになります。
民事再生手続きをするメリットとは
民事再生手続きには、多額の費用がかかったり、状況によっては裁判所に認可してもらえない可能性もあることが難点ですが、その反面メリットもあります。どのようなメリットがあるのかについて見ていきましょう。
民事再生手続きをするメリットとは
民事再生を行なうメリットは数々ありますが、なんといっても一番のメリットは会社を廃業させる必要がないことです。経営陣も続投することができるため、事業の立て直しもスムーズに進むでしょう。
メリット①事業が継続できる
同じ倒産処理でも、民事再生を選ぶことで今行なっている事業は継続したまま経営の立て直しができることが最大のメリットです。従業員を解雇する必要も経営陣も解任する必要もないのは、経営者にとってありがたいことではないでしょうか。
メリット②債務の弁済がストップする
民事再生とともに保全処分の申立てを同時に行うことで、保全処分が下れば債務を弁済しなくてもよくなります。全く返済しなくてよいわけではもちろんありませんが、督促や催促がやむので、一時期だけでもほっとできる時間が生まれます。
メリット③借金を減額したり、買掛金の支払いを遅らせることができる
民事再生手続きの中では、債権者と交渉を重ねる中で債務を一部減額してもらえたり、支払を最大10年猶予してもらうことできます。その結果、会社を再建できる可能性がいっそう高くなるでしょう。
民事再生手続きを弁護士に依頼するメリット
では、民事再生手続きを弁護士に依頼するメリットとはいったい何でしょうか?弁護士に手続を委託すればかなりの弁護士費用がかかってきますが、それを加味してもやはりメリットのほうがデメリットを上回るでしょう。
的確なアドバイスをもらえる
弁護士に相談をすることで、現在会社のおかれた状況が客観的に判断することができます。そのため、各債権者や取引先に対しても、会社の状況に合わせた対応をすることが可能です。
書類作成を引き受けてくれる
民事再生手続きに必要な書類は、申立書のほかに財産目録や貸借対照表、債権者一覧表、資金繰り予定表、認否書など多岐にわたる上に内容も複雑です。弁護士に頼めば、会社側で準備しなければならない書類を除き、新たに作成が必要な書類はすべて作成してもらえます。
債権者や取引先との交渉を代行してくれる
会社の規模が大きければ大きいほど、取引先や借入先の数も多くなるものです。そのような取引先や借入先に対して1社1社民事再生をする旨を説明して理解を得ることは相当な時間と手間がかかることでしょう。弁護士に依頼をすれば、債権者説明会や債権者集会などで取引先や借入先に対して依頼主に代わり状況を説明・交渉してもらえます。
民事再生を考えるなら、弁護士に相談を
民事再生手続きは、会社の状況によってできる場合とできない場合があります。その判断は素人では難しいため、経営が傾いてきたが、なんとか倒産させずに立て直したいと考えるならば、弁護士に早めに相談することがおすすめです。早めに相談すれば、事業を維持したまま再建できる可能性もぐっと高くなるでしょう。
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