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会社の任意整理を弁護士に依頼するには?〜メリットや費用相場を解説〜
この記事で分かること
- 会社の任意整理には再建型と清算型の2つの種類がある。
- どちらの手続きも債権者との協議が必要になる。
- 弁護士に依頼をすれば、弁済計画の作成や債権者との交渉のサポートが受けられる。
任意整理は、社員を何百人も抱える規模の大きな会社から、社員が1人しかいない超零細企業まで、どのような会社でも利用することができます。この記事では、会社の任意整理はどのように進むのか、また任意整理を弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのかについて解説します。
会社の任意整理には再建型と清算型がある
法人の任意整理には「再建型任意整理」と「清算型任意整理」の2種類があります。まず、再建型・清算型それぞれの特徴についてみていきましょう。
再建型任意整理とは
資金繰りの状況から見て会社を立て直せる余地がある場合は、再建型任意整理を行うことになります。再建型任意整理とはどのような手続きなのでしょうか。
再建型任意整理とは
再建型任意整理とは、債権者と交渉を行って支払期限を引き延ばしてもらったり、債務を減額してもらったりして会社の再建を目指すことです。再建型任意整理には、中小企業支援協議会を利用する方法や特定調停を申立てる方法などさまざまな方法があります。
再建型任意整理ができるケース
再建型任意整理が利用できるのは、以下のようなケースに限られます。
- すべての債権者から同意を得られそうな場合
- 早期に黒字化できる見込みがある場合
- 手続き費用や当面の運転資金が用意できる場合
- 滞納している税金や社会保険料の額が少ない場合
メリット
再建型任意整理を利用するメリットは、裁判所に納める予納金が不要なこと、債務整理をしている事実を公にしなくても良いこと、仕入先や外注先を巻き込まなくて済むことなどがあげられます。また、再建計画を柔軟に進められる点も大きいでしょう。
デメリット
一方、債権者と直接交渉を行わなければならないこと、債権者を納得させられるような再建計画を自力で作成する必要があることなどが、再建型任意整理のデメリットとしてあげられます。忙しい経営者にとって、これらの時間を確保することは大変難しいと言えるでしょう。
清算型任意整理とは
任意整理によってあまり事を大きくせずに会社や事業をたたみたいときには、「清算型任意整理」と呼ばれる方法を利用します。
清算型任意整理とは
清算型任意整理とは、裁判所を介さずに債務整理を行い、会社を清算する方法です。会社が債権者集会などで債権者と直接協議して弁済計画や弁済方法について承認を得て、資産を売却したり債権回収をしたりして資金を作り、債権者に分配します。
清算型任意整理ができるケース
清算型任意整理が利用できるケースが以下の通りです。
- 債権者数がごくわずかな場合
- 債権者が清算する会社に協力的である場合
- すべての債権者に公平に手続きを行う意思が強い場合
- 債権者が、債権放棄した分を損金として処理できない可能性があることを了承している場合
メリット
清算型任意整理を利用するメリットは、再建型と同様、裁判所に納める予納金が不要なことや比較的柔軟に手続きが進められることなどがあげられます。
デメリット
一方、債権者の数が多ければ債権者全員の賛成が得られにくいこと、会社を清算するとなると敵対的になる債権者が出てくるため交渉が難航しやすいことが清算型任意整理のデメリットとしてあげられる点です。
会社による任意整理の流れ
会社による任意整理は再建型と清算型で行うべきことが異なりますが、どちらもまずは弁護士への法律相談と委任契約からスタートします。特に事業再建を目指す場合には、少しでも運転資金に余裕があるうちに早めに取り掛かることをおすすめします。
再建型任意整理の場合
再建型任意整理は、主に金融機関との話し合いをして債務を一定程度免除してもらい、事業の立て直しを図ることになりますが、具体的には以下のような流れで進んでいきます。
メインバンクとの調整
メインバンクに出向き、再建型の任意整理を行う旨を説明します。また、現在の資産や負債の状況ついてもお話し、返済期限の引き延ばしに関する交渉も行います。その後、ほかの金融機関にも出向いて説明や交渉をするようにします。
再建計画の作成
税理士や公認会計士の協力を得て、現在の財務状況を把握し、今後の資金繰り計画や弁済計画について検討します。その後、再建計画を作成します。
金融機関との協議・合意形成
再度金融機関との話し合いの場を持ち、再建計画について合意してもらえるように説明を行います。特定調停を利用する場合は、この後に特定調停の申立て手続きを行います。
弁済開始・事業再建
金融機関から合意が得られたら、その合意内容に従って弁済を開始します。このときから、事業の立て直しに専念できるようになるでしょう。
清算型任意整理の場合
清算型任意整理は事業終了に向けての手続きという性質上、金融機関だけでなく一般債権者もすべて巻き込んで交渉を行うことになります。その分、交渉は難航が予想されますが、弁護士などの専門家に協力を得ながら進めることが清算型任意整理を成功させるコツです。
閉業したことの通知
会社を閉業し、会社の代表者もしくは代理人の弁護士からすべての債権者へ、清算型の任意整理を行う旨を通知します。
債権者説明会の開催
債権者を集めて債権者説明会を開催し、会社を清算するに至った経緯や理由について説明します。また、現在の資産や負債などの状況についても話をします。
弁済計画案の作成・債権者への説明
いつどのように弁済していくかについて弁済計画を作成します。残債務については免除してもらえるよう弁済計画案に記載し、2回目の債権者説明会もしくは個別訪問を行って説明し、債権者全員の同意を得られるように尽力します。
資産売却・債権回収
資産を売却したり売掛金などの債権回収を行ったりして資金をつくり、債権者それぞれに弁済します。残債務は債権者に免除してもらうように依頼しましょう。
解散・清算結了登記
会社が保有するすべての財産を清算できれば、会社を正式に解散させます。その後、法務局で清算結了登記を行うと、清算型任意整理の手続きが終了します。
会社の任意整理を弁護士に依頼するメリットと費用の相場
任意整理は、裁判所を介する手続きではないため、自力で行うことも可能です。しかし、自力で債権者に債務の一部免除を請求したり、弁済計画に合意を得たりすることは大変難しいため、できる限り弁護士などの専門家に依頼をしたうえで手続きを進めるのが賢明でしょう。
手続きを依頼するメリット
弁護士に依頼をすれば、経営者や経理・財務担当者からヒアリングをしたうえで会社の規模や経営状態に合わせた最適なスキームを提案してもらえるでしょう。
弁済計画案の作成をサポート
また、弁護士は依頼を受けると税理士や公認会計士などの経理・財務の専門家とともに、現在の資産の状況や財務状態を把握します。そのため、金融機関からの同意を得やすいような弁済計画案を作成してもらえることも大きなメリットです。
債権者との話し合いも代行
また、弁護士に手続きを一任すれば、債権者との話し合いも弁護士が中心になって進めてもらえます。債権者説明会や交渉の場には債務者も同席する必要はありますが、自分だけで交渉を進める必要がないため、精神的な負担がかなり軽減できるでしょう。
過払い金があるときも安心
個人で任意整理を行うときと同様に、弁護士が利息の引き直し計算をして過払い金があれば、任意整理の手続きと同時並行で過払い金の返還請求手続きもしてもらえます。
任意整理にかかる費用の相場
任意整理を弁護士に依頼すれば数多くのメリットが得られるものの、弁護士費用がかかる点が唯一のデメリットです。任意整理を行うための弁護士費用は決して安くはないため、少しでも資金繰りに余裕があるうちに依頼をしておくことをお勧めします。
弁護士費用は債権者の数や負債額により異なる
任意整理にかかる弁護士費用は、債権者の数や負債額により数百万単位で違いが出てきます。着手金は、さまざまな法律事務所を比較するとおよそ50万円~100万円程度が相場です(※1)。ただし、債権者の数や負債額が多ければ着手金だけで1,000万円を超える場合もありますので、あらかじめ依頼をする弁護士に見積をもらって確認するようにしましょう。報酬金を含む全体の費用としては、特定調停などの利用の有無にもよりますが、およそ500~800万円かかるケースが多いと予想されます(※2)。
税理士や会計士の費用もかかることに注意!
会社の任意整理手続きには、財務デューデリジェンスなども関わるため、税理士や会計士の協力が不可欠です。したがって、弁護士費用だけでなく税理士や会計士に支払う費用もかかることを留意しておきましょう。
会社の任意整理のことは弁護士に相談しよう
再建型・清算型のどちらを選ぶにせよ、経営者が自社の経営難に直面せざるを得なくなることには変わりありません。そのような苦しい状況のときに、専門知識を持って物心両面でサポートしてくれる弁護士のような専門家の存在は大変心強いものになるでしょう。
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