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労働審判にかかる手続きの費用、弁護士費用の相場は?
この記事で分かること
- 労働審判にかかる手続費用は請求額が200万円なら7,500円
- 労働審判にかかる弁護士費用の相場は回収できた金銭の20~30%程度
- 利益を最大にすることも弁護士費用を考えるうえでは大切
不当解雇や賃金不払いなどの労働トラブルを解決するための労働審判にかかる費用は、裁判所に納める手続費用と弁護士費用との2種類があります。この記事では、労働審判の手続費用と弁護士費用相場、および労働審判の費用を少しでも抑えるためにはどうしたら良いかを解説します。
労働審判にかかる手続き費用
労働審判でかかる費用のうち、裁判所に納める手続き費用について最初に見ていきましょう。労働審判の手続費用には、
- 手数料
- 郵便切手代
の2つがあります。
手数料
労働審判の手数料は請求する金額によって変わり、以下の通り定められています。
- 請求する金額が100万円までの部分 …10万円ごとに500円
- 請求する金額が100万円~500万円の部分 …20万円ごとに500円
- 請求する金額が500万円~1,000万円の部分 …50万円ごとに1,000円
- 請求する金額が1,000万円~10億円の部分 …100万円ごとに1,200円
- 請求する金額が10億円~50億円の部分 …500万円ごとに4,000円
- 請求する金額が50億円を超える部分 …1,000万円ごとに4,000円
したがって、たとえば200万円の未払い賃金を請求するなら手数料は、
500円×10 + 500円×5 = 7,500円
となります。
不当解雇の無効を争う場合には、争いの内容を金銭に換算することが困難です。その場合、請求金額は160万円とみなされ、上の計算方法から手数料は6,500円となります。
郵便切手代
郵便切手代は、裁判所が書類を郵送するために必要となる費用で、だいたい2,000円程度がかかります。
労働審判にかかる弁護士費用の相場
次に、労働審判でかかる弁護士費用の相場について見ていきましょう。弁護士費用は、
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- 実費
があります。
相談料
相談料は、弁護士事務所でまず最初に相談する際にかかります。1時間につき5,000円~1万円が相場です。
着手金
着手金は弁護士に事件を依頼する際にかかります。事件の結果がたとえ不成功であったとしても、着手金は返還されません。労働審判を申立てる際の着手金は、請求額が200万円なら10万円~30万円が相場です。
報酬金
報酬金は、事件が成功に終わった場合に支払います。「成功」は一部成功の場合も含まれ、成功の度合いによって報酬金は変わります。労働審判で200万円の請求が認められた場合の報酬金は、30万円~50万円が相場です。
実費
実費は、コピー代や切手代、交通費、書類の作成代、出張の際の弁護士の日当など、弁護士が事件を担当するために実際に必要とする費用です。着手金のなかに実費が含まれている場合もあり、弁護士事務所によって扱い方が異なります。
労働審判の費用を少しでも抑えるためにはどうしたら?
労働審判では弁護士費用としてある程度の費用がかかります。弁護士費用を少しでも抑えるためにはどうすればいいかをここでは見ていきましょう。
方法1 相談内容を事前に明確にしておく
労働審判の申立てをする際には、最初に弁護士に相談します。相談料の相場は上で解説した通り1時間につき5,000円~1万円ですので、相談時間は有効に活用しましょう。相談時間の1時間は、ダラダラと話をしているとあっという間に過ぎてしまいます。
相談時間を有効活用するためには、事前に何を相談するのかを明確にし、
- トラブルの経緯
- トラブルをどのように解決したいのか
- 弁護士費用としていくらくらいを見込んでいるのか
などについてメモとして書き出しておくのが良いでしょう。
方法2 書類の作成などを自分でやる
弁護士に依頼する内容を限定することによっても、弁護士費用を抑えることができます。たとえば、裁判所に提出する労働審判申立書の作成を弁護士に依頼せずに自分でやれば、その分の弁護士費用は安くなります。
ただし申立書は、裁判所が指定する形式に沿って作成しなくてはなりません。書類の作成方法を勉強するために時間が必要となることもあるでしょう。自分でやることにより書類の作成に時間がかかってしまった場合には、「時間給に換算したら弁護士に依頼したほうが安かった」などということもあり得ますので注意しましょう。
方法3 証拠を徹底的に集める
証拠を徹底的に集めることも、弁護士費用を抑えるためには有効でしょう。十分な証拠が収集できれば、その分早期での解決を期待することができるからです。労働トラブルを弁護士に依頼すると、
- 任意交渉
- 労働審判
- 訴訟
などの手続きを経ながら問題解決をすることとなります。強力な証拠があれば任意交渉だけで解決できる場合もありますし、そうでない場合には、訴訟までもつれ込むこともあります。解決が早期にできれば、弁護士費用はその分安くすみます。
トラブルの証拠としてどのようなものを集めれば良いのかは、弁護士とよく相談しましょう。残業を行ったことの証拠として手書きのメモが認められるなど、一般の人が「意外」と思うようなものが証拠として通用することがあります。
方法4 労働問題に強い弁護士事務所に相談する
労働問題に強い弁護士事務所に相談することにより、弁護士費用のうち特に初期費用について抑えられることがあります。
労働問題でトラブルを抱える人は多くの場合、賃金不払いや不当解雇にあい経済的に困窮しています。労働問題を数多く扱う弁護士事務所はそれをよくわかっているために、相談料や着手金を無料にするなど依頼時にかかる費用を低く抑え、弁護士費用を支払うのは事件の解決に成功し、請求していた金銭を受け取ることができた時点だけにしていることがあります。
弁護士費用の総額が低くなるわけではありませんが、このような支払い方法なら弁護士費用を支払いやすくなるでしょう。
方法5 法テラスを利用する
日本司法支援センター「法テラス」を利用して弁護士費用の立替えを受けることにより、やはり労働トラブルにあい経済的に困窮しているときでも弁護士への相談・依頼をすることができます。
法テラスは「全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現」の理念のもとに、国民向けの法的支援を行う中心的な機関として設立されました。法テラスの民事法律扶助業務により、経済的に困窮していても弁護士費用の立替えを受け、弁護士とともに労働審判に臨むことができます。
弁護士費用の立替えを受けるためには審査があり、
- 資力(月収および保有資産)が一定額以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
などの条件を満たせば弁護士費用が立替えされます。立替えがされた費用は、原則として毎月1万円ずつ返済します。法テラスの弁護士費用立替えを利用することにより、「弁護士費用がないために泣き寝入りする」などのことを打破することができるでしょう。
方法6 弁護士に依頼せず自分でやる
労働審判を、弁護士に依頼せずに自分でやることも弁護士費用を抑えるための方法です。労働審判は、大きな法廷で行われる通常の訴訟とは異なり、審判官と審判員、労働者側と会社側の当事者が、こぢんまりとした部屋でテーブルなどを囲んで行われます。審判官や審判員が質問をし、それに口頭で答えていく形式で審判が進みますので、書面で主張を積み上げていく訴訟と比べ、弁護士なしで自分で審判に臨むことも不可能ではありません。実際に、労働審判を利用する人の1割程度は弁護士をつけずに審判に臨んでいます。
しかし、ほとんどの場合で会社側は弁護士をつけてきます。それを相手に、何を争点とし、どのように主張・立証していくのかを判断するのは、裁判の経験がない一般の人には困難なところがあるでしょう。
労働審判の費用は弁護士に相談しよう
不当解雇や賃金不払いなどの労働トラブルで労働審判に申立てをしようとするとき、「費用」は1つのネックとなるでしょう。特に、弁護士費用についてはたしかに安くはありません。しかし、弁護士に依頼することにより主張が認められ、請求する金銭を受け取ることができれば弁護士に依頼した甲斐があるといえます。どのようにすればメリットや経済的利益が最大になるのかを、弁護士事務所でまずは相談してみるのが良いでしょう。
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