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自己破産とは?方法と手続きの流れ、費用や期間を解説
この記事で分かること
- 自己破産手続きとは裁判所ですべての借金を免除してもらうこと
- 自己破産手続きには半年くらいの期間がかかる
- 自己破産手続きにかかる費用は裁判所と弁護士に支払うものがそれぞれある
多額の借金を抱えてしまい、返済が難しくなった場合には、借金を整理することを考えるのがいいでしょう。自己破産手続きは、借金の整理のための最も強力な方法です。この記事では、自己破産手続きの概要、方法と期間、およびかかる費用を解説します。
自己破産手続きとは?
最初に、自己破産手続きとは何なのか、メリットとデメリットはどのようなものがあるかをみていきましょう。
自己破産手続きとは裁判所ですべての借金を免除してもらうこと
自己破産手続きとは、裁判所に申し立てることによりすべての借金を免除してもらうことです。つらい借金返済から解放されるため、生活を立て直すことが容易になります。
自己破産ができるのは「支払い不能」になったときです。支払い不能とは破産法2条11項により、
「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう
と定義されています。
「破産申立書」を裁判所に提出すると、裁判所は、債務者の借金の額や収入、資産の状態などからみて支払い不能であるかどうかを判断します。支払い不能であると認められると、「免責許可」が出され借金が免除されます。
一定以上の財産が没収されるなどのデメリットもある
借金がすべて免除される自己破産ですが、いくつかのデメリットもあります。自己破産のデメリットは以下の通りです。
一定以上の財産が没収される
自己破産をすると一定以上の財産は没収されることになります。没収される財産は以下のようなものです。
- 99万円以上の現金
- 20万円以上の預金
- 自己破産者名義の土地や建物
- 20万円以上の価値があるとみなされる自動車
- 20万円以上の解約返戻金がある保険
- 見込額が160万円を超える退職金
など。
連帯保証人に迷惑がかかる
借金に連帯保証人を立てている場合、自己破産により債務者本人の支払い義務は免除されても、連帯保証人の支払い義務は免除されません。したがって、金融業者からの取立ては連帯保証人に向かうことになり、連帯保証人に迷惑がかかります。もし家族の誰かが借金の連帯保証人になっていれば、家族に迷惑がかかることになります。
クレジットカードが利用できなくなる
自己破産をすると、7年程度はクレジットカードが利用できなくなります。自己破産から5年~7年のあいだ、個人信用情報機関のブラックリストに名前が登録されるからです。クレジットカード以外にも、7年程度はローンなどが組めなくなります。
官報に名前が載る
自己破産手続きを行うと、官報に名前と住所が掲載されます。ただし、一般の人が官報を見ることはほとんどないため、官報に名前が載ったことで職場や友人・知人などに自己破産したことがバレることは少ないでしょう。
免責許可が確定するまで就ける職業が制限される
自己破産の手続きが開始してから免責許可の決定が出るまでの半年程度のあいだ、就ける職業が制限されます。制限される職業は、
- 弁護士や司法書士、公認会計士、税理士、行政書士などの士業
- 質屋や古物商
- 宅地建物取引主任者
- 生命保険の外交員
- 警備員
などです。ただし、免責許可が確定すれば、これらの職業にも復帰することができます。
借金の免除が認められないケースもあるので注意
自己破産による借金の免除は、上で解説した通り「支払い能力がある」と裁判所が判断すれば許可されません。その他にも、以下のようなケースでは借金の免除が認められないことがあります。
- 浪費やギャンブルなどによって借金した場合
- 財産を隠したり壊したり、勝手に他人に贈与しようとしたりした場合
- 破産申立をする前の1年間に、住所や氏名・年齢などを偽ってお金を借りようとした場合
- 破産申立をする前の7年以内で免責を受けたことがある場合
など。
年金や生活保護は問題ない
自己破産をしても、受給している年金などが打ち切られることはありません。また、生活保護も受けることができます。
勤務先にバレることはほとんどない
自己破産手続きにあたって裁判所から勤務先に連絡が行くことは基本的にありません。したがって、自己破産をしたことが勤務先にバレることは「ほとんどない」といえます。
ただし、勤務先で官報を購読している場合には、勤務先の誰かが官報を見て自己破産したことがバレることはないとはいえません。また、勤務先から借入れをしている場合には、裁判所から勤務先に連絡が行くことになります。したがって、その場合には勤務先に自己破産がバレることになります。
自己破産手続きの方法と流れ・期間
自己破産手続きの方法と流れ、期間についてみていきましょう。
自己破産手続きに必要となる書類
自己破産手続きを行うためには、まず必要となる書類を準備します。自己破産手続きの必要書類は以下の通りです。
- 破産手続開始及び免責申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 資産目録
- 家族の状況
- 住民票
- 給与明細書の写し
- 源泉徴収票の写し
- 市民税・県民税課税証明書
- 預金通帳の写し
- 賃貸契約書の写し
- 不動産登記簿謄本
- 退職金を証明する書面
- 車検証の写し
- 自動車の査定書
- 保険証券の写し
- 保険解約返戻金証明書
- 年金等の受給証明書の写し
など。
自己破産手続きの流れと期間
必要書類を準備したあとの、自己破産手続きの流れおよびかかる期間をみていきましょう。自己破産手続きを開始してから免責が確定するまで、個人の場合なら通常半年くらいがかかります。
1. 裁判所に破産申立を行なう
必要な書類をすべて準備し、裁判所で破産申立を行ないます。申立てをする裁判所は申立人の住所地を管轄する地方裁判所です。その際、申立手数料として1,500円の収入印紙が必要です。また、裁判所によっては郵便切手代などの費用が別途かかります。
2. 破産の尋問(約1ヶ月後)
破産申立から約1ヶ月後に、裁判所で破産の尋問が行われます。尋問では、
- どういう理由や状況で支払い不能に陥ったのか
- 債権者の数や借金の総額
- 提出した債権者一覧以外のところから借金をしていないかどうか
などについて、裁判官から質問されます。
尋問は、弁護士に依頼した場合には弁護士が代わりに受けることができます。また、東京地方裁判所など一部の裁判所では、弁護士に依頼している場合に限り、破産申立をしたその日に即日で弁護士と裁判官が面接を行ない、破産手続開始の決定を下す制度があります。
3. 破産手続き開始の決定(約1週間後)
破産の尋問に問題がなかったと裁判官が判断すれば、破産手続き開始の決定が下されます。その際、上で解説した「一定以上の財産」があるかないかで、破産手続きの方法は異なります。
一定以上の財産がない場合 …同時廃止
申立人に一定以上の財産がなく、尋問にも問題がなかった場合は、破産手続き開始の決定とともに手続きが終了します。同時廃止の場合には、予納金として1万円~3万円を納めます。
一定以上の財産がある場合 …管財手続き
上で解説した一定以上の財産がある場合には、破産管財人が選任され、財産を処分したうえで免責が決定されます。その場合、予納金として20万円以上を納めなければなりません。ただし、管財手続きが行われるのは多くが法人の破産手続きです。個人の破産手続きはほとんどが同時廃止となりますので、心配はいらないでしょう。
4. 免責尋問(約2ヶ月後)
破産手続き開始の決定から約2ヶ月後に、免責手続きを開始するための尋問が行われます。個人が同時廃止手続きを行う際には、免責尋問は多くが形式的な確認がされるだけです。弁護士に依頼している場合には、免責尋問に同席してもらうことができます。
5. 免責許可決定(約1週間後)
免責尋問から約1週間後、裁判所から免責許可決定がでます。この時点で、破産手続きはすべて完了します。
6. 免責許可決定の確定(1~2ヶ月後)
免責許可決定から約1~2ヶ月後、免責許可決定は法律上確定した状態となります。免責許可決定が確定した段階で、借金の返済義務は完全になくなることになります。
自己破産手続きの費用
自己破産手続きを行なうためには、裁判所に手数料などを収めなくてはなりません。また、弁護士に依頼する場合には、そのための費用がかかります。
裁判所に収める費用
裁判所に納める費用は、手数料としての収入印紙代および郵便切手代、予納金です。
収入印紙代
1,500円。
郵便切手代
債権者の数や、同時廃止か管財手続きかによって異なり、また裁判所によっても異なります。相場は3,000円~1万5,000円です。
予納金
- 同時廃止の場合 …1万円~3万円。
- 管財手続きの場合 …20万円~150万円(負債の額によって異なる)。
弁護士に依頼するための費用
弁護士に依頼するための費用は、相談料と着手金、成功報酬があります。弁護士費用は、分割払いを受付けてくれる事務所もあります。
相談料
相談料は、1時間につき5,000円~1万円が相場です。ただし、近年は相談料を無料とする弁護士事務所も多くあります。
着手金
着手金は、25万円~40万円が相場となります。
成功報酬
自己破産手続きに関しては、成功報酬はなしとする事務所が多いようです。
自己破産手続きは弁護士に相談しよう
多額の借金を抱えてしまった場合には、生活を立て直すためにも早い段階で借金を整理するのがおすすめです。
借金を整理する方法は、自己破産のほかにもデメリットがより少ない方法が複数あります。メリットとデメリットを比較し、どの方法で借金を整理するのが最善なのかを検討するためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。
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