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債権者とは?債権の種類と債務者への効力・行使できる権利をわかりやすく解説

この記事で分かること

  • 債権者とは、債務者に対して給付を請求する権利のある人です。
  • 債権者には、給付保持力や訴求力などの効力があります。
  • 訴訟を起こせば、強制執行も可能です。

債権者とは、債務者に対して給付(金銭の支払いや物の引き渡し)を請求できる権利を有する人をいいます。債務者に対して行使できる具体的な権利について学び、債務不履行に対処しましょう。

債権者とは?

債権者としての効力や行使できる権利を知るためにはまず、債権者がどのような権利を持っている人であるか、把握しておかなければなりません。ここでは、債権者についてわかりやすく解説していきます。

債権者の定義

債権者とは、法律上は「特定の人(=債務者)に対し、特定の行為や給付を請求する権限を有する人」と定義されています。もっと簡単にいえば、お金の貸し借りにおいて、お金を貸す側が債権者です。ただし、債権は必ずしも金銭を請求する権利であるとは限りません。

例えば、下記の例を考えてみましょう。

(例)Aさんは、知り合いのBさんが経営する宝石店より、Xという指輪を購入する約束をした

このとき、BさんはAさんに対し、債権者として指輪の代価となる金銭の支払いを請求する権限を持っています。一方で、AさんもBさんに対し、債権者としてXという指輪を引き渡す行為を請求する権限があります。

債権の種類

上記の例のとおり、債権=金銭ではありません。代表的な債権の種類は次のとおりです。

金銭債権

金銭の請求権を持つ債権のこと。上の例でいえば、Bさんが持っているのが金銭債権です。例えば、金融機関が個人などに対して貸し付けしている金銭や、交通事故時などに発生する損害賠償金、離婚時の慰謝料や養育費なども、金銭債権にあたります。

特定物債権

主に売買契約時に発生するもので、ある特定のものを引き渡す(所有者を移す)よう請求できる債権のこと。上の例でいえば、Aさんが持っているのが特定物債権です。

ちなみに上の例では、AさんはXという指輪を指定してBさんと売買契約を結んでいますが、これがXと指定せずに「指輪を1つ購入したいので、見繕ってください」といった契約になると、Aさんが持っているのは特定物債権ではなくなります。単に、物の種類と数を指定しただけなので、この場合のAさんの債権は種類債権(不特定物債権)といいます。

利息債権

主に賃借契約時に発生するもので、金銭や物を貸した際の対価として利息を支払うように請求できる債権のこと。例えば、金融機関から借入をしたとき、毎月の返済金は元本の一部+利息で構成されているはずです。元本の一部は金融機関にとっての金銭債権となり、利息分は利息債権となります。

債権者と債務者の関係

債務者とは、「特定の人(=債権者)に対し、特定の行為や給付をする義務を負う人」と定義されます。ここで、改めて先ほどの例を考えてみましょう。

(例)Aさんは、知り合いのBさんが経営する宝石店より、Xという指輪を購入する約束をした

重要なポイントは、このときAさんとBさんはそれぞれ、債権者でありながら同時に、債務者でもあることです。AさんはBさんに対し、債務者として指輪代金を支払う義務を負います。また、BさんはAさんに対し、債務者としてXという指輪を引き渡す義務を負います。

このように、特に売買契約などにおいては、自身が債権者でありながら同時に債務者でもある場合があると覚えておきましょう。

ワンポイントアドバイス
債権者としての権利を行使する際には、「どの行為や給付に対しての債権であるか」を明確にしておくことが重要です。

債権者が債務者に対して持つ効力とは

債権者は債務者に対して特定の行為や給付を請求できる権利を持っていますが、請求を行っても債務者が従う保証はありません。そこで、債務者が契約通りに債務者としての義務を全うしなかった場合にも、債権者の利益を守るため、債権者には一定の効力(法律上の効果)が認められています。

債権者の5つの効力

債権者が持つ効力は次の5つです。

給付保持力

債務の履行(実行すること)により、給付(物の引き渡しや金銭の支払いなど)を自身の財産として正当に保持できることをいいます。よりわかりやすくいえば、裁判を介した手続きなどによって、債務者の所有する財産についてその所有を債権者に移しても、法律上問題がないという意味になります。

訴求力(請求力)

債務者が債務を履行しなかった場合に、訴訟などを起こして債権の存在を裁判所に確認してもらうことをいいます。裁判所を介した手続きにより、個人的な契約も公的に認められたものとなり、判決の内容によっては強制執行(財産差し押さえなど)が可能になります。

執行力

債務不履行により訴訟などの法的手段を用いた場合、裁判所が下した判決の内容に従って、強制執行を行うように申し立てることをいいます。

貫徹力

債務者が債務を履行しなかった場合に、債権の内容を債務者の意思に関係なく強制的に実現できることいいます。貫徹力の場合、「債権の内容を実現」とは、“そのままの形で”という意味を含みます。

再び先ほどの例を考えてみましょう。

(例)Aさんは、知り合いのBさんが経営する宝石店より、Xという指輪を購入する約束をした

このケースにおいて、債権者をAさん、債務者をBさんとした場合、Aさんの債権の内容とは、「Xという指輪を引き渡す(Xという指輪の所有をBさんからAさんへ移す)」となります。この債権の内容に従って、Xという指輪そのものを強制的に引き渡すようにするのが貫徹力です。

掴取(かくしゅ)力

一方、掴取力とは、債権を強制的に実行するという意味では貫徹力と同じですが、「債権の内容の実現」はそのままの形でなくてもかまいません。例えば、上の例でいうと、Aさんの債権の内容は「Xという指輪を引き渡す」ですが、Bさんがすでに別の人へXという指輪を売却してしまった場合などは、そのままの形で債権の内容を実現することは不可能です。

この場合、債権者であるAさんは、Bさんに対してXに相当する金銭の支払い(換価)を強制することができ、Bさんが従わなければ財産の差し押さえも可能になります。このような効力を掴取力といいます。

ワンポイントアドバイス
貫徹力と掴取力は、執行力の中に含まれるとする考え方もあります。

債務不履行となった場合に債権者が債務者へ取るべき行動と行使できる権利

ここまで、債権者の定義や債権の種類、債権者の持つ効力について解説してきました。最後に、実際に債務不履行となった場合に、債権者が債務者に対して取るべき行動や行使できる権利について、具体的に解説していきます。

契約や請求の見直し

債務が履行されないとき、まずは「なぜ債務者が債務を履行しようとしないのか」を考える必要があります。ここでは、Bさんを債権者、Aさんを債務者として、もう一度先ほどの例を考えてみましょう。

(例)Aさんは、知り合いのBさんが経営する宝石店より、Xという指輪を購入する約束をした

この場合の債務不履行とは、BさんがXという指輪をAさんに引き渡したにもかかわらず、代金がAさんから支払われなかったことを指します。なぜAさんが代金を支払わないのか考えてみると、例えば次のような理由があるかもしれません。

  • ×月×日までにXを送付してもらう契約だったのに、期日を過ぎて届いた
  • 新品であるはずのXにキズがあり、そのことをBさんに連絡したにもかかわらず、何の返答も得られなかった
  • Xと一緒に請求書を送付するよう伝えていたにもかかわらず、請求書が添付されていなかった

このようなケースでは、まずはAさんが債務を履行しない理由を解決しなければなりません。債務が滞った場合、相手に請求する以前に、債権者自身に落ち度がないか契約書や請求書などを確認することが必要です。

支払いの催促

債務者が特段の理由なく債務を履行しようとしない場合は、法的手段に訴える前に自分で解決する方法があります。

まずは、電話やメールなどで支払いを催促しますが、それらに応じる姿勢がない場合は、内容証明郵便を用いて督促状を送付しましょう。内容証明郵便とは、送った人やもらった人、送った期日、文書の内容などを、郵便局が公に証明してくれる特殊な郵便物です。

後に法的手続きを取る際、証拠としての有効性が高く、また、電話やメールなどに比べて債務者に与える心理的圧力が大きいメリットがあります。内容証明郵便を用いた督促状はネット上などに雛形があるので、自分でも手続きを進めることが可能です。

ただし、内容証明郵便を用いた支払い催促には一定の効果はあるものの、支払いを強制するような力はありません。最終的には、次のような法的手段に訴えることも視野に入れておきましょう。

支払督促や訴訟など裁判所を介した手続きを経て強制執行

債権者が有する効力の1つに執行力がありますが、強制執行はいきなり進められる手続きではなく、その前段階として必ず裁判所を介した以下のような手続きが必要です。

支払督促(仮執行宣言付)

支払督促とは、簡易裁判所が書面を用いて、債務者に対し債務を履行するように催促することです。支払督促に強制力はありませんが、裁判所からの通達であるという点で、内容証明郵便などよりも相手に与える心理的圧力は非常に大きく、支払督促だけでも十分に効果を発揮するケースは少なくありません。

しかし、支払督促を行っただけでは強制執行はできず、仮執行宣言の申し立てという別の手続きが必要になります。仮執行宣言の申し立ては、支払督促の申し立てを行ったのと同じ裁判所に行います。期限は、裁判所から債務者へ督促状の送達後、2週間が経過した日の翌日から30日間です。期限を過ぎると、仮執行宣言を申し立てても受理されません。

仮執行宣言の申し立てが受理され、審査を経て申し立てが認められると、債務者には裁判所より、仮執行宣言付支払督促が送達されます。送達後、債務者から異議の申し立てがなく2週間を経過すると、支払督促が確定します。督促状の内容に従って債務が履行されなければ、強制執行の手続きに踏み切ることも可能です。

民事調停・特定調停

債務の履行に関して債務者と話し合いの余地があれば、裁判官と民間人から構成される調停委員の協力を得て、合意に向けた話し合いを行う調停という解決手段もあります。民事調停とは民事的紛争を解決する一般的な調停、特別調停とは民事調停の中でも債務整理に特化した調停です。

調停で債権者・債務者双方の合意が得られれば調停成立となり、合意内容は調停調書にまとめられます。債務者が調停調書の内容に従って債務を履行しない場合、強制執行が可能です。

ただし、調停はあくまでも話し合いの場であるため、折り合いがつかずに決裂することもあるのがデメリットといえます。調停が不成立となると、最終的には訴訟を起こし、裁判で争うことになります。

訴訟

債権者には法律上、様々な効力があることからも、債務不履行に関して訴訟を起こした場合、請求が認められるケースは多いです。債権者の請求を認める判決が下されれば、判決書の内容に従い、強制執行も可能になります。

とはいえ、裁判の手続きは一般の方には煩雑ですし、時間的、経済的、また精神的負担も大きなものになります。60万円以下の金銭債権のみに限られますが、1回の審理で結審する少額訴訟なら、裁判手続きによる負担はかなり軽減できるはずです。少額訴訟や和解も視野に入れながら、最善の解決法を探っていきましょう。

債権を実現する以外に債権者が債務者に対して行使できる権利

債権者としては、債務者に債務の履行を請求すると同時に、以下のような権利も認められています。

損害賠償請求

債務が履行されなかったことによる不利益に関して、その損害を金銭で賠償するように債務者へ請求することができます。

契約の解除

債務が履行されなかった場合、売買契約などでは、「○○の商品を××円で購入する」といった契約自体をなかったことにする(契約の解除)ことも可能です。ただし、契約を解除するには、事前に一定期間の履行期限を定めた上で債務履行を催促し、催促をしても履行がなかったという事実が必要とされています。

履行期限を定めた催告は、内容証明郵便で行うのが一般的です。また、売買契約ですでに商品代金を支払っているケースなどでは、契約の解除後、裁判所へ既払い金の返還請求を行います。

詐害行為の取り消し

すでに自己の所有する財産に対して債務の方が大きくなっている状態で、債務者が自己の財産を処分すると、「詐害行為」に該当する可能性があります。債務者に財産を勝手に処分されると、債権者は強制執行をしようにも、差し押さえる財産がないことになります。

そこで、債権者には、詐害行為の取り消しを請求する権利が認められています。ただし、詐害行為の取り消しが認められるためには、様々な法律上の要件を満たす必要があります。

ワンポイントアドバイス
訴訟を視野に入れた債権の実行、債権者としての権利行使は、法律の知識が多分に絡む問題です。自身だけで解決しようとすると損をする可能性もあり、弁護士などの専門家の力も借りるのがベストです。

債権者としての正当な権利を行使したい!債権回収は弁護士に相談

ここまで見てきたとおり、債権者にはさまざまな権利が認められていることがわかります。とはいえ、履行する意思のない債務者に対して債権を実現するように求めることは、なかなかに骨が折れるもの。債務者が取り合ってくれない場合、債権者としての自身の利益を失わないためにも、早めに弁護士などの専門家へ相談するのがベストです。

なお、債権は、債権者本人が死亡した場合は相続人に相続されるため、債務者の債務履行義務がなくなることはありません。相続が絡むとさらに問題は複雑化するため、問題の迅速な解決のためには、弁護士に相談しましょう。

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