閉じる

33,867view

夫(妻)の借金の返済義務は配偶者にある?正しい知識や連帯保証人時の対処法を紹介

この記事で分かること

  • 夫がつくった借金が”日常家事債務”なら妻にも返済義務があり、“個人的な借金”なら妻には返済義務はありません。
  • 妻が夫の借金の保証人/連帯保証人になっている場合は、借金の種類にかかわらず妻にも返済義務があります。
  • 妻が夫の借金の保証人/連帯保証人になっているときは、妻も一緒に債務整理することを検討しましょう。

夫がつくった借金を妻が返済しなければならないかどうかはケースバイケース。どのような場合に妻が夫の借金を背負ってしまうのか、また、借金問題の解決法について解説します。

夫(妻)がつくった借金は配偶者が返済義務を負う?

「夫が勝手につくった借金、妻だからって代わりに返済しないといけないの?」

多くの方がこのような疑問を抱えているのではないでしょうか。夫がつくった借金は妻にも返済義務があるのか、法律の観点から考えてみましょう。

借金は原則として、つくった本人だけのもの

借金は原則として、借りた本人だけが返済の義務を負います。「家族だから」「配偶者だから」と債務者(お金を貸した側)から支払いを迫られることもあるかもしれませんが、家族や配偶者が本人の代わりに借金の返済義務を負うような法律上の規定は一切ありません。

あまりにしつこく迫られる場合は法的措置も視野に入れ、弁護士など法律の専門家へ相談しましょう。

“日常家事債務”は夫婦がお互いに返済義務を負う

一方で、夫婦関係の場合、夫がつくった借金が“日常家事債務”にあたる場合は、妻も同時に借金を支払う義務を負います。

夫婦にはお互いに婚姻生活を維持するべく協力し合い、生活費を負担する義務(協力・扶助義務)があります。このような義務が法律に規定されていることからもわかるとおり、夫婦関係のひとつの特徴は、共同性を有していることにあるといえます。

そこで、借金は原則本人だけのものではあるが、「婚姻生活を維持していくために必要な日常の家事などから発生する借金については、夫婦が連帯して支払責任を負う」と考えてよいとされています。これを“日常家事債務”といい、民法という法律にも規定されています。

日常家事債務にあたるとされるのは、例えば以下のような費用に関する借金です。

  • 家賃、住宅ローン
  • 水道光熱費
  • 医療費
  • 子どもの養育費や教育費
  • 娯楽費、交際費
  • 家具家電や日用品、食品、その他生活必需品などにかかる費用
  • 衣服や化粧品、服飾品などにかかる費用(収入などに照らし合わせて分相応と判断されるもの)

などです。つまり、夫の借金が上記のような日常家事債務にあたる場合は妻にも返済義務があり、婚姻生活とは無関係の夫の個人的な借金(ギャンブルや趣味への浪費など)の場合は妻に返済義務はない、といえます。

とはいえ、“日常家事債務”と“個人的な借金”の線引きは、非常に難しいもの。たとえば、自動車の購入費用に対する借金は、購入したのが夫婦の職業や社会的地位・収入などから考えて分相応の金額の自動車であれば、日常家事債務にあたるでしょう。

しかし、車好きの夫が私欲を満たすため、明らかに生活必需品の範囲を超えた高級車を購入したとすれば、そのための借金は日常家事債務とはいえない可能性があります。

ワンポイントアドバイス
裁判においても、日常家事債務であるかそうでないかの判断では、借金の金額や目的の他、個々の夫婦間の様々な事情が考慮されます。どこまでが民法上の“日常家事債務”の範囲かは一般の人には判断が難しいため、夫婦間の借金に関するトラブルは弁護士へ相談してみましょう。

夫(妻)の借金が判明した場合に配偶者がとるべき対処法

ギャンブルや趣味に対する浪費などのために夫が個人的に借りたお金には、妻に返済義務はありません。

とはいえ、夫の借金を放置していては、いずれ生活費や子どもの養育費・教育費にまで手を出される可能性も……。夫の借金に気づいたとき、妻がとるべき正しい対処法を以下にまとめます。

夫が個人でつくった借金は肩代わりしてはいけない

くり返しになりますが、夫が婚姻生活から離れたところで個人的につくった借金は、妻に一切の返済義務がありません。ですから、本人に「代わりに払ってくれ」といわれても、債権者から「配偶者なのだからご主人の借金を払ってください」といわれても、夫の借金を肩代わりしないようにしましょう。

夫の代わりに妻が借金を肩代わりすることはつまり、夫が自分でつくった借金にもかかわらず、夫自身の努力なしに借金が帳消しになるということです。

そのときは感謝されるかもしれませんが、身を持って返済の苦労を知らなければ、「お金を借りる枠が増えた」くらいに思われる可能性は非常に高いといえるでしょう。

夫の借金がこれ以上大きくならないようにするには、むやみに借金を背負ってくるような“借金ぐせ”を根本的になくすことが重要です。「自分の借金は自分で返させる」ということを肝に銘じておきましょう。

夫の借金問題を解決する4つの対策

では、夫自身に借金を返済させる、そして、今後借金をつくらせないようにするためには、具体的にどのような対策をとればよいのでしょうか?ポイントは以下の4つです。

まずは借金額を正確に把握

まずは、借金の全体像を把握することが重要です。どの貸金業者からいくら、いつから借り入れがあるのか、本人と一緒に確認していきましょう。すべての借金を確認するには、本人でなければ申請はできませんが、信用情報機関(クレジット払いなど、個人の信用取引に関するデータを管理している機関)へ情報開示を申請するのがもっとも簡単かつ正確です。

夫の収支を管理する

夫婦で財布が分かれていたり、家計の管理を夫が行っていたりすると、借金の返済が滞ったり新たに借金をしたりしても、隠される可能性があります。夫の借金が判明した時点で自分が家計を管理するようにし、手渡しした金額の中から計画的に借金を返済させるようにしましょう。

借金ぐせが直らないようなら第三者へ相談

現在の借金の状況をすべて話してもらい、夫の収支を妻が管理するようにしても借金ぐせが直らないときには、第三者の力を借りるのもおすすめ。

借金をしている本人は借金の事実を隠したいと思っていますし、隠せている間は借金をくり返しても大した問題ではないと思っています。

そこで、お互いの両親など夫婦にとって身近な人に相談することで、「借金を続けることはいけないことだ、家族に迷惑をかけることだ」と自覚させるのもひとつの方法です。

また、夫を連れて心療内科や公的機関などのカウンセリングを受けに行ったり、同じような悩みを持つ人たちが問題解決のために活動している自助グループに参加してみたりするのも有効でしょう。

コツコツ返済していくのが難しい額なら債務整理も視野に

夫の借金額がすでに収入や貯蓄の範囲で返済できる範疇を超えているならば、債務整理で借金自体を減らすことも検討しましょう。債務整理を行うと、少なくとも5年程度は新たな借り入れやクレジットカードの契約などができなくなりますから、本人が借金をやめるきっかけにもなり得ます。

ワンポイントアドバイス
債務整理には主に、任意整理、個人再生、自己破産の3つの種類があります。どの方法で借金を減らすのが最適であるかなどの判断は、弁護士など法律の専門家へ任せましょう。

夫(妻)の借金の保証人/連帯保証人になっている場合の返済義務は?

ここまで、「借金は原則として、借金をつくった本人だけが返済義務を負う」ことを解説してきました。

しかし実は、借金をつくった本人ではなくとも、返済の義務を負うケースがあります。

夫の保証人/連帯保証人になっている場合は妻にも返済義務がある

保証人や連帯保証人とは、債務者(お金を借りた側)本人が何らかの理由で返済ができなくなったときに、債務者の代わりにお金を返していく義務を負う人です。

そのため、夫がつくった借金がたとえ婚姻生活とは無関係の個人的なものであっても、妻が保証人や連帯保証人になっていれば、妻には夫の借金を返す義務が発生します。

保証人と連帯保証人の違いは?

保証人と連帯保証人を混同している方も少なくありませんが、借金問題を考えるとき、“連帯”という言葉がつくかつかないかは非常に大きな問題です。

まず保証人とは、債務者の借金を返済する義務は負いながらも、以下のような権利を有している人をいいます。

  • 催告の抗弁:債権者から支払い請求がきたときに、「まずは債務者本人に請求してください」と主張すること
  • 検索の抗弁:債権者から支払い請求がきたときに、「債務者本人に支払い能力がなければ、債務者の財産を差し押さえてください」と主張すること
  • 分別の利益:債務者の借金を代わりに返済しなくてはならなくなったときに、借金総額を保証人の数で割った金額のみ負担すればよいこと(例:総額500万円の借金に対して5人の保証人がいる場合、100万円に対してのみ返済義務を負う)

連帯保証人とは、上記3つの権利を持たない保証人のことをいいます。債務者と“連帯して”責任を負うのですから、連帯保証人には債務者本人とほとんど変わらない(債務者の借りたお金が500万円なら、連帯保証人も500万円全額に対して責任を負う)返済義務があるのです。

保証人/連帯保証人になっている妻は夫と一緒に債務整理

夫の借金の保証人や連帯保証人になっている場合、たとえ離婚して夫婦の縁が切れたとしても、妻の返済義務がなくなることはありません。妻が夫の借金の返済から逃れるためには、債務整理で借金自体を減らしたりなくしたりするしか方法はないのです。

また、妻が夫の保証人や連帯保証人になっている場合、特に連帯保証人であれば、夫の借金を債務整理でなくしたところで、返済義務がそのまま妻にうつるだけとなります。返済が難しい場合は、妻も一緒に債務整理しなければならないことを念頭に置いておきましょう。

ワンポイントアドバイス
妻以外にも保証人や連帯保証人がいる場合、債務整理をすることで、その人たちに多大な迷惑をかけることになる可能性もあります。借金問題の解決に困ったら、まずは弁護士など法律の専門家へ相談してみてください。

夫妻の借金問題の解決は弁護士に相談

これまでみてきたとおり、日常生活に関係のない個人的なものであれば、妻が夫の借金を返済する義務はありません。

とはいえ、「借金をくり返してしまう」という根本的な問題の解決には、配偶者や家族のサポートが欠かせないのも事実です。夫個人の問題と突き放すのではなく、一緒に解決していくという意識を持っておきましょう。

「夫の借金をどうにかしたい」と考える中で、債務整理など法的な問題にぶつかったときには、弁護士などの法律の専門家へ相談するのが一番です。借金は今後の人生にも大きく影響する問題ですから、どのように解決を図るのがベストなのか、専門家と一緒に探っていきましょう。

債務整理は弁護士に相談を
あなたの借金問題解決を法律のプロがサポート
  • 借入先が複数ある多重債務で返済が苦しい
  • 毎月の返済が利息で消え、借金が減らない
  • 借金の返済額を少なくしたい
  • 家族にバレずに債務整理したい
  • 借金を整理しても自宅・車は残したい
上記に当てはまるなら弁護士に相談