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税金を滞納するとどうなる?差し押さえリスクもはらむ税金滞納後の流れ
この記事で分かること
- 税金を滞納すると、高額の延滞税が発生します。
- 滞納した税金と延滞税の支払いを無視し続けると、給与やマイホームなどの財産が差し押さえられます。
- 滞納した税金の支払いは、債務整理でも免除されません。
税金滞納は、財産を差し押さえられるという大きなリスクをはらんでいます。財産を差し押さえられると、日々の生活が脅かされることはいうまでもありません。「払わなくても大丈夫」ではなく、税金滞納によるリスクを正しく知ることが重要です。
目次[非表示]
税金を払わないとどうなる?税金滞納がはらむリスク
債務の中では支払いを後回しにする方も多い税金(住民税や健康保険料、自動車税、固定資産税など)ですが、税金を滞納することは非常に大きなリスクをはらんでいます。税金が払えないと悩んでいる方はまず、税金を払わないことでどのようなことが起こるかを把握しておきましょう。
延滞税が発生する
税金を納付期限までに支払わなかった場合、納付期限からの結果日数に応じて延滞税が課せられます。つまり、税金をきちんと期限までに支払わないと、未納分に加えて延滞税を支払わなければならず、税金を支払わない状態を続けることで債務がどんどん膨れ上がっていくことになります。
税金の未納により課せられる延滞税は、利率が高いのも特徴です。延滞が発生した期間によっても異なりますが、納付期限の翌日から2ヶ月が経過するまでの利率は原則7.3%/年、納付期限から2ヶ月が経過した日以降の利率は原則14.6%/年となります。
財産を差し押さえられる
税金の滞納を続けていると、最終的には財産を差し押さえられます。税金に対し、住宅ローンやカードローンなど金融機関や貸金業者が貸し付けているお金を一般債権といいます。一般債権の場合、訴訟を起こすなど裁判所での手続きを経て債務名義を取得しなければ、債務者の財産を差し押さえることはできません。
一方税金の場合は、滞納があったときには、裁判所での手続きを経ずに財産差し押さえの手続きに入ることができます。例えば、税金の一種である住民税の場合、督促状を送付したときから10日が経過すると、財産を差し押さえることができると法律で定められています。
税金滞納から差し押さえまでの流れ
税金を滞納すると最終的には財産を差し押さえられることもありますが、納付期限を過ぎたからといってすぐに差し押さえの手続きが進められるわけではありません。ここでは、税金滞納から差し押さえまでの具体的な流れを見ていきます。
差し押さえまでの期間・対応は税の種類や自治体によってさまざま
一般的に、税金を滞納してから財産を差し押さえられるまでの流れは以下のようになっています。ただし、対応方法や差し押さえが実行されるまでの期間は税金の種類や国・自治体によって異なるため、必ずしも以下のようになるわけではないことを理解しておきましょう。
税金の滞納
納付期限を1日でも過ぎれば、税金の滞納に該当します。
文書による催告
税金を滞納し続けた場合、まずは文書により支払いを促されるのが一般的です。現時点で支払うべき金額(滞納している税金の本税+滞納期間に見合った延滞税)や納付期限などが記載されている書類と一緒に、納付書が同封されています。
税金の滞納後、はじめに送られてくるのが「督促状」です。法律上は、納付期限から20日以内に督促状を送り、未納分の納付がなければ、督促状を発してから10日を経過すれば財産の差し押さえができることになっています。
しかし、自治体によって対応方法は異なるものの通常は、督促状送られてからすぐに財産差し押さえの手続きが進められるわけではありません。督促状を無視した場合には「催告書」、催告書が送られてきたにもかかわらず滞納分を支払わなかった場合はさらに「差押予告書」が送られます。
文書の内容はいずれも「滞納している税金を払ってください」というものですが、督促状、催告書、差押予告書の順に差し押さえのリスクが高くなり、差押予告書が届くと、いつ差し押さえが実行されてもおかしくないと考えられます。
電話・訪問による催告
差押予告書が送られてきても税金を支払わなかった場合は担当者(住民税の場合は役所の納税課などが担当)より、電話や自宅訪問などで支払いを促されるケースもあります。ただし、対応方法は自治体などによって大きく異なるため、電話や訪問による催告なしに文書による催告のみで差し押さえの手続きを進められることもあります。
財産調査
滞納者の収入や生活状況、保持している財産などを調査し、どのような財産を差し押さえるべきか決定します。
差し押さえ
給与や預貯金は差し押さえた金額を、不動産や動産などは換金してその金額を滞納金へ充当します。また、給与を差し押さえた場合は勤務先へ、預貯金の場合は口座を開設している金融機関などへ、不動産の場合は抵当権者などへ差押通知書が送付されます。これにより、勤務先や金融機関などへ税金を滞納していた事実が知らされることとなります。
税金の滞納分に充てられるだけの給与や預貯金、不動産がない場合は自動車などの動産が差し押さえの対象となる可能性がありますが、動産が差し押さえられる場合は、自宅や自営業者では事務所などに捜査が入ることもあります。
税金滞納における差し押さえの対象とその範囲
続いて、税金の滞納によって差し押さえられてしまう財産と、その範囲について解説します。
給与
差し押さえられる財産の対象として代表的なのが給与です。給与を差し押さえられると勤務先へ通知され、差し押さえ分の金額を差し引かれた上で給料が支払われることになります。差し押さえ分の天引きは、滞納分の支払いが終わるまで翌月以降も継続します。
ただし、税金滞納による差し押さえの場合、差し押さえてはいけない金額が決められており、下記の5項目をすべて合算した金額となります。
- 所得税額
- 住民税額
- 社会保険料
- 最低生活費:滞納者本人やその家族が、毎日の暮らしを維持していくのに最低限必要な費用のこと。本人を10万円とし、これに生計を同じくする親族の数×4万5,000円を加算することができます。
- 体面維持費:収入に見合った社会的地位や体裁を維持するのに必要と思われる費用のこと。「{(毎月の給与)-(②+③+④+⑤)}×0.2」という計算式で算出されます。
下記の例で差し押さえの禁止額を算出してみましょう。
例)毎月の給与が30万円、①+②+③が1ヶ月あたり6万円、同一生計の親族が2人(妻と子ども1人)いる場合
- 最低生活費:10万円+(4万5,000円)×2=19万円
- 体面維持費:{30万円-(6万円+19万円)}×0.2=1万円
となるため、
禁止額は6万円+19万円+1万円=26万円
このように算出されます。
つまり、毎月の給与が30万円ですから、税金の延滞によって差し押さえられる金額は、30万円-26万円=4万円 となるわけです。
預貯金
預貯金も差し押さえの対象となる財産のひとつですが、預貯金には給与のように差し押さえる額に上限がありません。そのため、口座の全額を差し押さえられることもあります。
不動産(マイホーム)
不動産が差し押さえられると、不動産の所有者(滞納者)の意思にかかわらず、国税庁や地方自治体によって対象の不動産が売りにかけられ(公売)、その売却額が滞納分の税金に充てられます。公売の場合、市場価格(不動産を普通に売りに出したときの価格)の7割程度と、低い価格で取引される可能性が高いデメリットがあります。
通常は、給与や預貯金を差し押さえた後、それでも滞納分を完納できない場合に、不動産を差し押さえて公売にかける流れが一般的です。一方で、給与の差し押さえの場合は勤務先へ通知しなければならず、滞納者が社会的信用や職を失う可能性もあることから、不動産の差し押さえが優先されるケースもあります。
ただし、不動産が差し押さえられたからといってすぐに公売にかけられるわけではなく、担当者との交渉次第では、滞納した税金を支払うまでに一定の猶予をもらえる場合もあります。滞納分を完納すれば不動産の差し押さえは解除されますが、一度不動産が差し押さえられるとその履歴が残るため、その後の借り入れなどに影響する可能性はあります。
動産
給与や預貯金、不動産の差し押さえが優先されますが、差し押さえられるものがなければ最終的には自動車や自宅にある美術品、骨董品といった金銭的価値のある動産も差し押さえの対象になります。ただし、日常生活を送るために必要なもの(家電や調理器具など)は差し押さえの対象とはなりません。
家族名義の財産はどうなる?
税金の滞納によって差し押さえられる財産は、滞納者本人のものだけです。そのため、税金を滞納したからといって、自分の家族名義の財産まで差し押さえられることはありません。ただし、自分か家族か名義のはっきりしない財産などは、実質的に滞納者本人のものと認められれば、差し押さえの対象となる可能性があります。
税金滞納により財産が差し押さえられたら
税金の滞納により財産が差し押さえられてしまうと、基本的には滞納分を完納しない限り、差し押さえが解除されることはありません。
滞納金や延滞金を免除してもらう方法は?
税金の滞納は、自己破産や個人再生などの債務整理を行っても、免除・減額されないことに注意が必要です。ただし、生活が著しく困窮しているなどの事情がある場合に限り、「滞納処分の停止」を適用することで、滞納分の支払いを免除してもらえる可能性があります。
とはいえ、滞納処分の停止が適用されるための条件は非常に厳しく、よほどのことがなければ支払いを免除してもらうことは難しいと思っておいた方がよいでしょう。
滞納金や延滞金に時効はある?
税金の滞納金や延滞金には5年の時効があります。しかし、滞納者に対して「督促状や催告書など支払いを促す書類を送る」「電話や訪問により支払いを促す」「差し押さえの手続きを進める」などの行為を行うことにより、時効を中断させることができます。
時効の中断とは、リセット、つまり、時効のカウントが0に戻るということなので、時効が成立するのは容易ではありません。時効を待って滞納金などの支払いから逃れることは、現実的な選択ではないといえるでしょう。
税金の分割払い(延納)に潜むリスク
どうしても税金を支払うことができない場合には、担当者との話し合いにより、税金の分割での支払い(延納)を認めてもらうことも可能です。
ただし、安易な分割払いの選択はおすすめできません。なぜなら、滞納金を分割で支払っている間に次の税金の納付期限が到来し、毎月少しずつ税金を支払っているはずなのに、高利率の延滞税によりどんどん未納分が増えていく、といった事態に陥ることが珍しくないからです。
分割で支払っても滞納分を完納できる見込みがない場合、もしも不動産(マイホーム)を所有しているなら、税金滞納により財産を差し押さえられる前に、任意売却に踏み切る選択肢もあります。任意売却であれば住宅ローンが残っている物件でも売却でき、売却益を滞納している税金の支払いに優先して充てることも可能です。
税金滞納で困ったときは弁護士に相談
会社に勤めている方の場合、住民税や健康保険料は給与天引きとなるため、税金を滞納する心配などないと思われるかもしれません。しかし、マイホームを持っていれば、住宅ローンを支払っている最中でも毎年固定資産税を払わなければなりませんし、自動車を所有していれば自動車税も払わなければなりません。
年20万を超える副収入(給与所得とは別の収入)があれば、所得税もかかってきます。これらはすべて税金ですから、支払いが遅れてしまうことにより、思いもよらぬ債務を抱えてしまう可能性は誰にでもあるのです。
税金滞納の場合、放置すればするほど延滞税が発生するため、いかに早く対処するかがポイントとなります。差し押さえ前であれば任意売却などの選択肢も残されていますから、困ったときにはお早めに弁護士へご相談ください。
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