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住宅ローン滞納…マイホームはどうなる?滞納後の流れと正しい対処法

この記事で分かること

  • 住宅ローンを滞納していると、マイホームを競売にかけられて安く売却される可能性があります。
  • 滞納があっても放置をせず、できるだけ早く借り入れ先の金融機関へ相談しましょう。
  • 競売が確定した後も、任意売却ならマイホームを安く売られるリスクを軽減できる可能性があります。

住宅ローンの延滞や滞納は、マイホームという大切な生活の基盤を失うことにつながります。やむなく滞納してしまったときに取るべき正しい対処法を知っておきましょう。

住宅ローンの滞納を放置していると…?

「子どもの教育費がかさんで毎月の住宅ローンの返済が厳しい……」そんな理由から滞納を続けていると、どのようなことが起こるのでしょうか?

マイホームが売却されてしまうリスクがある!

住宅ローンを支払わないまま放置していると、マイホームが競売にかけられ売却されてしまう可能性があります。

競売とは、住宅ローンの滞納があった場合に、売却益を回収できなかった債権(借金)に充てるため、住宅ローンを契約している金融機関がマイホームを売りに出すことをいいます。住宅ローンを契約する際、購入するマイホームには、契約する金融機関より抵当権が設定されます。

抵当権とは、債務者(お金を借りる側)が万が一契約通りに返済をしてくれなかったときの保障として、債権者(お金を貸す側)が不動産などを担保にする権利のことです。抵当権を設定しておくと、担保にしていたものが売却されたときは、回収できなかった債権の弁償として抵当権設定者が優先的に売却益を得られます。

競売は債権者の抵当権行使に基づいて行われる法的な手続きであり、マイホームの所有権を持っていることを理由に拒むことはできません。

一度でも延滞をしてしまうと利息が跳ね上がるリスクも

マイホームが競売にかけられて売却されてしまうのは、滞納を続けた場合です。数回滞納をしてしまったからといって、マイホームがすぐに競売にかけられるわけではありません。

ただし、たった一度でも住宅ローンを延滞してしまうと、次月以降の住宅ローンの支払いより、利息の負担が大きくなってしまう可能性があります。契約する住宅ローンにもよりますが、ローン契約当初は、各金融機関が提示している基準金利よりも低い金利での契約になっていることが多いです。

しかし、たった一度でも住宅ローンを延滞してしまうと、金利の優遇が受けられなくなり、翌月から当初の契約よりも高い基準金利に引き上げられることがあります。金利が上がれば当然ながら利息が増え、毎月の支払い額も多くなります。

基準金利への引き上げをどの段階で検討するかは契約する金融機関次第ですが、たった一回の延滞でも金利を引き上げられる可能性は十分にありますから、「ちょっとだけなら……」などと思わず、毎月きちんと支払うことが大切です。

ワンポイントアドバイス
たまたま引き落とし口座に入金が間に合わなかったなどのトラブルの場合は、数日内の延滞であれば不問にしてもらえる場合もあります。万が一住宅ローンを延滞・滞納してしまったら、放置せずにすぐ金融機関へ相談しましょう。

住宅ローン滞納から競売までの流れ

住宅ローンを滞納しても、すぐにマイホームが競売にかけられるわけではありません。では、滞納してしまってからマイホームが売りに出されてしまうまで、どれくらいの猶予期間があるものなのでしょうか?ローン滞納から競売までの流れを追ってみましょう。

【危険度1】催告書が届く(滞納から約1ヶ月)

「×月×日までに滞納金とその時点での遅延損害金を支払ってください」といった内容の通知です。競売までの道のりでいうと、催告書はまだ初期段階。厳しい取り立てに遭うといったこともまずありません。この時点で支払いが遅れている住宅ローンと遅延損害金を支払ってしまえば、マイホームが競売にかけられることはありません。

【危険度2】督促状が届く(滞納から約2~3ヶ月)

文書の内容は催告書と同様ですが、督促状になると催告書よりも取り立てが厳しくなり、金融機関から支払いを促す電話がかかってくることもあります。

また、督促状がくる頃になると、住宅ローンの支払いが数ヶ月分たまっており、支払うべき遅延損害金もより大きくなっているはずです。しかし、督促状が届いた時点で、滞納分と遅延損害金の全額を期日までに一括で支払えなければ、競売のリスクはかなり高まると思ってください。

【危険度3】「期限の利益の喪失通知」が届く(滞納から約3~6ヶ月)

「期限の利益」とは簡単にいうと、「分割で支払ってもよい」という契約です。この契約が無効になることを「期限の利益の喪失」といい、期限の利益が喪失したことを告げる通知書が届くと、その時点で分割払いが不可能になります。

つまり、その時点での滞納分と遅延損害金を含む住宅ローンの残高全額を、期限までに一括で支払わなければならないのです。ローンの滞納を続けている人がローン残高を一括で支払える可能性は非常に低く、期限の利益の喪失通知が届いてしまうと、競売のリスクはいよいよ高くなります。

期限の利益の喪失が通知される前、督促状の段階であれば、返済は滞納分とその時点での遅延損害金だけで済みますから、なるだけこの段階できちんと支払いを済ませるのが得策です。

【危険度4】代位弁済(債権譲渡)通知が届く(滞納から約6ヶ月)

債権の保証会社が債務者の代わりに、住宅ローンの残高を一括で支払うことを「代位弁済」といいます。代位弁済通知は、住宅ローンの債権者がローンを契約する金融機関から保証会社に代わったことを意味する通知です。

債務者からすれば、住宅ローンの残高を一括で支払わなければならないことは変わりませんが、支払先が金融機関から保証会社へと変更になります。代位弁済通知は、競売の一歩手前。期限までに保証会社へ滞納分を含む住宅ローン残高を一括で支払えなければ、いよいよマイホームが競売にかけられる可能性は濃厚になります。

【危険度MAX】競売開始決定通知が届く(滞納から約6~8ヶ月)

競売開始決定通知書は、金融機関や保証会社から送られてくるものではなく、裁判所からの通知です。すでに競売にかけられることが決定し、マイホームが担保物件として差し押さえられた状態となります。

競売開始決定通知が届くと、マイホームを所有者の自由に売却したり処分したりすることができなくなります。また、この後に競売の手続きが進められ売却が決定すると、マイホームに住み続けることはできず、すみやかに退去しなければなりません。

しかし実際には、競売開始決定通知書が届いてからマイホームが売却されて退去せざるを得なくなるまでには、6ヶ月~1年程度の期間があります。そのため、この間にマイホームが競売で売られてしまわないための手立てを行うことは不可能ではありません。

競売開始決定通知書が届いてから退去に至るまでの流れは次の通りです。

【1】現況調査

裁判所から派遣された執行官と不動産鑑定士が自宅を訪ね、自宅の内部の確認や写真撮影、周辺環境の調査などを行います。現況調査をもとに、不動産鑑定士がマイホームの評価額を算出します。また、競売で物件を購入する際には内覧ができないため、落札者は現況調査で撮影された写真などをもとに、入札するかどうかを決定します。

【2】入札通知

入札の開始、結果の通知日、入札期間などを知らせる通知が届きます。

【3】公告・入札開始

マイホームの住宅情報がインターネット上に公開され、入札期間に入ると入札が開始されます。

【4】開札・落札

入札期間が終了すると、もっとも高額を提示した人が落札者となり、代金が支払われればマイホームの所有権は落札者に移ります。落札後は、すみやかにマイホームから退去しなければなりません。

ワンポイントアドバイス
競売にかけられるまでの危険度が高くなっていくにしたがって、取れる手立ては少なく、また、債務者にとって不利なものになっていきます。できるだけ早い段階で、正しい対処を行いましょう。

住宅ローン滞納者がすべき正しい対処法

やむなく住宅ローンを滞納してしまった場合、もっともしてはいけないのは、滞納状態のままで放置することです。競売でマイホームを安くたたき売られてしまう最悪の事態を避けるためにすべき正しい対処法を知っておきましょう。

マイホームを手元に残す2つの方法

「住宅ローンは払えないのは病気などが原因で一時的」「マイホームはどうしても残しておきたい」という場合、住宅ローンの滞納後もマイホームを維持できる可能性のある方法が2つあります。

支払いが厳しくなったらできるだけ早く金融機関に相談

できれば返済が厳しいとわかった時点で、それが難しければ遅くとも催告書・督促状が届いた段階で、借り入れ先の金融機関へ返済計画の見直しを相談しましょう。金融機関や支払いの状況によっても異なるため一概にはいえませんが、返済期間を延長して毎月の返済額を減らすなど、何らかの救済策を提示してもらえる可能性は大いにあります。

ただし、金融機関と交渉の余地があるのは、代位弁済が実行される前までです。代位弁済通知が届いた後では債権者が保証会社へと変わってしまうため、金融機関への相談は不可能になります。

個人再生の住宅ローン特則を利用

個人再生とは、資産としてマイホームを残しつつ借金を減額する債務整理の一種です。住宅ローン特則を同時に申し立てることでマイホームの保持は可能ですが、住宅ローンそのものを減らすことはできません。個人再生が認められれば、その後は毎月の返済額を返済可能な範囲で調整し、改めて返済計画を立てることになります。

ただし、個人再生が認められるのは、競売の開始が決定する以前となります。また、代位弁済が実行されてから6ヶ月が経過すると、競売が決定していない段階でも個人再生の制度を利用することはできません。

競売を避ける方法

住宅ローン以外に借金がなく、これ以上住宅ローンを支払い続けることが難しい場合には、マイホームを手放すしかありません。

しかし、競売では通常の売却価額の7割程度でしか評価されないとされており、競売にかけられてしまうと、住居を失った上にその後も重い借金負担に苦しむことになりかねません。そこで、競売でマイホームを安くたたき売られないための方法が2つあります。

任意売却を検討する

通常、住宅ローンの残高が残っている状態ではマイホームを売りに出すことはできませんが、借り入れ先の金融機関と交渉して抵当権を外してもらい、売却手続きを進めることを任意売却といいます。

任意売却では、競売よりも高く売れる可能性があり、その分住宅ローンの支払いに充てられる金額が増えます。

競売では売却益はすべて住宅ローンの返済に充てられてしまいますが、任意売却では金融機関と交渉することにより、売却益の一部を引っ越し代金などのために残してもらえる余地があります。さらに、これも交渉次第ではありますが、引っ越しスケジュールを鑑みて、退去の時期を調整してもらえる可能性もあります。

もちろん、任意売却にはデメリットもあります。マイホームは売りに出したからといって必ず売れるわけではありませんから、買い手がつかなければ結局は競売にかけられてしまいます。また、必ず競売より高値で売れるとも、金融機関が交渉に応じてくれるとも限りません。

任意売却を成功させるポイントは、可能な限り早めに行動を起こすことです。競売開始決定通知が届いた以降も手続きが可能な点が任意売却のメリットのひとつですが、競売にかけられるまでに残された時間が短ければ短いほど、債務者の不利に働きます。

また、任意売却は多分に法知識を必要とする専門的な手続きですから、専門の業者に任せるのがベストです。その際、依頼する業者の経験値や交渉力なども、任意売却の成功を左右する重要なポイントになります。

自己破産という選択も

任意売却や競売を経ても住宅ローンを完済できなければ、その後も残ったローン残高は払い続けなければなりません。

その返済が厳しい場合には、必要最低限の財産を手放すことで税金以外の借金を0にする自己破産という方法が利用できます。しかし、借金に保証人がついている場合など、一部の人は自己破産を利用できません。また、自己破産も法手続きですから、専門家に依頼して正しく進めるのが賢明です。

ワンポイントアドバイス
自己破産はあくまでも最終手段。自己破産以外に取れる手段がないとなるまで滞納を放置せず、早い段階で適切な対処を行いましょう。

住宅ローン滞納による任意売却などは弁護士へ相談

個人再生、任意売却、自己破産など、住宅ローンの滞納にともなって発生するさまざまな手続きは、法律の知識を有する専門家が行わなければ、大きな損や不利益を被る可能性があります。住宅ローンが支払えず困っている方はできるだけ早く、弁護士へご相談ください。

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