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シングルマザーの自己破産による生活への影響は?注意点や他の解決策も確認
この記事で分かること
- 自己破産に子どもへの直接的な影響はないが、間接的な影響はある。
- クレジットカードが使えない、奨学金の保証人になれない、財産を処分しなければならない、などの影響がある。
- 自己破産をする場合、一定の費用がかかること、手続き中は職業制限があること、保証人に一括請求がいくこと、に注意すべき。
- 自己破産以外の方法として、シングルマザー向けの相談窓口に相談すること、公的支援を受けること、他の債務整理方法を検討すること、などがある。
シングルマザーが自己破産をする場合、子供への影響を第一に考えるべきです。特に、持ち家がある場合や一定の財産を所有している場合は処分しなければいけないため、引越しなどで子どもにも影響が出ます。また生活への影響により一定の不便を感じてしまうこともあります。ここで事前に知っておくべき注意点や自己破産のデメリットを乗り越える方法などを学んでおきましょう。
目次[非表示]
シングルマザーが自己破産するのは危険?
シングルマザーが自己破産を検討する場合、今後の生活へのリスクなども一緒に考える必要があります。そこで、シングルマザーが抱えがちな自己破産への不安について最初にお答えします。
親の自己破産は子供に影響する?
自己破産の手続きを検討している方は、「自己破産で借金が免除されるなら生活も楽になる」と考えるでしょう。確かに自己破産をすれば借金はなくなるため、生活は楽になります。しかし、それ以外の悪い影響も考えなければいけません。特にシングルマザーの場合、子どもへの影響が心配な方も多いのではないでしょうか?
結論からいうと、シングルマザーが自己破産したとしても子どもに直接的な影響はないということを最初に理解しておいてください。自己破産をしても自己破産の手続きで不利益を受けるのは、手続きを行う申立人のみです。子どもや親族まで金融機関のブラックリストに載るなどの影響はありません。
学校を転校するなどの間接的な影響はある
しかし、間接的な影響は考えられます。というのも、子どもの場合は親の経済状況に依存しているため、さまざまな生活面への影響が考えられるからです。
例えば、持ち家の処分により引越しが必要であり学校を転校せざるをえなくなるなどが直近で考えられます。
自宅を所有されている方は、住む場所が奪われてしまうことによる生活面への影響が大きいでしょう。
もっとも、賃貸の場合も支払いをしていれば問題はありません。また公営住宅を追い出されることはないため、安心してください。
自己破産したことは近所の人や職場にバレる?
またもう1つの大きな心配は「周囲に自己破産の手続きを行ったことを知られてしまうのでは?」というものではないでしょうか。
子どもがいる場合、「ママ友に変な目で見られないか」「子供がいじめられるのでは?」など不安はつきません。
確かに自己破産の手続きについては周囲に知られる危険はあります。しかし、これは滅多にない危険といえます。
というのも、一般の人が知る機会は少ないといえるからです。
自己破産したことを周囲に知られるリスクは極めて低い
自己破産をすると官報という国が発行する機関紙にあなた氏名などの個人情報が掲載されます。
しかし、実際のところ「官報」というものが存在すること自体知っている人は稀です。
銀行に勤めている、クレジットカードの審査を担当しているという場合でない限り、わざわざ官報を閲覧して個人の名前を探すことはないでしょう。
同様の理由から、職業上官報を閲覧する機会がない限り、職場の人に知られることもありません。
唯一考えられるリスクとしては、引越しなどで理由を尋ねられる場合です。子どもや周囲の人に自己破産のことを漏らさなければ、特に周囲にバレることを恐れる必要はないでしょう。
このように子どもへの間接的な影響を心配する必要はありますが、「周囲にバレる」という点はそれほど気にかける必要はないでしょう。
自己破産によるシングルマザーの生活への影響
自己破産の手続きをすると、生活面に影響が出ます。
ではシングルマザーが自己破産をする場合には、具体的にどのような影響が出るのでしょうか。内容を一緒にチェックしていきましょう。
クレジットカードが使えなくなる
生活面への直接の影響として考えられるのは、クレジットカードが使えなくなってしまうことです。
毎日の支払いをクレジットカード決済にしている方は、影響は大きいでしょう。
自己破産をすると、信用情報機関にその情報が記録されてしまいます。これを俗に「ブラックリストに載る」といいますが、掲載された情報は金融機関にも知られてしまうため、経済的信用がないものとして、クレジットカードの利用が停止されてしまいます。
審査に通らなくなってしまうため新規作成をすることも7-10年程度できなくなってしまいます。
デビッドカードをクレジットカードのように利用しよう
クレジットカードの代替方法としては、デビッドカードが挙げられます。
デビッドカードは銀行残高の範囲でカード支払いができるものです。商業施設などでも対応しているケースは多いので、クレジットカードのように利用できます。
自己破産でクレジットカードが使えなくなることに不安がある方は、デビッドカードがどれくらい使用できるのかについても調べておくと良いでしょう。
スマホの分割決済は不可、利用料滞納の場合は契約解除も
クレジットカード以外でも、身近なところでいうとスマホの分割購入ができなくなってしまいます。
これは、クレジットカードの場合と同様に、信用情報機関に自己破産の情報が載ってしまうことで経済的信用がなくなってしまうためです。分割決済は信用取引となるため、スマホの分割払いはできなくなってしまいます。また仮にスマホの利用料を滞納している場合は自己破産により契約解除となってしまうため注意しましょう。
最近では固定電話のある家庭も少なくなっていますので、子どもの学校の連絡などは全てスマホというケースも多いでしょう。いきなり連絡が取れなくなると周囲と連絡が取れなくなり、バレるリスクも高まります。スマホの使用料の滞納は避けるようにしましょう。自己破産後は、格安SIMなどに切り替えるのもおすすめです。
子どもの奨学金の保証人にはなれない
母親としては子どもの教育にはできる限り影響を与えたくないものです。
自己破産で子どもの教育に影響が出る事情としては、子どもの奨学金の保証人になれなくなるという問題があります。
自己破産を行うと、経済的信用がなくなってしまいますので、ブラックリストに掲載されている間は借金等の保証人になることはできません。これは学費などの奨学金でも同様です。そのため子どもへの影響をできる限り減らしたいなら、できれば子どもが小さいうちに自己破産を行うきです。
就学前に自己破産すれば将来的に保証人になることも可能
自己破産によってブラックリストに掲載される期間は7-10年程度といわれています。
この期間が過ぎれば、奨学金の保証人になることも可能です。また子どもが現在就学前であれば、転校のリスクもなくそのほかの教育への影響も減らすことができます。
すぐに子どもが進学するという場合は、機関保証を利用することでか親が保証人にならずに済むケースもあります。また祖父母に保証人をお願いするという手段もあり得るでしょう。
自宅や20万円以上の財産は処分される
自己破産をする場合、借金は免除になりますがその一方で債権者が被害を被ることになります。そのため、公平性の観点から債務者の財産を処分して債権者に平等分配をすることが定められています。
つまり、自宅や車などの大きな財産は処分することになります。これは家のローンがある・なしに関わらず、自己破産を行う名義人の所有であれば処分しなければなりません。
また家や車だけでなく、20万円以上の価値があるものを所有している場合は、処分の対象となることを覚えておいてください。生活の基盤である住む場所を失うことは、大変なことです。
特に、子どもがいる場合は小さなアパートに引っ越さなけれいけなくなるなど、生活環境に大きな影響を与えることになります。
家財道具や99万円以下の預金は処分しなくてOK
もっとも、処分せずに済むものもあります。例えば、99万円以下の預金や家財道具などは生活に必須であるため処分の対象となりません。最低限生きていくのに必要な財産は残してもらえるため、この点は安心してください。
シングルマザーが自己破産する場合の注意点
シングルマザーが自己破産する場合、いくつかの注意点があります。自己破産の手続きをする前に注意点を確認しておきましょう。
自己破産には相当な費用がかかる
まず知っておくべき注意点としては、自己破産には相当の費用がかかるということです。
具体的には、裁判所費用として1万5000円~50万円程度、弁護士費用として30万円~50万円程度かかります。
金額に大きな差があるのは、財産をどれだけ所有しているかによって手続き内容が変わるためです。
裁判所費用として2万~50万円程度
自己破産の裁判所費用の内訳は以下の通りです。
収入印紙代 | 1,500円程度 |
---|---|
郵便切手代金 | 3,000円~ |
予納金 | 10,000円~50万円程度 |
裁判所費用の場合、処分すべき財産がない場合は2-3万円程度で済むことも多いでしょう。
他方、持ち家がある場合など処分すべき財産がある場合は、与納金として50万円程度を裁判所に納めなければいけないため、費用がかさみます。
弁護士に依頼すれば、財産がある場合でも与納金を20万円程度に減らすことができるケースもあります。 ※少額管財を利用した場合
弁護士費用として30万~50万円程度
弁護士費用については、以下の内訳となります。
相談料 | 0〜1万円程度 |
---|---|
着手金 | 10-20万円程度 |
成功報酬 | 20-30万円程度 |
実費 | 3万円程度 |
弁護士費用も処分すべき財産の有無によって価格が変わります。
処分すべき財産がない場合は、同時廃止手続きとなり全体で30万円程度、処分すべき財産がある場合(少額管財が利用できる場合)は50万円程度が全体でかかると考えましょう。
手続き期間中は、職業制限がある
自己破産の手続き期間中は、職業制限が設けられることがあります。
全ての職業ではありませんが、一定の職業に従事している場合は、数ヶ月の間収入が得られなくなる可能性があるため注意が必要です。
職業制限がかかる業種としては以下の通りです。
- 弁護士、税理士、会計士、などの士業
- 宅地建物取引主任者
- 警備員
- 生命保険外交員
シングルマザーの場合、収入がたたれてしまうと生活ができなくなってしまうため、職業制限にかかる職業に従事している方は、先に別の収入源を考える必要があります。警備員の方は少ないかもしれませんが、不動産関係の会社に勤めていらっしゃる場合は宅建をお持ちの方も多いでしょう。
この場合は、一定期間資格を使った業務はできなくなります。また保険の販売員の方も難しくなってしまうため、しばらくの間別の仕事を探す必要があります。
もっとも、職業制限は一生続くわけではありません。
自己破産の手続き期間中のみの制限であるため、3カ月~半年程度の間と考えておけば良いでしょう。
保証人に一括請求が行われてしまう
借金をする際に保証人を求められた方も多いでしょう。自己破産をする場合は、その保証人に迷惑がかかるという点にも注意が必要です。というのも、自己破産の手続きを行うと、保証人に一括請求がいくためです。
保証人については、多くの方が親族にお願いしているでしょう。100万程度など、預金で支払える可能性がある金額であれば保証人が一括で支払える可能性はあります。
しかし、借金が数百万以上におよぶ場合には保証人も支払えない可能性があるため、この場合は保証人も同様に自己破産等の債務整理を行わないといけなくなってしまいます。
そのため、借金に保証人がいる場合は、自己破産前に保証人に連絡して相談するようにしましょう。
仮に両親が保証人である場合は、両親の家も処分しなければいけなくなる可能性があります。身近な方との信頼関係が崩れてしまう可能性がありますので、事前に相談することが大切です。
シングルマザーが検討すべき自己破産以外の解決方法
自己破産のデメリットに不安を感じている方は、他の選択肢も検討すべきです。そこで、自己破産以外の解決策についてご説明いたします。
まずは、シングルマザー向けの相談先に相談
シングルマザー向けの支援施設の多くは無料です。現在借金の支払いが苦しい場合でも、良い就職先を見つける方法、公的サポートを受ける方法などを知れば、借金の返済が可能になるケースもあります。
そこで、困った場合はまずは以下の施設に相談することを検討してみてください。
- 各市町村にある福祉事務所
- 母子家庭等就業・自立支援センター
- NPO法人
- 法テラス
どのようなサポートが受けられるのかについて以下で詳しく説明いたします。
各市町村にある福祉事務所
お住まいの市町村には、福祉事務所が設置されています。そこでは、シングルマザー向けのサポートが行われていることも多く、公的支援を受ける方法などを教えてもらえます。経済状況などを説明すれば、公的支援、就職に関する情報を得ることができますので、相談してみましょう。
母子家庭等就業・自立支援センター
母子家庭等就業自立センターは、ひとり親向けの支援活動を行っています。自立支援のための就業サポート、養育費に関する相談、借金返済に関する法律相談なども無料で行われていますので、お近くの事業施設に連絡してみましょう。
NPO法人の子育て支援
シングルマザーの支援は、民間でも受けられる可能性があります。特にNPO法人では、子育てに関するさまざまな支援を行っています。
例えば、認定NPO法人フローレンスでは、ひとり親家庭での病児保育なども提供しています。
風邪をひいた時に預かってくれる保育園は少ないですが、自宅で病児保育を行ってくれるサービスがあるそうです。
月会費は1000円かかりますが「子どもを預かってもらえれば働いて借金を返済できる」というケースでは有効な支援策です。
法テラス
法テラスは無料の法律相談を提供しています。また自己破産の弁護士費用を支払えない場合でも、分割払いや費用負担をしてくれるケースがあります。
弁護士費用を負担できない場合には、法テラスに相談してみましょう。
借金・貸付|法テラス(債務整理、貸付金回収などの問い合わせ一覧)
公的支援を受ける
就職先のサポートや子育て支援でも対応できない場合は、公的支援を受けることも検討してください。母子家庭が受けることができる手当としては、主に以下が考えられます。
- 児童扶養手当
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金
- 生活保護
児童扶養手当
児童扶養手当は、18歳以下の子どもを養育する親に支給される手当です。子供の数や所得に応じて受け取れる金額が変わります。状況によっては、子ども1人でも4万円程度が支給されますので、お住まいの地域の市役所にご確認ください。
母子父子寡婦福祉資金貸付金
母子父子寡婦福祉資金貸付金は、ひとり親家庭を対象に、経済的自立を図るために必要な資金の貸付を行なっています。保証人がいる場合は無利息で、いない場合でも年利1%で借入れることができます。
子どもの学費などで一時的にお金が必要な場合、就職するための資格費用、引越し費用などに利用できます。
こちらもお住まいの市町村の市役所にご確認ください。
生活保護
収入がほとんどない場合など、生活していくこともままならない場合は生活保護を受けることも可能です。受給額は、子どもの数や収入によっても異なりますが、子どもがいる場合は月20万程度受けとれることもあります。
必要な場合は、お近くの市町村にて手続きを行いましょう。
任意整理や個人再生を選択する
自己破産のデメリットが気になる方は、他の債務整理の方法を検討するという方法があります。具体的には、任意整理と個人再生が挙げられるでしょう。
任意整理とは
任意整理とは、債権者との交渉によって利息を法定利率に引き直し、減額を図る方法です。手続きする債務を自分で選ぶことができ、裁判所が介入しないのが特徴です。
元本の減額はできないため、大幅な減額は望めませんが負担を軽くすることができます。自己破産で家を奪われる、財産を失うなどのデメリットが気になる方かつ借金額が少ない方におすすめです。
個人再生とは
個人再生は、借金総額を最大1/5まで減額することができる債務整理手続きのことです。裁判所に再生計画を提出し認められなければ減額することはできません。
特徴としては、利息だけでなく元本も減額できること、住宅ローンを残したまま他の債務を減額できること、原則として3年以内に完済しなければいけないこと、にあります。大きな借金があるが、家は残したいという方に向いている方法です。
借金減額・免除のどちらを取るかは、弁護士に相談すべき
シングルマザーの場合、生活に苦労するほどの借金があると将来の子どもための貯金などができない状況にある方が多いでしょう。
上記の方法は借金が免除されるわけではないため返済が必要ですが、借金の額が減れば子どもの習い事や将来の学費などに充てることもできます。
減額する方法を取るのか、免除の方法を取るのかは、専門家である弁護士に相談弾した上で決断する方が良いでしょう。
自己破産を考えるシングルマザーは弁護士に相談を
借金を支払い切れなくなってきたら、自己破産を含めた債務整理を検討してください。実際の状況にもよりますが、自己破産をすることによりデメリットよりもメリットが大きくなる可能性もあります。
ご自身の状況でどの選択肢を選ぶべきか迷う方は、弁護士にご相談ください。借金返済のアドバイスも含めて、シングルマザー向けの支援や債務整理の方法なども教えてもらえます。シングルマザーの方は、人に頼ることが難しいと感じがちですが、悩みを話せば周囲からのサポートは必ず受けられます。まずは、専門家に相談することから始めてください。
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