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個人再生が選べるのはどんなケース? メリットとデメリットも解説!

この記事で分かること

  • 個人再生は返済負担を大幅に軽減可能で、条件が合えば財産を手放さなくて済む等のメリットがある
  • 個人再生を選べるのは厳しい要件を満たした場合のみである上、手続きも複雑で弁護士費用がかかるなど、デメリットもある
  • 個人再生をすればその事実が官報や信用情報機関に掲載されてしまい、7年~10年間は借り入れ制限を受けることになる
  • 個人再生は家を残したいケースや任意整理では対応できない程の債務を抱えるケースなどに適している

個人再生は返済負担を大幅に軽減可能で、条件が合えば財産を手放さなくて済むメリットがあります。しかし、利用には厳しい条件を満たす必要があり、手続きは複雑で決して楽ができる制度ではありません。

個人再生のメリットとは

 

個人再生は民事再生法に規定された借金を大幅に減らすことのできる法的手続きです。自己破産や任意整理等他の債務整理と比較して認知度こそ低いものの、条件さえ合えば借金問題の解決に有用な選択肢と言えます。借金の返済に行き詰まった際に個人再生の選択肢をとった場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

返済負担も軽く借金理由も問われない

個人再生は「任意整理と自己破産の間をとった債務整理」と言われます。それは両者の“いいいとこ取り”をしたような制度だからです。どういうことか、具体的に見ていきましょう。

任意整理よりも返済負担が軽くなる

任意整理は裁判所を通さずに行う手続きで、確かに周囲に悟られずに借金問題を解決できるといったメリットがあります。しかし私的な交渉ゆえに、そもそも債権者側が応じてくれないと行えませんし、うまく折り合いがつかなければ厳しい返済条件になってしまいます。

特に近年では金融機関や貸金業者の体力も落ちてきているため、遅延損害金や将来利息の支払いを和解の条件に提示してくるケースも増えているのです。しかしその点個人再生では裁判で借金の減額や分割払いが決定するので、強制力がありますし、大幅な債務の圧縮(5分の1程度)が可能です。なお債務額が大きい場合は10分の1まで減らせることもありますが100万円が下限で、それ以上は減額できません。

“免責不許可事由”が存在しない

自己破産は債務が免除される「清算型」の債務整理手続きで、返済の必要はありませんが、それだけに審査は慎重に行われ手続きの許可が下りない「免責不許可事由」が存在します。例えば無計画な借金やギャンブルによる浪費の場合等はこれに該当し、借金の整理はできないことがあるのです。しかし、個人再生ではこの決まりはなく、借金理由に関わらず手続き可能です。

個人再生の最大のメリットは自宅を残せること

生手続きが開始すれば債権者からの督促が止まる、職業の制限を受けない等のメリットもありますが、最大のメリットは、自宅を処分することなく債務の整理ができることでしょう。

自己破産と異なり財産を処分しなくて済む

債務整理の中でも最終手段に位置付けられている自己破産の場合、必要最低限の財産以外は全て換金処分することを余儀なくされます。一方、債務者の経済的更生を目的とした「再建型」の債務整理手続きである個人再生では条件が合えば財産を残すことが可能です。

個人再生における住宅資金特別条項とは

個人再生には「住宅資金特別条項」とよばれる制度があり、これを利用すれば住宅ローンを残しながら住宅ローン以外の借金を整理することができるのです。もちろん厳しい要件をクリアしなければなりませんが、マイホームを残せるのは大きいでしょう。

ワンポイントアドバイス
個人再生は任意整理よりも返済負担を大幅に軽減可能で、自己破産と異なり条件が合えば財産を手放さなくて済むなどのメリットがあります。

個人再生のデメリットとは

 
このように、個人再生には大きなメリットがあることは確かです。しかしながら同時にデメリットも多くあります。次は、個人再生のデメリットについて解説します。

個人再生が選べるのは要件を満たした場合のみ

個人再生の第一のデメリットは、利用するために厳しい条件をクリアしなければならないことです。

安定した収入があることが求められる

個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者再生」があります。
小規模個人再生の手続きは個人債務者のうち、将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、かつ、住宅ローンを除く債務の総額が5000万円を超えない場合にのみ認められます。

給与所得者再生の手続きは小規模個人再生ができる人のうち、給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、かつ、その額の変動幅が年間20%以下と見込まれる者です。小規模個人再生と給与所得者再生で共通して安定した収入が要求されるのです。

再生計画案にも一定の制約がある

裁判所に提出する再生計画案は原則各債権者に平等なものでなければならず再生計画には「最長弁済期間」「最低弁済基準」「清算価値保障原則」の定めがあります。よって再生計画案もこれをクリアした内容で、なおかつ債権者の書面による決議が得られる内容であることが求められます。

手続きが複雑で専門家に依頼する必要がある

個人再生は、申請完了までに、いくつかのステップを踏まねばならず、素人が独力で挑むのは困難です。そのため弁護士のような法律の専門家に依頼する必要があり、弁護士費用がかかります。

手続きが複雑で素人には手に負えない

個人再生の手続きは次の通りです。

  • 地方裁判所に申し立てを行う。
  • 次に裁判所が強制執行や督促等の中止命令を出し、その後、再生手続きが開始。
  • 個人再生の手続きをサポートしてくれる“個人再生委員”が選任されている場合は2週間程度、選任されていない場合1か月程度で民事再生の開始決定。
  • 最低限の返済額や最長弁済期間等を記した再生計画案を作成後、認可決定に移行。この際小規模個人再生であれば書面による債権者の決議が必要なものの、給与所得者等再生の場合は不要。

このようにいくつかのステップを踏まなければならず、条件によって工程が異なり、知識のない素人には難しいのです。

時間がかかる

この一連の手続きには法的知識が求められるのはもちろんのこと、時間も要します。再生計画案の認可決定までで約半年かかり、不備があれば手続きの中断ややり直しをすることになるので、更に時間がかかります。そのため個人再生では通常、弁護士等専門家に相談して手続きを進めることになりますが、その費用は任意整理や自己破産の場合と比較して格段に高額なのです。

ワンポイントアドバイス
個人再生を選べるのは厳しい要件を満たした場合のみですし手続きも複雑で弁護士費用がかかる等、デメリットもあります。

個人再生をすると官報や信用情報機関に載るデメリットも

要件を満たせば大幅な債務圧縮が可能な個人再生ですが、ほかにも忘れてはならないデメリットがいくつかあります。

保証人に債務の履行義務が生じる

個人再生で特に気を付けるべきなのは、直接他人に迷惑がかかることです。と言うのも、保証人付きの借金がある場合、個人再生をすれば保証人に返済義務が発生するのです。

再生手続きを開始すれば債権者からの取り立ては止みますが、これは個人再生の申立人に限られたことで、連帯保証人には請求がいくことなるのです。個人再生申立てを行った時点で連帯保証人に保証債務の履行義務が発生し、債務の一括返済を請求されます。多くの場合、話し合いによって分割払いに応じてはくれますが、保証人がいる場合に個人再生を行う際は保証人への影響を考慮し、保証人の理解を得る必要があります。

個人再生を行った事実が信用情報機関や官報に

個人再生固有のものではないものの、デメリットはまだあります。それが個人再生を行った事実が信用情報機関や官報に掲載されることです。

官報に掲載される

個人再生をすると国の広報誌である「官報」に氏名や住所が掲載されます。官報を一般の人が見ることはあまりないと考えてよいですが、この情報を元に闇金業者からダイレクトメールが届くことはあります。掲載されるタイミングは開始決定の約2週間後と書面決議決定の約2週間後、認可決定の約2週間後の3回です。

ブラックリスト入りする

任意整理や自己破産でも同じですが、個人再生を行うとその事実が信用情報機関に掲載され、いわゆる“ブラックリスト入り”の状態になります。登録情報が消えるまでは借り入れを制限されます。基本的には融資を受けられませんし、クレジットカードの新規作成もできません。個人再生の場合、7年~10年で情報は抹消されます。

ワンポイントアドバイス
個人再生をすればその事実が官報や信用情報機関に掲載されてしまい、7年~10年間は借り入れ制限を受けることになります。

個人再生が選んだ方がよいケース

債務を大幅に圧縮可能な個人再生ですが、決して楽ができる制度ではありません。個人再生を選ぶべきなのはどのようなケースなのでしょうか。選択の基準や覚えておくべき点を紹介します。

個人再生を選択する基準

財産は手放したくないが借金を減らしたいと考えている、安定した収入はあるものの多額の借金をしているなど、債務を抱えた事情は様々です。では債務整理の中で任意整理でも、自己破産でもない個人再生を選ぶべきは一体どういったケースなのでしょうか。

個人再生が向いているケース(1)家を残したい場合

個人再生では条件が合えば住宅ローンを保持したまま借金を整理できます。そのため家を残したい場合には個人再生が適していると言えます。

個人再生が向いているケース(2)債務額が大きく任意整理では対応できない場合

個人再生では債務を大幅に圧縮可能です。ですから債務総額が大きすぎて任意整理の分割払いでは対応できない場合も個人再生に適しているでしょう。

状況を見極めた上で選択することが重要

自らの債務状況が個人再生に適しているかをよく検証した上で、手続きに移ることが大切です。特に住宅ローンの残債がある住宅がある場合、住宅ローンだけなら返済できるのか、住宅ローンも返済できないのかを見極めることが重要です。後者の場合、個人再生ではなく自己破産を選択すべきと言えます。

個人再生にも厳しい側面がある

また個人再生は債務者側に大変有利な制度ですが、全ての債務が圧縮されるわけではなく、再生計画は責任を持ってきちんと遂行する必要があることを忘れてはなりません。債務者再建を目的とした手続きであることに違いはありませんが、決して楽な制度ではないのです。

“自己破産は嫌だから個人再生”はNG

手続きのイメージだけで個人再生を選ぶ人がいます。個人再生では確かに債務は大幅に圧縮可能ですが、住宅ローンの返済は必要ですし、返済が滞ると個人再生が取り消されることもあります。また、平成17年の改正新破産法の制定に伴い民事再生法でも免責されない「非減免債権」が設けられているので、単に減免を当てにして個人再生を選択するのも筋違いと言えます。

個人再生の計画実現は自分次第

個人再生は自己破産と異なり、債務者の自助努力を促す手続きです。自己破産では資産があれば破産管財人が選任され、手続き決定後には財産の管理処分権は管財人に委ねられることになります。対して個人再生手続きにおいては、再生計画案が認可されると裁判所の手続きは終結し個人再生委員もいなくなります。つまりその後再生計画を履行できるかどうかは、専ら債務者本人の努力にかかっているわけです。

ワンポイントアドバイス
個人再生は家を残したいケースや任意整理では対応できない程の債務を抱えるケース等に適していますが、決して楽ができるわけではありません。

個人再生のメリットやデメリットについては弁護士に相談

個人再生の適用要件や手続きは非常に煩雑で、素人だけでは利用するのに難儀する可能性があります。借金問題で切羽詰まった状態なら尚のことです。個人再生にはメリットもデメリットもあります。そういったことも踏まえて、個人再生を利用したいなら、債務整理に強い弁護士に依頼するのが得策です。弁護士事務所の初回無料相談などを利用してみることをおすすめします。

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