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過払い金の返還請求をすると信用情報に傷は付く?
この記事で分かること
- 過払い金の返還請求をしても、原則として信用情報に傷が付くことはない
- 過払い請求で信用情報に傷が付かないのは、信用情報で問題となるのが債務者の「返済能力」であるため
- 手続きの結果、債務が残ったケース等では信用情報に傷が付くことがありますが、これは完済してから過払い請求手続きをすることで回避できる
- 過払い金の返還請求をした会社では「社内ブラック」となり以後借り入れはできないことや、過払い金請求権には10年の時効があることを覚えておきましょう
信用情報で問題となるのは「返済能力」なので、過払い金の返還請求自体で信用情報に傷がつくことはありません。手続きの結果残債がある場合等は信用情報に傷が付くことがありますが、完済してから過払い請求手続きをすることで回避できます。
目次[非表示]
過払い金の返還請求をしても信用情報に傷は付かない
過払い金の返還請求をすると、信用情報機関に掲載される旨を耳にしたことがある人も多いでしょう。では、実際のところはどうなのでしょうか。
過払い金が発生するからくり
過払い金とは簡単に言えば払い過ぎた利息のことです。近年頻繁に話題に上るので言葉自体の認知度は高いと言えます。しかしそもそも過払い金はどういったメカニズムで発生するのでしょうか。それを理解するには、「出資法」と「利息制限法」について知る必要があります。そこでまずは、これらの法律が施行された経緯や、過払い金との関係性について解説します。
「出資法」と「利息制限法」
貸金業者を取り締まる法律には、「出資法」と「利息制限法」があります。本来貸金業者とその利用者との契約に関して、利率は貸主と借主の間で自由に決定できます。しかし利率に制限をかけないと、高金利で貸し付けを行う業者が現れ、弱い立場の借主が返済に行き詰る恐れがあります。そこで金利に上限を設け、消費者金融等の貸金業者を規制したのが「出資法」です。一方の「利息制限法」は弱い立場の債務者を保護する目的で一定の利率を超える利息を制限し、高利を規制したもので利息制限法の定める利率を超過した分の利息は無効になります。
グレーゾーン金利での貸し付けが横行
ところがこれまで、利息制限法の定める利率を超過した金利で運営する消費者金融が蔓延っていました。法律で定めがあるのに、守られないのはなぜでしょうか。それは利息制限法には罰則がないからです。出資法の定める上限金利を超過して貸し付けた場合、超過利息分が無効になるのはもちろんのこと、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金も科されます。一方、利息制限法の定めの超過利息分は無効にはなるものの、違反しても罰則の対象にはなりません。それをいいことに多くの貸金業者が、利息制限法の定める上限金利は超えるものの出資法の定めるそれは超えない範囲の金利、いわゆる“グレーゾーン金利”で貸し付けを行ったわけです。この差額が「過払い金」です。
過払い金の返還請求をするとブラックリストに載るのか
過払い金の返還請求を考えるとき多くの人が気にするのは、手続きをすることで信用情報に傷がつくのかです。では、過払い金の返還請求をすると信用情報に傷がつくのでしょうか?
過払い金の返還請求をしても信用情報は傷つかない
過払い金の返還請求をしても信用情報に傷がつくことはありません。平成22年1月14日には金融庁が「改正貸金業法」の完全実施に向けて、信用情報から過払い金返還請求の記録を削除することが、指定信用情報機関の認定の条件 としていることを発表しています。つまり過払い金の返還請求は、国もお墨付きを与えた正当な行為なのです。
問題となるのは返済能力があるか。過払い請求では傷はなし
では、何故過払い金をしても信用情報に傷が付かないのでしょうか。その理由を紐解くために、次は信用情報、及び信用情報機関の役割と過払い請求の関係を解説していきます。
信用情報機関の役目を踏まえて考えてみよう
債務整理やクレジットカードの度重なる支払い遅延をするとその事実が事故情報としてJICCやCIC、KSC等の信用情報機関に載ります。これがいわゆる“ブラックリスト入り”の状態です。過払い請求で信用情報が傷つかない理由を、信用情報機関の役割を踏まえて考えてみましょう。
そもそも、信用情報機関はどういった役割を持つのでしょうか。融資の際、消費者金融等貸金業者は言うまでもなく、返済する見込みが高い人にだけ貸したいと考えます。しかし借り手に返済能力があるか否かは、貸金業者側には分かりません。そこで信用情報機関が、クレジットやローンを利用した際の契約内容や遅延の有無等の返済状況、利用残高といった借り手の“信用取引の客観的取引事実”を示す「個人信用情報」を貸金業者に提供します。そして貸金業者はそれを参考に信用できる借り手かどうか、即ち融資の可否を判断するのです。
過払い請求は返済能力に関係ない
つまり、問題となるのは借り手の「返済能力」なのです。ここで、過払い請求をすれば返済能力がないことになるか、と言えば答えは“No”です。過払い金はそもそも業者側が不正をしていたために発生した差額なので、過払い請求をしたからと言って、個人信用情報に傷がつくのはおかしいのです。
昔は「契約見直し(コード71)」として信用情報機関に掲載された
そうは言っても、金融業者側にすれば、過払い請求をしてくる様な債務者は当然区別しておきたいものです。実際に以前は過払い請求をするとその事実が信用情報機関に「契約見直し(コード71)」として掲載され、借り入れが難しくなることがありました。しかし平成22年にこの区分が廃止されたことで、過払い金の返還請求によって信用情報が傷付くことは原則なくなったのです。
元々は過払い金の返還請求は債務整理(コード32)で登録
平成19年以前は過払い金の返還請求をすると、その事実が債務整理(コード32)として信用情報機関に登録されていました。しかし過払い金の返還請求は正当な債権であり、いわゆる債務整理とは性質を異にするものです。そのため本来であれば過払い金の返還請求者を債務整理(コード32)で区分するのは間違っているのですが、この区分で事故情報として登録されてしまうことによって、過払い請求しただけで他社からの借り入れ等もできなくなるケースが続出しました。こうした事態を受けて、弁護士事務所が訴訟や抗議を起こし平成19年4月には全国信用情報センター連合会によってこの区分は撤廃されることになります。
次に貸金業者が打ってきた手は「契約見直し(コード71)」として登録することです。名目上は契約変更としての区分でしたが、実質的には過払い金の返還請求者を識別するためのもので、コード32と何ら変わりありません。そのため依然として、過払い金の返還請求者は大きな不利益を被っていたのです。そこで平成22年4月19日に金融庁が契約見直しの登録が廃止し過払い金の返還請求によって信用情報が傷つくことは原則なくなったのです。
過払い金の返還請求で信用情報に傷が付くケースとその対処法
しかし、場合によっては過払い金の返還請求で信用情報に傷がつくこともあります。それは大きく分けて、過払い請求後に残債があったケースと、一時的に事故情報が登録されるケースです。ここではその対処法と併せて解説します。
過払い請求で信用情報に傷が付くケース
過払い金の返還請求をしても、基本的には信用情報に傷は付かないのは前述の通りです。しかし場合によっては、手続きでブラックリストに載ることがあります。
過払いの状態になっていなかったケース
返済中に過払い金の返還請求手続きを行った場合、予想に反して過払いの状態にはなっておらず、債務が残る結果となることがあります。つまり、引き直し計算の結果債務残高は減ったものの債務が残ったパターンです。返済中の過払い請求は手続き上は「任意整理」に当たり、借金が過払い金よりも多ければ信用情報機関には債務整理(コード32)の区分で登録されてしまうのです。つまり債務整理するつもりはなかったのに記録がつくリスクもあることになります。
一時的に事故情報が登録されるケース
同じく完済していない状態で過払い金の返還請求を行った場合に、一時的にブラック入りすることがあります。これは司法書士や弁護士に過払い請求の依頼した場合に起こり得るパターンです。問題なのは司法書士や弁護士に依頼すると債権者に届く「受任通知」です。受任通知は債務者が受けとった時点で一切の督促が禁止される等、メリットもありますが、「介入通知」「債務整理開始通知」とも呼ばれるもので、これによって一時的にブラック入りすることがあるのです。例えばJICCでは、貸金業者が受任通知を受け取ると債務整理(コード32)で登録されることになっています。この情報は、過払い金返還の合意が成立したら抹消されます。
対処法は
以上の様なケースで信用情報に傷が付くことがあります。以下にこうした事態を回避するための対策を紹介します。
完済してから過払い請求手続きを行う
過払い金の請求によって意図せずしてブラックリスト入りしてしまう上記2パターンは、いずれも債務が残っている状態、即ち返済中に手続きを行った場合である点で共通しています。従って対処法としては、完済してから過払い金の返還請求を行うことが有効と言えます。
債務が残らないことを確認した上で手続きを行う
返済中の人は手続き後に戻ってくるお金が債務より多いこと確認した上で、過払い金の返還請求をすることが大切と言えます。業者から自分で「取引履歴」を取り寄せ計算してみましょう。
過払い金の返還請求をする上で覚えておきたいこと
以上をまとめると「過払い金の返還請求は国が認めた正当な行為である。そのため過払い請求後に債務が残る場合を除き信用情報に傷が付くことはない。」となります。
返還請求をした会社からは以後基本的に借入できない
過払い金の返還請求行為自体でブラックリスト入りすることは原則ないものの、“社内ブラック”といって請求の対象となった金融機関等には情報が残ることがあります。そして社内ブラックの会社からは、以後融資が受けられない等のデメリットが生じる可能性が高いです。
過払い請求をした貸金業者のキャッシングやローンを利用しようとしても、十中八九審査には通らないと考えて間違いありません。ただし、融資の可否判断の基準は業者ごとに異なるため、融資を受けられる可能性が全くないわけではありません。
系列会社も利用できない可能性が高い
また、社内ブラックはその企業が属するグループ全体で共有される為、系列会社からの借り入れもまずもって不可能と言えます。例えばアコムで社内ブラックになればその親会社である三菱東京UFJ銀行からの借り入れも難しくなります。
過払い金の返還請求は急いだほうがよい
ここ一、二年テレビCM等で盛んに放送されていますが過払い金の返還請求権には時効があります。過払い金があっても放置していればその権利は消滅してしまい、請求できなくなってしまいます。
過払い金の請求権には時効がある
過払い金の返還請求権は法律上「不当利得返還請求権(民法703条)」にあたります。民法167条の1で債権は10年間行使しないと消滅すると規定されていて、過払い金の返還請求権も10年で消滅するのです。
間もなく時効を迎える
ここで気になるのがどの時点からから数えて10年なのかでしょう。過払い金の消滅時効は最終取引完了日からカウントして10年です。グレーゾーン金利での取引があったのが2007年頃までで、それ以降はなくなったことを考えると過払い金の請求の対象者の内ほとんどが2017年前後で時効を迎えるわけです。よってもたもたしていると権利が消滅してしまうので、急いだ方が良いという話なのです。
過払い金の返還請求では事前調べが大切
過払い金の返還請求をしても債務が残った場合は、実質“任意整理”になります。ですから完済してから手続きをするか、事前に返還される過払い金の額を計算し、債務を上回っていることを確認した上で行うようにしましょう。
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