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借金の相続〜相続放棄の選択も!?マイナス財産への対処法
この記事で分かること
- 借金も相続するのが原則です
- 相続放棄や限定承認で借金の相続を免れる
- 単純承認はNG!負債の調査は弁護士に依頼しよう
相続は被相続人の財産も、負債も相続するのが原則です。財産より負債が多いとなればなんとか相続を避けなければいけません。そこで用いられるのが負債を弁済して、財産の方が多ければ相続する限定承認と財産も負債も全て免れる相続放棄です。いずれも財産の処分や相続の手続きをしていないことが条件となるためどんなに少額でも弁護士に頼んで負債や連帯保証契約について調査してもらってください。
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相続は財産と借金の両方を受け継ぎます
相続は財産を受け継ぐものというイメージが一般的だと思いますが、実際は被相続人のプラスの財産もマイナスの負債も全て受け継ぐことになっています。例えば資産が5000万円あり、借金が2000万円あるという場合はどちらも引き継いだ上で弁済し、3000万円を分け合います。少なくとも、借金だけなかったことにできません。債権者の立場から考えても当然ですね。
ところが、資産が2000万円で負債が5000万円あるという場合はどうでしょう。この場合も両方相続することになるのですが、どう頑張って弁済しても3000万円のマイナスです。これでは相続人がかわいそうですが民法においてはこのような場合も無条件で相続が否定されません。
つまり相続人が負債を引き継ぐと認めた場合は何のメリットもないのに借金を返さなければいけないのです。
連帯保証人の立場も相続される
なんと、被相続人自らの借金だけでなくだれかの借金に対し連帯保証契約をしている場合もその立場が相続されます。つまり、相続人は全く知らない人の借金を肩代わりする目にあうのです。
連帯保証人になったせいで破産する人は珍しくないので、被相続人が連帯保証人になっているときは生前のうちから弁護士に相続する・しないを相談しておきましょう。
被相続人が債務整理することも相続対策
被相続人の負債があまりに大きいようなら自己破産しましょう。ある程度の財産が残っているようなら民事再生でも弁済は可能かもしれませんが、利息しかカットできない任意整理では相続対策になり得ないでしょう。
債務整理とは、債務を減額したり免責したりするものですから相続においても受け継ぐべき債務が減ります。自己破産で債務が免責されれば相続人は何も引き継がなくてよくなります。
被相続人の財務状況を知る上でも定期的に連絡を取っておきたいところですね。
借金を相続しない方法はあるのか?
借金を持っていて生前に債務整理をしていなかった場合、借金は相続されます。しかし、血が繋がっているからと相続人に責のない借金を返させるのはあまりに酷です。(家族だから、扶養義務だからと返済を迫るのは論外ですが)
借金を相続しない方法はあるのでしょうか?
どうしてもという場合や、多額の借金について連帯保証人になっている場合は相続しないための対策が必要です。
借金を相続したくないなら相続放棄や限定承認を
借金の相続を避ける方法として、相続放棄や限定承認が認められています。相続放棄とは申述した相続人がはじめから相続人でなかったことにできる手続きで、限定承認は資産と負債の把握が難しい時にマイナス分の相続を避ける手続きです。
いずれも相続開始を知ってから3ヶ月以内の手続きが必要なので素早い対応が求められます。相続の対応まで手が回らないときは迷わず弁護士の力を借りてください。どちらも家庭裁判所に認められなければ借金の相続が確定してしまいます。
相続放棄とは
相続放棄とはある相続人をはじめから相続人でなかったことにする手続きです。相続人として相続を免れることはできなくても「相続人でなくなること」は可能というわけです。
相続放棄をすると借金も財産もどちらも相続できなくなりますが、その人固有の財産である生命保険は受け取ることができます。相続放棄は強い効力を持つため、債権者が相続放棄しないように脅すこともありますが臆せず手続きしましょう。
相続放棄をすると相続順位の低い相続人に借金が回っていく
相続放棄をするとその人が相続人でなかったことになります。これは、法定相続人を改めて決め直すことを意味します。例えば被相続人の子が全員相続放棄をすると、次の相続順位である被相続人の親や祖父母に借金が回ります。彼らも全員相続放棄すると最後に被相続人の兄弟姉妹に借金が回ってきます。
だから、借金の相続が突然やってくることは珍しくありません。あなたが相続放棄するときも「後は野となれ山となれ」でなくちゃんと次の相続人に通知する
※もし、相続放棄によって相続の義務を免れただけになれば財産も負債も順位の低い相続人に回っていきません。民法第939条における「はじめから相続人とならなかったものとみなす」という表現は割と重要です。
相続放棄を大変にする戸籍集め
相続放棄をするためには「自分が相続人であることの証明」が必要なのですが、相続人としての順位が低いと自分より順位が高い相続人すべての存在や死亡がわかる戸籍謄本を家庭裁判所に提出しなければいけません。これが割と面倒です。
戸籍謄本の取り寄せは弁護士に依頼できるので積極的に活用してください。
限定承認が行われる場合は少ない
限定承認は財産と負債を相殺して、残った財産だけ相続するという手続きです。家屋などできれば残したい財産があり、かつ財産と負債のどちらが多いか不明確な時に用います。
限定承認はもし財産が負債より多ければ相続放棄より得をする制度に見えますが実際はあまり使われていません。そこにはこのような理由が考えられます。
全員の合意が必要
限定承認をするためには相続人すべての合意が必要です。相続放棄のように個人で行えないため3ヶ月という期限に間に合わせるのが難しくなります。特に相続人同士が疎遠である場合は限定承認が面倒になります。
手続きが煩雑
相続放棄で面倒なのは戸籍謄本を集めることでしたが、限定承認で面倒なのは財産目録を作っておくこと、そして限定承認が認められた後は相続人自ら財産の弁済をしなければいけないことです。
しかも、財産が残った後は遺産分割協議をしなければいけないのでここまでやってわずかな財産を得るくらいなら相続放棄をした方が良いと考えるのでしょう。そもそも限定承認を選ぶほどの財産が残っていないことも考えられます。
実際、相続放棄の申述件数は限定承認の申述件数の100倍以上あります。
譲渡所得税がかかる
限定承認した場合は、被相続人から相続人に財産を売ったものとみなし譲渡所得税がかかります。ここも、限定承認を選びづらい理由になっているのかもしれません。
ちなみに、限定承認の場合は「はじめから相続人とならなかった」ことにはならないので、相続順位の低い家族にまで飛び火しません。
限定承認の煩雑さは、申述後の手続きにありますが相続人の中から選ばれる管理人は弁護士や司法書士が代理できます。
単純承認したら後戻りできない!借金を相続しないためには徹底的な調査を
借金を相続しないためには徹底的な調査が欠かせません。これはさっさと相続放棄をするだけでなく、うかつに『単純承認しない』ためでもあります。
単純承認とは「資産、負債すべての相続を承認する」ことですが相続人にその意思がなくてもそうと見做される行為があれば相続を放棄できなくなってしまいます。
意外と厳しい!法廷単純承認の成立要件
法廷単純承認が成立するのはこのような相続人です。
- 相続放棄や限定承認を相続開始を知って3ヶ月以内に行わなかった
- 相続財産の一部を処分した
- 相続財産を隠したり使い込んだりした
以下でそれぞれについて解説します。もちろん、これは相続人に対する決まりですから全くの他人が相続財産に手を出したからといって単純承認は成立しません。ご安心ください。
相続開始から3ヶ月をすぎた場合も諦めないで
相続開始から3ヶ月を過ぎてから相続放棄や限定承認をする場合は相応の事情を認めてもらわなくてはいけません。間違いなく弁護士の力が必要になります。
手続きに手間取った場合は難しいですが、相続の事実を知らなかったときや借金の存在を知らなかったときはその事実と理由を主張すればそれを元に期限を延ばしてもらえます。
相続財産の処分は許されないが管理や保存行為は許される
相続財産の処分とは勝手に不動産を売ったり、家や車を大きく破壊・改造したりする場合が当たります。家を修理したり、期限の到来した債務を弁済した場合は財産の処分行為とみなされません。
賃貸借については、民法第602条の定める期間を超えない短期賃貸借は処分行為に当たりません。とはいえ、確実に相続放棄したいなら弁護士の助言を受けながら判断した方が良いです。
相続財産を隠したり使い込んだりしてはいけない
財産の使い込みはいけません。たとえ当面の生活費を賄うといった許されそうな目的に使う場合も要注意です。被相続人の講座を勝手に解約してお金を引き出すことも控えてください。単純承認の成立は「こんなことで?」と思えるほど厳しくチェックされます。
最低限の葬儀費用を賄うくらいなら許されますが、どのくらいが「最低限」と言えるのかは弁護士に相談した方が良いでしょう。
財産の隠匿は許されないし、面倒だからという理由で財産目録に記載しないことも相続財産を隠したとみなされます。
債務を知った後でも相続放棄できるが、単純承認が成立するとNG
単純承認の効果は強く、『債務の存在を知らなかった』場合でも単純承認の事実を覆せず相続放棄ができなくなります。だから、「うちの親に限って…」という場合であっても必ず借金の有無、連帯保証契約の有無を調べ切るまで財産に手をつけないでください。
仮に負債の調査で3ヶ月を超えそうという場合でも事前に相続放棄の申述書類を用意することはできるし、相続放棄の期限を延長するよう申し立てることも可能です。相続放棄は一度却下されれば2度と申述できないので確実性を大事にしてください。
法廷単純承認が成立するような行為をすればもう相続放棄も限定承認もできなくなります。とくに連帯保証人になっている場合は「突然1億円の借金が降りかかる」こともあります。
知らなかったでは済まされない。借金の相続を避けたいなら今すぐ弁護士に相談を
相続開始について、債務の存在については「知らなかった」を認められますが、「法律を知らなかった」では済まされません。借金の相続を避けたいなら相続開始を知ってから3ヶ月以内に相続放棄か限定承認の手続きをしてください。
申述までは難しくありませんが法廷単純承認の条件が厳しく、債務の調査も難しいため弁護士の力を借りた方が賢明です。できれば生前から相続対策をしてたいです。
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