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相続財産の範囲|含まれるものと含まれないものを徹底解説

相続財産の範囲|含まれるものと含まれないものを徹底解説

この記事で分かること

  • 相続財産の基本(民法上と相続税法上の違い)
  • 相続財産に含まれるもの12種類と含まれないもの9種類
  • 相続税法上の「みなし相続財産」(生命保険金・死亡退職金等)の取り扱い
  • 不動産・預貯金・有価証券・借金の具体的な調査方法と評価方法
  • 5つのケーススタディとよくあるトラブル事例・予防策

相続財産とは、被相続人の死亡時の財産的権利義務の総体です。本記事では民法上の相続財産と相続税法上のみなし相続財産の違い、含まれるもの12種類と含まれないもの9種類、調査と評価の方法、5つのケーススタディ、紛争事例、2024年からの制度変更まで詳しく解説します。相続手続きの出発点となる範囲確定の完全ガイドです。

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相続財産の範囲の基本

「相続財産には何が含まれるのか?」「借金も相続財産になるのか?」「生命保険金や年金は相続財産なのか?」――相続に直面した方が最初に直面する疑問の一つが、相続財産の範囲です。

相続財産の範囲を正確に把握することは、相続税の計算、遺産分割協議、相続放棄の判断など、相続手続きのすべての出発点となります。読者の方が「相続財産の範囲を知りたい」と考えているなら、まずは制度の基本を正しく理解することから始めましょう。本記事では、相続財産の範囲の基本、含まれるもの・含まれないもの、相続税法上の取り扱いの違い、具体的な調査方法まで、弁護士目線で詳しく解説します。

相続財産とは

相続財産とは、被相続人が死亡時に有していた財産的権利義務の総体です(民法896条)。

具体的には、被相続人が所有していた財産(プラスの財産)、被相続人が負っていた債務(マイナスの財産)、これらすべてが含まれます。

被相続人の死亡を契機に、相続人が一体としてこれらを承継するのが相続の基本原則です。

相続財産の範囲を知ることが重要な理由

相続財産の範囲を正確に把握することは、相続実務で極めて重要です。

理由は、相続税の申告に必要、遺産分割協議の対象を確定するために必要、相続放棄するかの判断に必要、限定承認するかの判断に必要、遺留分の計算に必要、債権者への対応に必要、です。

範囲を見誤ると、後で大きなトラブルにつながるため、慎重な調査が必要です。

民法上の相続財産と相続税法上の相続財産の違い

ここで重要な区別があります。「民法上の相続財産」と「相続税法上の相続財産」は範囲が異なるのです。

民法上の相続財産は、被相続人が死亡時に有していた財産的権利義務。相続税法上の相続財産は、民法上の相続財産に「みなし相続財産」を加えたもの、です。

たとえば、生命保険金は民法上は相続財産ではなく受取人の固有財産ですが、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象となります。この違いを理解することが重要です。

相続財産の範囲を確定するタイミング

相続財産の範囲を確定すべきタイミングは、相続発生直後から3〜4ヶ月以内です。

具体的には、相続放棄の判断は3ヶ月以内、限定承認の判断も3ヶ月以内、準確定申告は4ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内、です。

これらの期限に間に合うよう、早めの調査が必要です。

相続財産に含まれるもの

具体的に相続財産に含まれるものを見ていきましょう。

不動産

最も典型的な相続財産が不動産です。

土地、建物、マンション、農地、山林、借地権、借家権、底地権など、すべて相続財産に含まれます。被相続人の名義で登記されているもの、または被相続人が事実上保有していたものが対象です。

2024年4月からは相続登記が義務化されているため、相続発生から3年以内に登記する必要があります。

預貯金

銀行・信用金庫・郵便局などの預貯金もすべて相続財産です。

普通預金、定期預金、貯蓄預金、財形貯蓄、外貨預金など、すべての種類の預貯金が対象となります。

複数の金融機関に口座を持っている場合、すべてを調査する必要があります。

有価証券

有価証券も相続財産です。

上場株式、非上場株式、投資信託、国債、地方債、社債、新株予約権、ETF、REITなど、幅広い金融商品が含まれます。

証券会社で口座を持っているか、配当金の振込履歴から有価証券の有無を確認できます。

動産

動産も相続財産です。

自動車、バイク、貴金属、宝石、美術品、骨董品、楽器、家電製品、家具など、被相続人が所有していた動産はすべて含まれます。

ただし、価値の低い日用品は、実務上、相続財産として個別に評価しないことが多いです。

事業用財産

被相続人が事業を行っていた場合、事業用財産も相続財産となります。

事業用の不動産、機械、車両、商品在庫、売掛金、事業用預金など、事業に関連するすべての資産が対象です。

非上場株式(同族会社の株式)

中小企業の経営者が亡くなった場合、非上場株式も重要な相続財産です。

評価方法が複雑で、事業承継の問題と密接に関連します。専門家(税理士・公認会計士)のサポートが不可欠です。

知的財産権

被相続人が保有していた知的財産権も相続財産です。

特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、ノウハウなどが含まれます。著作権は被相続人の死後70年間保護されるため、長期にわたる権利関係に注意が必要です。

ゴルフ会員権・リゾート会員権

ゴルフ会員権、リゾート会員権なども相続財産です。

ただし、会員規約によっては相続を認めない、または高額な名義書換料が必要となるケースもあるため、事前確認が必要です。

売掛金・貸付金

被相続人が他人に貸していたお金や、事業上の売掛金も相続財産です。

回収可能性を踏まえて評価する必要があります。

死亡退職金(支給規定がある場合)

被相続人が在職中に亡くなった場合の死亡退職金は、支給規定の内容によって取り扱いが異なります。

支給規定で受取人が指定されている場合は受取人固有の財産、規定がない場合は相続財産、となります。判断が分かれるテーマです。

個人事業の権利

被相続人が個人事業を営んでいた場合、その事業の権利(屋号・営業権など)も相続財産となります。

ただし、事業を継続するかどうかは相続人の判断によります。

電子マネー・暗号資産

近年は、電子マネーや暗号資産(仮想通貨)も相続財産として注目されています。

取引履歴・残高証明書を取得し、適切な評価を行う必要があります。専門知識が必要な領域です。

相続財産に含まれないもの

逆に、相続財産に含まれないものを整理しておきましょう。

生命保険金(受取人指定がある場合)

生命保険金は、受取人指定がある場合、受取人固有の財産であり、民法上は相続財産ではありません。

ただし、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象となります(後述)。

死亡退職金(支給規定で受取人指定がある場合)

死亡退職金で支給規定により受取人が指定されている場合、受取人固有の財産です。

民法上は相続財産ではありませんが、相続税法上は「みなし相続財産」となります。

遺族年金

遺族年金は、遺族の生活保障のための制度で、相続財産ではありません。

受給権者は遺族として指定された人で、相続放棄しても受け取れる点が重要です。

香典・弔慰金

香典や弔慰金は、葬儀費用に充てるための贈与的性格を持ち、相続財産には含まれません。

ただし、社会通念上相当な範囲を超える高額な弔慰金は、相続税法上、相続税の対象となることもあります。

祭祀財産

墓地、墓石、仏壇、仏具、家系図など、祭祀(さいし)に関する財産は相続財産から除外されます(民法897条)。

これらは祭祀承継者(通常は被相続人が指定または慣習で決まる)が単独で承継します。遺産分割の対象にもなりません。

一身専属権

被相続人だけに専属する権利(一身専属権)は、相続されません(民法896条但書)。

具体例として、生活保護受給権、年金受給権の一部、扶養請求権、雇用契約上の地位、組合員としての地位、慰謝料請求権(被相続人が請求の意思を示していない場合)などがあります。

被相続人の身分に関するもの

身分に関する権利義務も相続されません。

たとえば、親権、後見人としての地位、被相続人個人の運転免許、被相続人個人の各種資格などです。

配偶者居住権

2020年から制度化された配偶者居住権は、配偶者だけに認められる権利で、その配偶者の死亡時に消滅します。

配偶者居住権そのものは相続財産になりません。

被相続人が借りていた賃貸物の使用権

被相続人が賃借人として借りていた物の使用権は、原則として相続人に承継されます。

ただし、被相続人個人の信用に基づく賃貸借(個人的な事情で貸していたケース)では、相続されないこともあります。

相続税法上の「みなし相続財産」

民法上は相続財産ではないものの、相続税法上は課税対象となる「みなし相続財産」を整理しておきましょう。

生命保険金

最も典型的なみなし相続財産が生命保険金です(相続税法3条1項1号)。

受取人指定された生命保険金は、受取人固有の財産ですが、相続税の課税対象となります。

非課税枠として、500万円×法定相続人の数が控除されます。

死亡退職金

死亡退職金もみなし相続財産です(相続税法3条1項2号)。

被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものが対象で、500万円×法定相続人の非課税枠があります。

生命保険契約の権利

被相続人が保険料を支払っていた契約で、被相続人以外が被保険者となっている保険契約の権利も、みなし相続財産です。

たとえば、夫が契約者・妻が被保険者の保険契約の場合、夫が亡くなったときの解約返戻金相当額が相続税の対象となります。

定期金の権利

個人年金保険などの定期金受給権も、みなし相続財産です。

評価額の算定方法が複雑で、専門家のサポートが必要となります。

信託受益権

信託の受益者としての権利も、みなし相続財産です。

近年活用が広がる家族信託にも関係するテーマです。

特別寄与料

2019年改正で新設された特別寄与料(被相続人の介護等に貢献した親族への金銭給付)も、みなし相続財産として課税対象となります。

3年以内の生前贈与

被相続人の死亡前3年以内(2024年からは7年以内)の相続人への生前贈与は、相続税の課税対象となります。

これは厳密にはみなし相続財産ではなく「生前贈与加算」と呼ばれる制度ですが、相続税計算上は相続財産に加算されます。

プラスとマイナスの財産

相続財産は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含みます。

プラスの財産の代表例

プラスの財産の代表例は、不動産、預貯金、有価証券、動産、事業用財産、知的財産権など、これまで紹介してきたものです。

これらの合計から、マイナスの財産と必要経費を差し引いたものが、最終的な遺産総額となります。

マイナスの財産(債務)

マイナスの財産も相続財産に含まれます。

借入金(銀行ローン、消費者金融、カードローン)、未払いの税金(所得税・住民税・固定資産税)、未払いの医療費、未払いの公共料金、リース料の残債、保証債務、損害賠償債務、買掛金など、すべての債務が対象です。

プラスより大きいマイナスがあれば、債務超過の相続となります。

連帯保証債務

被相続人が連帯保証人になっていた場合、連帯保証債務も相続されます。

これは見逃されがちな相続財産です。被相続人の書類や信用情報を慎重に調査し、保証契約がないか確認しましょう。

保証契約は、被相続人の死亡後も継続し、相続人が責任を負うことになります。

葬儀費用の取り扱い

葬儀費用は、被相続人の債務ではありませんが、相続税計算上は控除可能です。

具体的には、通夜・葬儀の費用、火葬・埋葬の費用、戒名料、お布施(社会通念上相当な範囲)、などが対象です。

ただし、香典返し、初七日以降の法要費用、墓石・墓地購入費は、相続税の計算上は控除できません。

相続財産の調査方法

相続財産の範囲を確定するため、具体的な調査方法を確認しておきましょう。

不動産の調査方法

不動産の調査方法は、固定資産税納税通知書を確認、被相続人の住所地の市区町村役場で名寄せ帳を取得、登記事項証明書(法務局)を確認、預金通帳から固定資産税の引き落としを確認、です。

全国規模の不動産検索システムはないため、複数の自治体にまたがる不動産は地道に調査する必要があります。

預貯金の調査方法

預貯金の調査方法は、通帳・キャッシュカードを探す、被相続人の自宅にある金融機関からの郵便物を確認、口座振替の引き落とし履歴から金融機関を特定、メール・パソコンの履歴から判明することも、金融機関に直接問い合わせ(残高証明書の発行)、です。

2024年現在、各金融機関に死亡届の連絡をすると、口座が凍結されるため、早めの対応が必要です。

有価証券の調査方法

有価証券の調査方法は、証券会社からの取引報告書・残高通知を確認、配当金の振込履歴から発行会社を特定、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求、です。

ほふりへの開示請求は、被相続人の名義で口座を持っている証券会社を一括で確認できる便利な制度です。

借金・連帯保証の調査方法

借金・連帯保証の調査方法は、信用情報機関(JICC、CIC、JBA)に開示請求、被相続人の自宅にある契約書類を確認、被相続人の郵便物・メールを確認、被相続人の事業関係者にヒアリング、です。

信用情報機関への開示請求は、相続人として被相続人の情報を確認できます。連帯保証は信用情報に載らないケースもあるため、書類確認も重要です。

事業用財産の調査方法

被相続人が事業を行っていた場合、事業用財産の調査も必要です。

事業の確定申告書、帳簿、預金口座、取引先との契約書、税理士・会計士へのヒアリングなどを通じて、事業の状況を把握します。

財産目録の作成

調査結果は、財産目録としてまとめます。

プラスの財産、マイナスの財産、みなし相続財産をそれぞれ分けて記載し、評価額(または推定額)を記入します。

財産目録は、遺産分割協議書の前提資料となるほか、相続税申告にも活用されます。

相続財産の評価方法

相続財産の範囲が確定したら、次は評価額の算定です。

不動産の評価方法

不動産の評価方法は、相続税評価のための「路線価方式」または「倍率方式」、固定資産税評価額の活用、不動産鑑定士による鑑定評価、不動産業者による査定、などがあります。

相続税申告では、路線価方式または倍率方式が原則です。遺産分割協議では、時価ベースで評価することもあります。

預貯金の評価方法

預貯金は、被相続人の死亡日時点の残高で評価します。

銀行に残高証明書を発行してもらい、その日付の残高を確認します。

有価証券の評価方法

上場株式の評価は、被相続人の死亡日の終値、または当月・前月・前々月の毎日の終値の平均額のうち、最も低い価額を使えます。

非上場株式の評価は、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式のいずれかで行います。専門的な評価が必要です。

動産の評価方法

動産は、市場価格(時価)で評価します。

自動車は中古市場価格、貴金属・宝石は買取相場、美術品は鑑定人の評価、などを参考にします。

非上場株式の評価方法

非上場株式は、相続財産の中で最も評価が複雑な財産です。

類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式の3つから、株主の立場と会社規模に応じて選択します。専門家のサポートが不可欠です。

相続財産の範囲をめぐる紛争

相続財産の範囲をめぐっては、しばしば紛争が発生します。

紛争パターン1 隠匿された財産

特定の相続人が、被相続人の財産を隠匿しているケースです。

たとえば、被相続人の生前から預金通帳を管理していた相続人が、相続発生後に他の相続人に開示しないケースなどがあります。

弁護士照会、銀行への取引履歴開示請求などで対応します。

紛争パターン2 名義預金

被相続人以外の名前の預金口座(配偶者・子・孫名義)が、実質的に被相続人のものだったケースです。

税務調査でも頻繁に問題となるテーマで、名義人と実質的な所有者が異なる場合、名義預金として相続財産扱いとなる可能性があります。

紛争パターン3 生前贈与の評価

被相続人が生前に行った贈与をめぐる紛争もあります。

特別受益、遺留分算定の基礎財産、生前贈与加算など、複数の論点が絡みます。家族間での丁寧な合意形成が必要です。

紛争パターン4 みなし相続財産の取り扱い

生命保険金などのみなし相続財産が、遺産分割協議でどう扱われるかをめぐる紛争もあります。

原則は受取人固有の財産ですが、不公平が著しい場合は特別受益として持戻されることもあります(最高裁平成16年判例)。

紛争を予防する方法

紛争予防のためには、生前から財産目録の作成、家族会議での共有、遺言書の作成、専門家への相談、などが重要です。

透明性の高い財産管理が、紛争予防のカギとなります。

相続財産の範囲に関するよくある誤解

相続財産の範囲については、よくある誤解があります。

誤解1 生命保険金は相続財産

「生命保険金も相続財産だから遺産分割で分ける」――これは誤解です。

受取人指定された生命保険金は、受取人固有の財産で、遺産分割の対象になりません。ただし、相続税法上はみなし相続財産として課税対象です。

誤解2 借金は相続しない

「借金は相続しないから安心」――これも誤解です。

借金もマイナスの相続財産として、相続人が承継します。これを免れるには、相続放棄または限定承認の手続きが必要です。

誤解3 すべての財産を均等に分ける

「相続財産はすべて法定相続分で均等に分ける」――これも誤解です。

法定相続分はあくまで目安で、遺言書や遺産分割協議で柔軟に分配できます。みなし相続財産は遺産分割の対象外ですし、不動産・株式など分割が難しい財産もあります。

誤解4 香典は相続財産

「香典も相続財産」――これも誤解です。

香典は、葬儀費用に充てるための贈与的性格を持ち、相続財産には含まれません。喪主の固有財産として扱われるのが一般的です。

誤解5 祭祀財産は均等に分ける

「お墓や仏壇も均等に分ける」――これも誤解です。

祭祀財産は、祭祀承継者が単独で承継するものとされ、遺産分割の対象になりません。

2024年現在の制度動向

相続財産の範囲をめぐる近年の制度動向を整理しておきましょう。

2024年4月 相続登記の義務化

2024年4月から、相続登記が義務化されました。

不動産取得を知った日から3年以内に登記する必要があり、違反すると10万円以下の過料が課されます。相続財産に不動産がある場合、必ず登記対応が必要です。

2024年3月 戸籍の広域交付制度開始

2024年3月から、戸籍の広域交付制度が始まりました。

本籍地以外の市区町村でも、直系尊属・直系卑属の戸籍を一括取得できるため、相続調査の負担が大幅に軽減されました。

2024年税制改正 生前贈与加算の延長

2024年税制改正で、生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されました。

被相続人の死亡前7年以内の相続人への贈与は、相続税の課税対象となります。生前贈与の戦略にも影響します。

2023年改正 相続財産管理制度の整理

2023年の民法改正で、相続財産の管理に関するルールが整理されました。

相続放棄者の管理義務、相続財産清算人の役割など、相続財産管理の実務がより明確になりました。

2020年 配偶者居住権の制度化

2020年4月から、配偶者居住権が制度化されました。

配偶者が自宅に住み続けながら、所有権は子に相続させる仕組みです。相続財産の評価・分配にも大きな影響を与えています。

相続財産の調査と評価のチェックポイント

相続財産の調査と評価で押さえるべきチェックポイントを整理しておきましょう。

チェックポイント1 全国規模での調査

不動産・預貯金・有価証券は、全国規模で調査する必要があります。

被相続人が複数の地域で生活していた場合、見落としやすいので慎重に調査しましょう。

チェックポイント2 借金・連帯保証も忘れずに

プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金・連帯保証)も必ず調査しましょう。

信用情報機関への開示請求が有力なツールです。

チェックポイント3 みなし相続財産も考慮

相続税申告では、みなし相続財産も含めた総合的な計算が必要です。

生命保険金、死亡退職金、定期金の権利などを漏れなく把握しましょう。

チェックポイント4 専門家の評価を活用

不動産・非上場株式など、評価が複雑な財産は専門家の評価を活用しましょう。

税理士・不動産鑑定士・公認会計士の関与で、適正な評価額が確定できます。

チェックポイント5 期限内に対応

相続放棄(3ヶ月)、準確定申告(4ヶ月)、相続税申告(10ヶ月)など、相続財産の調査結果は期限のある手続きにつながります。

早めの調査着手と期限管理が重要です。

相続財産の範囲を確定する5つのステップ

最後に、相続財産の範囲を確定する実務的な5つのステップを整理しておきましょう。

STEP1 被相続人の基本情報の整理

最初に、被相続人の基本情報を整理します。

住所、本籍、勤務先、取引のあった金融機関、所有していた不動産、事業の有無、家族関係などを把握します。

STEP2 自宅・郵便物・パソコンの確認

被相続人の自宅、郵便物、パソコンを確認します。

契約書、通帳、不動産関係書類、保険証券、株式関係書類、ID・パスワードなど、相続財産を示す証拠を集めます。

STEP3 金融機関・関係機関への問い合わせ

判明した金融機関・関係機関に問い合わせます。

残高証明書、取引履歴、株式残高証明書などを取得します。

STEP4 信用情報機関への開示請求

借金・連帯保証の有無を確認するため、信用情報機関に開示請求します。

JICC、CIC、JBAの3機関に開示請求すれば、ほとんどの借金は把握できます。

STEP5 財産目録の作成

すべての調査が終わったら、財産目録を作成します。

プラスの財産、マイナスの財産、みなし相続財産を分けて整理し、評価額を記入します。これが遺産分割協議や相続税申告の基礎資料となります。

相続財産の具体的なケーススタディ

具体的なケーススタディで、相続財産の範囲がどのように評価されるかを見ていきましょう。

ケース1 預貯金中心のシンプルな相続

【ケース】
被相続人:父A(80歳)
相続人:妻B(75歳)・長男C(55歳)・長女D(52歳)
財産:普通預金1,500万円、定期預金1,500万円、合計3,000万円
借金:なし

このケースでの相続財産の評価は、預貯金合計3,000万円(プラス)、債務なし、葬儀費用200万円を控除して、最終的な遺産総額は2,800万円。基礎控除(3,000万円+600万円×3人=4,800万円)以下のため、相続税はかかりません。

シンプルなケースですが、各金融機関の残高証明書取得、相続人全員の合意による分割、各金融機関での解約手続きなどが必要です。

ケース2 不動産と預貯金がある中規模な相続

【ケース】
被相続人:父E(78歳)
相続人:妻F(73歳)・長男G(50歳)
財産:自宅(評価額4,000万円)、収益不動産(評価額3,000万円)、預貯金2,000万円、生命保険金1,000万円(妻Fが受取人)、合計1億円
借金:住宅ローン残債500万円

このケースでの相続財産の評価は、プラスの財産9,000万円(不動産7,000万円+預貯金2,000万円)、マイナスの財産500万円(住宅ローン)、みなし相続財産1,000万円(生命保険金)、生命保険金の非課税枠1,000万円(500万円×2人)。

小規模宅地等の特例で自宅評価額が80%減になる(4,000万円→800万円)可能性もあり、専門家のサポートで節税が可能です。

ケース3 事業を継ぐ長男がいる大規模な相続

【ケース】
被相続人:父H(70歳)・中小企業経営者
相続人:妻I(65歳)・長男J(40歳・後継者)・長女K(38歳)
財産:自宅(評価額3,000万円)、事業用不動産(評価額5,000万円)、非上場株式(評価額2億円)、預貯金3,000万円、生命保険金2,000万円(各相続人が分散して受取人)、合計3億円超
借金:事業上の連帯保証債務5,000万円

このケースは、事業承継税制(特例措置)の活用、非上場株式の評価方法の選択、代償分割による株式集中、遺留分への配慮など、複合的な検討が必要です。連帯保証債務の存在も大きな論点となります。

弁護士・税理士・司法書士の連携が不可欠なケースです。

ケース4 借金が多い債務超過の相続

【ケース】
被相続人:父L(75歳)
相続人:長男M(45歳)・次男N(42歳)
財産:預貯金200万円、自宅(評価額1,000万円)
借金:合計3,000万円(消費者金融・カードローン含む)

このケースでは、プラスの財産1,200万円<マイナスの財産3,000万円で、明らかに債務超過です。長男M・次男Nは相続放棄を検討することになります。 信用情報機関への開示請求で借金を全て把握し、3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行います。 [link ids=12289]

ケース5 海外資産がある国際相続

【ケース】
被相続人:父O(70歳)
相続人:配偶者P・長男Q(海外居住)
財産:日本国内の不動産・預貯金合計5,000万円、海外の不動産・預貯金合計5,000万円、合計1億円

国際相続のケースでは、日本の相続税法と現地の相続税法の両方の適用、為替レートでの評価、海外資産の名義変更の複雑さ、二重課税の問題、などが論点となります。

国際相続に詳しい弁護士・税理士のサポートが不可欠です。

複数のケースから学ぶポイント

複数のケースから学ぶポイントは、財産規模と家族構成で対応が大きく異なる、マイナスの財産も慎重に調査すべき、生命保険金などのみなし相続財産も検討に含めるべき、事業承継や国際相続は専門家の関与が不可欠、相続放棄が選択肢となるケースもある、です。

それぞれの状況に応じた対応が重要です。

相続財産の調査でよくあるトラブル事例

相続財産の調査でよくあるトラブル事例を紹介しておきましょう。

トラブル事例1 隠れた借金の発覚

相続を承認した後に、被相続人の隠れた借金が判明したケースです。

3ヶ月を過ぎてから発覚した場合、原則として相続放棄はできなくなります。例外的に「相続財産が全く存在しないと信ずるについて相当な理由がある」場合は認められる可能性もありますが、立証は困難です。

対策として、相続発生時に信用情報機関への開示請求を必ず行うことが重要です。

トラブル事例2 隠匿された預貯金

特定の相続人が被相続人の預貯金を隠匿し、他の相続人に開示しないケースです。

銀行に開示請求すれば、過去10年程度の取引履歴を取得できます。隠匿が判明した場合は、調停や訴訟による解決が必要となります。

トラブル事例3 名義預金として課税

配偶者・子・孫名義の口座が、実質的に被相続人のものだったとして相続財産扱いされたケースです。

税務調査で頻繁に問題となるテーマです。名義人と実質的な所有者の関係、口座開設・運用の経緯などが慎重に検討されます。

トラブル事例4 評価額をめぐる対立

非上場株式や不動産の評価額をめぐって、相続人間で対立するケースです。

評価方法の選択や個別資産の評価で、結果が大きく変わります。客観的な専門家(税理士・不動産鑑定士)の評価を取得し、それをベースに協議することが重要です。

トラブル事例5 生前贈与の特別受益への配慮不足

生前贈与を受けた相続人と、受けなかった相続人の間で、不公平感から対立するケースです。

特別受益として持戻し計算することで、相続分の調整が可能です。家族間の透明性が予防策となります。

トラブル予防の3つのポイント

トラブル予防の3つのポイントは、生前から財産の見える化、家族会議での共有、専門家への早期相談、です。

相続発生前から準備しておくことで、相続発生後の調査もスムーズに進みます。

相続財産の範囲のFAQ

相続財産の範囲について、よくある質問にお答えします。

Q1 被相続人の借金は必ず相続する?

相続を承認すると、借金も含めてすべて相続します。借金から逃れるには、相続放棄(3ヶ月以内)または限定承認の手続きが必要です。

Q2 海外にある財産も相続財産?

はい、日本に住所を有する被相続人の場合、全世界の財産が相続税の対象となります。海外資産は調査・評価・名義変更が複雑なため、専門家のサポートが必要です。

Q3 暗号資産も相続財産?

はい、暗号資産も相続財産です。ただし、ウォレットへのアクセス方法(秘密鍵・パスワード)が分からないと、実際には承継できないケースもあります。生前からの情報共有が重要です。

Q4 SNSアカウントは相続できる?

各プラットフォームの規約によります。多くのSNSは、アカウントの相続を認めず、削除または記念アカウント化のみ対応しています。デジタル遺品の扱いは、近年注目される論点です。

Q5 ペットも相続財産?

法律上、ペットは「物」として相続財産に該当します。ただし、評価額はゼロかごく少額となるケースが多く、誰が引き取るかの問題が中心となります。

Q6 退職金がまだ未確定の場合は?

被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金は、みなし相続財産として相続税の対象です。3年を超えて確定したものは、一時所得として所得税の対象となります。

Q7 被相続人の自動車・運転免許は?

自動車は相続財産です。運転免許は一身専属権で相続されません。

Q8 借家(賃借権)は相続される?

はい、借家権も相続財産に含まれます。被相続人の死亡後も、相続人が賃貸借契約を引き継ぐことになります。ただし、契約解除を希望する場合は、賃貸人との協議が必要です。

Q9 相続人が見つからない財産はどうなる?

相続人不在の場合、相続財産清算人が選任され、最終的には国庫に帰属します。一部、特別縁故者への分与が認められる場合もあります。

Q10 過去10年以上前の生前贈与も相続財産に含まれる?

相続税の生前贈与加算は7年以内(2024年改正後)ですが、特別受益の持戻しは10年以内(2023年改正後)、遺留分算定の基礎財産も相続人への10年以内の贈与が対象です。それぞれ別の制度ですので注意が必要です。

相続財産の範囲に関する近年のテーマ

近年の社会変化に伴い、新しいテーマも増えています。

デジタル遺品

デジタル遺品とは、被相続人がデジタル空間に残した資産・情報のことです。

具体的には、暗号資産、ネット銀行・ネット証券の口座、電子マネー残高、SNSアカウント、クラウドストレージのデータ、サブスクリプションサービス、デジタルコンテンツ(電子書籍・音楽・ゲーム)、などがあります。

生前からの情報整理(エンディングノート活用)が重要です。

ポイント・マイル

航空会社のマイル、クレジットカードのポイント、家電量販店のポイントなども、相続財産として扱われるケースがあります。

各事業者の規約によって対応が異なるため、確認が必要です。

NFT(非代替性トークン)

近年広がるNFT(デジタルアートなどの所有権を示すトークン)も、相続財産として認識されつつあります。

評価方法、移転方法など、未整備の論点が多く、専門家への相談が不可欠です。

グローバル化への対応

海外居住者の増加、海外資産の保有増加に伴い、国際相続のニーズも拡大しています。

日本の相続税法と現地法の調整、為替レートの問題、二重課税の回避など、複雑な論点があります。

家族信託の活用

近年活用が広がる家族信託は、相続財産の範囲にも影響します。

信託財産は、形式的には受託者の名義ですが、相続税法上は委託者の財産として扱われることがあります。信託契約の内容に応じた対応が必要です。

専門家への相談のススメ

ここまでで明らかなとおり、相続財産の範囲を確定する作業は、多岐にわたる専門知識が必要です。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談するメリットは、遺産分割協議の代理、紛争解決、隠匿された財産の調査、債権者対応、相続放棄・限定承認の手続き、です。

特に紛争が予想されるケース、複雑な家族関係、事業承継などでは、弁護士の関与が不可欠です。

税理士に相談するメリット

税理士に相談するメリットは、相続税の試算・申告、非上場株式の評価、節税戦略の立案、税務調査対応、です。

財産規模が大きい、非上場株式がある、特殊な財産があるケースでは、税理士の関与が必須です。

司法書士に相談するメリット

司法書士に相談するメリットは、相続登記の代行、不動産関連の書類作成、戸籍収集の代行、です。

2024年からの相続登記義務化を踏まえ、不動産がある相続では司法書士の関与が重要です。

ワンストップ対応の事務所がベスト

理想的なのは、弁護士・税理士・司法書士が連携したワンストップ対応の事務所です。

相続は法律・税務・登記の複数領域にまたがるため、別々に依頼すると情報共有の手間や費用負担が増えます。ワンストップで進められる事務所なら、効率的かつ整合性の取れた対応が可能です。

ワンポイントアドバイス
相続財産の範囲を正確に把握することは、相続実務の出発点です。プラスの財産だけでなくマイナスの財産、民法上の相続財産だけでなくみなし相続財産も含めて、漏れなく調査する必要があります。期限のある手続きが多いため、早めの着手が重要です。判断に迷ったら、相続に詳しい弁護士・税理士に相談することで、確実で効率的な調査が可能となります。

まとめ

相続財産とは、被相続人が死亡時に有していた財産的権利義務の総体で、プラスの財産もマイナスの財産も含みます。不動産・預貯金・有価証券・動産などのプラスの財産、借金・連帯保証などのマイナスの財産、すべてが対象です。

ただし、生命保険金(受取人指定)、遺族年金、香典、祭祀財産、一身専属権などは相続財産に含まれません。一方、相続税法上は「みなし相続財産」として、生命保険金・死亡退職金などが課税対象となります。

相続財産の調査は、不動産・預貯金・有価証券・借金それぞれについて、専門的な方法で行います。2024年からの戸籍広域交付制度・相続登記義務化・生前贈与加算の延長など、近年の制度変化も踏まえた対応が必要です。

読者の方が「相続財産の範囲を確定したい」と考えているなら、まずは相続に強い弁護士・税理士に相談することを強くおすすめします。早めの調査と専門家のサポートが、確実な相続手続きと家族の幸せの両立につながる最善策となります。

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