58,659view
相続財産の範囲|含まれる財産・含まれない財産を一覧で解説

この記事で分かること
- 相続財産の定義と、民法上・税法上の範囲の違い
- 相続財産に含まれるプラスの財産・マイナスの財産の一覧
- 相続財産に含まれない財産(一身専属権、祭祀財産、生命保険金など)
- みなし相続財産の仕組みと非課税枠
- 相続財産の調査方法と評価方法、問題となりやすいケースの対処法
相続財産には不動産や預貯金などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産が含まれます。一方、生命保険金や祭祀財産は原則として相続財産に含まれません。本記事では民法上と税法上で異なる相続財産の範囲、含まれる財産・含まれない財産の一覧、みなし相続財産の仕組み、財産調査と評価方法、名義預金など問題となりやすいケースまで弁護士目線で解説します。
目次[非表示]
相続財産とは
家族が亡くなったとき、最初に直面するのが「何が相続の対象になるのか」という問題です。「実家の土地は当然として、生命保険金は?」「父の借金も引き継ぐの?」「お墓は誰が管理するの?」――こうした疑問に正確に答えるためには、相続財産の範囲を法律的に正しく理解する必要があります。
読者の方が相続に直面しているなら、まずは何が「相続財産」に含まれ、何が含まれないかを整理することから始めましょう。範囲を誤ると、遺産分割協議や相続税の申告にも大きな影響が出るためです。
相続財産の定義と法律上の位置づけ
相続財産(そうぞくざいさん)とは、被相続人(亡くなった方)が生前に所有していた財産的な権利・義務のうち、相続人に承継されるもの全体を指します。民法896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定しており、これが相続財産の基本的な定義となります。
ポイントは「一切の権利義務を承継する」という部分です。つまり、現金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や保証債務といったマイナスの財産も、原則として相続の対象となるのです。
相続財産はプラスもマイナスも引き継ぐ
相続財産は大きく分けて、次の3つに分類できます。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| プラスの財産 | 不動産、預貯金、株式、自動車、貴金属など |
| マイナスの財産 | 借金、ローン、未払いの税金、連帯保証債務など |
| 相続財産に含まれない財産 | 一身専属権、祭祀財産、生命保険金(原則)など |
相続を承認した相続人は、これらのプラス・マイナスをすべて引き継ぐことになります。マイナスの財産がプラスを上回る場合は、相続放棄や限定承認を検討する必要が出てきます。
民法上の相続財産と税法上の相続財産は異なる
注意したいのは、民法上の相続財産と税法(相続税法)上の相続財産は範囲が異なることです。
民法上は相続財産に含まれないものでも、税法上は相続税の課税対象になるものがあります。典型例が生命保険金や死亡退職金で、これらは「みなし相続財産」として相続税の対象となります。
逆に、民法上は相続財産であっても、税法上は非課税となるものもあります(墓地や仏壇など)。遺産分割を考えるときと、相続税を計算するときでは、扱う「相続財産」の範囲が違うという点をしっかり押さえておきましょう。
相続財産に含まれるプラスの財産
まずは相続財産に含まれる代表的なプラスの財産を見ていきましょう。
不動産(土地・建物・借地権)
不動産は、相続財産の中でも特に大きな割合を占めることが多い財産です。
具体的には次のようなものが含まれます。
- 土地(自宅敷地、農地、山林、駐車場など)
- 建物(自宅、貸家、アパート、店舗など)
- 借地権(他人の土地を借りる権利)
- 地上権(他人の土地に建物などを所有する権利)
- マンションの専有部分と敷地利用権
不動産は登記事項証明書で所有関係を確認できます。被相続人名義の不動産は、相続発生後に相続登記を行って名義変更する必要があります。
2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科されることになりましたので、放置は禁物です。
現金・預貯金
現金や預貯金も典型的な相続財産です。具体的には次のものが含まれます。
- 自宅にある現金(タンス預金)
- 銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行などの預貯金
- 定期預金・定期積金
- 外貨預金
- 財形貯蓄
預貯金は、相続発生時に金融機関に死亡の事実が伝わると、口座が凍結されます。凍結された口座から預金を引き出すには、相続人全員の協力が必要です。
近年は、葬儀費用などの当面の支払いに対応するため、相続人単独で一定額を引き出せる「預貯金の仮払い制度」が整備されています。
有価証券(株式・投資信託・国債)
有価証券も相続財産に含まれます。
- 上場株式(証券会社の口座で保有)
- 非上場株式(同族会社の株式など)
- 投資信託
- 国債・社債
- 外国株式・外国債券
上場株式は証券会社の取引報告書や残高証明書で確認できます。非上場株式は、同族会社の株式名簿などから確認することになり、評価が難しいケースも少なくありません。
動産(自動車・宝石・美術品など)
不動産以外の物(動産)も、価値のあるものは相続財産となります。
- 自動車・バイク
- 家電・家具
- 貴金属・宝石
- 美術品・骨董品
- ゴルフ会員権・リゾート会員権
- 船舶・航空機
日用品レベルの家電などは、わざわざ評価しないのが実務の通例です。ただし、高額な美術品や骨董品は専門家による評価が必要となります。
知的財産権(著作権・特許権など)
被相続人が保有していた知的財産権も、相続の対象となります。
- 著作権
- 特許権
- 商標権
- 実用新案権
- 意匠権
著作権は、著作者の死後70年間保護されるため、印税収入などが今後も継続する場合があります。これらの権利の価値評価は専門性が高く、弁護士や弁理士のサポートが必要となるケースが多いでしょう。
事業用資産・売掛金
被相続人が個人事業主だった場合、事業用資産も相続財産に含まれます。
- 事業用の設備・機械
- 商品・原材料の在庫
- 売掛金(取引先から未回収の代金)
- 営業権(のれん)
売掛金は債権の一種で、被相続人の死亡後も相続人が回収できます。逆に、買掛金などの債務はマイナスの財産として引き継ぐことになります。
暗号資産(仮想通貨)
近年、相続財産として問題になることが増えているのが、ビットコインなどの暗号資産です。
被相続人が暗号資産を保有していた場合、それは相続財産に含まれます。ただし、ウォレットのパスワードやアクセス情報が分からないと事実上回収できなくなる恐れがあるため、生前から情報を共有しておくか、エンディングノートに記載しておくことが重要です。
暗号資産は価格変動が激しく、評価額の算定も難しいため、専門家のサポートを得ながら手続きを進めることをおすすめします。
相続財産に含まれるマイナスの財産
相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継ぐことになります。
借金・ローン
被相続人が抱えていた借金やローンは、すべて相続財産となります。
- 銀行・消費者金融からの借入金
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- カードローン
- 事業融資
- 個人間の貸し借り
住宅ローンについては、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、ローン残高は保険で完済されることが多いです。団信の有無を必ず確認しましょう。
未払いの税金・公共料金
被相続人が支払うべきだった税金や公共料金も、相続財産として引き継がれます。
- 所得税(準確定申告の対象)
- 住民税
- 固定資産税
- 国民健康保険料・介護保険料
- 電気・ガス・水道などの公共料金
- 携帯電話料金・インターネット料金
特に税金については、相続人が代わって「準確定申告」を行う必要があります。準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。
連帯保証人としての地位
被相続人が連帯保証人になっていた場合、その連帯保証人としての地位も相続されるのが原則です。
連帯保証人としての地位は、その存在自体が見えにくいため、相続後に突然請求が来て発覚するケースが少なくありません。被相続人の書類や金融機関とのやり取りを慎重に確認することが大切です。
連帯保証は、主債務者が返済できない場合に保証人が代わりに支払うという重い責任を伴うものです。多額の連帯保証債務が発覚した場合、相続放棄を検討する必要があります。
未払いの医療費・家賃
被相続人が支払っていなかった医療費、入院費、家賃、リース料なども、相続財産として相続人が引き継ぐことになります。
特に長期の入院や介護を受けていた場合、医療費や介護費が高額になっているケースがあります。請求書を整理して、未払い額を把握しておきましょう。
相続財産に含まれない財産
法律上、相続財産に含まれない財産もあります。これらは遺産分割の対象とならず、特定の人に直接帰属します。
一身専属権(本人のみに帰属する権利)
被相続人の個人的な資格や地位に基づく権利・義務は、本人の死亡とともに消滅し、相続されません。これを一身専属権といいます。
具体例は次のとおりです。
- 生活保護受給権
- 恩給・年金の受給権
- 身元保証人としての地位
- 使用貸借の借主の地位
- 運転免許・医師免許などの資格
- 扶養を受ける権利
これらは「その人だから」という理由で認められた権利であり、相続人が引き継ぐことはできません。
祭祀財産(お墓・仏壇・位牌)
お墓、仏壇、位牌などの祭祀財産(さいしざいさん)は、相続財産には含まれません(民法897条)。
祭祀財産は、相続とは別のルールで承継されます。具体的には次のとおりです。
- 被相続人の指定がある場合:指定された人(祭祀主宰者)が承継
- 指定がない場合:慣習に従って祭祀を主宰すべき者が承継
- 慣習も明らかでない場合:家庭裁判所が定める
祭祀財産は通常一人の祭祀主宰者に承継させるのが慣例ですが、遺産分割協議の対象ではないため、相続人間で「お墓は長男」「仏壇は次男」と分けることは適切ではありません。
死亡退職金
被相続人の勤務先から支給される死亡退職金は、原則として相続財産に含まれません。
死亡退職金は、遺族の生活保障を目的として支給されるものであり、就業規則などで「受取人」が定められていることが一般的です。受取人として指定された人(配偶者、子など)の固有の権利として、その人に直接支払われます。
ただし、相続税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。後で詳しく解説します。
香典・弔慰金
葬儀の際に受け取る香典や弔慰金も、相続財産には含まれません。
香典は、葬儀を行う遺族(主に喪主)への贈与とされており、遺族が葬儀費用に充てるべきものと位置づけられています。香典の使い道について相続人同士で争うことは、本来想定されていません。
会社から支給される弔慰金についても、社会通念上相当な金額の範囲内であれば、相続税の対象にもなりません。
生命保険金(原則として相続財産ではない)
生命保険金は、相続を考えるうえで最も重要かつ複雑なテーマの一つです。
結論から言うと、生命保険金は原則として相続財産に含まれません。保険契約で受取人として指定された人の固有の権利として、その人に直接支払われるためです。
ただし、次の例外があります。
- 受取人が「相続人」と指定されている場合:相続人全員の固有財産となるが、誰がどう分けるかは法定相続分に従う
- 受取人が被相続人本人になっている場合:相続財産に含まれる
- 受取人が指定されていない場合:約款によるが、相続財産として扱われることがある
民法上は相続財産でなくても、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。この違いを理解しておくことが重要です。
遺族年金
被相続人の死亡によって遺族が受け取る遺族年金は、相続財産に含まれません。
遺族年金は遺族の生活保障を目的とした制度で、受給権者(配偶者、子、父母など)の固有の権利です。相続税の対象にもならず、所得税も非課税となります。
みなし相続財産とは
民法上は相続財産でないにもかかわらず、相続税の対象となる財産が「みなし相続財産」です。理解しておかないと、相続税の申告漏れにつながる恐れがあります。
みなし相続財産の定義と趣旨
みなし相続財産とは、本来は相続財産ではないが、相続税法上は相続によって取得したものとみなされる財産のことです(相続税法3条)。
なぜこうした制度があるのかというと、生命保険金や死亡退職金が実質的には相続財産と同様の経済的価値を遺族にもたらすからです。これらを相続税の対象外としてしまうと、生命保険を多額に契約することで容易に節税できてしまい、税負担の公平性が損なわれます。
そこで、相続税法は経済的実質を捉えて、これらの財産を相続税の課税対象に取り込んでいるのです。
生命保険金がみなし相続財産になる仕組み
生命保険金は、次の条件をすべて満たすとみなし相続財産として相続税の対象となります。
- 被保険者が被相続人本人であること
- 保険料を被相続人が負担していたこと
- 受取人が相続人など(被相続人本人以外)であること
生命保険金の節税効果は大きく、相続税対策として広く活用されています。
死亡退職金がみなし相続財産になる仕組み
被相続人の死亡から3年以内に支給が確定した死亡退職金も、みなし相続財産となります。
具体的には、相続税法3条1項2号により、退職給付金、功労金、その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものが対象です。
3年経過後に支給が確定した場合は、受取人の一時所得として所得税の対象となるため、税制上の取り扱いが大きく変わります。
みなし相続財産の非課税枠
生命保険金と死亡退職金には、それぞれ次のような非課税枠が設けられています。
| 区分 | 非課税枠 |
|---|---|
| 生命保険金 | 500万円×法定相続人の数 |
| 死亡退職金 | 500万円×法定相続人の数 |
たとえば法定相続人が3人なら、生命保険金は1,500万円、死亡退職金は1,500万円、それぞれ非課税となります。両方を活用すれば最大3,000万円が非課税で受け取れる計算です。
この非課税枠を活用することで、相続税の負担を大幅に軽減できます。生命保険は単なる保障だけでなく、相続税対策としても極めて有効な手段なのです。
相続財産を調査する方法
被相続人が亡くなった後、相続財産を漏れなく把握することは、相続手続きの第一歩です。財産別の調査方法を確認しておきましょう。
不動産の調査方法
不動産については、次の書類で調査します。
- 固定資産税納税通知書(毎年4〜5月頃に届く)
- 固定資産課税台帳(役所で取得)
- 名寄帳(同じ市区町村内のすべての不動産がまとまっている)
- 登記事項証明書(法務局で取得)
複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの役所で名寄帳を取得する必要があります。
預貯金の調査方法
預貯金については、被相続人が利用していた金融機関を特定するところから始めます。
- 通帳・キャッシュカード・取引明細書から金融機関を確認
- 金融機関で残高証明書を取得
- 過去10年分の取引履歴を確認(使途不明金の調査に有効)
ゆうちょ銀行や信用金庫など、利用されがちな金融機関は念のため照会することをおすすめします。
有価証券の調査方法
有価証券については、証券会社の取引報告書から確認します。
- 証券会社からの取引報告書・残高証明書
- 株主名簿管理人からの配当金通知書
- 「ほふり」(証券保管振替機構)への照会
複数の証券会社に口座がある場合もありますので、郵便物や預金口座の入出金履歴から見つかる可能性があります。
借金の調査方法
借金やローンの調査は、見落としやすいポイントです。
- 金融機関からの督促状・返済明細
- 信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)への開示請求
- 消費者金融からの郵便物
- 銀行口座からの自動引き落とし履歴
信用情報機関への開示請求は、相続人として行うことができ、被相続人の借入状況を網羅的に把握できます。借金の有無を確実に確認したい場合は、必ず実施しましょう。
弁護士に依頼する場合の財産調査
財産調査を弁護士に依頼すれば、弁護士法23条の2に基づく照会制度を活用できます。
弁護士照会は、金融機関や役所などから、一般の方では入手しにくい情報を取り寄せられる強力な手段です。被相続人の財産関係を網羅的に把握したい場合、弁護士に依頼するメリットは大きいといえます。
相続財産の評価方法
相続財産を分けるためにも、相続税を計算するためにも、財産の評価が必要となります。
不動産の評価方法
不動産の評価は、用途や種類によって複数の方法があります。
| 用途 | 評価方法 |
|---|---|
| 遺産分割の場面 | 時価(実勢価格)で評価することが多い |
| 相続税計算 | 路線価方式または倍率方式 |
| 固定資産税の参考 | 固定資産税評価額(時価の約70%) |
土地は路線価で、建物は固定資産税評価額で評価するのが相続税計算の基本です。実際に売却する予定がある場合は、不動産業者の査定額を参考にすることもあります。
預貯金・有価証券の評価方法
預貯金は、相続発生日(被相続人の死亡日)時点の残高で評価します。残高証明書を金融機関から取得しておきましょう。
有価証券のうち上場株式については、次の4つのうち最も低い価格で評価することが認められています。
- 相続発生日の終値
- 相続発生日の月の終値の月平均額
- 相続発生日の前月の終値の月平均額
- 相続発生日の前々月の終値の月平均額
非上場株式は、配当還元方式、純資産価額方式、類似業種比準方式などを組み合わせて評価しますが、専門性が高いため税理士のサポートが必要です。
動産・その他の財産の評価方法
動産の評価は、内容によって異なります。
- 自動車:中古車市場での査定価格
- 美術品・骨董品:専門業者による鑑定価格
- ゴルフ会員権:取引相場×0.7程度
- 家電・家具:基本的に評価しないことが多い
実務上、家庭用の家財一式をまとめて「家財一式」として概算評価することもあります。
相続財産の範囲で問題となりやすいケース
実際の相続では、財産の範囲を巡って争いが生じることが少なくありません。代表的な論点を確認しておきましょう。
名義預金の取り扱い
「名義預金」とは、口座の名義人と実際の出捐者(お金を出した人)が異なる預金のことです。
たとえば、父親が「長男の名前を借りて」長男名義の口座にお金を貯めていたケースが典型例です。形式上は長男の財産に見えますが、実質的には父親の財産であり、相続財産として相続税の対象になります。
税務調査では、名義預金の有無は重点的にチェックされるポイントです。「子や孫のために」と良かれと思って作った口座が、実は相続税の対象となり追徴課税につながるケースが後を絶ちません。
共有財産の取り扱い
被相続人が他人と共有していた財産は、被相続人の共有持分のみが相続財産となります。
たとえば、兄弟で2分の1ずつ所有していた不動産については、被相続人の持分2分の1のみが相続の対象です。共有者全員の持分が相続されるわけではありません。
共有財産の相続は権利関係が複雑になりやすく、相続後の処分でもトラブルが起きやすいため、生前に解消しておくことが望ましいケースもあります。
使途不明金の取り扱い
被相続人の預金口座から、生前または死亡直前直後に多額の出金がなされており、その使途が不明なケースを使途不明金といいます。
特定の相続人が引き出していた場合、他の相続人から「不当利得返還請求」や「損害賠償請求」がなされる可能性があります。この使途不明金の存在は、相続トラブルの主要な原因の一つです。
預金の取引履歴を10年分取り寄せて、不自然な出金がないかを確認することが大切です。
生前贈与された財産の取り扱い
被相続人が生前に特定の相続人に贈与していた財産は、原則として相続財産ではありません。すでにその相続人のものになっているからです。
ただし、特別受益として、遺産分割の計算上、相続財産に「持戻し」される場合があります。これにより、生前贈与を受けた相続人の取り分が、その分減ることになります。
また、相続開始前10年以内の相続人への生前贈与は、遺留分算定の基礎財産にも含まれます。生前贈与は単純に「相続と無関係」ではない点に注意しましょう。
マイナスの財産が多い場合の対処法
被相続人にマイナスの財産が多く、プラスを上回るケースもあります。その場合の選択肢を整理しておきましょう。
相続放棄を選択する
借金が多すぎる場合、相続放棄を選ぶことで、プラスもマイナスも一切引き継がないという選択ができます。
相続放棄は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。期限を過ぎると、原則として相続放棄ができなくなり、借金まで引き継ぐことになります。
ただし、相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。たとえば配偶者と子が相続放棄すれば、被相続人の親や兄弟姉妹に借金が回っていくため、相続放棄を考えるなら親族と連絡を取り合いながら進める必要があります。
限定承認を選択する
限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。
「借金がいくらあるか分からないが、プラスの財産も惜しい」というケースで有効です。限定承認も、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。
ただし、限定承認は相続人全員の合意が必要であり、手続きも複雑なため、実務での利用は多くありません。
3ヶ月以内の判断が重要
相続放棄も限定承認も、相続開始を知った時から3ヶ月以内に決断する必要があります。この期間を「熟慮期間」といいます。
3ヶ月以内に判断が難しい場合、家庭裁判所に「相続の承認または放棄の期間の伸長」を申し立てて、熟慮期間を延長してもらうことができます。
借金の存在が後から判明したケースなど、特殊な事情がある場合は弁護士に相談することをおすすめします。
相続財産の範囲で迷ったら弁護士に相談を
相続財産の範囲は、一見シンプルに見えて実は複雑な論点が多く含まれています。判断に迷ったら、相続に強い弁護士に相談することが安全です。
財産調査を一括して任せられる
弁護士に依頼すれば、弁護士法23条の2に基づく照会制度を活用して、被相続人の財産を網羅的に調査できます。
預貯金、有価証券、不動産、生命保険、借金など、自分で調べるのは大変な領域も、弁護士なら効率的に進めてくれます。財産の見落としを防ぎ、後に「実は隠れた財産があった」というトラブルも回避できます。
適切な評価方法をアドバイスしてもらえる
不動産や非上場株式など、評価が難しい財産については、適切な評価方法のアドバイスが受けられます。
評価方法によって遺産分割の結果や相続税額が大きく変わるため、専門家の知見は極めて重要です。必要に応じて、弁護士は不動産鑑定士や税理士と連携してサポートしてくれます。
相続放棄・限定承認の判断もサポート
マイナスの財産が多いケースでは、相続放棄や限定承認の判断が必要になります。これらの手続きは期限が厳しく、判断を誤ると取り返しがつきません。
弁護士に相談すれば、プラスとマイナスのバランスを正確に評価したうえで、最適な選択肢を提案してもらえます。家族内のトラブルや連帯保証問題への対応もまとめて任せられます。
まとめ
相続財産には、不動産・預貯金・有価証券などのプラスの財産と、借金・連帯保証債務などのマイナスの財産が含まれます。一方、一身専属権・祭祀財産・生命保険金・死亡退職金などは原則として相続財産には含まれません。
ただし、生命保険金や死亡退職金は相続税法上「みなし相続財産」として課税対象となるため、民法上の相続財産と税法上の相続財産は範囲が異なる点に注意が必要です。それぞれに非課税枠が設定されており、相続税対策にも活用できます。
読者の方が相続手続きを進める際は、まず財産の全容を正確に把握することから始めましょう。財産の種類が多い、不動産が複数ある、借金や連帯保証債務の有無が分からない、といったケースでは、迷わず相続に強い弁護士に相談してください。早めの行動と正確な情報把握が、円満な相続への第一歩となります。
あなたの相続税はいくら?無料診断
基礎控除額
4,200万円
課税対象額
800万円
相続税の総額(概算)
80万円
申告が必要です
※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
- 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
- 遺産分割協議で話がまとまらない
- 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
- 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
- 相続について、どうしていいのか分からない