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死因贈与とは~遺贈との違いは?そのメリット・デメリットを比較

この記事で分かること

  • 死因贈与と遺贈には、共通点と相違点がある。
  • 死因贈与と遺贈には、それぞれメリットとデメリットがある。
  • 死因贈与にするか遺贈にするかは、メリットとデメリットを理解し、細かな点についての疑問を解き明かしながら、トータルに考えなければならない。
  • 死因贈与か遺贈かで迷ったら、相続に詳しい弁護士に相談するのが一番である。

贈与者の死亡により遺産の持ち主が変わる点で共通な死因贈与と遺贈。両者には特有のメリットとデメリットがあります。それらを正確に理解し、細かな点についての疑問も明らかにすることで、妥当な選択が可能となります。そのためには、法律の専門家の助言が欠かせません。死因贈与か遺贈かで迷ったら、まず弁護士に相談しましょう。

死因贈与とは

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与を、死因贈与といいます。

贈与とは、自分の財産をタダで相手に与えることをいいます。通常の贈与は、たとえば「わたしの自動車をタダで君にあげよう。」というAさんの申し出に対して、相手のBさんが「ください。」と言った時点で、贈与の効力が生ずる、つまり自動車の所有権がAさんからBさんに移ります。

死因贈与の場合、たとえば「わたしが死んだら、わたしの自動車をタダで君にあげよう。」というAさんの申し出に対して、相手のBさんが「ください。」と言った時点では、自動車の所有権はBさんに移りません。時が経って、Aさんが亡くなった時点ではじめて、自動車の所有権がBさんに移る、つまり贈与の効力が生ずるわけです。

ところで、死因贈与と同じく、人が亡くなることで、その人の財産が他の人の物になる制度として、遺贈というものがあります。自分が亡くなったら、自分の財産をある人にあげたいと考えている人にとって、死因贈与と遺贈のどちらがよいのか、迷うところです。

この記事では、死因贈与と遺贈の同じところと違うところ、それぞれのメリットとデメリットを解説し、死因贈与にするか遺贈にするかの判断のポイントを提供します。

ワンポイントアドバイス
この記事で解説する死因贈与か遺贈かの判断ポイントは、あくまで一般的なポイントに過ぎません。実際のケースでは、与える人の思い、もらう人の思い、両者の関係、周囲の状況など、さまざまな要素が入り混じった上での判断となります。そうした判断をするには、法律専門家の助言が必要となります。この記事を読んで一般的な判断ポイントをつかんだ上で、さまざまな要素が入り混じった具体的事情というデータを手に、弁護士の下へ相談に行くことをお勧めします。

死因贈与と遺贈の共通点と相違点

人が亡くなることで、その人の財産が他の人の物になる死因贈与と遺贈。似て非なる両者の基本的な共通点と相違点を見ておきましょう。

死因贈与と遺贈の共通点

死因贈与・遺贈
効力発生の原因 与える側の死亡
与える相手 誰でもよい。法定相続人でなくてもよい。

死因贈与と遺贈の相違点

死因贈与 遺贈
行為の種類 与える人ともらう人との合意(契約) 与える人の一方的な意思表示(単独行為)
方式 口頭(口約束)
または書面(契約書)
遺言
税金 贈与税 相続税
ワンポイントアドバイス
相違点の中でも、行為の種類と方式、つまり契約か単独行為か、口頭・契約書か遺言かの違いが大切です。死因贈与と遺贈のメリット・デメリットの多くは、これらの違いから生ずるものが多いからです。

死因贈与のメリット・デメリット

ここから、死因贈与と遺贈それぞれのメリット・デメリットの解説に入ります。まず、死因贈与には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

死因贈与のメリット

死因贈与のメリットとして、次の2つを挙げることができます。

方式が自由

死因贈与は、「このような方式で行わなければならない」という決まりはありません。口頭で合意した場合、契約書を作成した場合、いずれも死因贈与が成立します。死因贈与は、その成立のために特別の方式を必要としない契約(不要式契約)だからです。

ただ、口頭の合意だけだと、後々「言った」「言わない」の争いになるリスクがありますので、契約書の作成という方式によるのが安全です。

財産は確実に相手のもとへ

死因贈与により、贈与者が亡くなった時点で、贈与財産の所有権は確実に相手に移ります。死因贈与は契約であり、いったん成立した以上、契約どおりの効果が生ずるからです。また、死因贈与は、遺贈のように、もらう人が放棄できるものでないことも、理由のひとつです。

死因贈与により、贈与者の「この財産をあの人に上げたい」という最終意思が、確実に実現されることになります。

死因贈与のデメリット~負担付死因贈与を中心に

死因贈与のデメリットとして、次の2つを挙げることができます。

贈与を撤回できない場合あり

死因贈与契約が成立した後、やはり贈与を止めようと思った場合、贈与者は、書面により、死因贈与を撤回できるとするのが最高裁判所の判例です。贈与者の最終意思を尊重するためです。以上は、通常の死因贈与の場合です。

死因贈与の特殊な形として、負担付死因贈与があります。贈与を受ける人が、贈与の見返りとして何らかの義務を贈与者に対して負担する形の贈与です。父親が自分の全財産を息子に死因贈与する見返りに、息子は父親に毎月の生活費を送る義務を負担するのがその例です。

負担付死因贈与では、贈与を受ける人が負担の全部またはそれに値するくらいの負担をすでに行った場合、贈与者は負担付死因贈与を撤回できないとするのが最高裁判所の判例です。贈与者の最終意思ばかりが尊重されて、贈与を受ける人がすべての負担を果たしたにもかかわらず思わぬ不利益を受けることは、公平の観点からして好ましくないからです。

遺贈の相続税よりも高税率

死因贈与には贈与税が掛かります。遺贈には相続税が掛かります。贈与税の税率は、相続税の税率よりも高く設定されています。贈与による相続税逃れを防ぐために贈与税が導入された当時の名残であるとのことです。従って、一般的にいえば、死因贈与よりも遺贈の方が節税になるといわれています。

ワンポイントアドバイス
日本の税制では、死因贈与された財産も含めて相続税を計算する方法も認められています。この方法によると、遺贈よりも贈与の方が節税になる場合もあり得るといわれています。死因贈与と遺贈のどちらが節税になるのかは、ケースバイケースです。具体的事情を基に、税に詳しい弁護士か税理士に相談することをお勧めします。

遺贈のメリット・デメリット~死因贈与との比較

遺贈とは、遺言により、自分亡き後の財産を他の人に与えることをいいます。遺贈には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。死因贈与と比較しながら解説します。

遺贈のメリット

遺贈には、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、次の2つのメリットを紹介します。

秘密に行える

遺贈は、誰にも知られることなく、秘密に行うことができます。遺贈は遺言で行うものであり、遺言は自分独りで書くことができるからです。自分独りで書くことで、他の人からの干渉を受けずに、自分の気持ちに正直な遺贈を行うことができます。

これに対して死因贈与は、贈与する人とされる人との契約によって行われるので、贈与される人は死因贈与の存在を知ることになります。贈与される人が死因贈与の存在を第三者に話せば、第三者も死因贈与の存在を知ることになります。「秘密」とは、かなりかけ離れた状態になります。

放棄することができる

遺贈によって財産をもらう立場にある人は、遺贈を受ける権利を手放すこと、つまり遺贈の放棄をすることができます。

遺贈は、遺贈する人が一方的に行うものです。事前に遺贈相手の気持ちを聞くことはありません。たとえ高額な財産であっても、人によってはもらいたくない人もいるはずです。そういう人の気持ちを無視してまで、遺贈を強制することはできません。財産をもらうという行為も、その人の自由意思に基づかなければならないからです。

これに対して死因贈与は、贈与する人とされる人との契約です。贈与される人は、財産をもらうことに納得した上で合意します。従って、死因贈与の契約後に、贈与を受ける権利を手放すこと、つまり死因贈与の放棄というものを考える余地はありません。(贈与契約自体が無効または取消し得ることを理由に、贈与を受けることを拒むという事態はあり得ます。

しかし、これは契約自体の効力がない場合です。契約の効力があることを前提とした死因贈与の放棄の問題とは、関係ありません。)

遺贈のデメリット

遺贈を考える場合、そのデメリットとして、次の3つを理解しておくことが重要です。

形式が厳しい

遺贈は、遺言によって行います。遺言は、法律に定める方式に従わなければ、これを行うことができません。方式に従わない遺言は、無効となります。従って、遺言を作るに当たっては、法律を正しく理解したうえで、事に当たらなければなりません。

これに対して死因贈与は、口頭または書面で行うことができます。書面とは通常、契約書のことをいいます。契約書については、法律で定める方式というものはなく、合意の内容が正しく書かれていれば十分です。

遺言の見直しが必要

「家Aを与える」という遺贈を行った場合、遺贈する人は家Aの状態を常に確認して、遺贈を受ける人にとって、「もらってありがたい」という状態にしておかなければなりません。そうでなければ、遺贈する人にとって、家Aを遺贈する意味がないからです。

たとえば、途中で家Aが火災で焼失してしまった場合、遺贈する人は、遺贈の気持ちがある限り、「家Bを与える」というように遺言を書き直さなければなりません。

これに対して死因贈与は、契約時に決めた物の贈与を目的とするものです。契約後に贈与する物の状態が変わっても、契約時に決めた物である限り、贈与者の死後、それが贈与を受ける人の物になることで、契約の目的は果たされたことになります。契約内容を随時見直す必要はありません。

借金をもらうリスクあり

「遺産をすべてAに与える」「遺産の2分の1をAに与える」というように、遺産の全部または分数的割合を与える遺贈を包括遺贈といいます。

遺産全部を包括遺贈された場合、マイナス財産である借金などの負債が含まれている可能性があります。遺贈の内容は、遺贈する人が、誰も知らないうちに一方的に決めます。遺贈をもらう人が、その内容を事前に知る術はありません。負債が含まれていた場合、遺贈を受けた人は遺贈を放棄することで、負債を背負わずにすむことができます。

これに対して死因贈与は、契約の時点で、贈与を受ける人が贈与されるものを知ることができるので、贈与を受ける人が負債も含めてもらう意思がある場合を除いて、負債が贈与されるという事態は想定されません。

ワンポイントアドバイス
本文で紹介した遺贈のメリット・デメリットは、あくまで一般的なものです。実際のケースにおいて、遺贈がどんなメリット・デメリットを生ずるかは、ケースバイケースです。自分が遺贈をした場合の実際のメリット・デメリットを知りたいと思ったら、弁護士に相談することが最も確実な方法です。

死因贈与に関してよくある質問 Q&A

ここで、死因贈与について、一般の方が判断に迷うと思われる6つの点について解説します。

Q.死因贈与と遺言はどちらが優先される?

故人が、自分の財産について、Aさんと死因贈与の契約をする一方で、Bさんに遺贈する内容の遺言を残していた場合、故人の遺産を手にすることができるのはAさんBさんのいずれでしょうか。

死因贈与が後の場合、死因贈与が優先

遺言よりも死因贈与の方が後の場合、死因贈与が優先します。

死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈の規定が適用されます。両者は、財産を与える側の人が亡くなることによって、与えられる側の人が財産の持ち主へと変わる点で、共通だからです。

遺贈の規定の中に、遺言の内容と遺言後の死因贈与の内容とが食い違う場合、食い違う部分については死因贈与が優先するとの規定があります。従って、このケースの場合、Aさんが遺産を手にします。

遺言が後の場合、遺言が優先

死因贈与よりも遺言の方が後の場合、遺言が優先します。

遺言の内容と遺言前の死因贈与の内容とが食い違う場合については、どちらが優先するかを定めた遺贈についての規定がありません。そこで、遺言と死因贈与の基本的な性質を基に、どちらが優先するかを考えることになります。

遺言も死因贈与も、ともに遺産の行方についての故人の最終意思を表したものです。遺言は故人から相手に対する一方的な意思の表明、死因贈与は故人と相手との間でのお互いの意思の表明という違いがあるだけです。どちらの意思の表明も、相手が遺産を自分の物にできるという法律的な効果を生じさせます。こうした何らかの法律的な効果を生じさせる意思表明のことを、法律用語で、意思表示といいます。

前後2つの意思表示がある場合、後の意思表示が優先するというのが法律の原則です。条文には書かれていませんが、条文の背後にある原則として、法律家の間で認められています。人間の意思は時と共に変わり得るものである以上、できるだけ新しい意思をもって本人の意思ととらえるべきだからです。

従って、このケースの場合、遺言に示されたBさんへ遺贈する意思の方が故人にとっての新しい意思ですので、Bさんが遺産を手にすることになります。

Q.死因贈与に年齢制限はありますか?

死因贈与をする場合、何歳以上でなければならないなどの年齢制限はあるのでしょうか。

死因贈与に年齢制限はないのが原則である

死因贈与は、財産の持ち主と財産をもらう人との契約です。契約は、人間であれば誰でも行うことができます。これを、権利能力平等の原則といいます。死因贈与に年齢制限はなく、何歳であってもこれを行うことができるのが原則です。

実際に独りで死因贈与を行えるのは、20歳以上の人である

しかし、実際問題として、たとえば、いくら人間であるとはいえ、赤ん坊が契約という行為をすることなど、どう考えても不可能です。そこで法律は、権利能力平等の原則を前提に、実際に契約を行うことができる精神的な能力というものを考えました。これを、意思能力といいます。

ところが、契約の時点で、相手に意思能力があるかどうかがはっきりしない場合があります。たとえば、一見すると考え方がしっかりしているようだが、いまひとつ不安がある15~16歳くらいの青年を相手に契約をするような場合です。この場合、相手に意思能力があるかどうかをいちいち調べていたのでは、いつ契約ができるか分かりません。また、いったん契約をした後になって、青年の側から意思能力がなかったことを理由に契約の無効を主張されたのでは、契約した側にとってたまったものではありません。

そこで法律は、20歳という、戸籍や運転免許証などを見れば一目瞭然の基準をもって、独りで契約できる能力ありと定めました。この能力を、独りで契約などの法律行為を行うことができる能力という意味で、行為能力いいます。こうした一目瞭然の基準にすれば、契約する側も、相手に意思能力があるかどうかについて悩まなくてすむわけです。

20歳以上(成年)であれば、独りで死因贈与をすることができます。逆に、実際には稀なことであるかと思いますが、20歳未満(未成年者)であれば、親の同意を得るか、親が未成年者を代理するかでないと、死因贈与をすることはできません。

遺贈は15歳以上であれば、独りでできる

遺贈については、15歳以上であれば、親の同意をもらうことも、親に代理してもらうこともなく、独りで遺言を書くことにより、遺贈を行うことができます。

15歳になれば遺贈がどのようなものかを理解するだけの精神能力が備わるであろうこと、遺言は一方的な意思表示(単独行為)であって契約のように相手との交渉という場面がないため20歳レベルの精神能力までは必要ないことが、その理由です。

Q.胎児に死因贈与したい場合、どうしたらよいですか?

たとえば、まだ母親のおなかの中にいる孫に、死因贈与という形で財産を残したい場合、
どうしたらよいでしょうか。

胎児との死因贈与契約は有効

死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈の規定が適用されます。遺贈の規定の中に、胎児についてはすでに生まれたものとみなすとの規定があります。「すでに生まれたものとみなす」とは、ひとりの人間として死因贈与契約の当事者になれるという意味です。従って、胎児に対して死因贈与を行う契約そのものは、有効に成立させることができます。

胎児との死因贈与契約は、胎児が生まれた後に結ぶことができる

ここで、「すでに生まれたものとみなす」という文言の意味が問題となります。最高裁判所の前身である大審院は、要約すると次のような判断を示しています。「その文言は、おなかの中にいるうちに契約当事者となることができるという意味ではない。無事に生きて生まれた時に、胎児だった頃にさかのぼって契約当事者としての資格を手にするのである。」

この判例に従う限り、孫がおなかの中にいるうちは、死因贈与契約を行うことができません。孫が無事に生きて生まれた時にはじめて、死因贈与契約を行うことができます。

ただ、この時に孫はすでに契約当事者となる資格があるので、あえて胎児の頃にさかのぼって死因贈与契約を結ぶ必要はなく、今現在の状態の下、孫の親を法定代理人として死因贈与契約を行うことで事足ります。

胎児への財産分与は、遺贈によるのが無難

孫が生まれた時に贈与者が故人となっていた場合、もはや死因贈与契約を結ぶことができません。

結局のところ、胎児に遺産を与えたい場合、死因贈与ではなく、遺贈によるのが無難であると思われます。

Q.死因贈与された財産は特別受益にあたる?遺留分に影響する?

故人から遺贈や生前贈与を受けた相続人については、法定相続分から遺贈や生前贈与の額を差し引いたものが、その人の相続分となります。こうした遺贈や生前贈与のことを、特別受益といいます。

死因贈与された財産は特別受益に当たると共に、遺留分に基づく財産返還請求の対象となります。
以下、分けて解説します。

死因贈与された財産は特別受益に当たる

遺贈の規定の中に、遺贈が特別受益に当たるとの規定があります。死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈の規定が適用されます。従って、死因贈与された財産も特別受益に当たります。死因贈与を受けた人については、法定相続分から特別受益である死因贈与の額を差し引いたものが、その人の相続分となります。

死因贈与された財産は遺留分に基づく財産返還請求の対象となる

遺贈の規定の中に、遺留分を持つ人は、自分の遺留分を守るのに必要な限度で、遺贈された財産の返還を請求できるとの規定があります。死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈の規定が適用されます。従って、死因贈与された財産も遺留分に基づく財産返還請求の対象となり得ます。

Q.死因贈与した相手が相続放棄した場合、死因贈与の効力はどうなる?

財産の持ち主と法定相続人の間で、財産を死因贈与する契約がなされました。持ち主が亡くなった後、法定相続人は相続放棄をしました。死因贈与の効力はどうなるのでしょうか。

死因贈与の相手が相続放棄をしても、死因贈与の効力には影響ありません。以下、解説します。

相続放棄をすると相続人資格を失う

法定相続人の相続放棄によって、その法定相続人は初めから相続人にならなかったものとみなされます。従って、法定相続分もなくなります。

死因贈与の相手は誰でもよい

死因贈与は贈与の一種です。贈与においては、贈与者は、誰でも贈与の相手とすることができます。従って、死因贈与においても、贈与者は、法定相続人に限らず誰でも贈与の相手とすることができます。

死因贈与の相手は、もはや法定相続人ではありません。しかし、死因贈与の相手は誰でもよいので、相手が法定相続人でなくなったとしても、このことは死因贈与の効力に何ら影響を与えません。贈与者が亡くなると同時に、死因贈与された物は相手の物となります。

Q.父が、現在入所している老人ホームを経営する社会福祉法人に、自分の財産を死因贈与したいと言っています。これは可能でしょうか?もちろん、家族全員が同意しています。

死因贈与といった場合、通常は個人への贈与を思い浮かべます。しかし中には、このQのように、法人への死因贈与を考える人もいるでしょう。法人への死因贈与は可能なのでしょうか。

法人は、個人と同列の契約当事者である

法人とは、人または財産の集まりであって、契約の当事者となる資格を認められたものをいいます。数ある法人の種類のうち、社会福祉法人も、れっきとした法人のひとつです。法人は、法律上、個人と同列の契約当事者として扱われます。

法人への死因贈与に問題なし

法人を死因贈与の相手とすることは、法律上、まったく問題ありません。法人は法律的に個人と同列の存在として位置づけられていること、法人への死因贈与を禁止する法律の規定がないこと、法人への贈与は法人の活動を支援するものとして社会的価値があることが、その理由です。

社会福祉法人への死因贈与により所得控除の可能性あり

社会福祉法人への死因贈与などの形による寄付については、寄付した分が所得税算定のベースとなる所得から差し引かれる、いわゆる所得控除の対象になる場合があるといわれています。詳しくは、税に詳しい弁護士か税理士に相談することをお勧めします。

ワンポイントアドバイス
実際の相続問題では、本文に挙げた6つのQ以外にも、死因贈与について分からないことがたくさん出てくるはずです。自分が置かれた具体的なケースについて、法律の専門家である弁護士に直接尋ねるのが一番です。

死因贈与か遺贈かで迷ったら、弁護士に相談を

死因贈与と遺贈には、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらを選ぶかについて、大いに頭を悩ます問題です。

ただ、本文の解説は、あくまであらすじに過ぎません。実際のケースは、より複雑で、様々な感情が交じり合い、到底この記事を読んだだけで答えが出せるものではありません。自分、財産、周囲の状況などの情報を、法律の専門家である弁護士に話すことが、解決のスタートです。

死因贈与か遺贈かで迷ったら、まず弁護士に相談しましょう。

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