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従業員承継とは?メリット・デメリットと手続の流れ

この記事で分かること

  • 従業員承継の意味と、親族内承継・M&Aとの違い
  • 従業員承継のメリット・デメリットと具体的な課題係者に公表して協力体制を築くことが重要である
  • 手続きの流れ(後継者選定〜法的手続きまで)
  • 株式譲渡・MBO・贈与など株式移転の方法と選び方
  • 事業承継税制や補助金など、活用できる支援制度
  • トラブルを防ぐための法的対策と弁護士への相談ポイント

従業員承継とは、親族以外の役員・従業員に事業を引き継ぐ方法です。後継者を見極めやすい反面、資金調達の難しさや税負担など課題も多くあります。この記事では、手続きの流れ・株式移転の方法・活用できる税制支援・法的トラブルの防止策まで、弁護士目線で徹底解説します。

「そろそろ引退を考えているが、子どもには継がせられない。でも、見ず知らずの第三者に会社を売るのも気が進まない」――そう感じている経営者の方は、少なくないはずです。

そんなときに有力な選択肢となるのが、従業員承継です。長年一緒に働いてきた役員や従業員に会社を引き継ぐ方法であり、近年その割合は着実に増えています。

ただし、従業員承継にはメリットだけでなく、資金調達の問題・税負担・社内トラブルといった、決して軽視できない課題も存在します。うまくいくかどうかは、早期の準備と適切な法的対策にかかっているといっても過言ではありません。

この記事では、従業員承継の基本知識から手続きの流れ、トラブルを防ぐための対策まで、弁護士の視点からわかりやすく解説していきます。

従業員承継とは?基本的な意味をおさえよう

従業員承継の定義と位置づけ

従業員承継とは、現経営者が引退する際に、親族以外の役員・従業員を後継者として事業を引き継ぐ方法のことをいいます。

事業承継とは、経営者が経営から離れる際に、会社の「人(経営)」「資産」「知的資産」の3つを後継者に移転することです。従業員承継はその承継先を、社内の人間に求める点に特徴があります。

具体的には、長年自社で勤務してきた取締役・執行役員・部長クラスの従業員などが後継者の候補となります。外部から招いた人材ではなく、あくまで「社内で育ってきた人材」に引き継ぐ点が重要なポイントです。

ワンポイントアドバイス
従業員承継では、承継するのは「経営権」だけではありません。株式・財産・知的資産(ノウハウ・ブランド・顧客との信頼関係など)もあわせて引き継ぐ必要があります。特に株式の移転方法と税負担については、早期から弁護士・税理士と連携して検討することが重要です。

事業承継の3つの方法との比較

事業承継の方法は、大きく分けて以下の3種類があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

承継方法 後継者 主なメリット 主なデメリット
親族内承継 子・孫・配偶者など 後継者を早期育成できる。周囲の納得を得やすい 後継者が意欲を持たないケースも。遺産トラブルのリスク
従業員承継 役員・従業員 能力・人柄の見極めがしやすい。経営方針が継続されやすい 資金調達が困難。大きな発展が期待しにくい
M&A(第三者承継) 外部の企業・個人 後継者不在でも承継可能。経営者が売却益を得られる 会社文化の変容リスク。従業員の不安が高まりやすい

親族内承継が「身内で継ぐ」、M&Aが「外部に売る」とすれば、従業員承継はそのちょうど中間的な方法といえます。内部をよく知る人材に任せられる安心感がある一方、資金面などの課題が残ります。

従業員承継が選ばれる背景と現状

後継者不在問題と中小企業の実態

日本の中小企業では、経営者の高齢化が急速に進んでいます。帝国データバンクの調査によれば、後継者が「いない」「未定」と答える企業は依然として多く、後継者不在は深刻な社会問題となっています。

「息子や娘に継がせたいが、本人が乗り気でない」「そもそも子どもがいない」――こうした事情を抱える経営者にとって、従業員承継は現実的かつ魅力的な選択肢となります。

また、廃業を選んだ場合、長年培ってきた技術・ノウハウ・雇用が一度に失われるリスクがあります。地域経済や取引先への影響も看過できません。だからこそ、何らかの形で事業を継続させることが、社会的な責任という観点からも求められているのです。

従業員承継の割合の推移

かつては「事業承継=親族に継がせる」というイメージが強くありました。しかし近年は、従業員承継やM&Aによる承継の割合が増加傾向にあります。

中小企業庁の調査でも、従業員承継を選択する企業の割合は年々高まっており、サポート体制も官民ともに充実してきています。「事業承継・引継ぎ支援センター」などの公的機関も、従業員承継に積極的に対応するようになっています。

従業員承継のメリット

後継者の能力・人柄を見極めやすい

従業員承継の最大のメリットの一つは、後継者の能力・性格・経営センスを長期間にわたって評価できる点です。

たとえば、10年以上ともに働いてきた役員であれば、プレッシャーのかかる場面でどう行動するか、部下をどう率いるか、取引先との交渉をどうこなすか――こうした点を実際に見てきているわけです。

外部からスカウトした人材であれば、採用面接や短期間の評価で判断せざるをえません。しかし従業員承継では、あらゆる角度から人物を評価したうえで後継者を選ぶことができます。これは非常に大きなアドバンテージです。

経営方針・社風が引き継がれやすい

長年自社で働いてきた従業員は、経営者の理念・方針・社風を肌で知っています。そのため、経営者が培ってきた会社の文化や方向性が、承継後も継続されやすいのです。

業績が安定しており、現在の路線を維持・発展させたいと考えている場合、従業員承継は特に向いている選択肢といえます。経営スタイルの急激な変化を避けられるため、従業員や取引先への影響も最小限に抑えられます。

従業員・取引先の信頼を得やすい

「社長が変わった」という事実は、社内外に大きな動揺をもたらすことがあります。特に中小企業では、「経営者の顔」が会社の看板になっているケースも多く、後継者が外部の人間であると、取引先や金融機関から不安の声が上がりやすいものです。

その点、従業員承継であれば、後継者はすでに社内外の関係者から認知されていることが多く、スムーズな引き継ぎが期待できます。「あの人なら安心だ」という信頼感は、承継後の経営安定にとって大きな財産となります。

ワンポイントアドバイス
従業員承継では、後継者が「会社の顔」として認識されるまでのプロセスが非常に重要です。引き継ぎ前から積極的に取引先へ同行させたり、銀行担当者との関係構築を進めたりするなど、計画的に信頼を移転させていくことをおすすめします。

従業員承継のデメリット・課題

後継者の資金調達が難しい

従業員承継の最大の課題は、後継者が株式を取得するための資金を用意しにくいという点です。

たとえば、株式の時価が1億円の会社を従業員に承継させようとしても、従業員個人がそれだけの資金を持っていることは稀です。金融機関から融資を受けることが一般的ですが、担保となる個人資産が乏しい場合は融資審査が厳しくなります。

この問題に対応するために、後述するMBO(マネジメント・バイアウト)や、金融機関の事業承継専用ローンなどの活用が有効です。また、現経営者が株式の一部を保有し続け、段階的に移転していく「分割承継」の方法もあります。

株式取得に伴う税負担の問題

従業員が株式を取得する方法によって、課税される税金の種類と金額が異なります。

  • 株式を売買する場合 → 後継者は対価を支払う(所得税・住民税の対象になるケースも)
  • 株式を贈与する場合 → 後継者に贈与税が課される
  • 遺言による承継の場合 → 相続税の対象となる

特に非上場株式の評価額は、思いのほか高くなることがあります。事前に税理士と連携して株式評価を行い、税負担を把握・対策したうえで進めることが不可欠です。

会社の大幅な発展が期待しにくい

従業員承継は「現状維持・安定継続」には向いていますが、事業の大幅な方向転換や飛躍的な成長は期待しにくいという面もあります。

社内で育った後継者は、既存の文化・慣習に慣れ親しんでいるため、革新的なアイデアや大胆な経営判断が出にくいことがあります。もちろん個人差はありますが、特に業績が低迷しており根本的な改革が必要な場合は、外部人材の招へいも視野に入れる必要があるかもしれません。

社内の人間関係トラブルのリスク

後継者に選ばれなかった役員・従業員が不満を感じ、退職や対立が生じるケースがあります。特に候補者が複数いた場合は、選考プロセスの透明性と公平性が重要です。

また、現経営者の親族(特に子ども)が会社に残っている場合、「なぜ息子ではなく他人が後継者なのか」という感情的な対立が生じることもあります。こうした問題を防ぐには、承継の意思決定を早い段階で明確にし、関係者への丁寧な説明と合意形成を行うことが大切です。

従業員承継の具体的な手続きの流れ

従業員承継は、決して一夜にしてなるものではありません。一般的には、5年以上前から準備を始めることが理想とされています。以下に、基本的なステップを解説します。

ステップ1:後継者候補の選定

まず、後継者の候補を選ぶところから始まります。判断基準は様々ですが、以下のような点を総合的に評価するとよいでしょう。

  • 経営に関する能力・判断力・リーダーシップ
  • 社内外の人間関係・信頼の厚さ
  • 財務・法務など経営全般への理解度
  • 本人の意欲・覚悟・ビジョン

候補者が複数いる場合は、複数人を競わせる形で観察期間を設けることも一案です。ただし、その過程で内部対立が生じないよう、情報管理と丁寧なコミュニケーションが欠かせません。

ステップ2:後継者教育・育成計画

後継者を選んだら、経営者として必要なスキルや知識を体系的に習得させる必要があります。具体的には、次のような取り組みが有効です。

  • 財務・会計の基礎知識の習得(経理担当者との連携)
  • 取引先への随行・営業活動への参加
  • 金融機関・主要取引先への紹介・引き合わせ
  • 役員会・経営会議への参加と意思決定への関与
  • 外部の経営塾・セミナーへの参加

育成には最低でも3〜5年は必要と考えておくべきでしょう。経営者自身が「いつまでに引退する」という明確な目標を持ち、逆算した育成スケジュールを立てることが重要です。

ステップ3:株式・経営権の移転方法の決定

従業員承継において最も法的に複雑なのが、株式の移転方法の選択です。主な方法は以下のとおりです。

移転方法 概要 税務上の取り扱い
株式売買(有償譲渡) 現経営者が株式を後継者に売却する 現経営者に譲渡所得税。後継者は資金が必要
株式贈与 現経営者が株式を無償で後継者に贈与する 後継者に贈与税。事業承継税制の活用も可能
MBO 後継者が資金調達し会社を買い取る 複雑な法的スキームを要する
遺言による承継 現経営者の死後に株式を遺言で承継させる 後継者に相続税。遺留分トラブルのリスクも

どの方法が最適かは、会社の規模・株式評価額・後継者の資力・現経営者の意向などによって異なります。必ず弁護士・税理士と相談したうえで決定してください。

ステップ4:関係者への周知と合意形成

後継者と移転方法が決まったら、取締役会・株主・主要従業員・主要取引先・金融機関などへの説明を行います。

特に取引先や金融機関への対応は重要です。「なぜこの人が後継者なのか」「今後の経営方針はどう変わるのか」を丁寧に説明し、信頼を継続させることが必要です。この段階を怠ると、承継後に取引打ち切りや融資の引き上げといった深刻な問題が生じるリスクがあります。

ステップ5:法的手続きの実施

実際の承継にあたっては、以下のような法的手続きが必要になります。

  • 株式譲渡契約書・贈与契約書の作成
  • 取締役の変更登記(法務局への申請)
  • 代表者変更に伴う各種届け出(税務署・金融機関等)
  • 社会保険・雇用保険関連の手続き
  • 各種許認可の名義変更(業種によって異なる)

これらの手続きは種類が多く、専門知識がなければ対応が難しい場面も出てきます。弁護士や司法書士に依頼して、漏れなく確実に進めることをおすすめします。

株式譲渡・贈与・MBOの違いと選び方

株式譲渡(売買)とは

最もシンプルな方法が、現経営者から後継者への株式の売買です。後継者が対価を支払い、現経営者が株式の経済的な価値を現金化できるという点でメリットがあります。

ただし、非上場株式の場合、株価は税務上の評価方法(純資産価額方式・類似業種比準方式など)で算定されますが、この評価額が想定より高く、後継者が資金を用意できないケースが生じます。金融機関の事業承継専用ローンや、現経営者が分割受け取りに応じる方法などを組み合わせることが現実的です。

MBO(マネジメント・バイアウト)とは

MBOとは、Management Buyoutの略で、役員・従業員が自ら資金を調達して会社を買い取る方法です。従業員承継の中でも、特に大規模な取引になる場合に用いられます。

MBOでは、後継者(または後継者チーム)が設立した新会社(SPC:特別目的会社)が金融機関から融資を受け、その資金で現経営者から株式を取得します。その後、新会社と既存会社が合併するスキームが一般的です。

法的には複雑な構造になるため、弁護士・会計士・金融機関との緊密な連携が不可欠です。しかし、後継者が大きな自己資金を持たなくても承継を実現できる点で、注目を集めています。

贈与・遺贈による承継とは

現経営者が存命中に株式を贈与する方法と、遺言によって死後に遺贈する方法があります。

贈与の場合、後継者には贈与税が課されます。ただし、後述する「事業承継税制(特例措置)」を活用すれば、贈与税の納税を猶予・免除できる場合があります。

一方、遺贈による承継は、現経営者の突然の死亡に備えて遺言書を作成しておく方法です。ただしこの場合、他の相続人の遺留分を侵害するリスクがあり、承継後に法的紛争に発展するケースがあります。特に現経営者に子どもや配偶者がいる場合は、遺留分対策が必須です。

ワンポイントアドバイス
遺言による従業員承継を考えている場合、遺留分を侵害しないよう事前に相続設計を行うことが重要です。たとえば、生命保険を活用して他の相続人に金銭を渡す方法や、遺留分放棄の手続きを事前に行うことで、承継後のトラブルを防ぐことができます。

従業員承継で活用できる税制・補助金

事業承継税制(特例措置)とは

従業員承継において、後継者の大きな負担となるのが贈与税・相続税です。これを軽減するために設けられた制度が「事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例)」です。

この特例措置を活用すると、一定の要件を満たした場合に、非上場株式に係る贈与税・相続税の全額の納税が猶予され、後継者の死亡等の一定事由が生じた場合には免除されます。

主な要件は以下のとおりです。

  • 中小企業者であること(資本金・従業員数の要件あり)
  • 都道府県知事の認定を受けること
  • 先代経営者(贈与者・被相続人)が代表者であったこと
  • 後継者が承継後も代表者となること
  • 雇用の8割以上を5年間維持すること(ただし特例措置では弾力化)

この制度の特例措置は、令和9年12月31日までに「特例承継計画」を提出することが必要です(適用期限に注意が必要です)。期限が迫っていることもあり、早急な対応が求められます。

事業承継・引継ぎ補助金とは

国は、事業承継を円滑に進めるための補助金制度も設けています。「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業承継・M&Aにかかる費用の一部を補助するもので、従業員承継にも活用できます。

補助対象となる費用の例としては、以下のものが挙げられます。

  • M&Aアドバイザリー費用・デューデリジェンス費用
  • 専門家(弁護士・税理士等)への相談費用
  • 承継後の事業転換・設備投資費用

補助率・補助額は公募年度によって異なりますので、最新情報を中小企業庁や事業承継・引継ぎ支援センターで確認してください。

従業員承継でトラブルを防ぐための法的対策

株主間契約・経営権の明確化

従業員承継後、現経営者が株式を一部保有し続けるケース(分割承継)では、後継者と現経営者・その親族との間で経営権をめぐる対立が生じることがあります。

こうしたトラブルを防ぐために有効なのが、株主間契約の締結です。株主間契約とは、主要な株主間で「誰がどのような権限を持つか」「株式をどのような条件で売買できるか」などを取り決める契約です。会社法上の定款による規制では対応しきれない細かい事項を、契約によって縛ることができます。

たとえば、以下のような条項を盛り込むことが考えられます。

  • 先買権条項(他の株主が株式を第三者に売る前に優先的に買い取れる権利)
  • 取締役の選任に関する合意
  • 重要な経営判断に関する拒否権の設定

株主間契約は法律上の効力を持ちますが、定款変更とは異なる点も多く、法的専門知識が必要です。弁護士に相談しながら作成することを強くおすすめします。

遺留分対策と現経営者の相続設計

現経営者が亡くなった際に、株式が相続財産として分割請求される危険があります。特に後継者ではない相続人(子・配偶者など)が「遺留分」を主張した場合、後継者が株式の一部を手放さなければならない事態が生じることがあります。

これを防ぐためには、以下のような対策が有効です。

  1. 遺言書の作成:後継者に株式を承継させる旨を遺言に明記する
  2. 生命保険の活用:遺留分相当額を生命保険で用意し、他の相続人へ現金で支払う
  3. 民法特例(除外合意・固定合意)の活用:後継者以外の推定相続人の同意を得て、株式を遺留分の算定から除外または固定する
  4. 生前贈与の計画的な実施:少しずつ贈与し、課税負担を分散させる

特に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)に基づく民法特例は、事業承継においてのみ活用できる特別なルールです。弁護士の助けを借りて、積極的に活用することをおすすめします。

ワンポイントアドバイス
民法特例(遺留分に関する除外合意・固定合意)を活用するには、後継者以外の推定相続人全員の同意と、家庭裁判所の許可が必要です。手続きには時間がかかるため、承継計画を立てた早い段階から弁護士に相談し、準備を進めておくことが大切です。

弁護士に相談すべきタイミング

従業員承継では、法的な問題が随所に絡んできます。「専門家への相談はいつでもいい」と思っていると、気づいたときには取り返しのつかない事態になっていることもあります。

弁護士への相談を検討すべき具体的なタイミングとして、以下が挙げられます。

  • 後継者の候補を決め、承継を本格的に検討し始めたとき
  • 株式の移転方法(売買・贈与・遺言等)を選ぼうとしているとき
  • 事業承継税制の特例措置を活用したいとき
  • 株主間契約や経営権に関する契約書を作成するとき
  • 遺留分対策を含む相続設計を考えるとき
  • 承継後に株主・取締役間でトラブルが発生したとき

弁護士は法的な問題の解決だけでなく、税理士・司法書士・中小企業診断士などの他の専門家との橋渡し役としても機能します。「何から始めればいいかわからない」という段階でも、ぜひ気軽に相談してみてください。

従業員承継を成功させるために早期準備が重要

従業員承継は、準備を始めるタイミングが成否を大きく左右します。「まだ先のことだから」と先送りにしているうちに、経営者が病気になったり、後継者候補が転職してしまったりと、思わぬ事態が起きることがあります。

理想的には、引退の5〜10年前から準備を開始することが求められます。後継者の育成には時間がかかり、法的な手続きや税務対策も一朝一夕では完結しません。

また、「後継者が決まってから動けばいい」と思いがちですが、後継者探し自体に数年かかることも珍しくありません。候補者を育てながら、並行して法的・財務的な準備を進めていくことが現実的なアプローチです。

次のような方は、今すぐ専門家への相談を検討すべきでしょう。

  • 経営者が60歳を超えているが、後継者がまだ決まっていない
  • 親族への承継が難しく、従業員承継を検討し始めている
  • 後継者候補はいるが、株式の移転や税負担の問題をどうするか悩んでいる
  • 自分に万が一のことがあった場合、会社がどうなるか不安がある

従業員承継は、正しく準備すれば非常に有効な事業継続の手段です。一方で、準備不足のまま進めると、法的トラブルや税務上の問題が後を引くことになります。弁護士・税理士・商工会議所・事業承継・引継ぎ支援センターなどに早めに相談し、万全の体制で臨むことをおすすめします。

ワンポイントアドバイス
従業員承継の準備で最初に取るべきステップは、「現状の把握」です。自社の株式評価額・株主構成・後継者候補の状況・相続人の範囲を整理したうえで専門家に相談すると、スムーズに承継計画を立てることができます。まずは弁護士や事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談を活用してみてください。

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