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国債を相続した時の手続きと評価方法
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国債とは
国債は国が発行しているもので、歳入不足を補うことなどを目的とする公債です。国は個人から「証券発行」という方式で借入を行います。
国債を購入した人は発行時に定められた利息と、償還期限を迎えると元金を受け取ることができます。国債は国が元本や利子の支払いを保証しているので比較的「安全性が高い」金融商品だと言われています。
国債は相続財産の対象になる
国債を購入した個人からすると、国に対すして「貸付」をしていることになります。国債を購入した個人は国に対して貸金返還や利息の支払いなどの「請求権」を持っています。このことから国債には「財産的価値がある」とされ、もし被相続人が国債を残して亡くなった場合、その国債は「相続財産」となるとされています。
国債の種類
個人向けの国債は証券会社や銀行などを通して購入することが可能です。国債にはいくつかの種類があります。
変動金利型国債
変動金利型国債は実勢金利に応じて半年毎に適用利率が変わることが特徴の国債です。
固定金利型国債
固定金利型国債は満期まで利率が変わらず、発行した時点で投資結果を知ることができることが特徴の国債です。固定金利型では5年満期か3年満期かを選べます。
国債の種類 | 変動金利型 |
---|---|
固定金利型 |
・富裕層に相続税負担を軽減する手段を与えることになる
・マネー・ロンダリング対策との関係
・株式や土地が売却されて無利子非課税国債が発行される場合の市場・経済への影響
などが指摘され、まだまだ無利子非課税国債は実現には至っていません。
相続財産に国債があるかどうかの確認方法
相続財産に国債がるかどうかを確認するために、まず国債の取引の窓口となっている金融機関を調べる必要があります。そのためには亡くなった方の郵送物を確認し、証券会社や銀行から国債に関する取引内容の報告書や口座開設に関する資料などが含まれていないかを確認する必要があります。また国債の利子が振り込まれている銀行口座の通帳の記載内容などから国債の存在を確認することもできます。
- 郵便物や通帳への入金から国債があるか確認しましょう
国債を相続する2つの方法
国債を相続する方法としては「名義変更」もしくは「中途換金」があります。
国債を相続する方法 | |
---|---|
名義変更 | 中途換金 |
名義変更をする場合には、国債を購入した金融機関での手続きが必要となります。また中途換金に関して、国債には本来「中途換金禁止の期間」が設けられている場合があります。しかし国債の保有者が亡くなった場合に限り「特例」が認められ、中途換金することができます。この特例を受ける場合には、相続人はその地位を証明する書類などを揃える必要があります。
国債を名義変更する場合の手続き
国債を名義変更する場合、以下のような書類を準備する必要があります。
- 名義書換依頼書
- 被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合)
- 遺言書
名義変更のために必要となる書類は金融機関によって異なるため注意が必要です。また遺言執行者が選任されている場合や遺産分割協議書があるかどうかによっても必要となる書類は異なります。必要書類についての詳細は亡くなった方の国債口座のある金融機関に確認しましょう。
国債を名義変更するメリット
亡くなった方が持っていた国債を名義変更して相続する場合のメリットとして、一般的に国債は
- 安全性が高い
- 預金より金利が高い
- 最低金利が保証
- 元本割れしない
などのメリットがあり、安定して少しずつ資産を増やしていくことができます。変動金利型国債の場合、名義変更して継続すれば国債の利子の受け取りも継続されますので、年 2回の利子が受け取れることができます。
国債を名義変更するデメリット
一方で、国債を名義変更して相続することによるデメリットとして
- 名義変更の手続きが面倒
- 投資信託や株と比べると利回りが低い
などがあります。
国債を中途換金する場合の手続き
相続により国債を中途換金する際にはご自分が相続人であることを証明する公的な書類が必要になります。※この場合も必要書類は金融機関によって異なりますので、詳しくは口座を開設されている取扱機関へお尋ねください。
国債の中途換金は1万円単位で、一部を中途換金することもできます。 国債を解約する場合には額面金額に経過利子相当額が加えられ、そこから中途換金調整額が差し引かれた額が支払われます。
国債の中途換金額=額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額
国債を現金にしておくと遺産分割が行いやすいため、相続財産として国債がある場合にはこの特例を利用して中途換金するというケースも有効です。
国債を中途換金するメリット
国債を中途換金するメリットとして
- 特例により1年以内でも換金が可能
- 遺産分割しやすい
ことがあげられます。個人向け国債は基本的に第二期利子支払日(発行から1年経過後)からの中途換金が認められていますが、相続などを理由とする場合には1年以内でも中途換金を認められています。
個人向け国債の中途換金の特例が認められるケース
個人向け国債には、中途換金ができない期間がありますが、その期間中であっても口座名義人(特定贈与信託の受益者を含む)がお亡くなりになられた場合、又は、災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害により被害を受けられた場合には、中途換金が可能となります。(参考:財務省「個人向け国債についてのよくある質問)
また国債を中途換金しておき、相続財産を現預金にしておけば相続人が複数いる場合に相続財産を分割しやすいというメリットがあります。
国債を中途換金するデメリット
- 中途換金調整額が差し引かれる
- 利子を受け取ることができない
国債を中途換金すると、元本割れはしませんが、経過して本来受け取るはずの利息に対して一定の調整額が差し引かれる形での受け取りとなります。国債として保有し続けていればその調整額分の利子も受け取れるわけですから、中途換金は利息調整分だけ損をする形になります。
中途換金調整額とは
個人向け国債を評価、または中途換金する際に差し引かれる「中途換金調整額」とは何のことを言うのでしょうか?この中途換金調整額は満期前に解約する際に発生する調整額のことを言い、次の計算式で算定されます。
額面金額+経過利子相当額-直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685
個人向け国債(個人向け復興国債及び復興応援国債を含む)を中途換金する際の中途換金調整額は財務省のサイト内にて実際にシミュレーションすることができます。
参考リンク:財務省WEBサイト|個人向け国債 中途換金シミュレーション
シミュレーションではまず購入商品を選択し、変動金利か固定金利、固定である場合は5年満期か3年満期を選び、回号、中後換金実施日、中途換金する額面金額を入力することによってシミュレーション結果を見ることができます。
中途換金調整額のシミュレーション方法
- 購入商品の選択
- 回号の選択
- 中途換金実施日の選択
- 中途換金する額面金額を記入
国債を相続した場合の相続税評価方法
相続した国債はどのような方法で評価されるのでしょうか?個人向け国債の場合、「中途換金した場合に取扱機関から支払いを受けることができる価額」により評価します。
個人向け国債の評価方法=額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額
しかし、国債の評価方法は保有している国債の種類によっても異なります。以下は代表的な国債の評価方法です。
利付国債の相続税評価方法
利付国債の評価方法=最終価格+(既経過利息-源泉所得税)×額面金額/100円
売買参考統計値銘柄に選定されている利付国債(上場されているものを除く)の相続税評価方法
売買参考統計値の平均値+(既経過利息-源泉徴収税)×額面金額/100円
割引国債の相続税評価方法
割引国債の評価方法=最終価格×額面金額/100円
国債の相続は弁護士・税理士など専門家に相談を
国債は相続財産です。国債を相続する方法は「名義変更」と「中途解約」の二つの方法があります。名義変更すれば利子を受け続けることができますが、必要書類の準備や手続きが面倒です。中途解約をすると遺産分割や容易ですが中途換金調整額が差し引かれることになります。
また国債を相続評価する場合、国債の種類により評価方法は異なります。相続財産に国債が含まれていた場合には、計算方法や必要書類がそれぞれのケースにより異なり複雑なため、相続に強い弁護士や税理士にご相談ください。
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