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株式相続の完全ガイド|上場・非上場別の手続き

この記事で分かること
- 上場株式の相続手続きの具体的な流れ(証券会社連絡から名義変更まで)
- 非上場株式の相続手続きと譲渡制限株式の売渡請求への対処法
- タンス株(電子化前の株券)を相続したときの正しい対応手順
- 株式を遺産分割する際の4つの分割方法(現物・代償・換価・共有)の選び方
- 上場株式と非上場株式それぞれの財産評価方法(類似業種比準・純資産価額・配当還元など)
- 株式相続にかかる相続税と納税資金を準備するポイント
- 株式相続でよくあるトラブル事例と弁護士に相談すべきタイミング
株式の相続は、上場・非上場で手続きや評価方法が大きく異なり、現金や預金よりも複雑です。本記事では、証券会社や発行会社への連絡から名義変更までの手順、タンス株の対応、4種類の分割方法、財産評価の計算方法、相続税の納税資金確保まで、弁護士目線でケース別に解説します。トラブル事例と回避策も網羅しています。
目次[非表示]
「父が遺してくれた株式を相続することになったけれど、何から手をつければいいのか分からない」——こうした戸惑いの声を、相続のご相談ではよく耳にします。預金や不動産であればイメージしやすいのに、株式となると一気にハードルが上がるものです。証券会社への連絡、戸籍の収集、評価額の算定、相続税の申告、そして遺産分割の話し合い。やるべきことが次々と押し寄せてきます。
さらに厄介なのが、株式は上場株式と非上場株式で手続きも評価方法もまったく違うという点。同族会社の株式を相続したケースなどでは、経営権をめぐる深刻な対立に発展することも珍しくありません。この記事では、株式相続の基礎知識から具体的な手続き、評価方法、税金、トラブル回避策まで、弁護士の視点から丁寧に解説していきます。読み終わるころには、ご自身のケースで何をすべきかがクリアに見えてくるはずです。
株式の相続とは?まず押さえておきたい基礎知識
まずは「株式相続」という場面で何が起こっているのか、全体像を整理しておきましょう。基礎を押さえておくと、その後の手続きがぐっと理解しやすくなります。
株式が相続財産に含まれる理由
株式は、株式会社に対する出資の証であり、財産的な価値を持つ資産です。被相続人が保有していた株式は、預金や不動産と同じく相続財産として相続人に引き継がれます。これは上場株式・非上場株式を問いません。
ところが、株式は単なる「お金の塊」ではない、という点に注意が必要です。株主は配当を受け取る権利と、株主総会で議決権を行使する権利を持っています。つまり、株式を相続するということは、財産的価値だけでなく、会社の経営に関与する立場まで引き継ぐことを意味するのです。ここが他の財産と決定的に違うところと言えます。
株式相続が他の財産と違う3つの特徴
株式相続には、預金や不動産にはない特徴があります。整理すると次の3つです。
- 価格が変動する——上場株式は日々値動きするため、評価のタイミングが重要
- 議決権がある——会社経営に関わる権利を引き継ぐことになる
- 分割が難しい——1株単位でしか動かせず、共有のまま放置すると後々問題になる
とりわけ非上場株式の場合、譲渡制限が付されていたり、流通性が低かったりするため、現金化したくてもすぐには売れません。「相続したけれど換金できないので相続税が払えない」という事態に陥ることもあるのです。
相続が始まったら株式はどうなるのか
被相続人が亡くなった瞬間、株式は相続人全員の準共有状態になります。「準共有」というのは、複数の人が株式という権利を共同で持っている状態のことです。この段階では、相続人の誰か一人が勝手に売却したり議決権を行使したりすることはできません。
準共有状態を解消するためには、遺産分割協議で「誰がこの株式を取得するか」を決める必要があります。協議がまとまり、必要な書類が揃って初めて、相続人個人の名義に変更できる仕組みになっているのです。読者の皆さんが「とりあえず売って現金化しよう」と思っても、その前にきちんと手順を踏まなければなりません。
上場株式の相続手続きの流れ
では、具体的に上場株式の相続手続きを見ていきましょう。多くの方が直面するのはこのケースです。
ステップ1|証券会社への連絡と残高証明の取得
まず最初にすべきは、被相続人が口座を開設していた証券会社への連絡です。電話一本で構いません。「相続が発生した」と伝えると、所定の用紙や手続きの案内が郵送されてきます。
この段階で残高証明書を発行してもらうことを忘れないでください。残高証明書には、相続開始日(被相続人の死亡日)時点で保有していた銘柄・株数が記載されており、相続税の申告や遺産分割協議の基礎資料になります。複数の証券会社を利用していた場合は、すべての会社で同じ手続きを行います。
ステップ2|必要書類の準備(戸籍・印鑑証明・遺産分割協議書)
証券会社から送られてくる書類とあわせて、自分で集める書類があります。代表的なものを表にまとめておきます。
| 書類名 | 内容 | 取得先 |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) | 相続人を確定するため | 本籍地の市区町村役場 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 現在の身分関係を証明 | 本籍地の市区町村役場 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 協議書への押印を証明 | 住所地の市区町村役場 |
| 遺産分割協議書 | 誰が株式を取得するか合意した書面 | 相続人で作成 |
| 遺言書(ある場合) | 被相続人の意思を示す書面 | 自宅・公証役場・法務局 |
遺産分割協議書には相続人全員の実印を押し、印鑑証明書を添付します。一人でも欠けると無効になるため、海外在住の相続人がいるケースなどでは特に時間がかかると見ておきましょう。
ステップ3|相続手続依頼書の提出と名義変更
必要書類が揃ったら、証券会社所定の相続手続依頼書に記入し、書類一式を提出します。証券会社で内容が審査され、不備がなければ手続きが進みます。書類の不備で差し戻されると、また何週間もロスすることになるため、提出前にチェックリストで確認するのがおすすめです。
ステップ4|相続人名義の証券口座への移管
株式は売却して現金にする前に、必ず相続人名義の証券口座への移管が必要です。被相続人の口座のまま売却することは認められません。これは多くの方が見落とすポイントなので、注意してください。
相続人が証券口座を持っていない場合
株式を取得する相続人が証券口座を持っていない場合は、新しく口座を開設する必要があります。被相続人が利用していた証券会社で開くのが一般的ですが、別の証券会社でも構いません。口座開設には数営業日から1〜2週間かかるため、早めに動くのが賢明です。
複数の証券会社に口座がある場合の注意点
被相続人が複数の証券会社に口座を分散させていた場合、それぞれで同じ手続きを繰り返さなければなりません。書類は使い回しできるものもありますが、各社の所定様式は別々です。「同じ書類を何度も書かされた」という愚痴は、相続を経験された方からよく聞きます。
非上場株式の相続手続きの流れ
続いて、非上場株式の相続手続きを見ていきます。上場株式とはまったく別の世界と言ってよいほど、勝手が違います。
非上場株式特有の難しさとは
非上場株式は、証券取引所で売買されていません。そのため、証券会社が間に入って手続きをしてくれることもなく、株主と株式発行会社が直接やり取りすることになります。読者の皆さんが思い浮かべる「株」のイメージとはかなり違うかもしれません。
非上場株式の難しさは、主に次の3点に集約されます。
- 市場価格がないため、評価額の算定が難しい
- 譲渡制限が付されていることが多く、自由に売却できない
- 同族会社の場合、経営権をめぐる対立が起きやすい
サントリーホールディングスや竹中工務店のように、非上場でも巨大な企業は存在します。「有名な会社=上場」とは限らない、という前提を持っておきましょう。
株式発行会社への連絡と株主名簿の書き換え
非上場株式を相続したら、まずは株式発行会社へ連絡します。被相続人が亡くなった事実を伝え、株主名簿の書き換えに必要な書類を確認するのが第一歩です。会社によって対応はまちまちで、書面のフォーマットがあるところもあれば、ほぼ手作りで進めるところもあります。
提出する書類は、上場株式の場合とほぼ同じです。被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書などを準備します。会社が確認のうえ問題がなければ、株主名簿が新しい相続人の名義に書き換えられます。これで形式上の手続きは完了です。
譲渡制限株式の売渡請求に注意
非上場株式の多くは、定款で譲渡制限が付されています。これは「株式を譲渡するには会社の承認が必要」というルールで、好ましくない第三者が株主になるのを防ぐためのものです。
ここで注意したいのが、相続が起きたときの「売渡請求」という制度。会社は定款に定めがあれば、相続によって株式を取得した人に対し「その株式を会社に売り渡せ」と請求できるのです。請求があると、相続人は株式を手放さなければならず、代わりに現金を受け取る形になります。
「経営に関わるつもりはなかったから現金で受け取れて助かった」という方もいれば、「親族間の支配争いに利用された」と感じる方もいます。売渡請求は相続を知った日から1年以内に限り行使できる権利なので、相続後早い段階で会社の意向を確認することが重要です。
同族会社・親族経営の会社の株式を相続するケース
父親が経営していた会社の株を、相続によって兄弟で分けることになった——こうしたケースは事業承継問題として深刻化しやすい類型です。後継者となる相続人にとっては、経営の安定のために株式の集中が必要不可欠です。一方、後継者にならない相続人にとっては、その株式は配当も期待できず売却もできない「塩漬け資産」になりかねません。
こうしたとき、後継者が他の相続人から株式を買い取る「代償分割」を活用する例が多くあります。後継者に株式を集中させ、その代わりに他の相続人へ現金や別の財産を渡すのです。事業承継税制の特例措置を活用できる場合もありますので、税理士・弁護士に早期に相談することをおすすめします。
タンス株(電子化されていない株券)はどう相続する?
遺品整理をしていたら、古い株券が出てきた——こうした「タンス株」のご相談も意外と多いものです。電子化された現代でも、紙の株券が思わぬ場所から見つかることがあります。
2009年の株券電子化で何が変わったのか
2009年1月、上場株式の株券は完全に電子化されました。それまで紙の株券として管理されていた上場株式は、すべて電子データへ移行したのです。タンスや金庫にしまわれていた古い株券は、形式上は無効になりました。
「無効になった」と言っても、株主としての権利が消えたわけではありません。発行会社が指定する信託銀行などに「特別口座」が開設されており、紙の株券を持っていた人の権利はそこに記録されているのです。ですから、株主としての地位は維持されています。
タンス株を見つけたときの対応手順
タンス株を発見したときは、次の手順で対応してください。
- 株券の発行会社名・銘柄・株数を確認する
- 発行会社のホームページで株主名簿管理人(信託銀行など)を調べる
- 株主名簿管理人に連絡し、特別口座の有無を確認する
- 相続手続きに必要な書類を取り寄せる
- 戸籍謄本・印鑑証明書・遺産分割協議書などを提出する
- 相続人名義の証券口座へ振替手続きを行う
特別口座のままでは株式を売買できないため、最終的には通常の証券口座へ移す(振替する)必要があります。手続きには数か月かかることもあるので、見つけたら早めに動きましょう。
発行会社が分からない・倒産している場合の対処
古い株券で発行会社の名前すら読み取れない、合併で社名が変わっている、すでに倒産しているといったケースもあります。発行会社の追跡には、登記情報サービスや東京証券取引所の上場廃止情報などを活用します。倒産している場合は残念ながら価値がゼロのこともありますが、合併・社名変更の場合は現存する会社へ権利が引き継がれているため、諦めずに調べてみる価値はあります。
株式の遺産分割で考えるべきポイント
株式を誰が、どのように引き継ぐか。これは多くの相続で頭を悩ませるテーマです。
株式の3つのメリット(配当・値上がり益・議決権)
そもそも株式を相続することにはどんな価値があるのでしょうか。改めて整理すると次の通りです。
- 配当金や株主優待——保有しているだけで定期的に収益を得られる
- 値上がり益——株価が上がれば売却益(キャピタルゲイン)を得られる
- 議決権——株主総会で会社の方針に意見を反映させられる
もちろん、株価は下がることもありますし、業績不振の会社では配当が出ないこともあります。「相続した株がそのまま塩漬けになって含み損を抱えた」というケースも珍しくありません。リスクとリターンの両面を冷静に見極める必要があるのです。
分割方法の選択肢(現物分割・代償分割・換価分割・共有)
株式の遺産分割には主に4つの方法があります。それぞれの特徴を表にまとめました。
| 分割方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 現物分割 | 株式そのものを各相続人に分けて取得させる | 銘柄や株数が多く、それぞれが希望するケース |
| 代償分割 | 一人が株式を取得し、他の相続人に現金等を支払う | 事業承継など株式を集中させたいケース |
| 換価分割 | 株式を売却し、現金を相続人で分ける | 株式の保有を望まない相続人が多いケース |
| 共有(準共有) | 株式を相続人全員で共有のまま保有 | 暫定的な選択肢として例外的に |
このうち、共有のまま放置するのは原則として避けるべきです。次の項目で理由を説明します。
事業承継が絡むケースの注意点
被相続人が会社経営者で、後継者が決まっている場合は、株式を後継者に集中させるのが基本方針となります。経営権が複数の相続人に分散すると、株主総会の決議が紛糾し、会社運営に深刻な支障をきたしかねません。
具体的には、後継者が代償分割で他の相続人から株式を買い取り、現金や別の財産で清算するパターンがよく使われます。生前のうちに被相続人が遺言書を作成し、後継者へ株式を集中させる旨を明示しておくことも非常に有効です。何も準備せずに相続が起きてしまうと、後継者が会社を掌握できないまま、ライバル親族との争いに発展することがあります。
準共有状態を放置するリスク
「とりあえず話し合いがまとまらないから、株はそのままにしておこう」——これはおすすめできません。準共有のままだと次のような不都合が生じます。
- 議決権の行使に相続人の過半数の同意が必要となり、迅速な対応ができない
- 配当金の受け取り口座が決まらず、宙に浮いてしまう
- 時間が経つにつれて、相続人の死亡で関係者がさらに増える
- 長期化すると証拠資料が散逸し、ますます解決困難になる
とくに、相続人の一人が亡くなって次の世代へ相続が起きると、関係者が一気にふくらみます。「父の相続を放置しているうちに伯父が亡くなり、いとこ全員と話し合うことになった」という事例も実際に存在します。後の世代に問題を持ち越さないためにも、早期に分割を確定させましょう。
株式の財産評価方法|上場と非上場で大きく違う
遺産分割や相続税申告の前提となるのが「株式の評価額」です。ここがいい加減だと、後々のトラブルの火種になります。
上場株式の4つの評価額と最も低い額の選び方
上場株式は日々値動きします。たまたま相続発生日に株価が高騰していたら、相続人の負担が重くなりすぎてしまいます。そこで国税庁は、4つの基準のうち最も低い金額を採用してよいというルールを定めています。
| 評価基準 | 内容 |
|---|---|
| ①相続開始日の終値 | 被相続人が亡くなった日の最終価格 |
| ②相続開始月の終値の月平均 | その月の毎日の終値の平均 |
| ③前月の終値の月平均 | 前月の毎日の終値の平均 |
| ④前々月の終値の月平均 | 前々月の毎日の終値の平均 |
たとえば6月15日に被相続人が亡くなった場合、6月15日の終値、6月の月平均、5月の月平均、4月の月平均の4つを比較し、最も低い額を採用します。相続人にとって有利な制度です。
もし相続開始日が土日や祝日で取引がなかった場合は、最も近い日の終値を使います。複数の取引所に上場している銘柄については、最も活発に取引されている取引所の価格を採用するのが原則です。
非上場株式の原則的評価方式(類似業種比準・併用・純資産価額)
非上場株式には市場価格がないため、特殊な計算で評価額を出します。原則的評価方式と呼ばれるもので、会社の規模に応じて使い分けます。
| 評価方式 | 計算の概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 類似する上場会社の株価を基準に、配当・利益・純資産を比較 | 大会社 |
| 併用方式 | 類似業種比準方式と純資産価額方式を一定割合で組み合わせ | 中会社 |
| 純資産価額方式 | 会社の純資産(資産−負債)を時価で評価して計算 | 小会社・特定の評価会社 |
会社の規模区分は、従業員数・総資産価額・取引金額の3要素で判定されます。この区分の判定だけでも一筋縄ではいかず、税理士・弁護士の専門知識が欠かせません。
少数株主に適用される配当還元方式
非上場会社の少数株主が株式を相続する場合は、簡便な配当還元方式が適用されることがあります。これは、過去2年間の平均配当額を10%で還元して株価を算出する方式で、原則的評価方式に比べて評価額がぐっと低くなる傾向があります。
配当還元方式が使えるのは、おおむね次のようなケースです。
- 同族株主以外の株主が取得する場合
- 同族株主であっても、議決権割合が5%未満で役員でないなど一定の要件を満たす場合
同族株主か否かの判定も技術的で、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
社債を相続した場合の評価方法
株式と並んで証券口座に保有されていることが多いのが社債です。社債は上場・非上場で評価方法が異なり、上場社債は市場価格、非上場社債は発行価額や経過利息を基準に評価します。株式と社債では計算ロジックが違うため、両方を保有している場合は分けて整理しましょう。
株式相続の税金と申告のポイント
株式を相続したら、税金の問題からも逃げられません。代表的な3つの税金関連ポイントを押さえておきましょう。
相続税の申告期限と納税資金の確保
相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内。これは原則として現金で一括納付するルールです。株式が高評価で相続税が高額になった場合、納税資金をどう用意するかが大問題になります。
非上場株式を相続したケースでは、会社が買い取る形で資金を作ることもありますし、上場株式の一部を売却して納税に充てる方法もよく取られます。ただし、売却するとそこに譲渡所得税・住民税がかかるため、トータルの税負担を試算したうえで判断する必要があります。
準確定申告での配当所得の取扱い
被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得については、相続人が代わって確定申告をしなければなりません。これを準確定申告と呼びます。期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。
株式を保有していた被相続人には配当所得があるはずです。源泉徴収だけで完結しているケースも多いのですが、配当控除を受けたい場合や還付を受けられる場合は、準確定申告で確定させる必要があります。
相続した株式を売却したときの譲渡所得
相続した株式を後日売却した場合、その売却益には所得税・住民税がかかります。取得価額は被相続人が取得した時の価額を引き継ぐ点に注意してください。「相続税評価額が取得価額になる」と勘違いされている方が多いのですが、これは違います。
ただし、相続税を支払った場合に税負担を軽減する「取得費加算の特例」があります。相続税の申告期限から3年以内に売却すれば、納めた相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得を圧縮できる仕組みです。納税資金確保のために売却を検討している方には、この特例の活用が有効です。
株式相続でよくあるトラブルと回避策
最後に、株式相続で実際によく起こるトラブルとその回避策を見ておきましょう。「うちはきっと大丈夫」と思っている家庭ほど、要注意です。
相続人の一人が勝手に株式を処分したケース
被相続人の口座を管理していた相続人が、他の相続人に無断で株式を売却・処分してしまう。これは絶対にやってはいけない行為です。準共有状態にある株式を勝手に処分すると、不当利得返還請求や損害賠償請求の対象となり、刑事責任が問われる可能性もあります。
「親の生前から自分が証券口座を管理していたから、自分のものでも構わないだろう」という勘違いから起こりがちなトラブルです。亡くなった瞬間から株式は相続人全員の共有財産になる、という大原則を忘れないでください。
非上場株式の評価額をめぐる対立
非上場株式は評価方法が複雑なため、相続人ごとに「妥当な評価額」のイメージが食い違うことがあります。後継者となる相続人は「評価を低く抑えたい」と考えますし、後継者にならない相続人は「できるだけ高く評価して代償金を多く受け取りたい」と考えがちです。
こうした場合、複数の専門家による評価を比較する、第三者の鑑定人に依頼する、調停や審判で裁判所の判断を仰ぐといった方法があります。早期に弁護士を入れて中立的な立場で評価を整理してもらうのが、結果的にスピーディな解決につながることが多いです。
事業承継で後継者が決まらないケース
父が会社を経営していたが、子どもたちは誰も後を継ぐ気がない——こうしたとき、株式の処分をめぐる悩みは深いものがあります。M&Aによる第三者承継、従業員承継、廃業(清算)など複数の選択肢があり、それぞれ手続きと税務上の影響が違います。
残された家族にとって会社は「思い出の場所」であると同時に「重荷」でもあります。被相続人が生前のうちに後継者問題の方向性を示し、遺言書で意思を明確にしておくことが、何より家族のためになります。
株式相続で迷ったら弁護士に相談を
株式相続は、預金や不動産以上に専門知識が要求される領域です。手続きも煩雑、評価も難しく、税金の影響も大きい。さらに事業承継が絡めば、会社全体の将来までかかってきます。一人で抱え込まず、専門家を上手に活用することが解決の近道です。
弁護士・税理士・司法書士の役割分担
株式相続に関わる主な専門家の役割を整理しておきます。
| 専門家 | 主な役割 |
|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割協議の代理、トラブル解決、調停・審判対応、遺言書作成サポート |
| 税理士 | 相続税・譲渡所得税の申告、株価評価、節税対策 |
| 司法書士 | 不動産の相続登記、会社の役員変更登記 |
| 行政書士 | 遺産分割協議書の作成補助、各種許認可 |
株式相続では、弁護士と税理士が連携するケースが多くなります。法律と税務の両面から問題を切り分け、相続人の利益が最大化される解決策を一緒に検討していくのが理想的なスタイルです。
相談のタイミングと費用感
「弁護士に相談するのは揉めてからでいい」と考えていらっしゃるなら、それは少しもったいない話です。揉めてからでは選べる解決策が限られてしまいます。理想は相続が始まった直後、遅くとも遺産分割協議が本格化する前のタイミングです。
費用は事務所によって幅がありますが、初回30分から1時間程度の相談を無料で受け付けているところが多くあります。まずは話を聞きに行ってみる、それくらいの軽い気持ちでも構いません。「相談だけでも頭の中が整理できた」と仰る方が大半です。
株式の相続は、人生で何度も経験することではありません。だからこそ、最初の一歩でつまずかないことが大切です。証券会社や発行会社への連絡、戸籍収集、評価、分割協議、納税。やるべきことは多いものの、ひとつずつ手順を踏んでいけば必ず終わりが見えてきます。不安を感じたら、どうか一人で抱え込まずに専門家を頼ってください。あなたの大切な家族の未来を守るために、この記事が少しでも力になれば幸いです。
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基礎控除額
4,200万円
課税対象額
800万円
相続税の総額(概算)
80万円
申告が必要です
※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。
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- 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
- 遺産分割協議で話がまとまらない
- 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
- 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
- 相続について、どうしていいのか分からない