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後見人による遺産相続|未成年後見と特別代理人

後見人による遺産相続|未成年後見と特別代理人

この記事で分かること

  • 成年後見と未成年後見の違い
  • 相続で後見人が果たす役割
  • 利益相反と特別代理人が必要なケース
  • 後見人が選ばれる手続きの流れ
  • 後見人として関わるときの注意点

判断する力が不十分な相続人や未成年の相続人がいると、本人だけでは遺産分割を進められません。この記事では、成年後見と未成年後見の仕組みの違い、相続で後見人が担う役割、見落としやすい利益相反と特別代理人の必要性、後見人が選ばれるまでの流れ、そして本人の利益を守りながら手続きを進めるための注意点までを、具体例を交えて整理して理解できます。迷ったときに専門家へ相談する判断もしやすくなります。

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相続の場面で後見人が登場するのはどんなときか

相続が起きたとき、相続人の中に未成年の子どもがいたり、認知症などで判断する力が十分でない方がいたりすると、その人は自分ひとりで遺産分割の話し合いに加わることができません。法律は、こうした人が不利益を受けないように、本人の代わりに財産を守り、手続きを進める仕組みを用意しています。それが後見の制度です。

たとえば、お父さまが亡くなり、相続人がお母さまと幼いお子さまだけというご家庭を想像してみてください。お子さまは未成年ですから、遺産分割協議書に自分の意思でサインすることはできません。では誰がその役割を担うのか。ここで後見人や特別代理人といった存在が関わってきます。

この記事では、未成年後見と成年後見という二つの仕組みを整理しながら、相続のときに後見人がどんな役割を果たすのか、そして見落とされがちな利益相反の問題まで、弁護士の視点でやさしく説明していきます。あなたのご家庭が今まさに直面している状況に、きっと重なる部分があるはずです。

後見人が関わる相続は、ふつうの相続にはない難しさをともないます。手続きを一つ間違えただけで、せっかくまとめた話し合いが無効になってしまうこともあるからです。けれども、仕組みをきちんと理解しておけば、必要以上に恐れることはありません。大切なのは、誰のために何をするのかという原則を見失わないことです。これから順を追って整理していきますので、ご自身の状況に当てはめながら読み進めてみてください。

そもそも後見制度とは|成年後見と未成年後見の違い

後見制度とは、ひとことで言えば、判断する力が十分でない人や、親の保護を受けられない子どものために、信頼できる人が本人に代わって財産の管理や生活の支援を行う仕組みです。大きく分けると、成年後見制度と未成年後見制度の二つがあります。

成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神的な疾患などによって、ものごとを判断する力が低下した大人を支えるための制度です。一方で未成年後見制度は、親が亡くなったり、親が親権を行使できなくなったりして、未成年の子どもを守る人がいなくなったときに使われます。対象となる人がまったく違う、という点をまず押さえておきましょう。

どちらの制度にも共通しているのは、家庭裁判所が関わって本人の利益を守るという考え方です。後見人は自由気ままに財産を動かせるわけではなく、つねに本人のために行動する義務を負い、家庭裁判所の監督を受けます。相続の場面でも、この大原則は変わりません。

あらかじめ備える任意後見という選択肢

成年後見には、判断する力が低下してから家庭裁判所が選ぶ法定後見のほかに、元気なうちに自分で将来の後見人を決めておく任意後見という仕組みもあります。これは、本人がまだしっかりと判断できるうちに、信頼できる人と契約を結び、もし将来判断する力が衰えたときには、その人に財産の管理などを任せるという約束をしておくものです。自分の意思で支援者を選べる点が、法定後見との大きな違いです。

相続との関係でいえば、親が任意後見の契約を結んでおけば、いざというときに家族が慌てて手続きを探す負担を減らせます。将来の相続を見すえて、生前のうちに備えておくという発想は、これからますます大切になっていくでしょう。判断する力があるうちにしか結べない契約ですから、検討するなら早めの行動がすすめられます。

任意後見の契約は、公証役場で公正証書という正式な書面にして結ぶ決まりになっています。口約束では効力を持ちません。きちんとした手続きを踏むことで、将来になって「本当に本人が望んだことなのか」という争いを防ぎやすくなります。あわせて、判断する力が低下する前から生活を見守る取り決めを結んでおく方もいます。備えのかたちは一つではありません。

高齢化が進むなかで、相続人のなかにご高齢の方や判断する力に不安のある方が含まれるケースは、年々増えています。あなたのご家庭でも、決して他人事ではないかもしれません。だからこそ、後見の仕組みをあらかじめ知っておくことは、いざというときに落ち着いて動くための備えになります。知っておくだけで、選べる道は確実に広がります。

とくに、親が高齢になってきたと感じる方は、将来の相続を見すえて、今のうちにできる準備がないかを考えてみる価値があります。元気なうちにしか選べない選択肢もあるからです。家族で話し合っておくだけでも、いざというときの心の余裕がまるで違ってきます。

区分 成年後見制度 未成年後見制度
対象となる人 判断する力が不十分な大人 親の保護を受けられない未成年者
使われる場面 認知症や障がいなどで判断が難しいとき 親の死亡や親権喪失で守る人がいないとき
選ぶ仕組み 家庭裁判所への申立てによる選任 遺言による指定または家庭裁判所の選任

未成年後見制度のしくみと後見人の役割

未成年後見制度は、未成年の子どもに親権を行う人がいなくなったときに登場します。たとえば両親がともに亡くなってしまった場合や、ただ一人の親が亡くなった場合などがこれにあたります。子どもには守ってくれる大人が必要です。その役目を引き受けるのが未成年後見人です。

未成年後見人はどうやって決まるのか

未成年後見人の決まり方には、二つの道すじがあります。一つは、最後に親権を持っていた親が、遺言であらかじめ後見人を指定しておく方法です。生前に「自分にもしものことがあったら、この人に子どもを託したい」と書き残しておけるのです。もう一つは、家庭裁判所が、子ども本人や親族などからの申立てを受けて選ぶ方法です。指定がなければ、こちらの手続きで決まることになります。

たとえば、シングルで子育てをしてきた親が亡くなったとしましょう。残された子どもがまだ幼ければ、その子を法的に守る大人がいなくなってしまいます。こうしたとき、子どもの祖父母や親族などが家庭裁判所に申立てを行い、未成年後見人を選んでもらうことになります。子どもの生活が宙に浮いてしまわないよう、できるだけ早く動くことが望まれます。

なお、未成年後見人は一人とはかぎりません。財産の管理は親族が、教育に関わることは別の人が、というように、役割を分けて複数の人が選ばれることもあります。子どもにとって最もよい体制は何かという観点から、柔軟に決められるのです。

未成年後見はいつまで続くのか

未成年後見は、子どもが成年に達すると役目を終えます。成年になれば、自分の意思で財産を管理し、契約を結べるようになるからです。つまり未成年後見は、子どもが大人になるまでの橋渡しをする、期間の限られた仕組みだといえます。相続で受け継いだ財産も、子どもが成年になるまで未成年後見人が大切に守り、その後は本人へと引き継がれていきます。

だからこそ、未成年後見人には、目先の都合ではなく、子どもの将来を見すえた管理が求められます。受け継いだ財産を、子どもが大人になったときにきちんと渡せるよう守り抜く。それが未成年後見人に託された大切な使命なのです。

子どもが成年に近づいてきたら、財産の状況を本人に少しずつ伝えていくことも、未成年後見人の大切な配慮です。引き継ぎがスムーズであれば、子どもは大人になったときに、自分の財産と落ち着いて向き合えます。最後まで子どもの立場に立って支えること。それが、この制度の根っこにある思いやりです。

ここまで読んで、手続きの多さに少し気が重くなった方もいるかもしれません。けれども、一つひとつの仕組みは、すべて本人や子どもを守るために用意されたものです。順番に向き合っていけば、必ず道は開けます。むずかしいと感じる場面では、遠慮なく専門家の手を借りてください。本人にとって最善の相続を実現するために、できることは決して少なくないのです。

未成年後見人が担う二つの仕事

未成年後見人の仕事は、大きく二つに分かれます。ひとつは身のまわりの世話や教育に関わること、もうひとつは財産の管理に関わることです。具体的には次のような役割が含まれます。

  • 子どもの監護や教育に関する判断を、親に代わって行うこと
  • 子ども名義の預貯金や不動産といった財産を、適切に管理すること
  • 子どもが相続人になったときに、本人を代理して遺産分割の話し合いに加わること
  • 家庭裁判所に対して、財産の状況を報告すること

相続との関係でとくに大切なのが、三つめの遺産分割への参加です。未成年の子どもが相続人になると、その子は自分の判断で協議に加われませんから、未成年後見人が本人の利益を守る立場で話し合いに臨むことになります。ただし、後ほど説明するように、ここには利益相反という落とし穴がひそんでいます。

成年後見制度のしくみと相続での関わり

つづいて成年後見制度です。相続人の中に、認知症が進んだご高齢の方や、判断する力に不安のある方がいるとき、その方は遺産分割協議に自分ひとりで参加することができません。そこで成年後見制度が使われます。

三つの類型|後見・保佐・補助

成年後見には、本人の判断能力がどの程度残っているかに応じて、後見、保佐、補助という三つの段階があります。もっとも判断する力が低下している場合が後見、ある程度は自分で判断できるけれど支援が必要な場合が保佐や補助、というイメージです。どの類型になるかは、家庭裁判所が医師の意見なども踏まえて判断します。

三つの類型では、後見人などができることの範囲も変わってきます。もっとも判断する力が低下している後見では、後見人が本人に代わって幅広く財産を管理します。これに対して保佐や補助では、本人がある程度は自分で決められるため、支援する人は特定の重要な行為について同意したり代理したりする、という関わり方になります。本人に残された力をできるだけ尊重しよう、という考え方がここにあらわれています。

遺産分割で成年後見人が果たす役割

成年後見人は、判断する力が不十分な相続人に代わって、遺産分割の話し合いに加わります。このとき後見人がもっとも重視しなければならないのは、本人の利益です。たとえほかの相続人が「お母さんはどうせ施設にいるのだから取り分はいらないだろう」と考えていても、後見人は本人が受け取るべき取り分をきちんと確保しなければなりません。なぜなら、後見人は本人のために働く立場だからです。

ここで知っておきたいのは、成年後見人が一度選ばれると、その役目は遺産分割が終わったあとも続いていくという点です。相続の手続きだけのために選ぶ、という使い方は基本的にできません。本人の判断能力が回復しないかぎり、後見は継続します。この点を知らずに申し立てて、あとから「思っていたのと違った」と感じる方もいらっしゃいます。

成年後見人にも守るべき制限がある

成年後見人は本人に代わって幅広い行為ができますが、なんでも自由にできるわけではありません。とくに、本人が住んでいる家や土地を売ったり貸したりするような重要な行為については、家庭裁判所の許可がなければ進められない仕組みになっています。本人の生活の基盤を勝手に手放されては困るからです。相続で受け継いだ自宅をどうするかといった場面でも、この制限は関わってきます。

後見人が本人の財産を本人のためでなく使ってしまえば、それは重大な責任問題になります。家庭裁判所への報告を怠ったり、財産を私的に流用したりすれば、後見人を解任されることもあります。後見人という立場は、信頼にこたえる重い責任をともなうものだと理解しておきましょう。

後見人は、定期的に財産の収支を記録し、家庭裁判所に報告する義務を負います。何にいくら使ったのかを、きちんと説明できるようにしておかなければなりません。これは面倒な作業に思えるかもしれませんが、本人の財産を守るための大切な記録です。ふだんからていねいに記録を残しておけば、いざ報告のときに慌てずにすみます。

ワンポイントアドバイス
成年後見は相続が終わっても続く制度です。手続きを始める前に、長く付き合っていく制度だという点を家族で共有しておくと、あとからの後悔を防ぎやすくなります。

利益相反に注意|特別代理人が必要になるケース

相続で後見人が関わるとき、もっとも注意してほしいのが利益相反の問題です。これは見落とされやすく、放っておくと遺産分割そのものがやり直しになりかねない、重要な論点です。

利益相反とは、簡単に言えば、後見人本人と、守られるべき人の利益がぶつかってしまう状況のことです。典型的なのは、お母さまが未成年のお子さまの後見人になっているケースです。お父さまが亡くなった相続では、お母さまもお子さまも、どちらも相続人になります。すると、お母さまが自分の取り分を増やそうとすれば、その分お子さまの取り分は減ります。守る側と守られる側が、同じ遺産を奪い合う関係になってしまうわけです。

このような場面で、お母さまが自分の都合のいいように遺産分割を決めてしまっては、お子さまの利益が守られません。そこで法律は、利益相反がある場合には、後見人とは別に特別代理人を選ぶよう求めています。特別代理人は、家庭裁判所への申立てによって選ばれ、お子さまの利益だけを考えて遺産分割に加わります。

特別代理人を立てずに進めるとどうなるか

もし利益相反があるのに特別代理人を選ばないまま遺産分割協議を進めてしまうと、その協議は法律上の効力を持たない、つまり無効と扱われるおそれがあります。せっかくまとめた話し合いが水の泡になり、最初からやり直しになるのです。これは時間も労力も大きな損失です。だからこそ、相続人に未成年者や判断能力の不十分な方がいるときは、早い段階で利益相反の有無を確認することが欠かせません。

「うちは家族みんな仲がいいから大丈夫」と感じる方もいるでしょう。けれども、利益相反は仲の良し悪しの問題ではありません。立場の上で利益がぶつかるかどうか、という形式的な問題です。仲が良くても特別代理人は必要になります。

子どもが複数いる場合はどうなるか

利益相反の問題は、相続人である子どもが複数いるときに、さらに複雑になります。たとえば未成年の子どもが二人いて、その母親が両方の後見人を務めている場合を考えてみましょう。この二人の子どもは、限られた遺産を分け合う関係ですから、お互いの利益もぶつかり合います。そのため、子ども一人ひとりに別々の特別代理人を選ばなければならない、という扱いになるのが原則です。

少し煩雑に感じるかもしれません。けれども、これは子どもたち一人ひとりの取り分をきちんと守るための仕組みです。誰か一人が割を食うことのないように、それぞれに独立した立場の代理人をつける。そう考えると、手間をかける意味が見えてくるはずです。判断に迷うときは、専門家に確認しながら進めると確実です。

なお、利益相反が問題になるのは未成年後見人のときだけではありません。亡くなった方の配偶者が、未成年の子どもの親権者として子を代理する場面でも、同じように利益がぶつかります。この場合も特別代理人が必要です。後見人であれ親権者であれ、本人と代理する人の利益がぶつかるなら、別の中立な人を立てる。この考え方は共通していると覚えておくとよいでしょう。

後見人が関わる遺産分割協議の進め方

では実際に、後見人や特別代理人が関わるとき、遺産分割はどのような手順で進んでいくのでしょうか。流れをつかんでおくと、見通しが立てやすくなります。

  1. 相続人を確定する。戸籍をたどり、誰が相続人になるのかをはっきりさせます。この中に未成年者や判断能力の不十分な方がいないかを確認します。
  2. 後見人や特別代理人の要否を判断する。未成年後見人や成年後見人がすでにいるか、利益相反があって特別代理人が必要かを見極めます。
  3. 必要な代理人を選任する。家庭裁判所への申立てを行い、後見人や特別代理人を選んでもらいます。
  4. 遺産の内容を調べる。預貯金や不動産、負債まで含めて、遺産の全体像を明らかにします。
  5. 遺産分割の話し合いを行う。代理人が本人の利益を守る立場で協議に加わり、分け方を決めます。
  6. 遺産分割協議書を作成する。合意した内容を書面にまとめ、代理人を含む全員が署名します。

この流れの中で、専門家でないと判断に迷う場面は少なくありません。とくに利益相反の有無や、本人にとって不利益でない分け方かどうかは、慎重な検討が求められます。手続きの進め方に不安があるときは、早めに弁護士へ相談しておくと安心です。

後見人や特別代理人を選ぶ手続きには、ある程度の時間がかかります。家庭裁判所に書類をそろえて申し立て、調査を経て選任されるまでには、それなりの期間を見ておく必要があります。相続には期限のある手続きも含まれますから、後見人の選任を待っているうちに大切な期限を逃さないよう、全体のスケジュールを意識して動くことが欠かせません。

申立てを行う家庭裁判所は、原則として本人が住んでいる地域を管轄する裁判所です。どこに申し立てればよいかわからないときは、事前に確認しておきましょう。手続きの場所を取り違えると、その分だけ時間を無駄にしてしまいます。最初の一歩を正しく踏み出すことが、スムーズな進行につながります。

費用の負担が心配な方もいるでしょう。経済的に余裕がない場合には、法テラスという公的な制度を利用して、弁護士費用の立替えなどの支援を受けられることがあります。お金の面で相談をためらう必要はありません。まずは利用できる制度がないかを確認してみることをおすすめします。

申立てには、本人の戸籍や財産の状況がわかる資料、本人の判断能力に関する医師の診断書など、いくつかの書類をそろえる必要があります。何をそろえればよいか迷ったときは、家庭裁判所の窓口で案内を受けられますし、弁護士に依頼すれば書類の準備からまとめて任せることもできます。手続きの入り口でつまずかないよう、必要なものを早めに確認しておきましょう。

後見人が選ばれるまでの流れと家庭裁判所の関与

後見人は、関係者が勝手に決められるものではありません。原則として家庭裁判所が関わり、本人にとってふさわしい人かどうかを見極めたうえで選任します。

申立てから選任までの基本的な流れ

後見人を選んでもらうには、まず家庭裁判所に申立てを行います。申立てができるのは、本人や配偶者、一定の範囲の親族などです。申立てを受けた家庭裁判所は、本人の状況や、後見人候補者がふさわしいかどうかを調べ、問題がなければ選任します。誰を後見人にするかは、最終的に家庭裁判所が判断します。希望した人がそのまま選ばれるとはかぎりません。

専門家が後見人に選ばれることもある

家庭裁判所は、家族を後見人に選ぶこともあれば、弁護士や司法書士といった専門家を選ぶこともあります。財産が複雑だったり、親族間に争いがあったりする場合には、中立な専門家が選ばれやすい傾向があります。これは、本人の利益をより確実に守るための配慮です。

後見人が選ばれたあとも、家庭裁判所の関与は続きます。後見人は定期的に財産の状況を報告し、本人のために適切に行動しているかをチェックされます。こうした監督があることで、後見人による財産の使い込みなどが防がれているのです。

財産が大きい場合や、後見人だけに任せるのが心配な場合には、後見人を見守るためのもう一人の立場として、後見監督人が選ばれることもあります。後見監督人は、後見人がきちんと本人のために働いているかをチェックする役割を担います。いわば、二重のチェック体制です。本人の財産を守るために、こうした重層的な仕組みが用意されているのです。

後見人として働いたことに対しては、家庭裁判所が認めた範囲で報酬が支払われることもあります。とくに専門家が後見人になった場合には、その働きに応じた報酬が本人の財産から支払われるのが一般的です。家族が後見人になる場合でも、負担の大きさに応じて報酬が認められることがあります。報酬の有無や程度は、それぞれの事情に応じて家庭裁判所が判断します。

後見人として相続に関わるときの注意点

最後に、後見人や特別代理人として相続に関わる方に、とくに気をつけてほしい点をまとめておきます。

本人の取り分を安易に手放さない

後見人は本人の利益を守る立場ですから、本人が受け取るべき取り分を、ほかの相続人への配慮から安易に手放してはいけません。たとえ「子どものうちは財産を持たせない方がいい」と考えたとしても、法定相続分を大きく下回るような分け方は、家庭裁判所から問題視されることがあります。本人の利益を最優先に考える姿勢が求められます。

相続放棄の判断は慎重に

相続には、負債が多い場合などに相続を放棄するという選択肢もあります。後見人が本人に代わって相続放棄をするかどうかを判断するときは、本人にとって本当に有利かどうかを、よく見極める必要があります。なお、相続放棄には熟慮期間と呼ばれる三か月の期限があり、この期間内に判断しなければならない点にも注意が必要です。

後見人が本人に代わって相続放棄をするかどうかは、慎重な判断が求められる場面です。負債が資産を上回っているなら放棄が本人を守ることになりますが、財産の全体像をきちんと調べないまま放棄してしまうと、本来受け取れたはずの利益を失うことにもなりかねません。プラスの財産とマイナスの財産を正確に把握したうえで、本人にとって何が最善かを見極める必要があります。この判断こそ、専門家の知恵が役立つところです。

迷ったら専門家の力を借りる

後見人としての判断には、法律の知識が求められる場面が数多くあります。利益相反の有無、適切な分け方、家庭裁判所への報告のしかたなど、ひとりで抱え込むには重い責任です。少しでも不安を感じたら、弁護士などの専門家に相談しながら進めることを強くおすすめします。本人の大切な財産を守るために、頼れる相手を持っておくことは、けっして遠回りではありません。

後見人が関わる相続は、ただでさえ気を張る場面です。本人を守りたいという気持ちが強いほど、責任の重さに押しつぶされそうになることもあるでしょう。そんなときこそ、知識と経験のある専門家がそばにいてくれることの安心感は大きいものです。判断に迷う一つひとつの場面で確かな助言をもらえれば、本人にとって最善の道を、落ち着いて選び取っていけます。困ったときに頼れる先を見つけておくこと。それが、後見人として相続を乗り切るための、何よりの支えになります。

注意したい場面 気をつけるポイント
遺産分割の分け方 本人の取り分を安易に減らさない
利益相反の有無 該当すれば特別代理人を選任する
相続放棄の判断 本人の利益と三か月の期限を確認する
家庭裁判所への対応 財産状況を正確に報告する

よくある質問

未成年の子どもがいれば必ず後見人が必要ですか

かならずしもそうではありません。親権を行う親が健在であれば、その親が子どもを代理しますから、未成年後見人は不要です。未成年後見人が必要になるのは、親が亡くなったり親権を行えなくなったりして、子どもを守る人がいなくなった場合です。ただし、その親自身も相続人で利益相反があるときは、別途特別代理人が必要になります。

後見人になれるのはどんな人ですか

家族や親族がなることもできますし、弁護士や司法書士などの専門家がなることもあります。最終的に誰がふさわしいかは家庭裁判所が判断します。財産が複雑な場合や親族間に対立がある場合には、中立な専門家が選ばれやすくなります。

成年後見は相続が終わったらやめられますか

原則として、相続が終わったという理由だけで後見をやめることはできません。成年後見は本人の判断能力が不十分な状態が続くかぎり継続する制度だからです。手続きを始める前に、長く続く制度であることを理解しておくことが大切です。

特別代理人は誰が選ぶのですか

特別代理人は、家庭裁判所への申立てによって選ばれます。利益相反のある後見人や親権者が、本人のために特別代理人を選んでほしいと申し立て、家庭裁判所が適切な人を選任します。本人の利益だけを考えて遺産分割に加わる役割を担います。

後見人が決まるまでに相続の期限が来てしまいそうです

相続放棄のように期限のある手続きについては、注意が必要です。後見人や特別代理人の選任が間に合わない可能性があるときは、できるだけ早く家庭裁判所や専門家に相談してください。状況によっては、期限の取り扱いについて適切な対応を検討できることもあります。一人で抱え込まず、早い段階で声を上げることが、本人の利益を守る近道になります。

後見人を立てずに遺産分割を進めてしまいました

相続人に未成年者や判断能力の不十分な方がいるのに、必要な代理人を立てずに遺産分割を済ませてしまった場合、その協議は無効と判断されるおそれがあります。心当たりがあるなら、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。やり直しが必要かどうか、どう立て直すべきかを含めて、適切な助言を受けられます。気づいた時点で対処することが、傷を最小限にとどめる鍵です。

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