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遺産相続には時効がある!知らないと損する6つの期限

この記事で分かること

  • 遺産相続に関するすべての時効・期限の一覧と、それぞれの起算点
  • 相続放棄(3ヶ月)、相続税申告(10ヶ月)、遺留分侵害額請求(1年・10年)の詳しいルール
  • 2023年・2024年の法改正で新設された特別受益・寄与分の10年ルールと相続登記の義務化
  • 期限を過ぎたらどうなるか、ペナルティや権利消滅のリスク
  • 時効を止める・延ばす具体的な方法と注意点
  • 期限切れを防ぐために弁護士に相談すべきタイミング

遺産相続には複数の期限・時効があり、放置すると大きな損失につながります。本記事では、相続放棄の3ヶ月、相続税申告の10ヶ月、遺留分侵害額請求の1年と10年、相続税還付の5年10ヶ月、2023年新設の特別受益・寄与分の10年ルールまで弁護士目線で解説します。期限切れを防ぐ対処法も分かります。

遺産相続に時効はある?基本の考え方

家族が亡くなり、ようやく落ち着いた頃に「相続の手続きはもう終わった?」と税務署や金融機関から連絡が来た——。あるいは、「実は数年前に父が亡くなったけれど、まだ何も手続きをしていない」と相談に来られる方もいらっしゃいます。

遺産相続には、放っておくと取り返しがつかなくなる時効や期限がいくつもあります。「いつかやろう」と思っているうちに権利を失ったり、余計な税金を払うことになったりするケースは、実務でも少なくありません。

本記事では、遺産相続にまつわるすべての時効・期限について、弁護士の視点から徹底的に解説していきます。2023年・2024年の法改正で新設された期限も含めて、最新情報を網羅しました。

遺産分割請求権そのものに時効はない

まず、誤解しないでほしい点があります。遺産分割協議を求める権利(遺産分割請求権)そのものに時効はありません

被相続人が亡くなって何年経っていようと、相続人同士で「遺産を分けましょう」という話し合いを始めること自体は可能です。10年でも20年でも、協議そのものは可能なのです。

「遺産分割協議に期限がある」と聞いたことがある方もいるかもしれません。それは協議自体の期限ではなく、後述する特別受益・寄与分の主張ができなくなる10年ルールのことです。

ただし期限のある手続きは複数存在する

遺産分割協議そのものに時効がないとはいえ、相続に関連する手続きの多くには期限があります。これを過ぎると、選択肢が大きく狭まってしまいます。

代表的なものを挙げると、相続放棄、相続税の申告、遺留分の請求、相続税の還付請求などです。それぞれ期限が異なるため、自分のケースで何の期限が関係するのかを把握することが大切です。

時効と除斥期間の違い

法律用語として、「時効」と「除斥期間」は微妙に異なります。

項目 時効 除斥期間
意味 一定期間の経過により権利が消滅 一定期間の経過により権利が消滅
中断・更新 可能(請求などで止められる) 不可能(必ず到来する)
援用 必要(相手が「時効です」と主張) 不要(自動的に効力発生)

実務上、両者を厳密に区別する必要は少ないですが、「除斥期間は止められない」という点だけは押さえておきましょう。後ほど解説する遺留分侵害額請求の10年期間は、除斥期間とされています。

ワンポイントアドバイス
遺産相続は「忘れた頃にやってくる手続き」が多い領域です。被相続人が亡くなった直後の混乱期に、複数の期限を意識しながら進めるのは想像以上に大変です。本記事をお読みいただき、自分のケースで関係する期限を整理しておくことをおすすめします。判断に迷ったら、相続実務に強い弁護士に早めに相談しましょう。

遺産相続で時効・期限に注意すべき手続き一覧

まずは全体像をつかむために、相続関連の主な期限を一覧で見てみましょう。

主な手続きと期限の早見表

手続き 期限 起算点
相続放棄・限定承認 3ヶ月 相続を知った時
準確定申告 4ヶ月 相続を知った日の翌日
相続税の申告・納付 10ヶ月 相続を知った日の翌日
遺留分侵害額請求(短期) 1年 相続開始と侵害を知った時
遺留分侵害額請求(長期) 10年 相続開始時
相続登記の義務 3年 相続を知った日
特別受益・寄与分の主張 10年 相続開始時
相続税の更正の請求(還付) 5年10ヶ月 相続開始日

期限の長さがバラバラで、起算点も異なります。混同しないように注意してください。

近年の法改正で新設された期限

2023年から2024年にかけて、相続関連の法律が大きく変わりました。新たに設けられた期限は次のとおりです。

  • 2023年4月施行:特別受益・寄与分の主張に10年の期限
  • 2024年4月施行:相続登記の義務化(3年以内)

これまで期限がなかった手続きにも、明確な制限が加えられました。「昔から相続放置している」という方は、特に注意が必要です。

遺産相続の時効①:相続放棄・限定承認の3ヶ月

最初に押さえておきたいのが、相続放棄と限定承認の期限です。

熟慮期間は「相続を知った時から3ヶ月」

民法915条は、相続放棄と限定承認の期限を「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定めています。この3ヶ月間を「熟慮期間」と呼びます。

3ヶ月という期間は、決して長くありません。被相続人が亡くなった直後は、葬儀や四十九日の法要、各種役所手続きなどで多忙です。「あれよあれよという間に3ヶ月が過ぎた」というのは、相続の現場でよくある話です。

「相続を知った時」の解釈

「相続を知った時」とは、原則として被相続人の死亡を知った日のことです。同居していた家族なら、死亡日とほぼ同時です。

ただし、以下のようなケースでは起算点が異なります。

  • 長年疎遠で、被相続人の死亡を後から知った
  • 先順位の相続人が全員放棄したことで、自分が相続人になった
  • 戸籍を遡る中で、知らなかった相続人としての地位が判明した

このような場合、「自分が相続人であることを知った時」から3ヶ月をカウントします。死亡日からスタートではない点に注意してください。

3ヶ月を過ぎると単純承認とみなされる

熟慮期間内に何もアクションを起こさないと、「単純承認」したものとみなされます。プラスの財産もマイナスの財産も、すべて引き継ぐことになるのです。

借金が遺産を上回るケースでは、相続人が自分の財産で差額を支払う義務を負います。「知らなかった」では済まされない、厳しいルールです。

熟慮期間の伸長を申し立てる方法

3ヶ月以内に判断ができない事情があれば、「熟慮期間伸長の申立て」を家庭裁判所に対して行えます。

伸長が認められやすい事情は次のようなものです。

  • 相続財産の調査に時間がかかっている
  • 被相続人の事業や負債の全容が把握しきれない
  • 相続人が遠方や海外におり、すぐに動けない

伸長期間は通常さらに3ヶ月程度です。伸長の申立て自体も、当然3ヶ月以内に行う必要があります。

3ヶ月経過後でも放棄が認められる例外ケース

「もう3ヶ月過ぎたから諦めるしかない」と思っている方もいるかもしれません。実は、最高裁の判例で例外的に放棄が認められるケースがあります。

最高裁昭和59年4月27日判決は、相続人が相続財産がまったく存在しないと信じていて、そう信じることに相当の理由があり、被相続人の財産を調査することが期待できない事情があったときは、相続財産の存在を認識した時から熟慮期間を起算すると判示しました。

具体例で言えばこんなケースです。

  • 被相続人と長年疎遠で、財産があるとは思っていなかった
  • 相続から1年後、突然債権者から請求書が届いた
  • 調査したら、被相続人に多額の借金が判明した

このような状況なら、債権者からの請求を受けた日から3ヶ月以内に申述すれば、相続放棄が受理される可能性があります。ただし、ハードルは高く、専門家のサポートなしで進めるのは現実的に困難でしょう。

ワンポイントアドバイス
3ヶ月の熟慮期間は、相続人にとって最も重要な期限の一つです。期限を過ぎると、原則として相続放棄も限定承認もできなくなります。被相続人に借金がありそうだと感じたら、すぐに財産調査を始めてください。期限内に判断できそうにない場合は、迷わず弁護士に相談を。伸長の申立てや、3ヶ月経過後の例外的な放棄など、専門家でなければ対応できないケースは多くあります。

遺産相続の時効②:相続税の申告と納付の10ヶ月

相続税が発生する場合、申告期限は厳格に守らなければなりません。

申告期限は「相続開始を知った日から10ヶ月以内」

相続税法では、相続税の申告期限を「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と定めています。

たとえば、4月15日に被相続人が亡くなり、その日のうちにご家族が知ったとすれば、翌年の2月15日が申告期限です。土日祝日にあたる場合は、翌平日が期限になります。

申告だけでなく、相続税の納付も同じ期限です。原則として現金一括納付が必要なので、納税資金の準備も10ヶ月以内に済ませなければなりません。

期限を過ぎたときのペナルティ

10ヶ月の期限を過ぎてしまうと、いくつものペナルティが課されます。

無申告加算税

期限内に申告しなかった場合、無申告加算税が課されます。納付すべき税額に対して、原則15〜30%の上乗せです。

ただし、税務調査が入る前に自主的に申告すれば、税率が5%程度に軽減されます。気づいた段階で速やかに申告することが大切です。

延滞税

納付が遅れた期間に応じて、延滞税もかかります。年率2.4〜8.7%程度(年により変動)と決して低くなく、長引けば長引くほど負担が重くなります。

各種特例が使えなくなるリスク

最も大きな影響が、各種特例の不適用です。

相続税には、税額を大幅に減らせる特例がいくつもあります。これらの多くが「申告期限内に遺産分割が完了していること」を要件としています。

特例の名称 主な内容
配偶者の税額軽減 配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで非課税
小規模宅地等の特例 自宅の土地評価を最大80%減額
農地等の納税猶予 農地相続時の相続税納税を猶予

これらが使えないと、本来支払う必要のなかった相続税を多額に納めることになりかねません。

遺産分割が間に合わないときの対応

10ヶ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付して提出します。

これを提出しておけば、後から遺産分割が完了した時点で、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を遡って適用できます。3年以内に分割が終わるよう、努力する必要があります。

3年以内にも分割が間に合わない場合は、さらに「やむを得ない事由がある場合の承認申請書」を提出します。これにより期限延長が認められることもありますが、ハードルは高めです。

遺産相続の時効③:遺留分侵害額請求の1年と10年

遺言で「すべての財産を長男に相続させる」と書かれていたら、他の相続人は何ももらえないのでしょうか。実は、最低限の取り分を確保する権利があります。それが遺留分です。

遺留分侵害額請求権とは

遺留分侵害額請求権とは、遺言や生前贈与によって自分の遺留分が侵害された相続人が、侵害分に相当する金銭の支払いを求める権利です。

たとえば、父が亡くなり「全財産を長男に相続させる」という遺言を残したケース。次男にも法定相続分の半分(兄弟2人なら1/4)の遺留分があり、その分の金銭を長男に請求できます。

「知った時から1年」の消滅時効

遺留分侵害額請求権には、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年で時効にかかってしまう という、短期の消滅時効が定められています(民法1048条)。

「知った時」とは、次の両方を知った時を指します。

  • 被相続人が亡くなったこと(相続の開始)
  • 自分の遺留分を侵害する遺言や贈与があったこと

被相続人の死亡を知っていても、遺言の存在を知らなかった場合は、遺言の内容を知った時から1年がカウントされます。

1年という期間は、思っているより短いです。気づいたときには時効目前、ということもあります。

「相続開始から10年」の除斥期間

遺留分侵害額請求権には、もう一つの期限があります。相続開始から10年です。

これは除斥期間とされており、たとえ相続開始や遺留分侵害を知らなくても、相続開始から10年が経過すると権利が消滅します。「自分の遺留分が侵害されていると知らなかった」という言い訳は通じません。

「知った時から1年」という短期の消滅時効と、「相続開始から10年」という長期の除斥期間です。このどちらか早い方が到来した時点で、権利は消滅します という関係になります。

遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害額請求は、どのように行使すればよいのでしょうか。

内容証明郵便で意思表示する

法律上、特別な方式は定められていません。口頭で「遺留分を請求します」と伝えるだけでも有効です。

ただし、口頭では「言った・言わない」のトラブルになりがちです。実務では、配達証明付きの内容証明郵便で意思表示することが一般的です。

内容証明郵便なら、配達日と内容が公的に記録されます。後から「いつ請求したか」を客観的に証明できるため、時効を止める手段としても確実です。

金銭債権としての時効は別途5年

遺留分侵害額請求の意思表示をすると、相手方に対する金銭債権が発生します。この金銭債権には別途5年の消滅時効があります。

つまり、内容証明で請求した後、相手が支払いに応じない場合は、5年以内に訴訟提起などの法的手続きに移る必要があります。「請求して安心」ではなく、その後のフォローも重要です。

2019年の民法改正で「減殺請求」から「侵害額請求」へ

古い文献を読むと、「遺留分減殺請求」という言葉が出てきます。これは、2019年7月の民法改正前の名称です。

改正前の遺留分減殺請求権は、遺贈や贈与を直接取り戻す物権的な権利でした。たとえば、長男が相続した不動産の一部を、次男が遺留分として共有権を主張できる仕組みです。

改正後の遺留分侵害額請求権は、金銭の支払いを請求する権利に変わりました。不動産の共有関係を巡る複雑な問題を避けるための改正です。

遺産相続の時効④:相続税還付請求(更正の請求)の5年10ヶ月

意外に思われるかもしれませんが、相続税は払い過ぎてしまうこともあります。払い過ぎた分は還付請求できますが、これにも期限があります。

相続税の払い過ぎが起こる原因

なぜ相続税の払い過ぎが起きるのでしょうか。主な原因を見ていきましょう。

不動産評価の特例を見落とすケース

最も多いのが、土地の評価を本来より高く見積もってしまうケースです。

土地の評価には、形状や立地によって減額される特例がいくつもあります。

  • 不整形地補正:いびつな形の土地
  • 奥行価格補正:奥行きが極端に長い土地
  • 地積規模の大きな宅地の評価:広大な土地
  • 無道路地:道路に接していない土地
  • セットバック減価:道路後退が必要な土地

これらの特例を適用せずに路線価のまま評価してしまうと、実際よりも高い評価額になり、相続税を多く納めることになります。

税理士でも見落とすことがある

「税理士に頼んだから大丈夫」と思っている方も多いでしょう。しかし、税理士は税の専門家ではありますが、不動産評価の専門家ではありません

土地評価の特例は複雑で、すべての税理士が網羅的に把握しているわけではないのが実情です。土地が多い相続ほど、専門外の税理士による申告では払い過ぎリスクが高まります。

更正の請求の期限

払い過ぎた相続税を取り戻す手続きを「更正の請求」といいます。期限は、相続税の申告期限から5年以内です。

相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月。つまり、相続開始から5年10ヶ月以内に更正の請求を行わなければなりません。

5年10ヶ月という長めの期限ですが、油断は禁物です。特例の適用漏れに気づくのが遅れると、間に合わなくなることもあります。

更正の請求の手続き

更正の請求は、税務署にいきなり書類を提出すれば終わり、というものではありません。

  1. 土地評価を再計算(不動産鑑定士などに依頼)
  2. 更正の請求書と添付書類を税務署に提出
  3. 税務署の審査を経て、認められれば還付

税務署は「払い過ぎを指摘してくれない」のが原則です。納税者から能動的に請求しない限り、お金は戻ってきません。「あのときの相続税、ちょっと高すぎたかも」と思ったら、早めに専門家に相談しましょう。

遺産相続の時効⑤:特別受益・寄与分の主張は10年

2023年4月の民法改正で新たに設けられた、重要な期限です。

2023年4月の法改正で新設された期限

2023年4月施行の改正民法により、2023年4月から施行される民法改正で設けられた期限によって、相続開始から10年を経過すると特別受益も寄与分も主張することができなくなります。法定相続分にしたがって遺産分割を行なうことになる ことになりました。

これまで、特別受益や寄与分の主張に時間制限はありませんでした。10年でも20年でも前の生前贈与を「特別受益」として持ち戻し、遺産分割を主張できたのです。

しかし、長期間放置された遺産分割が増え、相続関係が複雑化することが社会問題化していました。今回の改正は、遺産分割の早期解決を促すことを目的としています。

特別受益とは

特別受益とは、相続人の中に被相続人から生前贈与や遺贈を受けた人がいる場合、その分を遺産に持ち戻して相続分を計算する制度です。

たとえば、父が長男に住宅資金として1,000万円を贈与していたケース。父の死亡時の遺産が3,000万円なら、長男の生前贈与分1,000万円を加えた4,000万円を「みなし相続財産」として、各相続人の取り分を計算します。

寄与分とは

寄与分とは、相続人の中に被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした人がいる場合、その貢献に応じて相続分を増やす制度です。

具体例としては、長年にわたって被相続人を介護していた相続人や、被相続人の事業に無報酬で貢献していた相続人などが寄与分を主張できます。

10年経過後の遺産分割はどうなる?

相続開始から10年が経過すると、特別受益と寄与分は原則として主張できなくなります。法定相続分どおりに遺産を分けることになります。

たとえば、子3人が法定相続人で、長男が生前に多額の贈与を受けていたとしましょう。10年以内なら長男の特別受益を主張できますが、10年経過後は各人が単純に1/3ずつを取得することになります。本来なら他の相続人が多く取れたはずの財産も、平等な分配になってしまうのです。

例外的に認められるケース

10年経過後でも、次のような場合は例外的に特別受益・寄与分の主張が認められます。

  • 相続人全員が合意した場合
  • 相続開始から10年経過前に家庭裁判所に遺産分割の請求があった場合
  • 10年経過前に申立てをすることが困難なやむを得ない事由があった場合

「10年が迫ってきたが、話し合いがまとまらない」という場合は、家庭裁判所に遺産分割調停または審判を申し立てておけば、10年ルールの適用を回避できます。

遺産相続の時効⑥:相続登記の3年(2024年義務化)

2024年4月から、相続登記が義務化されました。

2024年4月から相続登記が義務化

これまで、不動産の相続登記には期限がありませんでした。「面倒だから後回し」「税金がかかるからしばらく放置」というケースが多かったのが実情です。

その結果、所有者不明土地が日本全国で増え、社会問題になっていました。土地が誰のものか分からないと、再開発も売買もできず、地域の活性化を妨げます。

この問題に対応するため、2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記を行う必要があります。

違反すると10万円以下の過料

正当な理由なく期限内に登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過料はいきなり科されるわけではなく、まず登記官から通知が来ます。通知を受けても登記を行わない場合に過料の対象となります。

注意すべきは、2024年4月以前に発生した相続にも、この義務化が適用される点です。2027年3月末までに登記を済ませる必要があります(経過措置)。

相続人申告登記という簡易な手続き

「遺産分割協議がまとまらず、3年以内に正式な登記ができない」というケースもあるでしょう。そんなときに使える簡易な手続きが「相続人申告登記」です。

相続人申告登記は、「自分が相続人である」ことを法務局に申し出るだけで、義務を果たしたことになる制度です。手続きが簡単で、戸籍謄本などの必要書類も少なく済みます。

ただし、これは正式な所有権移転登記ではありません。最終的には、遺産分割協議が完了した後に正式な登記を行う必要があります。あくまで義務違反を回避する応急措置です。

ワンポイントアドバイス
2024年4月の相続登記義務化は、過去の相続にも遡って適用される画期的な改正です。「祖父の代から名義変更していない」という方は、2027年3月までに登記を行わないと過料の対象になります。代々の相続関係をすべて確認し、必要な書類を集める作業は膨大です。早めに弁護士や司法書士に相談して、計画的に進めましょう。

遺産相続の時効が問題となるケース

ここまで見てきた時効・期限が、実際にどう問題になるのかを具体例で見てみましょう。

相続放棄を忘れて借金を背負ってしまう

最も典型的なのが、相続放棄の3ヶ月期限を逃すケースです。

被相続人の借金が多額にあるのに、葬儀の慌ただしさで放棄手続きを後回しに。気づいたときには3ヶ月を過ぎており、債権者から請求が次々に届く——。家族が突然多額の借金を背負うことになります。

遺留分が請求できなくなる

遺言の存在を知ってから1年を超えると、遺留分侵害額請求ができなくなります。

「遺言書が見つかったが、ショックで何もできなかった」「請求するか迷っているうちに時間が過ぎた」——こうした事情で時効が成立してしまうケースは少なくありません。本来取れたはずの財産が取れなくなる、大きな損失です。

払い過ぎた相続税が戻ってこない

相続税の更正の請求は、申告期限から5年以内。相続から5年10ヶ月を過ぎると、払い過ぎていても還付されません。

土地評価の見直しで数百万円の還付が見込めるケースもあるため、申告内容に少しでも疑問があれば、早めに専門家のセカンドオピニオンを取ることをおすすめします。

古い贈与が考慮されずに遺産分割される

特別受益・寄与分の10年ルールにより、長く放置された相続では不公平な分割になることがあります。

たとえば、長男だけが多額の生前贈与を受けていたケース。10年以内に遺産分割を始めれば長男の特別受益を主張できましたが、放置していたため法定相続分どおりに分けることに——他の相続人にとって納得できない結果です。

時効を止める・延ばす方法はある?

時効や期限が迫っている場合、対策はあるのでしょうか。

遺留分侵害額請求は内容証明で時効を止める

遺留分侵害額請求の1年の時効は、意思表示によって止められます

具体的には、配達証明付きの内容証明郵便を相手方に送付すれば、その時点で時効はストップします。文面は「貴殿に対し、被相続人○○の遺留分侵害額相当額の支払いを請求します」といった簡潔なものでかまいません。

ただし、意思表示後の金銭債権としての時効(5年)は別途進行します。長引く場合は法的手続きを検討してください。

相続放棄の熟慮期間は伸長申立て

相続放棄の3ヶ月は、家庭裁判所への「熟慮期間伸長の申立て」で延長できます。

事由の説明と必要書類を添えて申し立てれば、通常さらに3ヶ月程度の延長が認められます。当然、伸長の申立て自体も3ヶ月以内に行う必要があります。

遺産分割の10年ルールは家庭裁判所に申立て

特別受益・寄与分の10年ルールは、10年経過前に家庭裁判所に遺産分割の調停・審判を申し立てれば、適用を回避できます。

相続人同士の話し合いが10年以内にまとまらなさそうなら、早めに家庭裁判所に申立てを行うことが、自分の権利を守る方法です。

遺産相続の時効に関するよくある質問

遺産分割協議自体に期限はない?

はい、遺産分割協議そのものに期限はありません。被相続人の死亡から何年経っていても、相続人全員で協議を行うことは可能です。

ただし、長期化すれば次のような不利益があります。

  • 2023年改正で特別受益・寄与分が10年で主張できなくなる
  • 2024年改正で相続登記が義務化され、3年で過料の対象に
  • 相続人の中に新たに亡くなる人が出て、関係者が増える
  • 記憶や記録が薄れ、調査が困難になる

「期限がないから後回し」という発想は危険です。早めの解決が、結果的に得策です。

後から見つかった財産にも時効はある?

後から発見された財産そのものに、特別な時効があるわけではありません。ただし、その財産に関する手続き(相続税の修正申告、遺産分割のやり直しなど)には期限が及びます。

たとえば、相続税の申告後に新たな財産が判明した場合、原則として5年以内に修正申告を行います。隠していた場合と異なり、自主的な修正申告ならペナルティは軽くなります。

すでに時効が過ぎた手続きはどうしようもない?

原則として、時効が完成した手続きは行えません。ただし、例外的に救済される場合もあります。

  • 相続放棄:3ヶ月経過後でも、最高裁判例による例外で認められるケース
  • 遺留分:相手方が時効を援用しなければ請求可能
  • 遺産分割:10年経過後でも相続人全員の合意があれば特別受益等を考慮可能

「もう手遅れ」と決めつけず、まずは弁護士に相談してみる価値はあります。

まとめ:遺産相続の時効は早めの対応がカギ

遺産相続には、3ヶ月から10年まで、さまざまな期限・時効があります。相続放棄、相続税の申告、遺留分侵害額請求、相続税の還付請求、特別受益・寄与分の主張、相続登記——いずれも放置すれば大きな不利益につながります。

特に2023年・2024年の法改正で、新たな期限が次々に設けられました。これまで「いつでもいい」とされていた手続きにも、明確な制限が加わっています。「うちは古い相続だから関係ない」とは言えなくなりました。

期限を意識した対応が、遺産相続をスムーズに進めるカギです。被相続人が亡くなったら、まず相続関係と財産を把握し、自分のケースで関係する期限を整理してください。

判断に迷ったり、期限が迫っていると感じたりしたら、迷わず相続実務に詳しい弁護士に相談しましょう。早期の相談こそが、後悔しない相続への最短ルートです。

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5,000万円
2人

基礎控除額

4,200万円

課税対象額

800万円

相続税の総額(概算)

80万円

申告が必要です

※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。

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