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遺産相続にも時効がある?~時効の開始と期限を解説~
この記事で分かること
- マイナス遺産を引き継がないための相続放棄の請求期間は短期間なので注意が必要。
- 遺言書があっても遺留分減殺請求で定められた遺留分を取得できるが時効がある。
- 相続税の払いすぎを取り戻せる相続税還付請求がある。
遺産の分割の方法を話し合う遺産分割協議での遺産分割請求権に時効はなく、納得するまで話し合いを続けることができます。しかし、被相続人が多額の借金を負っていた場合の遺産放棄や不当に遺産の取り分が少なかった場合の遺留分減殺請求、また相続税の支払いについては時効があるので注意が必要です。
目次[非表示]
遺産相続で時効が影響するケース
遺産分割請求権に時効はない
遺産相続は、被相続人の死亡と同時に始まっています。遺産の行方がまだ決まっていない段階では、遺産は相続人の共有になっているため、誰がどれだけ遺産を受け取るかを話し合って決める必要があります。その話し合いを遺産分割協議と言い、遺産分割協議を始めることを相続人に請求するのが遺産分割請求権です。
遺産分割請求権の行使には時効がありません。しかし、相続には、期限がある手続きが複数あり、放っておくと、後で取り返しがつかなくなる場合があるので注意が必要です。
遺産相続で時効を注意すべき手続き3つ
遺産相続に関する手続きで、注意すべき時効は3つあります。
- 相続放棄の時効
- 遺留分減殺請求件の時効
- 相続税還付請求の時効
これらの遺産相続手続きと時効の関連について、ひとつずつ解説していきます。
遺産相続における時効(1)相続放棄の時効
相続では、プラスの財産だけでなく被相続人の借金などのマイナスの財産を受け継ぐことがあります。借金を返済するのが負担となる場合、相続人は相続の放棄を選択できます。相続の放棄とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないことです。
相続放棄の時効は発生後3ヶ月
相続放棄は、相続が開始したのを知った時点から3ヶ月の間に手続きを行なわなければなりません。つまり、多額の借金が相続されてしまうような場合、相続放棄を忘れてしまうと非常に大きい負担を背負うことになります。
相続の開始があったことを知った日とは
相続の開始があったことを知った日とは、通常は被相続人(親など)が亡くなった日を起点とします。ただし、たとえば離婚をしたことで、お互いが音信不通になっている場合、被相続人が亡くなってから何ヶ月かしてから知ることがあります。その際には、被相続人が亡くなった知らせを受けた日が相続の開始があったことを知った日となります。
相続人全員の同意は不用
3ヶ月以内と時間が短いので相続放棄を考慮に入れるのであれば、すぐに決断しなければなりません。相続放棄は相続人全員の同意は必要ありませんし、手続きもそれほど難しくありません。
相続放棄の方法
相続放棄するためには、まず家庭裁判所に出向き、必要書類を提出します。また、届出をするだけでなく、家庭裁判所にその届出を認めてもらう必要があります。届出先や提出書類は次のようになります。
提出先
相続放棄の届け出は、亡くなった人の住民票がある地域の家庭裁判所となります。
届出の際に必要となるもの
- 亡くなった人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 亡くなった人の住民票除票または戸籍附票
- 届出をする人の戸籍謄本
- 収入印紙800円分
- 郵便切手(各家庭裁判所により、切手の額や枚数等は異なります。だいたい1,000円程度です)
遺産相続における時効(2)遺留分減殺請求権の時効
被相続人が遺言を残したどうかで、遺産分割の手続きは異なります。遺言がない場合は、残された相続人の間で話し合いをして遺産を分割します。話し合いで遺産を分割することを遺産分割協議と呼びます。
遺言と遺留分
一方、遺言があった場合は、原則その遺言に従うことになります。被相続人の遺言による指定は、法律の定める基準に優先します。例えば法定相続分として配偶者1/2、子1/2と定められていますが、遺言によって配偶者に1/2よりも多くの財産を相続させることができます。
遺留分とは最低限の保障
被相続人の気持ち次第で、財産をまったく相続できない人がでてきます。財産のすべてを愛人に残すなどという遺言を残されたら、被相続人の奥さんは生活が困窮してしまいます。そうした状況にならないようにするため、相続財産の一定割合を遺族に残すように定めています。それが遺留分です。
遺留分は決まっている
原則として法定相続分の1/2が遺留分とされています。配偶者の法定相続分は1/2なので、相続財産の1/4が遺留分となります。ただし直系尊属(父母)のみが、相続人の場合は、1/3です。まだ兄弟に遺留分がありません。
遺留分減殺請求権
遺留分を無視した遺言を残すことがしばしばあります。愛人に全財産を残すという例は極端かもしれませんが、子供が二人いた場合で同居して介護した息子に大半の財産を渡すと遺言に記載されることはよくあります。遺言によって、相続財産をまったく取得できない状況であっても、「遺留分減殺請求」をすることで、一定の財産を相続することを請求できるのです。
遺留分減殺請求権の時効
ただしこの遺留分減殺請求には1年以内という時効があります。遺言が発見されたときから、1年以内に、遺留分減殺請求をしなければなりません。
遺留分減殺請求の方法
遺留分減殺請求の手続きは、特に定められてはいません。個人的に遺留分を侵害した相手に対して話し合いで解決することもできますし、裁判所を通すこともできます。一般的には専門家を通したほうが順調にいくことがあります。相手が話し合いで納得してくれればよいですが、遺言を楯に応じてくれないこともあるからです。
しかしあまりにも常識とかけ離れた内容の場合、法定相続人は遺留分減殺請求により法律で定められた遺留分を取得することができます。ただし遺言書が発見された時から1年以内に行わなければなりません。
遺産相続における時効(3)相続税還付請求の時効
意外なことに相続税を払い過ぎてしまうこともあります。払い過ぎた分を戻して貰うことができます。これを相続税の還付請求手続きと呼ばれています。この手続きは相続税の申告期限(相続の開始から10ヶ月以内)から5年以内に行う必要があります。
相続税の払い過ぎが起こる原因
相続税を払い過ぎてしまう原因は、土地の評価を実際よりも高く見積もってしまうことが大半を占めています。現金や有価証券と比較して不動産の評価は複雑です。減額制度を適用されることがあることを知らず、正規の路線価で算出して提出しまうことがあるのです。
税理士でも知らないことがある
相続に関する手続きは、専門家である税理士に任せたので大丈夫だと考えている人は多いでしょう。しかし税理士は、土地や不動産の専門家ではありません。減額方法を適用せずに計算してしまうこともあります。
減額される土地
奥行きが異常に長い土地、不整形の土地、工場やお墓に隣接している土地などは、適応されれば、補正率の分だけ減額されます。
相続税の還付請求について
相続税を払いすぎてしまった場合、税務署はまず指摘してくれないと考えたほうがよいでしょう。計算の間違いであれば指摘してくれます。ただしその土地の評価方法までは精査しないからです。したがって、自分で更正の請求というアクションを起こさなければなりません。
5年を過ぎると請求できない
更正の請求は、相続の申告期限から5年以内という期限が決められています。つまり時効があるのです。相続税は相続が発生してから10ヶ月以内に申告することになっています。更正の請求は、相続発生から5年10ヶ月までの間にしなければなりません。
疑問に思ったら専門家に相談
一般の人が、相続税を払いすぎてしまったことを判断するのは現実的でありません。ただし少しでも疑問に感じたら、専門家に相談してみましょう。その際には、不動産評価に強い士業の人に依頼することが大切です。
税務署は評価方法まで精査せず、払いすぎに関して指摘してくれませんので、疑問に感じたら早めに専門家に相談した方がよいでしょう。
遺産相続の時効について知りたいときは弁護士に相談
遺産相続は被相続人が亡くなったと同時に始まっています。相続放棄や遺留分減殺請求、相続税の支払いにはそれぞれ期限があるため、うっかりして期限が過ぎてしまうと大きな損失になることがあります。
弁護士に遺産相続を依頼すれば、そういった手続きの漏れやミスが防げますし、相続税申告の準備も確実にできるでしょう。
遺産相続の時効についての詳細は、遺産相続に強い弁護士や税理士に相談することをおすすめします。
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