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生前の相続放棄はできない|代わりにできる対策

生前の相続放棄はできない|代わりにできる対策

この記事で分かること

  • 生前の相続放棄はできないこと
  • なぜ生前の相続放棄ができないのか
  • 遺言を活用する方法
  • 生前贈与を活用する方法
  • 遺留分への備えと家族の話し合い

将来に備えて生前のうちに相続放棄をしておきたい、と考える方は少なくありませんが、相続放棄は生前にはできません。この記事では、生前放棄が認められない理由を、本人の意思を守るためという観点から説明します。そのうえで、生前放棄に代わる対策として、遺言で財産の行き先を決める方法、生前贈与で確実に渡す方法、遺留分への備え、家族での話し合いを整理し、目的に応じた選び方まで、弁護士の視点でわかりやすくまとめました。

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「自分が亡くなった後に、あの子には財産を相続させたくない」。あるいは、相続する側として、「将来もめそうだから、今のうちに相続を放棄しておきたい」。そんな思いから、生きているうちに相続放棄をしておけないか、と考える方は少なくありません。けれども、結論から言うと、生前に相続放棄をすることは、法律上できません。意外に思われるかもしれませんが、これは大切なルールです。

「生前のうちに、相続のことをすっきりさせておきたい」という気持ちは、よく分かります。将来の争いを避けたい、自分の意思をはっきりさせておきたい。そう考えるのは、とても自然なことです。けれども、その方法として相続放棄を選ぶことは、残念ながらできません。ただし、がっかりする必要はありません。目的が同じなら、それをかなえる別の手立てが、ちゃんと用意されているからです。まずは、なぜ生前放棄ができないのかを理解し、それから代わりの方法を見ていきましょう。遠回りに思えても、仕組みを理解しておくことが、適切な対策を選ぶうえで役に立ちます。なぜできないのかが分かれば、何をすればよいのかも、おのずと見えてくるからです。

では、生前に相続放棄ができないのなら、将来の相続に向けて、何も手を打てないのでしょうか。決してそんなことはありません。生前放棄に代わる、有効な手立てがいくつも用意されています。この記事では、なぜ生前の相続放棄ができないのか、その理由をわかりやすく説明したうえで、目的に応じた代わりの方法を、弁護士の視点で整理していきます。読み終えるころには、自分の思いを実現するための、具体的な道筋が見えてくるはずです。

生前の相続対策と聞くと、難しそうに感じるかもしれません。けれども、一つずつ理解していけば、決して複雑な話ではありません。大切なのは、生前にできることと、できないことを正しく知り、自分の目的に合った方法を選ぶことです。専門用語はできるだけかみくだいて説明していきますので、どうか身構えずに読み進めてください。将来の安心のために、まずは知ることから始めましょう。

生前の相続対策で大切なのは、思い立ったときに、できることから始めることです。完璧な計画を立ててから動こうとすると、なかなか一歩を踏み出せません。まずは自分の財産を把握し、誰に何を残したいかを考えてみる。その小さな一歩が、やがて確かな備えにつながっていきます。先延ばしにせず、できるところから取りかかること。それが、後悔のない相続準備の、いちばんのこつだといえるでしょう。

生前の相続放棄はできない

まず、大前提となるルールから確認しましょう。相続放棄は、相続が始まった後、つまり、亡くなった後でなければ、することができません。生きているうちに、あらかじめ放棄しておく、ということは認められていないのです。

相続放棄とは、亡くなった方の財産も借金も、いっさい引き継がないことを選ぶ手続きです。プラスもマイナスも、まとめて手放すという選択です。良いものだけを選んで受け取る、ということはできません。これは、家庭裁判所に申し立てて行うものですが、その申し立てができるのは、相続が始まったことを知った後に限られます。まだ相続が始まっていない、つまり、その人が元気に生きている段階では、放棄の手続き自体が、受け付けられないのです。生きている人の相続を、先回りして放棄する、ということはできない仕組みになっているのです。この点は、多くの方が誤解しているところなので、しっかり覚えておきましょう。思い込みで進めると、後で当てが外れることになりかねません。

たとえば、親が健在なうちに、子が「自分は親の遺産を放棄します」と一筆書いたとしても、それは法律上の相続放棄としては、何の効力も持ちません。口約束はもちろん、書面にしたとしても同じです。どれだけ固く約束を交わしても、法律の前では効力を持たないのです。生前に交わした放棄の約束は、相続が始まった後に、その人を法的に縛るものにはならない、ということを、まず知っておく必要があります。

このことは、相続させたい側にとっても、相続する側にとっても、重要な意味を持ちます。相続させたくないからと、生前に放棄の念書を取りつけても、それは安心材料にはなりません。念書があるから大丈夫、と思い込むのは危険です。逆に、自分が放棄するつもりで念書を書いても、それで義務を免れられるわけではないのです。書いた本人すら、その念書には縛られないというわけです。生前の約束は、あくまで気持ちの上での取り決めにすぎず、法的な拘束力はない。この点を、まずしっかり理解しておくことが、適切な対策の出発点になります。スタート地点を間違えると、その後の対策もずれてしまいます。

ワンポイントアドバイス
生前に「相続を放棄する」と約束したり、念書を書いたりしても、法的な効力はありません。いざ相続が始まったとき、気が変わって相続を主張することも、法律上は可能です。生前に将来の相続のことを取り決めたいなら、放棄の約束ではなく、これから紹介する遺言などの正式な方法を使うことが大切です。確実な手立てを選びましょう。

なぜ生前の相続放棄はできないのか

では、なぜ生前の相続放棄は、認められていないのでしょうか。一見すると、本人が望むなら、生前に放棄できてもよさそうに思えます。けれども、そこには、しっかりとした理由があります。理由を知ると、このルールの意味が腑に落ちるはずです。

大きな理由の一つは、本人の自由な意思を守るためです。もし生前の放棄を認めると、立場の弱い相続人が、ほかの相続人などから、無理やり放棄を迫られるおそれがあります。「今のうちに放棄しておけ」と圧力をかけられ、本意でないのに放棄させられる。そうした事態を防ぐため、放棄は、相続が始まって、本人が自由に判断できる段階になってから、と定められているのです。弱い立場の人が、不本意な放棄を強いられないよう、配慮されているわけです。

もう一つの理由は、相続の内容が、亡くなってみないと確定しないからです。財産がどれだけあるか、借金がどれだけあるかは、その時々で変わります。生きている間に放棄を認めてしまうと、その後に財産状況が大きく変わったとき、本人にとって不利益になりかねません。亡くなった時点の状況を見て、放棄するかどうかを判断できるようにする。それが、本人の利益を守ることにつながるのです。

これら二つの理由は、いずれも、相続人本人を守るためのものだといえます。生前放棄を認めないことで、不当な圧力から相続人を守り、また、状況の変化による不利益からも守っているのです。一見、不便に思えるこのルールも、その背景を知れば、相続人の権利を大切にするための、合理的な仕組みだと分かります。ルールには、たいてい、それを支える理由があるものです。だからこそ、生前に何かをしたいなら、放棄ではなく、別の正式な方法を選ぶ必要があるのです。幸い、その正式な方法は、いくつも用意されています。

生前にできる相続対策の全体像

生前の相続放棄はできませんが、将来の相続に備えて、生きているうちにできることは、たくさんあります。むしろ、元気なうちに準備しておくことこそ、円満な相続への近道です。できないことを嘆くより、できることに目を向けるほうが、ずっと建設的です。視点を変えれば、打てる手はいくらでもあるのです。どんな方法があるのか、まず全体像をつかんでおきましょう。

  • 遺言を作成して、誰に何を引き継ぐかを、自分の意思で決めておく方法
  • 生前贈与によって、元気なうちに財産を渡しておく方法
  • 特定の相続人の遺留分について、あらかじめ手を打っておく方法
  • 家族で話し合い、将来の相続について理解を共有しておくこと

これらの方法は、目的によって使い分けることになります。特定の人に財産を多く残したいのか、逆に渡したくないのか。あるいは、争いを未然に防ぎたいのか。何を実現したいかによって、選ぶべき手立ては変わってきます。次から、代表的な方法を、もう少しくわしく見ていきましょう。自分の目的に合うものを、探してみてください。

ここで大切なのは、これらの方法は、それぞれ得意とする目的が異なる、ということです。遺言は財産の行き先を決めるのに向いていますし、生前贈与は確実に渡したいときに役立ちます。遺留分への備えは、特定の人への承継を確実にしたい場合に必要になります。どれか一つが万能というわけではなく、自分が何を実現したいかによって、選ぶべき手立てが変わってくるのです。まずは、自分の目的をはっきりさせることが、方法選びの第一歩になります。

目的があいまいなまま、手続きだけを進めようとすると、かえって遠回りになります。たとえば、ただ漠然と「相続対策をしたい」と考えるよりも、「この財産を、この人に、確実に残したい」と具体的に思い描くほうが、選ぶべき方法もはっきりします。自分が本当に望んでいることは何か。そこを掘り下げて考えることが、最適な対策にたどり着く近道です。自分の本当の願いに気づくことで、はじめて、それにふさわしい手段を選べるようになります。願いがあいまいなままでは、どんなに優れた方法も、宝の持ち腐れになってしまいます。手段から入るのではなく、目的から考える。この順番を意識してみてください。目的がはっきりすれば、迷いも少なくなります。

遺言を活用する方法

生前の相続対策として、もっとも基本となるのが、遺言です。遺言を使えば、自分の財産を、誰に、どれだけ引き継がせるかを、自分の意思で決めておくことができます。これは、生前放棄に代わる、もっとも強力な手立ての一つです。

たとえば、「特定の子には財産を相続させたくない」という思いがある場合、その子以外の相続人に財産を引き継がせる、という内容の遺言を作ることが考えられます。生前に放棄させることはできなくても、遺言によって、財産の行き先を自分で決めておくことは可能なのです。放棄という入り口が閉ざされていても、遺言という別の入り口が開かれているのです。目的を達するための扉は、一つではないということです。これにより、自分の希望に沿った財産の承継を、実現しやすくなります。

遺言のよいところは、自分の意思を、はっきりとした形で残せる点にあります。誰に何を引き継がせたいか、その思いを文章にしておくことで、亡くなった後も、その意思が尊重されます。生前に放棄を約束させるような、あいまいで効力のない方法に頼るよりも、遺言という確実な手段で、自分の希望を形にしておくほうが、はるかに安心です。形に残すことで、自分の思いは、確かなものになります。自分の財産を、自分の思うように引き継がせるための、もっとも確実な方法だといえるでしょう。あいまいな約束に頼るより、遺言という形に残すほうが、はるかに信頼できます。

ただし、遺言には決まった形式があり、それを守らないと、せっかくの遺言が無効になってしまうことがあります。また、後で内容や有効性をめぐって争いになることもあります。確実な遺言を残すためには、公証役場で作成する、公正証書という形式の遺言を利用すると安心です。形式の不備で無効になるリスクが小さく、後の争いも防ぎやすくなります。

公正証書による遺言は、公証人という専門家が関与して作成するため、形式の面で安心できます。原本が公証役場に保管されるので、紛失や、誰かに書き換えられる心配もありません。多少の手間や費用はかかりますが、その分、確実性が高まります。安心を買うための、必要な投資だと考えるとよいでしょう。とくに、相続をめぐって争いが予想される場合や、確実に自分の意思を実現したい場合には、この公正証書による遺言を選んでおくと、後々の安心につながります。大切な思いを確実に残すための、心強い選択肢です。費用と手間に見合うだけの安心が、そこにはあります。

生前贈与を活用する方法

次に、生前贈与を使う方法です。これは、生きているうちに、財産を特定の人に渡しておく、という方法です。相続を待たずに、確実に財産を引き継がせたい場合に、有効な手立てとなります。

たとえば、財産を確実に渡したい相手がいる場合、生前のうちに贈与しておけば、その人に財産を残せます。相続のときに、ほかの相続人との話し合いで思いどおりにならない、という心配もありません。自分の手で直接渡せるので、確実性という点では、これにまさる方法はありません。自分の目の届くうちに、渡したい相手に渡せるのが、生前贈与の大きな利点です。相続を待たずに、今すぐ財産を動かせるのが強みです。孫の進学や、子の独立といった節目に合わせて、援助することもできます。必要なときに、必要な人へ。そんな、きめ細かな援助ができるのも魅力です。本人の意思を、もっとも直接的に反映できる方法だといえます。

ただし、生前贈与には、贈与税が関わってきます。一度にまとまった財産を贈与すると、思わぬ税負担が生じることもあるため、進め方には注意が必要です。また、特定の相続人に多く贈与すると、ほかの相続人の取り分との間で、後々もめる原因になることもあります。生前贈与を活用するときは、税の仕組みや、ほかの相続人とのバランスにも、目を配ることが大切です。

生前贈与を相続対策として使う場合、もう一つ知っておきたいことがあります。それは、亡くなる前の一定期間に行われた贈与は、相続のときの計算に含められる場合がある、という点です。つまり、亡くなる直前にあわてて贈与しても、思ったような効果が得られないことがあるのです。生前贈与を対策として活かすなら、早めに、計画的に進めることが肝心です。思い立ったらすぐに、というよりも、長い目で見て、少しずつ進めていくのがよいでしょう。

遺留分への備えを考える

生前の相続対策で、見落としてはならないのが、遺留分への配慮です。これを知らずに対策を進めると、せっかくの計画が、後で覆されてしまうことがあります。少し専門的ですが、大切な点なので、しっかり押さえておきましょう。

遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された、最低限の取り分のことです。本人の意思だけでは動かせない、特別な権利だといえます。だからこそ軽視できないのです。たとえ「特定の人にすべての財産を渡す」という遺言を作っても、遺留分を持つ相続人がその取り分を主張すれば、その分は確保しなければなりません。最低限の取り分は、法律によって守られているのです。つまり、遺言や贈与だけでは、特定の相続人の取り分を、完全にゼロにすることは難しいのです。

この遺留分という仕組みは、相続対策を考えるうえで、しばしば壁になります。「あの子には一切渡したくない」と思って、ほかの人にすべてを譲る遺言を作っても、その子が遺留分を主張すれば、最低限の取り分は渡さざるを得ません。これを知らずに対策を進めると、自分の死後に、想定外の争いが起きることになります。だからこそ、特定の相続人への承継を考えるときは、必ず遺留分のことを念頭に置いておく必要があるのです。遺留分を無視した計画は、砂上の楼閣になりかねません。遺留分は、それほど強い権利だといえます。法律が特別に保護している権利だけに、安易に無視することはできません。対策を考えるときは、つねにこの遺留分の存在を意識しておく必要があります。

では、どうしても特定の相続人に財産を渡したくない、という場合はどうすればよいのでしょうか。一つの方法として、その相続人の同意を得たうえで、遺留分をあらかじめ放棄してもらう、という手続きがあります。これは生前にできる、貴重な選択肢の一つです。これは、相続放棄とは異なり、生前に、家庭裁判所の許可を得て行うことができるものです。同じ放棄でも、遺留分の放棄は生前にできる、という違いがあります。ただし、本人の自由な意思が前提となるため、無理強いはできません。こうした対策は専門的なので、検討する際は、専門家に相談しながら進めるのが確実です。

遺留分をあらかじめ放棄してもらう手続きは、生前にできる、数少ない方法の一つです。ただし、これには家庭裁判所の許可が必要で、本人が自由な意思で放棄することが大前提となります。無理やり放棄させることはできませんし、放棄する側にとって、それなりの理由や見返りがないと、許可されにくいのが実情です。ただ放棄させたいという一方的な都合だけでは、認められないのです。手続きの要件は厳格なので、安易に考えるのは禁物です。検討する場合は、必ず専門家の助言を得ながら、慎重に進めるようにしましょう。要件を満たしているかどうかの見極めは、専門家でなければ難しい面があります。自己判断で進めて無効になっては、元も子もありません。

家族での話し合いという備え

法律的な手続きと並んで、意外と大切なのが、家族での話し合いです。どんなに完璧な遺言や贈与の計画を立てても、家族の気持ちがすれ違っていると、相続のときに思わぬ争いが生じることがあります。心の準備も、立派な相続対策なのです。

法律的な手続きは、いわば相続の骨組みをつくる作業です。けれども、その骨組みに血を通わせるのは、家族の理解と納得です。どんなに精巧な遺言を用意しても、家族の心がばらばらでは、争いの火種は残ってしまいます。逆に、家族が互いの気持ちを理解し合っていれば、多少の不備があっても、円満に解決できるものです。手続きという形と、対話という心。その両輪がそろってこそ、本当に安心できる相続の準備が整うのです。

たとえば、なぜ特定の財産を、特定の人に残すのか。その理由や思いを、生前に家族へ伝えておくだけでも、相続のときの受け止め方は大きく変わります。何も知らされないまま、亡くなった後に遺言の内容を知ると、納得できずに争いになることもあります。寝耳に水の内容に、感情的な対立が生まれてしまうこともあるのです。前もって知らされていれば、防げたはずの争いも少なくありません。けれども、生前に本人の口から思いを聞いていれば、家族も気持ちの整理がつきやすくなります。生きているうちに、直接、思いを伝えておくことの意味は、とても大きいのです。文章に残すだけでは伝わりきらない気持ちも、面と向かって話せば、きっと伝わります。言葉を交わす時間そのものが、家族にとってかけがえのないものになるはずです。

もちろん、財産のことを家族で話し合うのは、気が引けるものかもしれません。けれども、その一歩を踏み出しておくことが、残された家族を、相続の争いから守ることにつながります。法律的な手続きと、家族との対話。この両方を備えておくことが、本当の意味での、円満な相続の準備だといえるでしょう。一人で抱え込まず、家族とともに考えていきましょう。

家族での話し合いは、すぐに結論を出すためのものではありません。お互いの気持ちや考えを、少しずつ共有していくことに意味があります。最初は言い出しにくくても、折にふれて話題にするうちに、自然と理解が深まっていくものです。相続は、財産の問題であると同時に、家族の問題でもあります。だからこそ、法律の手続きだけでなく、家族の心をつなぐ対話を、大切にしてほしいのです。それが、争いのない相続への、何よりの備えになります。制度の力だけでは埋められない部分を、家族の絆が補ってくれるのです。

目的に応じた方法の選び方

ここまで、生前にできるさまざまな対策を見てきました。では、自分の場合は、どの方法を選べばよいのでしょうか。目的別に整理しておくと、自分に合った手立てが見えてきます。

実現したいこと 主に検討する方法
特定の人に多く残したい 遺言や生前贈与を活用する
確実に生前に渡したい 生前贈与を活用する
特定の人に渡したくない 遺言と遺留分への備えを組み合わせる
争いを防ぎたい 遺言と家族の話し合いを組み合わせる

このように、何を実現したいかによって、選ぶべき方法は変わってきます。そして、多くの場合、一つの方法だけでなく、複数を組み合わせることで、より自分の希望に近い形を実現できます。単独で使うより、組み合わせることで効果が高まることも多いのです。たとえば、遺言を作りつつ、その理由を家族に伝えておく、というように、手続きと対話を組み合わせるのが効果的です。形式と気持ち、その両方を整えることが理想です。自分の目的を整理したうえで、最適な組み合わせを考えてみましょう。

どの組み合わせが最適かは、家族構成や、財産の中身、そして何より、本人の思いによって変わります。同じ「特定の人に渡したくない」という目的でも、家族の状況によって、とるべき方法は変わってきます。だからこそ、一般的な情報だけで判断するのではなく、自分のケースに即して考えることが大切です。判断に迷うときは、専門家に相談すれば、自分の状況に合った、最適な組み合わせを提案してもらえます。一人で悩まず、専門家の力を借りるのも、賢い選択です。専門家は、数多くの相続を見てきた経験から、自分では気づかない視点を示してくれます。

生前の相続対策に関するよくある質問

生前の相続対策を始めるときの手順

生前の相続対策に取りかかるときは、次の順序で進めると、無理なく整理できます。一つずつ進めてみましょう。

  1. まず、自分の財産にどんなものがあるかを書き出し、全体像を把握します。財産の棚卸しが出発点です。
  2. 次に、誰に、何を、どのように引き継がせたいのか、自分の希望を整理します。
  3. その希望に合った方法を選びます。遺言、生前贈与、遺留分への備えなどを検討します。
  4. 遺留分や税のことも踏まえて、専門家に相談しながら、具体的な手続きを進めます。

この流れに沿えば、何から始めればよいかが見えてきます。まずは財産の棚卸しと、希望の整理から始めるのがおすすめです。

財産の棚卸しと希望の整理は、すべての相続対策の土台になります。自分にどんな財産があり、それを誰にどう引き継がせたいのか。ここがはっきりしないままでは、どんな手続きを選ぶべきかも決まりません。逆に、この二つさえ整理できれば、あとは目的に合った方法を選んで、形にしていくだけです。難しく考えず、まずは紙に書き出してみることから始めてみてください。頭の中が整理され、進むべき方向が見えてきます。書き出すという作業には、考えをまとめる力があります。頭の中の漠然とした思いも、紙に書けば形になります。

生前に書いた相続放棄の念書は有効ですか

有効ではありません。生前に「相続を放棄する」という念書を書いても、法律上の相続放棄としての効力はありません。相続放棄は、相続が始まった後に、家庭裁判所で手続きをしてはじめて成立します。生前の念書は、その人を法的に縛るものではなく、いざ相続が始まれば、念書を書いた人が相続を主張することも可能です。将来の相続に備えたいなら、念書ではなく、遺言などの正式な方法を使う必要があります。

どうしても特定の人に相続させたくない場合は

遺言で、その人以外に財産を引き継がせる方法が基本となります。ただし、その人が遺留分を持つ相続人である場合、最低限の取り分までは、完全には奪えないことがあります。どうしてもという場合は、その相続人に遺留分を生前に放棄してもらう手続きや、状況によっては相続人から外す手続きを検討することもありますが、いずれも要件が厳しく、専門的な判断が必要です。一人で悩まず、まずは専門家に相談してみてください。

生前の相続対策は、いつから始めるべきですか

できるだけ早く始めることをおすすめします。遺言にしても生前贈与にしても、本人がしっかりと判断できる状態であることが前提になります。判断する力がしっかりしているうちでなければ、有効な手続きはできないのです。だからこそ、思い立ったときが、始めるべきときなのです。判断能力が衰えてからでは、有効な対策を打つことが難しくなります。「まだ早い」と思っているうちに、機会を逃してしまうこともあります。元気なうちに、少しずつでも準備を始めておくことが、結果的に自分の希望をかなえ、家族を守ることにつながります。時間に余裕があるほど、選べる方法も増え、じっくり考えることができます。追い込まれてから動くより、ずっとよい結果になりやすいものです。相続対策に「早すぎる」ということはありません。むしろ、早く始めた人ほど、選択肢を広く持てます。今日が、いちばん若い日だと考えて、できることから取りかかってみてはいかがでしょうか。思い立ったときが、始めどきだといえるでしょう。先延ばしにする理由を探すよりも、今できる小さな一歩を踏み出すこと。それが、将来の自分と家族を助けることになります。

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