2020/9/23 135view

借地権を相続した場合に注意すべき3つのポイント|地主とのトラブルを避けるコツ

この記事で分かること
  1. 借地権は相続される。相続に地主の許可は不要である。
  2. 借地権の相続を理由に、更新料などを請求されたり、建物の建て替えを拒まれることがある。
  3. 借地関係において法律を振り回すことは、地主との関係を悪化させる。
  4. 借地関係では、慣例を大事にすることが大切である。
  5. 相続した借地権をめぐって地主との関係に困ったら、相続と借地に詳しい弁護士に相談することが一番である。

借地権を相続すると、地主との間でトラブルが起きがちです。そこで法律を振り回すと、地主の感情を害し、トラブルが悪化します。地主との円満な関係を築くには、借地関係の慣例を大事にすることが大切です。借地関係の法律や慣例は、一般の方にはなじみが薄いです。相続した借地権をめぐる地主との関係に困ったら、まず相続と借地に詳しい弁護士に相談することが一番です。

借地権は相続の対象

借地権は相続の対象になります。借地権相続の基本的なポイントを3つ紹介します。

借地権とは

建物所有を目的とする地上権と土地賃借権とをまとめて、借地権といいます。

地上権も土地賃借権も、土地を使う権利です。権利の種類は違います。地上権は、地主の行為を通さず直接に土地を使います。物権です。土地賃借権は、地主の「貸す」行為を通して土地を使います。債権です。

地上権も土地賃借権も、建物所有を目的とします。家の敷地ならオーケーです。駐車場はダメです。

借地権は相続される

借地権者が亡くなると、借地権は子供などの相続人へ相続されます。

財産を残して亡くなった人(=被相続人)が持っていた権利を受け継ぐのが相続です。借地権も権利です。借地権も相続されます。

借地権の相続に地主の許可は不要

借地権の相続に、地主の許可は不要です。

土地賃借権の譲渡は地主の許可が必要

借地権のうち、地上権の譲渡は、地主の許可は不要です。地主の行為を通さず土地を使う権利です。地上権者が変わっても地主は何も言えません。

借地権のうち、土地賃借権の譲渡は、地主の許可が必要です。地主の「貸す」行為を通して土地を使う権利です。地主に無断で「貸す」相手を変えてもらっては、地主が困ります。

土地賃借権の相続なら地主の許可は不要

譲渡は、契約により権利を移すことです。相続は、被相続人の死亡により権利が移ることです。譲渡と相続は違います。

地上権の相続はもちろん、土地賃借権の相続も、譲渡ではないので、地主の許可は不要です。

ただ、借地権者が変わると、地代の請求先が変わります。地代の変更、契約の更新などの話をする相手も変わります。地主は、誰が借地権者かを知らないと困ります。借地権を相続したことを地主に知らせることは必要です。

遺言で土地賃借権をもらうには許可が必要

これまでの解説は、遺言によらない相続の場合です。遺言による相続だと、話は変わってきます。

借地権のうち、遺言で地上権をもらうには、地主の許可は不要です。地上権は物権です。地主の行為を通さず土地を使う権利です。地上権者が変わっても地主は何も言えません。

借地権のうち、遺言で土地賃借権をもらうには、地主の許可が必要です。土地賃借権は債権です。地主の「貸す」行為を通して土地を使う権利です。地主に無断で「貸す」相手を変えてもらっては、地主が困ります。

ワンポイントアドバイス
地上権という物権、土地賃借権という債権、建物所有の目的。これらが絡み合ったのが借地権です。借地権は、借地借家法という法律に書かれています。とても細かな内容の法律です。一般の方が借地権を理解することは、なかなか大変です。いまひとつ借地権というものが分からなかったら、借地権に詳しい弁護士に質問してみましょう。

借地権の相続で地主とのトラブルを避けるには?

借地権の相続では、地主とのトラブルが起きがちです。よくある3つのトラブルについて、その対処法を解説します。

更新料や名義書換料(承諾料)を請求されたら

借地権の相続人が、地主から、借地権相続を理由に、更新料や名義書換料(承諾料)を請求されることがあります。

取決めがあれば請求に応ずる

「借地権を相続したら更新料を支払う」「借地権を相続したら名義書換料(承諾料)を支払う」という取決めがあれば、相続人は更新料や名義書換料(承諾料)の請求に応じなければなりません。

取決めがなければ、更新料を拒否できる

取決めがなければ、相続人は、更新料の請求を拒むことができます。

借地の契約期間が終わる時、借地権者と地主が合意して契約を延ばすことが、更新です。

更新してもらう見返りに、借地権者が地主に支払うお金が、更新料です。

借地権の相続は、次の3つの点で、借地契約の更新と違います。

  • 借地権の相続は、契約期間の終わらない時にも起きる
  • 借地権の相続は、借地権者と地主の合意ではなく、借地権者の死亡によって起きる
  • 借地権の相続は、契約を延ばすことではなく、借地権者の立場を受け継いで新しい借地契約を生み出すことである

借地権の相続が借地契約の更新と違う以上、更新料は発生しません。相続人は、更新料の請求を拒むことができます。

取決めがなければ、名義書換料(承諾料)を拒否できる

取決めがなければ、相続人は、名義書換料(承諾料)の請求を拒むことができます。

借地権のうち、地上権の譲渡は、地主の許可は不要です。土地賃借権の譲渡は、地主の許可が必要です。地主の許可への見返りとして、土地賃借人が地主に支払うお金を、名義書換料または承諾料といいます。

譲渡は、契約により権利を移すことです。相続は、被相続人の死亡により権利が移ることです。譲渡と相続は違います。

地上権の相続はもちろん、土地賃借権の相続も、地主の許可は不要です。

地主の許可が不要な以上、名義書換料(承諾料)は発生しません。相続人は、名義書換料(承諾料)の請求を拒むことができます。

借地権の相続後、地代の値上げを要望された

借地権の相続人が、地主から、借地権相続を理由に、地代の値上げを請求されることがあります。

借地権の地代とは、地上権の地代と、土地賃借権の賃料とをひとまとめにしたものです。

取決めがあれば請求に応ずる

「借地権を相続したら地代の値上げができる」という取決めがあれば、相続人は請求に応じなければなりません。

取決めがなければ地代値上げは拒否できる

取決めがなければ、相続人は、地主からの地代の値上げを拒むことができます。

地主が借地権の地代の値上げを請求できる理由は、法律が決めています。次の3つです。

  • 土地の固定資産税などが上がったこと
  • 路線価など土地の評価額が上がったこと
  • 周りの同じ様な土地に比べて地代が安くなったこと

借地権を相続したことは、地代値上げの理由に当たりません。相続人は、地代の値上げを拒むことができます。

借地への建物新築・建て替えを承諾してもらえない場合

借地権の相続人が、地主から、借地上での建物の新築や建て替えを承諾してもらえないことがあります。

新築に承諾は不要

借地権は、建物所有を目的とする権利です。建物所有には、借地上に建物を新築することも含まれます。相続人は、借地契約に基づいて、借地上に建物を新築できます。地主の承諾は不要です。

相続人は、地主の承諾がなくても、借地上に建物を新築できます。

取決めがある場合は、建て替えに承諾が必要なケースも

借地上の建物の建て替えには、地主の承諾が必要なときと不要なときとがあります。

建て替えに地主の承諾が必要という事前の取決めがある場合は、承諾が必要です。相続人が、地主の承諾なく建て替えをすると、契約違反を理由に、地主から借地契約を解除される危険があります。

承諾をもらえないとき、相続人は裁判所に、承諾に代わる許可を求める裁判を起こせます。

逆に、建て替えに関する取決めがなければ、地主の承諾は不要です。相続人は、地主の承諾がなくても、借地上の建物を建て替えられます。

地主との円満な関係を続けるには

取決めがなければ、更新料、名義書換料(承諾料)、地代値上げを拒めます。承諾なく建て替えもできます。取決めがあっても、建て替えの承諾に代わる許可を求める裁判を起こせます。いずれも、法律が認めています。

地主からすれば、どれも面白くないことです。気分を害します。相続人との関係は険悪になりがちです。

地主との円満な関係のためには、地主の気持ちへの配慮が必要です。法律は、最後の手段とするべきです。

謙虚な態度が大切

何より、謙虚を心がけましょう。法律を盾に更新料などを拒むことはやめましょう。

更新料などを免除してくれるようお願いする態度をとりましょう。お願いを拒まれても、粘り強く、話し合いを続けましょう。

取決めがなくても、建て替えの承諾をもらいましょう。拒まれたら、承諾をお願いする態度をとりましょう。粘り強く、話し合いを続けましょう。「裁判」ということばを口にしてはいけません。

仲介者を立てる

ラチが明かないときは、仲介者を立てましょう。借地契約をあっせんしてくれた不動産業者がよいです。双方の事情を分かっています。借地権の知識もあります。

更新料や名義書換料(承諾料)の一部を支払う

それでもダメなら、更新料や名義書換料(承諾料)の一部を支払いましょう。支払いゼロより、いくらかでも支払うことで、地主の気持ちが和らぐことが期待できます。

地主の気持ちが和らげば、地代値上げや建て替え承諾についても、相続人に有利に進む可能性があります。

ワンポイントアドバイス
借地関係では、慣例が大きな力を持ちます。借地関係において長い間行われてきたならわしです。借地関係における目に見えないルールです。更新料や名義書換料(承諾料)がその例です。慣例を重んじることが、地主とのトラブルを防ぐポイントです。その一方で、法律を守ることも大切です。法律と慣例の関係に迷ったら、借地関係の実状に詳しい弁護士に相談しましょう。

借地権の相続で注意すべきポイント

借地権の相続で注意すべきポイントを3つ紹介します。

借地権を相続したら、新たに契約するのがおすすめ

借地権者が変わると、地代の請求先が変わります。地代の変更、契約の更新などの話をする相手も変わります。地主としては、新しい借地権者が誰なのかをはっきりさせておく必要があります。新しい借地権者に、借地契約の内容をきちんと知っておいてもらいたい気持ちもあります。

相続人は、被相続人(=旧借地権者)がどのような借地契約をしていたか知らないことがほとんどです。新しい借地権者として、借地契約の内容をきちんと知っておく必要があります。

借地権を相続したら、新たに借地契約を結んで、相続人の名義で契約書を作り直しましょう。地主と相続人、双方のためになることです。

借地権の更新料に注意

借地権の更新料を支払うかどうかについて、注意が必要です。

取り決めがなければ、更新料は不要

更新料を支払う取決めがなければ、相続人は、更新料を支払わなくてよいです。

借地の契約期間が終わる時、借地権者と地主が合意して契約を延ばすことが、更新です。更新してもらう見返りに、借地権者が地主に支払うお金が、更新料です。

借地権の相続は、借地契約の更新ではありません。取決めがない限り、相続人は、更新料を支払わなくてよいです。

更新料の慣例には従う

被相続人(=旧借地権者)が更新料を支払っていたら、注意が必要です。借地関係は、慣例を大切にします。被相続人が更新料を支払っていたら、それが慣例になっていたと考えられます。被相続人の前の代から支払っていたら、さらに強い慣例といえます。

「相続で借地権者が変わったんだから、今までの慣例は知らない」は、借地の世界では許されません。慣例の無視や軽視は、地主の怒りを買います。地主と借地権者の関係は、お先真っ暗です。

慣例に従って、更新料を支払うのが賢いやり方です。

借地権を譲渡・売却する場合は地主の承諾が必要

借地権を譲渡・売却するのに地主の承諾が必要となる場合があります。

借地権のうち、地上権を譲渡・売却するのに、地主の承諾は不要です。地上権は物権です。地主の行為を通さず土地を使う権利です。地上権者が変わっても地主は何も言えません。

借地権のうち、土地賃借権を譲渡・売却するには、地主の承諾が必要です。土地賃借権は債権です。地主の「貸す」行為を通して土地を使う権利です。地主に無断で「貸す」相手を変えてもらっては、地主が困ります。

借地権が地上権か土地賃借権かによって、その譲渡・売却に地主の承諾が必要かどうかが変わります。注意しましょう。

ワンポイントアドバイス
本文で紹介した3つは、代表的な注意ポイントです。その他にも、ケースごとに注意すべきポイントが出てきます。自分のケースで気になることがあったら、借地権と相続に詳しい弁護士に相談しましょう。

借地権の相続で困ったら弁護士に相談を

借地権を相続したら、地主との関係が大切になります。

相続そのものに地主の承諾は不要です。でも、建物の建て替えに承諾が必要になることがあります。更新料、名義書換料(承諾料)、地代値上げを請求されることもあります。

借地関係では、法律の決まり、当事者間の取り決めはもちろん、慣例が大切です。慣例を大切にすることで、地主との円満な関係を保てます。

借地権についての法律、借地関係の慣例は、一般の方にはなじみが薄いです。そこに相続が絡めば、理解はさらに難しくなります

借地権の相続で困ったら、借地権、相続、借地関係の実状に詳しい弁護士に相談しましょう。

遺産相続は弁護士に相談を
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
相続人のひとりが弁護士を連れてきた
遺産分割協議で話がまとまらない
遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
相続について、どうしていいのか分からない
上記に当てはまるなら弁護士に相談